ー友達編ー
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キミと新しい年
年が明けて元旦は家でのんびりすることにし、二日に初詣に行くこととなった。
ーーそして、二日の日午前10時に私達は神社で待ち合わせた。
「愛子ちゃん!明けましておめでとうナリ!」
「あけおめー」
「今年もよろしくぜよ!」
「うん。よろしく」
ひとまず挨拶をして拝殿へと続く階段を登ると、私の思惑通りまだ早い時間帯の為人は少なめだった。
誰も並んでいなかったのでさっそくお賽銭を入れて二拝二拍手する。
ーー今年こそ面倒ごとに巻き込まれず平和な一年を過ごせますように。
毎年然程変わらない願い事。だいたい私の生活に変化はないので、願いは叶っていた。
しかし、去年は仁王と出会ってしまったことにより平和な一年とは言えなかった。今年は何事も変わったことが起こらないといいけど…。
最後に一礼をするとまだ仁王は何かを願っていた。
ーーーー…
「あんなに熱心に何お願いしてたの?テニスのこと?」
「ひ、秘密じゃよ…」
「ふーん。まあいいけどね。あんまり願い事を欲張ると神様が怒るよ」
「プ、プリ!?それは本当か!?」
「いや、知らん」
「な…なんじゃ…。びっくりさせなさんな」
「テキトーな私とは違い、真剣に願うあたりが仁王らしいな。そんなに慌てるなんて余程大事な願い事でもしたの?」
「…まあのう。愛子ちゃんはどんな願い事したんじゃ?」
「うーん、一応内緒。願いごとって誰かに言ったら叶わないんだよ」
「それは俺も聞いたことあるぜよ」
つまり、お互いに願い事は言わないってこと。
すぐに話題は出店してる屋台へと切り替わる。
「リンゴ飴が食べたいぜよ」
「あー…確かあっちらへんにあったはず」
「行ってみるナリ!」
子供のようにはしゃぐ仁王を見て私もやれやれと後をついていく。
二人でリンゴ飴を買って、この後どうしようか…と思っていた時、さっそく面倒ごとが起きてしまった。
すれ違った人と肩がぶつかった仁王。すると、その人が持っていたカップの飲み物が彼のセーターにバシャっとかかったのだった。
「…あ、すんません」
飲み物を持っていた奴は気まずそうにそう呟くと人混みに紛れるようにそそくさと居なくなってしまった。
「っ、ちょっと!」
「愛子ちゃん、仕方ないぜよ。俺は大丈夫じゃき」
「…でも、」
コートは前を開けた状態だった為ほぼ無事だったが、そのかわりセーターはビチョビチョで冷たそうだ。
風が吹くと仁王は小さなクシャミをする。これで自転車で帰ったら風邪を引いてしまう…。
「私の家、すぐ近くなの」
「え?」
「それ洗って乾燥してあげるから来なよ」
ーーーー…
と言うわけで、今仁王はウチの居間にあるコタツに入っている。セーターを洗っている間、大きめの上着を貸してやった。
「…はい。お茶」
「ピ、ピヨッ!?」
「なんでそんなに挙動不審なのよ…」
「じゃ、じゃって…女の子の家にお邪魔するなんて…初めてなんじゃよ。は、恥ずかしい…」
ソワソワする仁王に、「別にここ、私の部屋じゃないし」と冷たく言い放つ。昔ながらの和な感じの部屋に何をそんなに照れてるんだ、この阿呆は。
「…それより、お家の方は…」
「ばあちゃんなら今出かけてる」
「親御さんは…」
「いない」
淡々と告げたその言葉に、僅かに沈黙が流れた。
「そうか」
「うん」
「そうじゃ!虎之助はおらんのか?」
「呼んでみようか?」
それ以上何も聞いてこなかった仁王に内心で感謝した。仁王という男はこういう時、案外人の気持ちに敏感で機転が効くと思う。
