ー友達編2ー
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キミの為ならたとえ火の中水の中
夏祭り当日。部活終わりにそのまま待ち合わせをしとる神社へと向かう。(ちなみに柳生と真田は用事があるそうで来られんかった)
久しぶりに愛子ちゃんに会えると思うと胸がドキドキしてくる。
「仁王、如月はいるか?」
「えっと…」
神社の入り口付近で辺りをキョロキョロ見渡していると、「ねぇ」と突如背後から声を掛けられた。
瞬時にこの声の正体を察知した俺は嬉々として振り向く。すると予想外な彼女の姿が目に入り、思わずポカーンと口を開けて固まってしまったのだ。
「あ、如月さん久しぶり」
「よっす」
「浴衣とは風流だな」
「…祭りに行くって言ったら、婆ちゃんに無理矢理着せられたんだよ」
白地に牡丹の花が鮮やかな浴衣を着て、髪も緩く纏められている。
初めて見る愛らしい姿に言葉を失っていると幸村に小声で「何か言えよ」と言われた。お陰でハッと我に返り、慌てて口を開いた。
「に…ににに、…似合っとるよ」
「ふーん…。どうも」
愛子ちゃんはさして喜ぶ様子もなく、返答もそっけなかった。
「ところで、よく来てくれたね」
「乗り気じゃないに決まってんじゃん。でも、断った方が面倒なことになるでしょ」
チラッと不愉快そうに幸村を見る愛子ちゃんとにんまり笑う幸村を見て、胸の奥にモヤッとしたもんが生まれた気がしたが……気のせいか。
「それじゃあ、全員揃ったことだし行こうか。今日は花火も打ち上がるらしいよ」
「俺のデータによると本殿辺りは花火がよく見え、人も少ないらしい」
「そんなデータまであんのか。どっから集めてくるのかめっちゃ気になるんだけど」
「それは秘密だ」
愛子ちゃんが柳に声を掛ける横で、「あとで二人でそこに行きなよ」とこっそり幸村が俺に言ってきた。(そこで告白しんしゃい…ってことなんじゃろうが、まだやっぱり心の準備が…!)
ーーそんなことで頭がいっぱいになっていた俺は痛恨のミスをおかしてしまう。
とりあえず花火の時間まで屋台でも見て回ろうということになり、俺達は一列になって人混みの中を歩き出した。
ふと彼女が下駄であることを思い出した俺は「足は大丈夫か?」と後ろを振り向いた。
ー…しかしそこには愛子ちゃんは居らず、慌てて人の波に逆らって彼女の姿を探したが見つからない。とりあえず今の状況を幸村にメールし、愛子ちゃんに電話をかけた。
「…っ、出んか…。(気付いておらんか、携帯を忘れて来てしまったか…)どちらにせよ、探さんと」
だが、闇雲に探しても見つからん。…もしかしたら、あそこにおるかも知れん!
俺は本殿に向かって走り出したのだった。
ーーーー…
「やめて下さい!」
「いいじゃんかよぉ〜少しくらい。どうせ今の若い子はもう経験済みだろ?」
「…叫びますよ」
「ハハ。どうせこんなとこ、誰も来ねぇーよ」
本殿への階段を登り切ると聞こえてきた声に俺は肝を冷やした。
ーー愛子ちゃん…っ!!
