ー友達編ー
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キミと初めての文化祭
この数日、10分休みも昼休みも放課後も調理部の準備に追われ、なんとか大量の販売商品を完成させることが出来た。
そして、本日天気に恵まれた中で海原祭が幕を開けたのだ。
我が調理部が作る様々なお菓子やジャムなどの加工品は生徒や教師を始め外部の方にまで人気があり、毎年長蛇の列が出来るほどの大盛況らしい。
そのかわり調理部の人達は海原祭の二日間はかなり忙しい。基本的には三年生が優先的に自由時間を取るので、私のような下っ端一年はほぼ仕事に追われるみたいだ。(入部前に二年生の先輩が言っていた)
私的には他のクラスの出し物とかにあまり興味がないから別にいいんだけどね。
ーーそんな訳で、実際に一日目は午前は販売、午後は追加のお菓子作りとほぼ休憩時間なく終わってしまった。
流石にヘトヘトとなった私は文化祭終了後、さっさと帰宅して明日に備えて早く眠りについた。
次の日の朝も準備で早くーー…携帯なんて全く見ていなかった。
ーーーー
ーーー
ー…
「一年生〜!!みんな休憩とっていいよ」
海原祭二日目の午後となり、客足がだいぶ少なくなってきた頃、ようやく先輩からお声が掛かり喜ぶ友人達。
「あ、私はいいです。とくに行きたいところも見たいところもないですし」
「如月はホント冷めてるよね〜」
「騒がしいのは苦手なんです」
店番担当の副部長が自ら残った私を見て怪訝そうに言うが、私からすればたかが学生が作ったものでよくもまあ…こんなにも盛り上がれるもんだ。
そんなことを言うと皆んなのお祭気分を害するだろうから言わないけど。
さて、あと数時間働きますか。と思った矢先、「愛子ちゃん!」と聞き覚えのある声がして、思わず振り向くと息を切らした仁王が立っていた。
「え、どうしたの?」
「今…あっちの廊下で会った愛子ちゃんの友達が「やっと一年生も休憩になったよ」と教えてくれたんじゃ…。まだここにいてくれて…よかったあ」
そう言って仁王はヘラッと笑う。わざわざそれで走って来たのか。てか、なんでそんなにホッとしてんだ?
「約束…覚えてるかのう?」
「約束…?」
「お互いに休憩時間が合ったら、一緒に回ろうっていったじゃろ」
「……そうだっけ?」
「ガーン」
そんな約束したような…してないような。訝しげに呟く私に、仁王は「まーくん悲しいナリ」とシクシク泣き真似をする。てか、本当に口で“ガーン”って言うヤツ初めて見たぞ。
「如月!ここは平気だから行きなさい!」
「えー…」
「えー、じゃない!!仁王君を悲しませたらアンタ、明日から部活に来なくていいからね。さあさあ、仁王君。是非この子を連れて行って頂戴!」
「い、いいんか!?」
「勿論よ!」
「(先輩めっ…まさかの仁王推しかよ)」
仁王に熱い眼差しを送っていた副部長が、動かない私をチラッと見て「マジだからね」とドスの利いた声で呟く。この豹変ぶり…私と仁王への態度の違いね。
「……はあ。それじゃ、仕方ないから行こうか」
「おん!!」
エプロンを外した私を見て仁王は嬉しそうに頷く。
とりあえず販売所から少し離れたところに私達は移動した。
「仁王も今休憩時間なんだ」
「…一応昨日愛子ちゃんにメールしたんじゃが…返事が来ないきに、直接会いにきた」
…そういや、何件かメール来てたっけか。
「せ、せ…せっかくじゃき、どこか一緒に見に行かんか?愛子ちゃんが気になるところでいいぜよ」
「うーん…、そうだな…。一つだけ、少し気になる場所があるんだよね。せっかくだしそこにでも行ってみるかな」
ーーーー…
「こ、ここ…って、まままさか」
「うん。お化け屋敷」
【学校の怪談】とおどろおどろしい文字で書かれた看板の前で呆然と立ちすくむ仁王とは対照的に私の頬は緩み声は弾む。
ふむ、見た目はなかなか…。問題は中身だな。
怖いもの好きとしてはやはりお化け屋敷はチェックしとかないと。
「さて、行きますか」
「本当に行くんか!?」
「嫌なら待ってなよ」
「や、やじゃ!愛子ちゃんと一緒がいいナリ!」
「あ、そう。じゃあ、ちゃんとついて来てよ」
ラッキーなことに誰も並んでいなかった為、すぐに入り口に案内された。
そして、中に入ると入り口を覆っていた布が閉じられ、懐中電灯の僅かな光だけとなる。
「く、暗いナリ!?愛、愛子ちゃん…っ」
「はいはい」