私が鈴の音を鳴らすと、どこからか「ニャ〜オ」という鳴き声が聞こえてきた。
「虎之助、ご飯だよ」
そう言うと、ひょこっと姿を表した虎之助を見て仁王が関心したように呟いた。
「お利口さんじゃな。ウチのまたたびなんて呼んでも来てくれんぜよ…」
「ふふ。でしょ」
愛猫を褒められて気分が良くなる。虎之助を撫でるとゴロゴロ喉を鳴らした。
「初めてお会いするのう。実物もやはり別嬪さんじゃな」
すると、虎之助は仁王を見てツーンと顔を背けるような仕草をした。
「…まるで最初の頃の愛子ちゃんのようぜよ」
「どう言う意味よ。愛想がないって言いたいの?」
「ち、違うナリ!」
慌てる仁王が面白くてわざとそっぽを向いてみる。すると必死に私のご機嫌取りをしてくる仁王が面白くて暫くそのままでいたのだが、最終的に涙目になってしまったのでやめてやった。
こうして乾燥機がまもなく止まる頃、タイミング悪く玄関が開く音がした。
「愛子?誰か来とるんかぁ〜?」
見慣れない靴に気づいたらしいばあちゃんが居間に入って来た。仁王を見ると目を丸くさせたが、すぐに笑みを浮かべて頭を下げた。
「おや、いらっしゃい。愛子のお友達かね?」
「あ、お邪魔してます…」
「学校の人。ちょっと訳あって服が濡れちゃったから洗ってあげてたの」
「そうか。ごゆっくりして行っておくれ」
その時、タイミング良く乾燥機が止まった音がした。
「いや、もう間もなく帰るから。…仁王、ちょっと待ってて」
私がバタバタ脱衣所に行ったあと、ばあちゃんが仁王に話しかけていたとは…。
「アンタが仁王君か…」
「はあ…」
「愛子が以前よりも生き生きしてるんは、きっと…キミのお陰なんだろうね」
「え?」
「これから先も出来ればあの子の側にいてやっておくれ。今年も愛子をよろしく頼むよ」
「ー…仁王!お待たせ、はいこれあっちで着替えてきて」
「お、おん…。分かったナリ」
仁王はチラッとばあちゃんを見て軽く会釈をすると隣の部屋に消えて行った。
「…ちょっと、アイツに変なこと言ってないでしょうね」
「ハッハッ。何も言ってないよ」
ばあちゃんがこういう笑い方をしている時は本当に何も話してくれないので諦めるしかない。
だから私は仁王が着替え終わるとさっさとヤツを連れて家の外に出た。
「今日はありがとう。一人で帰れる?」
「こちらこそ色々世話になったのう…。大丈夫じゃよ、何となく道は分かる」
「…ばあちゃんに何か言われた?」
「…これからもあの子の側にいてやってくれ…今年もよろしくって」
「っち。全く余計な事言って…あの婆さんは!」
「婆ちゃんに言われてなくとも俺は…俺の意思でずっと愛子ちゃんの側にいたいと思うナリ」
仁王が珍しく真剣な表情を浮かべてそう言った。何故かその眼差しから視線を逸らせなかった。
「…そんなわけじゃから、今年だけじゃなくこれから先も仲良うしていくつもりぜよ」
「…そうですか。まあ、とりあえずまた新学期に」
「おん。またのう」
仁王の背が遠ざかると私は思わず肩の力を抜いた。
…やっぱりアイツは侮れない。あんな台詞を躊躇なく言えるなんて…。それにいつもと雰囲気も違ったし。
詐欺師と言われる由来はこういうところにあるのかも知れない。
「普通の女子なら勘違いしてるぞ…バカ」
私は大丈夫だけど、そうやって勘違いしてきた女子は多数いるのだろう。
火のないところに煙は立たない。それできっと噂に尾鰭がついていったんだ。
「ーーずっと仲良く、か」