声のした本殿裏に駆け込むと柄の悪い男二人がいて、その内の一人に腕を掴まれている愛子ちゃんを見た瞬間頭に血が上った。
「彼女に汚い手で触れるんじゃなかっー…!!」
なりふり構わず彼女の腕を掴んでいる男に向かって突進する。不意をつかれた男は俺と共に地面へと倒れ込んだ。
「なっ、なんだテメーは!?」
恐ろしい形相で胸ぐらを掴まれたが、不思議と全く怖くなかった。今の俺には愛子ちゃんを守ることしか頭にない。
「逃げろ!!」
唖然とする愛子ちゃんにそう叫ぶと男に頬を殴られた。
その衝撃で倒れたが愛子ちゃんから視線を外さない。その時もう一人の男が彼女を捕らえようとしたが、それに気づいた愛子ちゃんはサッと走り出した。(良かったぜよ…)
すると再び男の拳が振り上げられ歯を食いしばったその時ー…。
「警察を呼んだ!!」
愛子ちゃんの大声が響き渡り、ピタリと動きを止めた男達。俺もつられて愛子ちゃんの方を見てみると、俺の携帯を持っていて開かれた着信画面は110番となっていた。
「あ、もしもし警察ですか…」
「っち…。い、行くぞ!」
そそくさと走り去って行った男達に俺はほっとした。何とか彼女を守ることが出来た……。
「っ、仁王ー…!!」
「…愛子ちゃん…、大丈夫か?」
「…っ、それはこっちの台詞だよっ」
愛子ちゃんは座り込む俺の前にしゃがみ込むと、ハンカチを取り出して切れてしまった口端に優しく当ててくれた。
「ー…いっ」
「ご、ごめん!い、痛いに決まってるよね…!」
取り乱す姿は初めてみる…なんて、ぼうっと思っていると、彼女の手が僅かに震えていることに気づいてしまった。
「怖かったじゃろ…。遅くなってすまんかった…」
「っ、それもこっちの台詞。それと、なんでアンタが謝るのよ…。むしろ助けてくれてありがとうだから…っ」
そう言ってぎゅっと、愛子ちゃんは俺の手を握る。
そのせいで彼女の震えが俺にまで伝染したのかと思いきや、「…ヘタレのくせして無理して…」と言われてようやく自身の手も震えていたことに気付いた。
「…ハハ。必死じゃったき、怖いとか思う暇もなかった」
「…バカ」
「後先なんて考えておらんかったから、結局愛子ちゃんに助けられてしもうた…。本当はヒーローみたいに格好良く助けたかったんじゃが…情けないのう」
「でも、お陰で逃げる隙が出来た。それに仁王の携帯が落ちてて助かったよ。…あ、ちなみに本当は警察なんて呼んでないからね」
「え?」
「あれは嘘。アイツらをビビらせる為のね」
「…とんだ詐欺師じゃのう」
ニッとぎこちなく口角を上げた愛子ちゃんに俺も力なく笑って見せた。
「…さて、幸村に連絡せんと。愛子ちゃんを見つけたって…」
ようやく震えも止まり、握られたままの手をさりげなく離そうとしたが、再びぎゅっと握り締められ思わず目を丸くさせる。
「……ごめん。もう少しだけ、このままでいて」
「……おん」
冷たいままの彼女の手が温かさを取り戻せるように、俺も強く握り返した。
ーー告白なんて状況的にも心の準備的にも出来んかったが、こうして愛子ちゃんと二人静かに花火を見られて良かった。
…その後、だいぶ幸村や丸井に絞られたがのう。
夏祭り当日。部活終わりにそのまま待ち合わせをしとる神社へと向かう。(ちなみに柳生と真田は用事があるそうで来られんかった)
久しぶりに愛子ちゃんに会えると思うと胸がドキドキしてくる。
「仁王、如月はいるか?」
「えっと…」
神社の入り口付近で辺りをキョロキョロ見渡していると、「ねぇ」と突如背後から声を掛けられた。
瞬時にこの声の正体を察知した俺は嬉々として振り向く。すると予想外な彼女の姿が目に入り、思わずポカーンと口を開けて固まってしまったのだ。
「あ、如月さん久しぶり」
「よっす」
「浴衣とは風流だな」
「…祭りに行くって言ったら、婆ちゃんに無理矢理着せられたんだよ」
白地に牡丹の花が鮮やかな浴衣を着て、髪も緩く纏められている。
初めて見る愛らしい姿に言葉を失っていると幸村に小声で「何か言えよ」と言われた。お陰でハッと我に返り、慌てて口を開いた。
「に…ににに、…似合っとるよ」
「ふーん…。どうも」
愛子ちゃんはさして喜ぶ様子もなく、返答もそっけなかった。
「ところで、よく来てくれたね」
「乗り気じゃないに決まってんじゃん。でも、断った方が面倒なことになるでしょ」
チラッと不愉快そうに幸村を見る愛子ちゃんとにんまり笑う幸村を見て、胸の奥にモヤッとしたもんが生まれた気がしたが……気のせいか。
「それじゃあ、全員揃ったことだし行こうか。今日は花火も打ち上がるらしいよ」
「俺のデータによると本殿辺りは花火がよく見え、人も少ないらしい」
「そんなデータまであんのか。どっから集めてくるのかめっちゃ気になるんだけど」
「それは秘密だ」
愛子ちゃんが柳に声を掛ける横で、「あとで二人でそこに行きなよ」とこっそり幸村が俺に言ってきた。(そこで告白しんしゃい…ってことなんじゃろうが、まだやっぱり心の準備が…!)
