このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

女体化

初めに認識したのは体温だった。次に匂い。汗の匂いと妙に安心感を覚える香り。ふ、と日向が瞼を開けると、飛び込んできたのは薄明かりに浮かぶ肌の色だった。
「起きた?」
上から声が聞こえる。ゆったりと顔を上げるとこちらを見る狛枝と視線が交わった。
こまえだ。彼の名を呟こうとして、日向は自身の声が酷く掠れていることに気付く。音にならなかった言葉が、吐息となり空へ溶ける。
「声、掠れてるね……。身体は?痛いところある?」
日向の背に回されていた狛枝の左手に力が入る。密着していた身体が更にその距離を詰め、日向の柔らかな胸がむにゅんと変形した。違和感を感じ視線を落として、日向はギョッと目を剥く。服を着ていない。ついでに、狛枝も。
どうして、と疑問を抱く前に日向は自分が寝ていた……正しくは気絶していた理由を思い出した。余計なことに、つい数刻前の自身の痴態も思い出してしまう。
ドッと勢いよく全身に血が回る。顔を中心に上がる体温。日向はそれを隠したくて狛枝の腕の中で弱々しく踠くが、それを許す狛枝ではない。
「……やだよ」
日向の心情なんてお見通しだ。そう言わんばかりに狛枝が言葉を紡ぎ、日向の髪に鼻を寄せる。
間近で聞こえる呼吸音。額に落とされる暖かい唇の感触。日向が起きるまで携帯端末を弄っていた右手はとうとうそれを放り投げ、日向の身体をすっぽりと覆った。
「……いいからさ、黙って抱かれてなって」

あぁどうしよう。私の心臓はもうダメかもしれない。
1/3ページ
スキ