特殊設定
「しゃぶっていいよ」
そう言って眼前に突きつけられた指先からは、これでもかというくらい甘い匂いを発していて、いつの間にか口内に溢れた唾液を日向はごくりと飲み込んだ。
「ほら、どうしたの?」
指を見つめたまま微動だにしない日向に、狛枝は口元を三日月の形にして、日向の唇をなぞった。
「……っ」
微かに開いた口から吐息が漏れた。ばくばくと煩く鳴り響く心音を抑えるかのように、シャツを強く握り締める。平然としなくては、落ち着かなくては。脳裏に浮かび上がる”予備犯罪者”の言葉が、日向の崩れかけの理性をなんとか保ってくれている。そう、落ち着いて、舐めて、少しだけ味わうだけ。それだけのことだ。
「……ねぇ、垂れてるよ」
狛枝の言葉を理解するより先に、狛枝の指先が、日向の口から溢れた唾液を掬い取り、そして、指先と共にそれを口内へ戻し入れた。途端、広がる”未知の快楽”に日向の身体が打ち震えた。今まで感じることができなかった味。それは、日向にとってあまりにも凶暴すぎる快楽だった。舌で舐めあげ、吸い付いて、口全体を使って与えられた快楽を貪る。頭がクラクラし、もう何も考えられない。ただただ口に広がる甘味を、永遠に感じていたい。
「っ、噛んじゃ駄目って、ボク言ったよね?」
「っ……!……ぁ……ふ……っ」
突然、狛枝の指が舌を掴みあげ、ハッと我にかえる。ぼやけた視界を瞬きで治し、狛枝の方へ視線をやると狛枝は口元だけでにこりと笑った。
「……いい子だね、日向クンは」
くぽ、と音を立て、唾液を滴らせながらゆっくりと狛枝の指が引き抜かれていく。その様子を熱の孕んだ瞳で見つめていると、狛枝の指はそのまま狛枝の口元へ運ばれていった。
「ボクも日向クンの味を知りたくなっちゃった」
歪んだ口元から、真っ赤な舌がちろりと覗き、日向の唾液が狛枝の舌に舐め取られていく。扇情的なその光景に、腹の底からゾクゾクと熱い何かが這い上がってくるのを感じる。無意識に呼吸を荒げていた日向を、狛枝は目を細めながら見つめ、それから日向の方へ手を伸ばした。
「……ねぇ、もっと欲しいでしょ?ボクも、キミが欲しいんだ」
伸ばされた手を取る。招かれた狛枝の腕の中で、縋るように狛枝の唇を見つめれば、狛枝と視線が交わった。
はふ、と熱い吐息を漏らしたのは、一体どっちだったのだろう。互いから目を逸らさず、そのまま、吸い込まれるかのように唇を重ねる。狛枝の唇が吃驚するほど柔らかくて、日向は上唇と下唇を使って、何度もその柔らかさを堪能する。
「んっ……んん……」
唇を柔く、何度も何度も噛み付いていると、ふいに日向の口先に唇の感触とは違う、別の柔らかいものが当たった。驚き、薄く開けた瞳が、狛枝の灰色の瞳を捉える。
「舌、出して」
吐息の間に呟かれた言葉に従い、ぱかりと開けた口から舌を出すと、やがて、たっぷりと蜜を纏わせた狛枝の舌が日向のそれに重ねられた。
「っ……!!」
舌に広がる、狛枝の味。甘い、甘い、甘い味。舌が、身体が、びくびくと震える。
「っ……ん、んんっ……!」
堪らず、狛枝の舌に吸い付き、滴る蜜を舐める。とろりとした液体は日向の口内で日向の唾液を混ざり合い、喉奥へ消えていった。なんて甘美で、幸せなひと時なのだろうか。
「っ、は、ストップ」
ぐいと頭を引っ張られ、日向はまたしても自分が我を失っていたことに気付いた。離れた唇を改めて見れば、狛枝はひっきりなしに呼吸を繰り返し、端から溢れた唾液を拭っていた。
その行為さえも、日向は釘付けになってしまう。あぁ、ダメだ。わかっているはずなのに、自分が止められない。もっと、もっと味あわせてほしい。
「あは、日向クン、また垂れてるよ」
呼吸を整えた狛枝が、日向の口元に手を伸ばす。掬い取った唾液は、今度は日向の口に戻さなかった。
「……そんな物欲しそうな目して、ボク、そんなに美味しかったの?」
首を傾げそう問いかける狛枝に、日向はこくこくと何度も頷くことしかできなかった。
「あはっ、嬉しいなぁ!大好きな日向クンにそう思ってもらえるなんて……きっと、今までの不運はこの幸運の布石だったんだね」
自身の肩を抱き、そう恍惚と言葉を並べた後、ふいに狛枝の指が日向の頬を撫でた。
「ねぇ、日向クン、この先、ずっとずっとずっと、キミを喜ばせてあげる。キミに、極上の快楽を与え続けてあげる」
耳元で甘く囁かれた言葉が、腰に回された手が、日向の全てを支配していく。
「ボクを全部、キミにあげる……だから、」
キミの全部をボクにちょうだい。
どこまでも、どこまでも甘いその言葉が、日向の身体に溶け込んでいく。まるで甘い蜜の中へ溺れ沈んでいくような感覚に浸りながら、日向は狛枝に身を委ねた。