ーーそんなことで頭がいっぱいになっていた俺は痛恨のミスをおかしてしまう。
とりあえず花火の時間まで屋台でも見て回ろうということになり、俺達は一列になって人混みの中を歩き出した。
ふと彼女が下駄であることを思い出した俺は「足は大丈夫か?」と後ろを振り向いた。
ー…しかしそこには愛子ちゃんは居らず、慌てて人の波に逆らって彼女の姿を探したが見つからない。とりあえず今の状況を幸村にメールし、愛子ちゃんに電話をかけた。
「…っ、出んか…。(気付いておらんか、携帯を忘れて来てしまったか…)どちらにせよ、探さんと」
だが、闇雲に探しても見つからん。…もしかしたら、あそこにおるかも知れん!
俺は本殿に向かって走り出したのだった。
ーーーー…
「やめて下さい!」
「いいじゃんかよぉ〜少しくらい。どうせ今の若い子はもう経験済みだろ?」
「…叫びますよ」
「ハハ。どうせこんなとこ、誰も来ねぇーよ」
本殿への階段を登り切ると聞こえてきた声に俺は肝を冷やした。
ーー愛子ちゃん…っ!!
声のした本殿裏に駆け込むと柄の悪い男二人がいて、その内の一人に腕を掴まれている愛子ちゃんを見た瞬間頭に血が上った。
「彼女に汚い手で触れるんじゃなかっー…!!」
なりふり構わず彼女の腕を掴んでいる男に向かって突進する。不意をつかれた男は俺と共に地面へと倒れ込んだ。
「なっ、なんだテメーは!?」
恐ろしい形相で胸ぐらを掴まれたが、不思議と全く怖くなかった。今の俺には愛子ちゃんを守ることしか頭にない。
「逃げろ!!」
唖然とする愛子ちゃんにそう叫ぶと男に頬を殴られた。
その衝撃で倒れたが愛子ちゃんから視線を外さない。その時もう一人の男が彼女を捕らえようとしたが、それに気づいた愛子ちゃんはサッと走り出した。(良かったぜよ…)
すると再び男の拳が振り上げられ歯を食いしばったその時ー…。
「警察を呼んだ!!」
愛子ちゃんの大声が響き渡り、ピタリと動きを止めた男達。俺もつられて愛子ちゃんの方を見てみると、俺の携帯を持っていて開かれた着信画面は110番となっていた。
「あ、もしもし警察ですか…」
「っち…。い、行くぞ!」
そそくさと走り去って行った男達に俺はほっとした。何とか彼女を守ることが出来た……。
「っ、仁王ー…!!」
「…愛子ちゃん…、大丈夫か?」
「…っ、それはこっちの台詞だよっ」
愛子ちゃんは座り込む俺の前にしゃがみ込むと、ハンカチを取り出して切れてしまった口端に優しく当ててくれた。
「ー…いっ」
「ご、ごめん!い、痛いに決まってるよね…!」
取り乱す姿は初めてみる…なんて、ぼうっと思っていると、彼女の手が僅かに震えていることに気づいてしまった。
「怖かったじゃろ…。遅くなってすまんかった…」
「っ、それもこっちの台詞。それと、なんでアンタが謝るのよ…。むしろ助けてくれてありがとうだから…っ」
そう言ってぎゅっと、愛子ちゃんは俺の手を握る。
そのせいで彼女の震えが俺にまで伝染したのかと思いきや、「…ヘタレのくせして無理して…」と言われてようやく自身の手も震えていたことに気付いた。
「…ハハ。必死じゃったき、怖いとか思う暇もなかった」
「…バカ」
「後先なんて考えておらんかったから、結局愛子ちゃんに助けられてしもうた…。本当はヒーローみたいに格好良く助けたかったんじゃが…情けないのう」
「でも、お陰で逃げる隙が出来た。それに仁王の携帯が落ちてて助かったよ。…あ、ちなみに本当は警察なんて呼んでないからね」
「え?」
「あれは嘘。アイツらをビビらせる為のね」
「…とんだ詐欺師じゃのう」
ニッとぎこちなく口角を上げた愛子ちゃんに俺も力なく笑って見せた。
「…さて、幸村に連絡せんと。愛子ちゃんを見つけたって…」
ようやく震えも止まり、握られたままの手をさりげなく離そうとしたが、再びぎゅっと握り締められ思わず目を丸くさせる。
「……ごめん。もう少しだけ、このままでいて」
「……おん」
冷たいままの彼女の手が温かさを取り戻せるように、俺も強く握り返した。
ーー告白なんて状況的にも心の準備的にも出来んかったが、こうして愛子ちゃんと二人静かに花火を見られて良かった。
…その後、だいぶ幸村や丸井に絞られたがのう。