愛するが故に必要なこと
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天竜人が御用達とする奴隷売人の潜伏先で在ろう場所を掴んだ革命軍。
サボ率いる部隊とルビー率いる部隊に分かれて調査を行う中、街中を歩くCP0のロブ・ルッチの姿を偶然見つけてしまったルビー。
同行していたワピチはすぐさま電伝虫でサボに連絡を取った。
「総長…、CP0のメンバーを発見しました」
【CP0がいるってことはアタリだな。…だけど厄介な連中まで居たもんだ…】
「どうしますか?跡をつけますか?」
【いや、今はやめておけ。売人の情報はだいぶ掴んでいる。危険を冒してまで奴等を相手にする必要はない。一旦船に戻れ】
そうしてプツッと切れた電伝虫。
ワピチはルッチを目で追うルビーの方へ顔を向ける。
「…だそうです。ルビーさん一旦船に戻りましょう」
「…相手はまだこっちに気付いてないわ。上手くやれば売人のアジトが分かる」
「い、いけませんよ!後追いは!総長からの命令は…」
「ワピチは船に戻って。私なら大丈夫だから」
「ちょっ!ルビーさん!!」
走り出したルビーは人混みの中へと消えて行き、ワピチはどうしよう…と顔を青ざめさせたのだった。
ーーー
ーー
ー…
ルッチはいくつか路地裏を抜け、人気の無い建物の前に辿り着くとようやく足を止めた。
「おれの後をコソコソ嗅ぎ回っているのは分かってる。姿を表したらどうだ?」
「っ!!?」
ルビーは思わず瞠目したが、相手はCP0だ。
逃げる事は出来ないのなら闘うしかないと、背を向けたままでいるルッチの前に姿を表した。
「よく気付いたわね…」
「革命軍があの人攫いヤローを追っているという情報を我々も入手していた。どうでも良い男だが、あいつは天竜人の御用達だ」
「…だからこそ、目を瞑るわけにはいかない」
「目障りな革命軍をここで潰しておくのも悪くはない」
振り返ったルッチはルビーを見るとニヤリと笑った。
「しかし…その容姿に物珍しい髪色を持つお前なら天竜人の良質な奴隷となりうるだろう。あの、バーソロミュー・くまみてェに」
ルビーは眉を顰めてルッチを睨み付ける。
「…貴方から色々と情報を聞き出せば、くまを救うことも出来るかも知れない」
「面白いことを言う女だな」
「“フィールドオブビジョン”【ストップ:タイム】」
「…これで一体どうするつもりだ?」
「うちの参謀総長が現れるまで貴方をここに止めておく。一応話は出来る様にしておいたから情報を喋る気になったらどうぞ」
「呆れたもんだ…。背後ががら空きだぜェ」
ルッチがそう呟いた瞬間、ルビーの背後にカクが音もなく現れた。
「嵐脚“白雷”!!」
「っ!?」
ルビーがいたはずの地面は物凄い音を立てて崩れる。
瞬時に距離を取ったルビーを見てカクは意外だと言いたげな表情を浮かべた。
「なんじゃ…まさか避けられるとは。一応革命軍No.3といった肩書きだけの腕前はあるようじゃな」
「さて、この状況をどう打破するのか実物だな」
「……一筋縄じゃいかない…か」
ーー右にはルッチ、左にはカク、背後に逃げ道はなし。
ルビーは不敵な笑みを浮かべたが、その額にはじわりと汗が滲んだのだった。
ーー…
悪魔の実の能力を使ったカクやルッチの攻撃を往なしながら魚人空手で太刀打ちするが、今一つルッチに決定的な打撃をくらわす事が出来ない。
「…フゥ。なかなかやるのぉ」
「そろそろ仕上げるぞ」
「(…まずい!!)」
一人だけ涼しい顔でいたルッチの口角が上がったのを見た瞬間、直感がそう告げた。
そして…、それは最悪な形としてルビーに降りかかる。
「遊びはお終いだ」
「あっ…!」
瞬時に背後に現れたルッチに腕を取られると、海楼石の手錠を掛けられてしまい体の力が抜けた。
そして隙に付け込まれあっさり首元に手刀を打ちこまれてしまった。
ルッチは気を失い地面に倒れ込んだルビーを抱えようと手を伸ばしたが、何かを察知した途端サッと背後に向かって勢い良く飛び退いた。
「ーー“火拳”!!!」
ルッチが先程までいた場所には凄まじい火柱が立つ。
「フッ、来たか…」
ルビーを守るように立ちはだかるサボを見てルッチはニヤリと笑った。
「…ルビー」
チラッと背後を振り返ると、遅れて姿を現したワピチが倒れているルビーを抱き起こそうとしていた。