何だかんだ言っても、アンタとはずっと仲良くできると思う。
ーー…仁王が一線を超えない限り。
年が明けて元旦は家でのんびりすることにし、二日に初詣に行くこととなった。
ーーそして、二日の日午前10時に私達は神社で待ち合わせた。
「愛子ちゃん!明けましておめでとうナリ!」
「あけおめー」
「今年もよろしくぜよ!」
「うん。よろしく」
ひとまず挨拶をして拝殿へと続く階段を登ると、私の思惑通りまだ早い時間帯の為人は少なめだった。
誰も並んでいなかったのでさっそくお賽銭を入れて二拝二拍手する。
ーー今年こそ面倒ごとに巻き込まれず平和な一年を過ごせますように。
毎年然程変わらない願い事。だいたい私の生活に変化はないので、願いは叶っていた。
しかし、去年は仁王と出会ってしまったことにより平和な一年とは言えなかった。今年は何事も変わったことが起こらないといいけど…。
最後に一礼をするとまだ仁王は何かを願っていた。
ーーーー…
「あんなに熱心に何お願いしてたの?テニスのこと?」
「ひ、秘密じゃよ…」
「ふーん。まあいいけどね。あんまり願い事を欲張ると神様が怒るよ」
「プ、プリ!?それは本当か!?」
「いや、知らん」
「な…なんじゃ…。びっくりさせなさんな」
「テキトーな私とは違い、真剣に願うあたりが仁王らしいな。そんなに慌てるなんて余程大事な願い事でもしたの?」
「…まあのう。愛子ちゃんはどんな願い事したんじゃ?」
「うーん、一応内緒。願いごとって誰かに言ったら叶わないんだよ」
「それは俺も聞いたことあるぜよ」
つまり、お互いに願い事は言わないってこと。
すぐに話題は出店してる屋台へと切り替わる。
「リンゴ飴が食べたいぜよ」
「あー…確かあっちらへんにあったはず」
「行ってみるナリ!」
子供のようにはしゃぐ仁王を見て私もやれやれと後をついていく。
二人でリンゴ飴を買って、この後どうしようか…と思っていた時、さっそく面倒ごとが起きてしまった。
すれ違った人と肩がぶつかった仁王。すると、その人が持っていたカップの飲み物が彼のセーターにバシャっとかかったのだった。
「…あ、すんません」
飲み物を持っていた奴は気まずそうにそう呟くと人混みに紛れるようにそそくさと居なくなってしまった。
「っ、ちょっと!」
「愛子ちゃん、仕方ないぜよ。俺は大丈夫じゃき」
「…でも、」
コートは前を開けた状態だった為ほぼ無事だったが、そのかわりセーターはビチョビチョで冷たそうだ。
風が吹くと仁王は小さなクシャミをする。これで自転車で帰ったら風邪を引いてしまう…。
「私の家、すぐ近くなの」
「え?」
「それ洗って乾燥してあげるから来なよ」
ーーーー…
と言うわけで、今仁王はウチの居間にあるコタツに入っている。セーターを洗っている間、大きめの上着を貸してやった。
「…はい。お茶」
「ピ、ピヨッ!?」
「なんでそんなに挙動不審なのよ…」
「じゃ、じゃって…女の子の家にお邪魔するなんて…初めてなんじゃよ。は、恥ずかしい…」
ソワソワする仁王に、「別にここ、私の部屋じゃないし」と冷たく言い放つ。昔ながらの和な感じの部屋に何をそんなに照れてるんだ、この阿呆は。
「…それより、お家の方は…」
「ばあちゃんなら今出かけてる」
「親御さんは…」
「いない」
淡々と告げたその言葉に、僅かに沈黙が流れた。
「そうか」
「うん」
「そうじゃ!虎之助はおらんのか?」
「呼んでみようか?」
それ以上何も聞いてこなかった仁王に内心で感謝した。仁王という男はこういう時、案外人の気持ちに敏感で機転が効くと思う。
