このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

【BL】SS集「僕と、君と、少しの小話。」

店を出ると、ぽつ、ぽつ、と水滴が頬をかすめる。
今日は家を出る前に天気予報を見損ねた。なぜかテレビが付かなくなっていたのだ。朝はバタバタしていてテレビの復旧も帰ってからでいいやと思い、その上テレビの代わりにスマホで天気予報を確認することも忘れそのまま出てきてしまったのだ。おかげで折り畳み傘も持ち合わせていない。
仕方がないので今日は濡れて帰るか、と覚悟を決めて一歩踏み出した。
その時―

「やっぱり、こんなことだろうと思いました」

傘を差した君が目の前に現れた。
傘、持ってきてくれたんだな。

「あ、傘は今さしてるこれだけです」

え?

「入ってください。帰りますよ」

なるほど。これはとんでもない策士だな。
してやられた悔しさとこの歳になって男と一緒に相合傘などという恥ずかしさが入り交じり、濡れてもいいから走り出したい気持ちになる。

「はーやーく、帰りましょ」

流石にそんな顔をされたら入るしかなくなるだろうが。
男二人が入るには小さすぎる傘。結局僕の左肩は雨に濡れている。
6/9ページ
スキ