意識がなくぐったりしているルビーの様子にサボはギロリとルッチを睨み付ける。
「お前だけは許さねェ…!!」
「丁度良い。あの時の決着でもつけるか」
一触即発、ルッチとサボが構えたその時ー…、カクの電伝虫が鳴り響いたのだ。
「…はい。ーーーー…ー…了解。…ルッチ、今すぐに戻ってこいじゃと」
「…っち。仕方ねェ…あの女はまたの機会にするとしよう」
「…次会った時がお前との最後だ。ルビーは絶対に渡さねェ!!」
ルッチはサボの台詞を受け無言のまま口角を上げると、くるっと背を向けて歩き出した。
「あ、そうじゃ。コレを渡しておかんと」
そう言ってカクはサボに海楼石の手錠の鍵を投げると、ルッチと共に姿を消したのだった。
ーーー
ーー
ー…
「………ん」
「ルビー!?…もう…っ、心配したんだから!」
「…コアラ……」
ベッドの上で目を覚ましたルビーはゆっくりと起き上がる。
「私……一体…」
「また何か無茶したんでしょ。サボ君がぐったりしたルビーを連れて帰って来た時は本当に驚いたわ」
「…サボは…?」
「サボ君なら会議室じゃないかな」
「…ありがとう…コアラ」
足を床に着けるとまだ若干身体の力が抜けたような感覚はあったが何とか立ち上がることが出来たルビーは、コアラと共に会議室へと向かった。
会議室を開くと中にはサボの他にも今回の任務に参加する同志達の姿もあった。
「ルビーさん!!目を覚ましたんですね!!」
「ワピチ…。サボに伝えてくれたのね。ありがとう」
「全く…。もしボクが総長に伝えていなかったらどうするつもりだったんですか?」
「あはは…ごめんなさい」
「後先考えずに勝手な行動をするのはサボくんだけで十分よ」
肩を竦めるコアラに全くだと言わんばかりに周りから笑いが巻き起こる。
その時、がたりと椅子を引く音を響かせずっと椅子に腰掛けていたサボが立ち上がったのだ。
「あ…サボ。CP0から情報を聞き出せなくてごめんなさい。せっかくのチャンスだったのに」
「…………」
「サボ?」
返答がないことを不思議に思ったが、帽子を深く被っているせいで彼の表情は窺えなかった。
そしてつかつか歩み寄ってきたサボが目の前で立ち止まったかと思うと、何も告げられず唐突に頬を叩かれたのだった。
パシンー…と乾いた音が聞こえると、笑っていた者達は皆驚愕しあたりは静寂に包まれる。
ルビー自身も何が起こったのか理解出来なかった。
「サ…ボ…?」
「どうしておれの言うことを聞かなかった」
「え……?」
「どうして奴等の後を追ったりしたんだ!!」
語気を荒げて声を張り上げるサボに場が凍りつく。
「……ちょ、ちょっとサボ君!女の子の頬を叩くなんて…一体どういうつもりよ!」
「コアラは黙っててくれ」
「ルビーが後先考えずに無茶をするなんて…今に始まったことじゃないでしょ?心配だったのは分かるけど、だからって…!」
「そんなことはおれが一番よく知ってる。だがこそ今回の件は参謀総長としてけじめを付けないとならねェ」
サボはそう言って唖然としているルビーの瞳を見据えた。
「お前のことだ。おれを信用して一人で突っ走ったんだろう」
「だって…、一刻も早く奴隷となった人々を救うにはこのチャンスを逃したくなかった!だから私が後を追えばワピチがサボに連絡をとると思って…」
「おれが来なかったらどうするつもりだったんだ?それにワピチがお前の後を追うかも知れないとは考えなかったのか」
「…え?」
「お前の考えなしの行動により自分だけでなく仲間も危険に晒すところだったんだぞ!それだけじゃなく、今回の騒ぎに乗じて売人は行方をくらましただろうな」
ようやくことの重大さに気付いたルビーは言葉を失った。
「革命軍No.3として…部隊の上に立つ幹部として…もっとよく考えろ。お前が命令を聞かなかったことによって他の奴らの苦労が水の泡だ」
「総長…!そんな言い方をしなくても!」
「お前は一人で戦ってるわけじゃないんだぞ」
サボはルビーと自分の間に入り込んできたワピチ越しにルビーに言葉を投げ掛ける。
「どんな状況でもお前に着いて行こうとする部下がいるって事を忘れるな。実際ワピチは船へ戻らず、ルビーの事を心配するあまりCP0に恐れることなく…お前の救出に向かったんだ」
「ワピチが…?」
