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「ねえ、どこにいくの」
「………千尋か」
私の声に、屋敷の扉に向かう足が止まった。銀色の頭がゆっくりとこちらを向く。目が合った相手の顔に表情は無かった。
夜中、急に目が覚めた私は、あてもなくふらふらと屋敷の中を歩いていた。私が今いるのは今いる地域の領主が遺した無人の館で、攘夷戦争が終わった今あてもなく放浪している私と銀時が滞在している。
松陽先生は死んで、廃刀令が出た。目的を失った私達にもはや真剣を握る意味など無くなってしまった。桂と高杉と袂を分かったのは三ヶ月ほど前。戦争ばかりで恋人らしい甘いことなどあまり無かったに等しいとはいえ、幼馴染であり恋人である銀時と共にいるのは当然のように思えたから勝手についてきて一緒にいるが、銀時の方がどう思ってるかは知らない。
それでも一緒にいてくれるのだから、隣にいていいのだとばかり思ったいたのだが、今の行動を見るにどうやら違うらしい。
「………すまねぇ、言えねぇわ」
「なんで謝るの。謝ることしたの」
「…俺は今、お前を置いていこうとしてる」
「そうだね」
「…責めないのか、なんで置いていこうとするんだって」
その言葉に私は少しばかり頭を巡らせた。
曲がりなりにも恋人。好いているのは当然だ。私は銀時が好きだし、一緒にいたい、手を繋ぎたい、一緒にお布団で寝たい。当然の欲求としてある。だから、責めないのはおかしいのかもしれない。
私は元々他人の行動に興味の薄い人間だ。だから、恋人であろうとも銀時がどこへ行っても構わないのかもしれない。それはただ単に銀時がどうでもいいって訳じゃなくて、そんなのではなくて、
「きっと絶対にまた会えるから」
「……はあ?」
銀時は呆気に取られたような顔をしている。だいぶ間抜け面かもしれない。ちょっと面白い。
「銀時は私のこと好きでしょ」
「…ああ。それは変わりゃしねぇよ」
「だと思った。あんた私にベタ惚れだもんね」
「………うっせぇ」
さっきまでの静かな雰囲気はどこへやら。銀時はちょっと赤くなっている。
「私もそうだよ。私も銀時が好き。
だから、離れているのがきっと我慢できなくなって、お互い探しあってまた会える」
「…千尋」
「大丈夫。銀時がどうしたいのか、銀時が何を思っているのか、全部はわからないけど、何となくわかってる。だから、銀時を止めない」
精一杯の笑顔でそう告げる。大丈夫、絶対に。そう思わせるだけの笑みを浮かべる。
きっと彼は、私の為にどこかへ行くから。
攘夷戦争が終わった今、銀時は伝攘夷志士【白夜叉】として指名手配を受けているに違いない。私の方は銀時達とは違って拠点中心に活動していたから、天人を斬ったとはいえ目立つ動きはしていない。でも、銀時といれば万が一の時とばっちりを受けることは間違いない。
別に私も弱くはない。銀時と背中を預けあって戦うことだって出来る。同じ人間を斬るのだってしたことが無いわけじゃないのだ。
それでも、銀時は私と離れることを選んだ。
「寂しいけど、また会えるから。大丈夫。
…ね、ぎゅってしてよ」
ん、と手を広げると、銀時はこちらに寄ってきて私の身体を強く抱き締めた。
銀時の匂い。私より一回りも二回りも大きくて、私を包み込んでくれている。守るべきものだと思ってくれている。それがわかる。それだけで十分だった。
「…ごめんなぁ、俺ぁ、」
「銀時は私のことになるとビビりになるんだから、しょうがないね」
「てめ…このやろ…」
「私のこと思ってくれてるんでしょ。大好きだよ」
「なんか、さっきから俺不甲斐なさすぎじゃね?」
俺だって大好きだ、なんて私をもっと強く抱きしめる。肩口に顔を押し付けて、項垂れた子供のようだ。なんだか愛しい。
「…ほら、夜が明けちゃうよ。早く行きなよ」
「ああ。…黙っていこうとして、すまねぇ」
「あはは、それは割と許さないけどね。殴っていい?」
「暴力反対!!」
叫びながらも銀時はそっと私を離した。じっと見つめてくる顔が別れを象徴しているようで少し辛い。でも、私が言った手前いつか必ず再会する。そう決めたのだ。
突然、銀時の顔が近づいてくる。突然過ぎて何も反応出来ずに唇に触れるだけのキスを落とされた。唇が離れたあと、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
「ほんと、お前みたいな女が俺の女で良かったわ。今までずっとありがとさん。
絶対探しに行くから、気長に待ってろ」
その後額にも一回落とされて、呆気に取られているうちに銀時はふっと笑ってじゃあな、なんて言って扉から出ていってしまった。
なんなんだ、あれ。そんなこといわれたことない。
言っただろう。私達の間には今まで甘さなんて無かったんだ。
みるみる顔が熱くなってきて、別れの言葉とかそんなのも吹っ飛んでしまって、私はその場で真っ赤な顔を隠すように蹲った。
「………銀時の、バカ野郎ぉ……」
その後、かぶき町でばったり再会した二人が殴り合いの喧嘩をしたあと同居し始めるのは、まだ未来の話。
(探しに来るって言ったじゃん!!)
(しゃーねーだろ忙しかったんだよ!家賃とか家賃とか!)
(………このバカ銀時ーーー!!!)