そう言って眼前に突きつけられた指先からは、これでもかというくらい甘い匂いを発していて、いつの間にか口内に溢れた唾液を日向はごくりと飲み込んだ。
「ほら、どうしたの?」
指を見つめたまま微動だにしない日向に、狛枝は口元を三日月の形にして、日向の唇をなぞった。
「……っ」
微かに開いた口から吐息が漏れた。ばくばくと煩く鳴り響く心音を抑えるかのように、シャツを強く握り締める。平然としなくては、落ち着かなくては。脳裏に浮かび上がる”予備犯罪者”の言葉が、日向の崩れかけの理性をなんとか保ってくれている。そう、落ち着いて、舐めて、少しだけ味わうだけ。それだけのことだ。
「……ねぇ、垂れてるよ」
狛枝の言葉を理解するより先に、狛枝の指先が、日向の口から溢れた唾液を掬い取り、そして、指先と共にそれを口内へ戻し入れた。途端、広がる”未知の快楽”に日向の身体が打ち震えた。今まで感じることができなかった味。それは、日向にとってあまりにも凶暴すぎる快楽だった。舌で舐めあげ、吸い付いて、口全体を使って与えられた快楽を貪る。頭がクラクラし、もう何も考えられない。ただただ口に広がる甘味を、永遠に感じていたい。
「っ、噛んじゃ駄目って、ボク言ったよね?」
「っ……!……ぁ……ふ……っ」
突然、狛枝の指が舌を掴みあげ、ハッと我にかえる。ぼやけた視界を瞬きで治し、狛枝の方へ視線をやると狛枝は口元だけでにこりと笑った。
「……いい子だね、日向クンは」
くぽ、と音を立て、唾液を滴らせながらゆっくりと狛枝の指が引き抜かれていく。その様子を熱の孕んだ瞳で見つめていると、狛枝の指はそのまま狛枝の口元へ運ばれていった。
「ボクも日向クンの味を知りたくなっちゃった」
歪んだ口元から、真っ赤な舌がちろりと覗き、日向の唾液が狛枝の舌に舐め取られていく。扇情的なその光景に、腹の底からゾクゾクと熱い何かが這い上がってくるのを感じる。無意識に呼吸を荒げていた日向を、狛枝は目を細めながら見つめ、それから日向の方へ手を伸ばした。
「……ねぇ、もっと欲しいでしょ?ボクも、キミが欲しいんだ」
伸ばされた手を取る。招かれた狛枝の腕の中で、縋るように狛枝の唇を見つめれば、狛枝と視線が交わった。
はふ、と熱い吐息を漏らしたのは、一体どっちだったのだろう。互いから目を逸らさず、そのまま、吸い込まれるかのように唇を重ねる。狛枝の唇が吃驚するほど柔らかくて、日向は上唇と下唇を使って、何度もその柔らかさを堪能する。
「んっ……んん……」
唇を柔く、何度も何度も噛み付いていると、ふいに日向の口先に唇の感触とは違う、別の柔らかいものが当たった。驚き、薄く開けた瞳が、狛枝の灰色の瞳を捉える。
「舌、出して」
吐息の間に呟かれた言葉に従い、ぱかりと開けた口から舌を出すと、やがて、たっぷりと蜜を纏わせた狛枝の舌が日向のそれに重ねられた。
「っ……!!」
舌に広がる、狛枝の味。甘い、甘い、甘い味。舌が、身体が、びくびくと震える。
「っ……ん、んんっ……!」
堪らず、狛枝の舌に吸い付き、滴る蜜を舐める。とろりとした液体は日向の口内で日向の唾液を混ざり合い、喉奥へ消えていった。なんて甘美で、幸せなひと時なのだろうか。
「っ、は、ストップ」
ぐいと頭を引っ張られ、日向はまたしても自分が我を失っていたことに気付いた。離れた唇を改めて見れば、狛枝はひっきりなしに呼吸を繰り返し、端から溢れた唾液を拭っていた。
その行為さえも、日向は釘付けになってしまう。あぁ、ダメだ。わかっているはずなのに、自分が止められない。もっと、もっと味あわせてほしい。
「あは、日向クン、また垂れてるよ」
呼吸を整えた狛枝が、日向の口元に手を伸ばす。掬い取った唾液は、今度は日向の口に戻さなかった。
「……そんな物欲しそうな目して、ボク、そんなに美味しかったの?」
首を傾げそう問いかける狛枝に、日向はこくこくと何度も頷くことしかできなかった。
「あはっ、嬉しいなぁ!大好きな日向クンにそう思ってもらえるなんて……きっと、今までの不運はこの幸運の布石だったんだね」
自身の肩を抱き、そう恍惚と言葉を並べた後、ふいに狛枝の指が日向の頬を撫でた。
「ねぇ、日向クン、この先、ずっとずっとずっと、キミを喜ばせてあげる。キミに、極上の快楽を与え続けてあげる」
耳元で甘く囁かれた言葉が、腰に回された手が、日向の全てを支配していく。
「ボクを全部、キミにあげる……だから、」
キミの全部をボクにちょうだい。
どこまでも、どこまでも甘いその言葉が、日向の身体に溶け込んでいく。まるで甘い蜜の中へ溺れ沈んでいくような感覚に浸りながら、日向は狛枝に身を委ねた。