「確かにルビーさんの行動は無茶だったと思います。でも世の為に恐れることなく敵地に乗り込み、一人で戦ったルビーさんは勇敢だったと思います!」
「【恐れない】ことがいつでも良い訳じゃねェ。時に勇敢さは無謀さへと変わる事もある」
「……どういうことですか?」
「相手の力量をよく考えろってことだよ。CP0のメンバーが何人いるかも分からない状況で…明らかにこっちの分が悪かったろ。それに奴等とやり合うには今はまだ時期じゃねェ。確実な勝ち目がないなら時には逃げることも必要だ」
「………」
「…果敢な行動は大事だが…、それで死んじまったら元も子もねェだろ」
ルビーはサボの言葉を受け、自分のせいでワピチだけでなく他の仲間達まで死んでしまっていた可能性があったことを思うと、なんて軽はずみな行動をしてしまったんだ…とようやく後悔の念に駆られたのだ。
「ワピチ…コアラ…みんな…、ごめんなさい。私が勝手な行動をしたばかりに……ッ」
「おれからもルビーがすまなかった。…このままバルティゴへ帰還する。この件はあとでしっかりとドラゴンさんに報告をしておく」
サボとルビーに頭を下げられコアラやワピチ、他の同志達は戸惑ったが、先程のサボの言葉によりルビーの行動がどれほど危険だったかを思い知らされた為何も言えなかったのだ。
ーー革命軍を率いる参謀総長の威厳を改めて思い知らされたのであった。
ーー…
他の者達は出て行き、会議室にはサボとルビーの二人だけとなった。
「ルビー……」
伸ばされた手を見てビクッと肩を揺らすルビーに、サボは目を伏せると腕を元の位置へと戻した。
「……痛かったか?」
「………うん」
「…悪るかった。つい感情を抑えられなくて…。だけど、おれが言った事をよく考えて欲しいんだ」
「分かってるよ…。これからは仲間を危険に晒すような勝手な真似はしない」
「違う!それもそうなんだが…、肝心な事を分かってない。…ルビーはもっと…自分の事を大事にしてくれよ」
「自分のこと…?」
「そうだ。あの時…タイミング良くおれが現れていなかったらルビーはあの男に連れ去られていた。最悪の結果…殺されていたかも知れない」
サボはあの時の慄然とした気持ちを思い出す。
「電伝虫で連絡を受けてから生きた心地がしなかった。ルビーを失っていたかも知れないと思うだけで…今も手の震えが止まらない」
「サボ……」
ーーもし立場が逆だったとしたら。
そうやって考えると何て愚かな行動をしたのだろうとようやくサボの気持ちを理解出来たのだ。
胸が張り裂けそうな思いを感じたルビーは、サボの僅に震える拳を自身の手でそっと包み込んだ。
「…本当に…ごめんなさい。痛かったのはサボの心の方だよね」
「…ルビーに万が一のことがあればおれは勿論、大勢の人が悲しむってことを忘れないで欲しい」
「分かった…」
「これからは一人で無謀な無茶をするのはやめてくれ。一人では成し遂げられないことも仲間がいればなんとか出来ることだってあるんだ。ルビーの為ならみんな力になってくれる。………なァ、そうだろ?」
「…あは。やっぱりバレてたよね」
すると閉じた扉の奥からコアラの声が聞こえ、扉が開くと先程出て行った筈のメンバーが全員そこにいたのだ。
「コアラ!それにワピチやみんなまで…。どうして…」
「ルビーのことが心配だったのよ。…でも結局、ルビーを一番心配していたのはサボ君だったようね」
「ルビーさん!総長の言う通り、次からはおれのことをもっと頼って下さい!力にはなれなくても一緒に考えることは出来ますから!」
「コアラ…ワピチ…」
「今回の件はルビーさんの所為ではありませんよ!」
「そもそもCP0が嗅ぎ付けていたんじゃ仕方ねェさ」
「ルビーが大人しくしていたところで結果は同じだった筈だァ」
「俺たちこそルビーさんの危険を考えずいつも無理をさせてすみませんでした…」
「…そうだな。知らず知らずのうちにルビーなら何とかしてくれると、目に見えない負担をかけていたのかも知れない。申し訳なかった」
「ハック…それにみんな……」
「お前はこんなにも皆んなから愛されるってことがよく分かっただろ」
「うん!!」
ルビーは破顔するとサボの首元に飛び付いたのだった。
ーーサボの為にも仲間の為にも心配されない程もっと強く、もっと大人にならなきゃ。
こうしてルビーは人知れず能力に磨きをかける修行を積むのであったー…。
end