私の背後にぴたりとくっついてきた仁王が邪魔だったが、気にせず辺りをキョロキョロ見渡す。
「装飾はまあまあだね。仁王、進むよー」
「……ひぃ」
あまりにも情けない声に思わず笑ってしまいそうになったが、雰囲気が壊れてしまうので我慢。
進んでいくと様々な仕掛けもあり、そのたびに仁王は「ひゃあ!!」「ピヨッー!!?」「ひぃぃい!!」と喧しい。そして、肩を男子の力で掴まれてるからめっちゃ痛いんだけど。
「あ、ここからは懐中電灯を置いていくんだって」
「そ、そんなぁ!!!無理じゃ!!!歩けん…っ」
「…全く。仕方のない男だなぁ」
その場に蹲った仁王から鼻を啜る音が聞こえたので、仕方なく私もしゃがみ込み仁王の手を握った。
「ほら。私が守ってあげるから行くよ。絶対にアンタの手離さないからさ」
「愛、愛子ちゃ……っ」
「私の事、信用出来ない?」
「……できる」
「でしょ。なら、早く行くよ」
私が立ち上がると仁王も一緒に立ち上がる。…改めて大きい手だなと思った。
「……愛子ちゃんの手…やはり小さいのう」
「バカにしてんの?」
「こんなに小さいのに…凄く頼りになる手じゃ…」
「…アンタが頼りないだけでしょ」
部屋は涼しいはずなのに、ぎゅっと握られた手はなんだか熱いくらいだった。
ー…その後、お化け屋敷を出た私達はタピオカジュースを飲みながら目的もなく廊下を歩き、気付けば海原祭の終わりを告げる放送が流れた。
「…もう終いか」
「さて、そろそろ調理部の方に戻らないと」
「俺もテニス部とクラスの片付けせんと…」
「仁王のおかげで思ったよりは楽しめたわ」
「え?」
仁王はきょとんと目を丸くさせて立ち止まる。何だか恥ずかしくなってきたので早口で捲し立てた。
「だから!お化け屋敷もタピオカジュースも思ってたより悪くなかったの!仁王がいなかったら知らないまま終わってた。だから、ありがとう」
ポカーンとする仁王が口を開く前に「じゃあ!またね!」と言って、私はそのまま走り出した。
「お…俺も楽しかったぜよ!!ありがとう!!」
後ろを振り返らなくとも今仁王は笑ってるんだろうなと分かる。だからこそ私は振り返らない。
だって…、薄ら赤く染まった頬なんて死んでもヤツに見られたくないから。
…ちくしょー、柄にもないこと言うんじゃなかった。
この数日、10分休みも昼休みも放課後も調理部の準備に追われ、なんとか大量の販売商品を完成させることが出来た。
そして、本日天気に恵まれた中で海原祭が幕を開けたのだ。
我が調理部が作る様々なお菓子やジャムなどの加工品は生徒や教師を始め外部の方にまで人気があり、毎年長蛇の列が出来るほどの大盛況らしい。
そのかわり調理部の人達は海原祭の二日間はかなり忙しい。基本的には三年生が優先的に自由時間を取るので、私のような下っ端一年はほぼ仕事に追われるみたいだ。(入部前に二年生の先輩が言っていた)
私的には他のクラスの出し物とかにあまり興味がないから別にいいんだけどね。
ーーそんな訳で、実際に一日目は午前は販売、午後は追加のお菓子作りとほぼ休憩時間なく終わってしまった。
流石にヘトヘトとなった私は文化祭終了後、さっさと帰宅して明日に備えて早く眠りについた。
次の日の朝も準備で早くーー…携帯なんて全く見ていなかった。
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「一年生〜!!みんな休憩とっていいよ」
海原祭二日目の午後となり、客足がだいぶ少なくなってきた頃、ようやく先輩からお声が掛かり喜ぶ友人達。
「あ、私はいいです。とくに行きたいところも見たいところもないですし」
「如月はホント冷めてるよね〜」
「騒がしいのは苦手なんです」
店番担当の副部長が自ら残った私を見て怪訝そうに言うが、私からすればたかが学生が作ったものでよくもまあ…こんなにも盛り上がれるもんだ。
そんなことを言うと皆んなのお祭気分を害するだろうから言わないけど。
さて、あと数時間働きますか。と思った矢先、「愛子ちゃん!」と聞き覚えのある声がして、思わず振り向くと息を切らした仁王が立っていた。
「え、どうしたの?」
「今…あっちの廊下で会った愛子ちゃんの友達が「やっと一年生も休憩になったよ」と教えてくれたんじゃ…。まだここにいてくれて…よかったあ」
そう言って仁王はヘラッと笑う。わざわざそれで走って来たのか。てか、なんでそんなにホッとしてんだ?