Title:秋空
「………千尋か」
私の声に、屋敷の扉に向かう足が止まった。銀色の頭がゆっくりとこちらを向く。目が合った相手の顔に表情は無かった。
夜中、急に目が覚めた私は、あてもなくふらふらと屋敷の中を歩いていた。私が今いるのは今いる地域の領主が遺した無人の館で、攘夷戦争が終わった今あてもなく放浪している私と銀時が滞在している。
松陽先生は死んで、廃刀令が出た。目的を失った私達にもはや真剣を握る意味など無くなってしまった。桂と高杉と袂を分かったのは三ヶ月ほど前。戦争ばかりで恋人らしい甘いことなどあまり無かったに等しいとはいえ、幼馴染であり恋人である銀時と共にいるのは当然のように思えたから勝手についてきて一緒にいるが、銀時の方がどう思ってるかは知らない。
それでも一緒にいてくれるのだから、隣にいていいのだとばかり思ったいたのだが、今の行動を見るにどうやら違うらしい。
「………すまねぇ、言えねぇわ」
「なんで謝るの。謝ることしたの」
「…俺は今、お前を置いていこうとしてる」
「そうだね」
「…責めないのか、なんで置いていこうとするんだって」
その言葉に私は少しばかり頭を巡らせた。
曲がりなりにも恋人。好いているのは当然だ。私は銀時が好きだし、一緒にいたい、手を繋ぎたい、一緒にお布団で寝たい。当然の欲求としてある。だから、責めないのはおかしいのかもしれない。
私は元々他人の行動に興味の薄い人間だ。だから、恋人であろうとも銀時がどこへ行っても構わないのかもしれない。それはただ単に銀時がどうでもいいって訳じゃなくて、そんなのではなくて、
「きっと絶対にまた会えるから」
「……はあ?」
銀時は呆気に取られたような顔をしている。だいぶ間抜け面かもしれない。ちょっと面白い。
「銀時は私のこと好きでしょ」
「…ああ。それは変わりゃしねぇよ」
「だと思った。あんた私にベタ惚れだもんね」
「………うっせぇ」
さっきまでの静かな雰囲気はどこへやら。銀時はちょっと赤くなっている。
「私もそうだよ。私も銀時が好き。
だから、離れているのがきっと我慢できなくなって、お互い探しあってまた会える」
「…千尋」
「大丈夫。銀時がどうしたいのか、銀時が何を思っているのか、全部はわからないけど、何となくわかってる。だから、銀時を止めない」
精一杯の笑顔でそう告げる。大丈夫、絶対に。そう思わせるだけの笑みを浮かべる。
きっと彼は、私の為にどこかへ行くから。
攘夷戦争が終わった今、銀時は伝攘夷志士【白夜叉】として指名手配を受けているに違いない。私の方は銀時達とは違って拠点中心に活動していたから、天人を斬ったとはいえ目立つ動きはしていない。でも、銀時といれば万が一の時とばっちりを受けることは間違いない。
別に私も弱くはない。銀時と背中を預けあって戦うことだって出来る。同じ人間を斬るのだってしたことが無いわけじゃないのだ。
それでも、銀時は私と離れることを選んだ。
「寂しいけど、また会えるから。大丈夫。
…ね、ぎゅってしてよ」
ん、と手を広げると、銀時はこちらに寄ってきて私の身体を強く抱き締めた。
銀時の匂い。私より一回りも二回りも大きくて、私を包み込んでくれている。守るべきものだと思ってくれている。それがわかる。それだけで十分だった。
「…ごめんなぁ、俺ぁ、」
「銀時は私のことになるとビビりになるんだから、しょうがないね」
「てめ…このやろ…」
「私のこと思ってくれてるんでしょ。大好きだよ」
「なんか、さっきから俺不甲斐なさすぎじゃね?」
俺だって大好きだ、なんて私をもっと強く抱きしめる。肩口に顔を押し付けて、項垂れた子供のようだ。なんだか愛しい。
「…ほら、夜が明けちゃうよ。早く行きなよ」
「ああ。…黙っていこうとして、すまねぇ」
「あはは、それは割と許さないけどね。殴っていい?」
「暴力反対!!」
叫びながらも銀時はそっと私を離した。じっと見つめてくる顔が別れを象徴しているようで少し辛い。でも、私が言った手前いつか必ず再会する。そう決めたのだ。
突然、銀時の顔が近づいてくる。突然過ぎて何も反応出来ずに唇に触れるだけのキスを落とされた。唇が離れたあと、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
「ほんと、お前みたいな女が俺の女で良かったわ。今までずっとありがとさん。
絶対探しに行くから、気長に待ってろ」
その後額にも一回落とされて、呆気に取られているうちに銀時はふっと笑ってじゃあな、なんて言って扉から出ていってしまった。
なんなんだ、あれ。そんなこといわれたことない。
言っただろう。私達の間には今まで甘さなんて無かったんだ。
みるみる顔が熱くなってきて、別れの言葉とかそんなのも吹っ飛んでしまって、私はその場で真っ赤な顔を隠すように蹲った。
「………銀時の、バカ野郎ぉ……」
その後、かぶき町でばったり再会した二人が殴り合いの喧嘩をしたあと同居し始めるのは、まだ未来の話。
(探しに来るって言ったじゃん!!)
(しゃーねーだろ忙しかったんだよ!家賃とか家賃とか!)
(………このバカ銀時ーーー!!!)
Title:秋空
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