私が鈴の音を鳴らすと、どこからか「ニャ〜オ」という鳴き声が聞こえてきた。
「虎之助、ご飯だよ」
そう言うと、ひょこっと姿を表した虎之助を見て仁王が関心したように呟いた。
「お利口さんじゃな。ウチのまたたびなんて呼んでも来てくれんぜよ…」
「ふふ。でしょ」
愛猫を褒められて気分が良くなる。虎之助を撫でるとゴロゴロ喉を鳴らした。
「初めてお会いするのう。実物もやはり別嬪さんじゃな」
すると、虎之助は仁王を見てツーンと顔を背けるような仕草をした。
「…まるで最初の頃の愛子ちゃんのようぜよ」
「どう言う意味よ。愛想がないって言いたいの?」
「ち、違うナリ!」
慌てる仁王が面白くてわざとそっぽを向いてみる。すると必死に私のご機嫌取りをしてくる仁王が面白くて暫くそのままでいたのだが、最終的に涙目になってしまったのでやめてやった。
こうして乾燥機がまもなく止まる頃、タイミング悪く玄関が開く音がした。
「愛子?誰か来とるんかぁ〜?」
見慣れない靴に気づいたらしいばあちゃんが居間に入って来た。仁王を見ると目を丸くさせたが、すぐに笑みを浮かべて頭を下げた。
「おや、いらっしゃい。愛子のお友達かね?」
「あ、お邪魔してます…」
「学校の人。ちょっと訳あって服が濡れちゃったから洗ってあげてたの」
「そうか。ごゆっくりして行っておくれ」
その時、タイミング良く乾燥機が止まった音がした。
「いや、もう間もなく帰るから。…仁王、ちょっと待ってて」
私がバタバタ脱衣所に行ったあと、ばあちゃんが仁王に話しかけていたとは…。
「アンタが仁王君か…」
「はあ…」
「愛子が以前よりも生き生きしてるんは、きっと…キミのお陰なんだろうね」
「え?」
「これから先も出来ればあの子の側にいてやっておくれ。今年も愛子をよろしく頼むよ」
「ー…仁王!お待たせ、はいこれあっちで着替えてきて」
「お、おん…。分かったナリ」
仁王はチラッとばあちゃんを見て軽く会釈をすると隣の部屋に消えて行った。
「…ちょっと、アイツに変なこと言ってないでしょうね」
「ハッハッ。何も言ってないよ」
ばあちゃんがこういう笑い方をしている時は本当に何も話してくれないので諦めるしかない。
だから私は仁王が着替え終わるとさっさとヤツを連れて家の外に出た。
「今日はありがとう。一人で帰れる?」
「こちらこそ色々世話になったのう…。大丈夫じゃよ、何となく道は分かる」
「…ばあちゃんに何か言われた?」
「…これからもあの子の側にいてやってくれ…今年もよろしくって」
「っち。全く余計な事言って…あの婆さんは!」
「婆ちゃんに言われてなくとも俺は…俺の意思でずっと愛子ちゃんの側にいたいと思うナリ」
仁王が珍しく真剣な表情を浮かべてそう言った。何故かその眼差しから視線を逸らせなかった。
「…そんなわけじゃから、今年だけじゃなくこれから先も仲良うしていくつもりぜよ」
「…そうですか。まあ、とりあえずまた新学期に」
「おん。またのう」
仁王の背が遠ざかると私は思わず肩の力を抜いた。
…やっぱりアイツは侮れない。あんな台詞を躊躇なく言えるなんて…。それにいつもと雰囲気も違ったし。
詐欺師と言われる由来はこういうところにあるのかも知れない。
「普通の女子なら勘違いしてるぞ…バカ」
私は大丈夫だけど、そうやって勘違いしてきた女子は多数いるのだろう。
火のないところに煙は立たない。それできっと噂に尾鰭がついていったんだ。
「ーーずっと仲良く、か」
何だかんだ言っても、アンタとはずっと仲良くできると思う。
ーー…仁王が一線を超えない限り。