「約束…覚えてるかのう?」
「約束…?」
「お互いに休憩時間が合ったら、一緒に回ろうっていったじゃろ」
「……そうだっけ?」
「ガーン」
そんな約束したような…してないような。訝しげに呟く私に、仁王は「まーくん悲しいナリ」とシクシク泣き真似をする。てか、本当に口で“ガーン”って言うヤツ初めて見たぞ。
「如月!ここは平気だから行きなさい!」
「えー…」
「えー、じゃない!!仁王君を悲しませたらアンタ、明日から部活に来なくていいからね。さあさあ、仁王君。是非この子を連れて行って頂戴!」
「い、いいんか!?」
「勿論よ!」
「(先輩めっ…まさかの仁王推しかよ)」
仁王に熱い眼差しを送っていた副部長が、動かない私をチラッと見て「マジだからね」とドスの利いた声で呟く。この豹変ぶり…私と仁王への態度の違いね。
「……はあ。それじゃ、仕方ないから行こうか」
「おん!!」
エプロンを外した私を見て仁王は嬉しそうに頷く。
とりあえず販売所から少し離れたところに私達は移動した。
「仁王も今休憩時間なんだ」
「…一応昨日愛子ちゃんにメールしたんじゃが…返事が来ないきに、直接会いにきた」
…そういや、何件かメール来てたっけか。
「せ、せ…せっかくじゃき、どこか一緒に見に行かんか?愛子ちゃんが気になるところでいいぜよ」
「うーん…、そうだな…。一つだけ、少し気になる場所があるんだよね。せっかくだしそこにでも行ってみるかな」
ーーーー…
「こ、ここ…って、まままさか」
「うん。お化け屋敷」
【学校の怪談】とおどろおどろしい文字で書かれた看板の前で呆然と立ちすくむ仁王とは対照的に私の頬は緩み声は弾む。
ふむ、見た目はなかなか…。問題は中身だな。
怖いもの好きとしてはやはりお化け屋敷はチェックしとかないと。
「さて、行きますか」
「本当に行くんか!?」
「嫌なら待ってなよ」
「や、やじゃ!愛子ちゃんと一緒がいいナリ!」
「あ、そう。じゃあ、ちゃんとついて来てよ」
ラッキーなことに誰も並んでいなかった為、すぐに入り口に案内された。
そして、中に入ると入り口を覆っていた布が閉じられ、懐中電灯の僅かな光だけとなる。
「く、暗いナリ!?愛、愛子ちゃん…っ」
「はいはい」
私の背後にぴたりとくっついてきた仁王が邪魔だったが、気にせず辺りをキョロキョロ見渡す。
「装飾はまあまあだね。仁王、進むよー」
「……ひぃ」
あまりにも情けない声に思わず笑ってしまいそうになったが、雰囲気が壊れてしまうので我慢。
進んでいくと様々な仕掛けもあり、そのたびに仁王は「ひゃあ!!」「ピヨッー!!?」「ひぃぃい!!」と喧しい。そして、肩を男子の力で掴まれてるからめっちゃ痛いんだけど。
「あ、ここからは懐中電灯を置いていくんだって」
「そ、そんなぁ!!!無理じゃ!!!歩けん…っ」
「…全く。仕方のない男だなぁ」
その場に蹲った仁王から鼻を啜る音が聞こえたので、仕方なく私もしゃがみ込み仁王の手を握った。
「ほら。私が守ってあげるから行くよ。絶対にアンタの手離さないからさ」
「愛、愛子ちゃ……っ」
「私の事、信用出来ない?」
「……できる」
「でしょ。なら、早く行くよ」
私が立ち上がると仁王も一緒に立ち上がる。…改めて大きい手だなと思った。
「……愛子ちゃんの手…やはり小さいのう」
「バカにしてんの?」
「こんなに小さいのに…凄く頼りになる手じゃ…」
「…アンタが頼りないだけでしょ」
部屋は涼しいはずなのに、ぎゅっと握られた手はなんだか熱いくらいだった。
ー…その後、お化け屋敷を出た私達はタピオカジュースを飲みながら目的もなく廊下を歩き、気付けば海原祭の終わりを告げる放送が流れた。
「…もう終いか」
「さて、そろそろ調理部の方に戻らないと」
「俺もテニス部とクラスの片付けせんと…」
「仁王のおかげで思ったよりは楽しめたわ」
「え?」
仁王はきょとんと目を丸くさせて立ち止まる。何だか恥ずかしくなってきたので早口で捲し立てた。
「だから!お化け屋敷もタピオカジュースも思ってたより悪くなかったの!仁王がいなかったら知らないまま終わってた。だから、ありがとう」
ポカーンとする仁王が口を開く前に「じゃあ!またね!」と言って、私はそのまま走り出した。
「お…俺も楽しかったぜよ!!ありがとう!!」
後ろを振り返らなくとも今仁王は笑ってるんだろうなと分かる。だからこそ私は振り返らない。
だって…、薄ら赤く染まった頬なんて死んでもヤツに見られたくないから。
…ちくしょー、柄にもないこと言うんじゃなかった。