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※本予備

- 不純同性交友 -
「そこの男子学生ぃ!シャツは第二ボタンまできっちり締めろ!校則違反だぞ!」
日向の後ろで怒鳴り声がした。首だけで振り返ると、校門の前で体育教師に捕まった男子生徒を三名、日向の瞳が捉える。止められた男子生徒は皆揃って、シャツのボタンを留めているところだった。
あぁ、今日は抜き打ち検査の日だったのか。
光景をぼんやりと眺めて、無関心ながらも日向は感想を抱く。
何でもありな本科とは違い、日向の通う予備学科には様々な規則が存在した。化粧の禁止、香料付き頭髪剤の禁止、過度すぎる服装の乱れの取り締まり、学業に異常をきたす程の不純異性交友禁止……などと、あげだしたらキリがない。
しかし、多過ぎるとも言える予備学科のルールを毎日チェックする程、予備学科といえど希望ヶ峰学園の教諭は暇ではないのだろう。だからこうして、不定期に風紀の乱れがないかチェックしているらしい。
季節はじめじめとした梅雨を開け、本格的な夏を迎えようとしている。学生生活にも慣れ且つ夏休み前で気の緩む時期だ。先程校門の前で止められていた男子生徒のように、校則違反をする生徒が現れることは容易に予想できたのだろう。尤も、普段から極めて模範的な学生生活を送っている日向にとっては、抜き打ちだろうが予告ありだろうが関係のない話なのだが。
だから、日向は既にその光景から興味を失っていた。今はただ只管照りつける太陽から逃れることだけを考え、黙々と歩みを進めている。校門からはとっくに離れていたのだが、本日抜き打ち検査を担当しているあの体育教師は、無駄に声が大きいことで有名な男だった。だから、日向の耳にもその台詞が届いた。
「さっきの男子生徒は第一ボタンまでちゃーんと締めていたぞ!お前らもああいう真面目な生徒を見習うんだな!」
日向は思わず自身の首元に手をやった。第一ボタンまでしっかりと留め、キュ、とネクタイが締まっている。
ひょっとして自分のことを言っているのだろうか。
ああいう真面目な生徒を見習え。今しがた聞こえたその台詞を心中で呟き、日向はあまりの可笑しさに笑いが込み上げてくるのを必死で堪えた。
別に自分は、校則があるからシャツのボタンをきっちりと留めている訳ではない。それに、日向だって出来ることなら第一ボタンは開けていたいのだ。何せ、この暑さである。しかし、日向にはそうしたくても出来ない理由があった。
原因を作った彼の事……もっと言えばその行為のことを思い出し、ふっと日向の瞳に熱が宿る。
『キミは、ボクの所有物だ』
落とされた言葉と共に首元に走った鋭い痛みが、昨夜は行為の合図だった。首元に咲いた紅をキッカケに身体はどんどん火照り、それを鎮める為貪欲に相手を貪った。
彼もまた同様に日向を求めた。激しく身体を掻き抱き、最奥にたっぷりと欲を注ぎ込み。そうして行為が終わりを迎える頃には、日向の身体は無数の紅がそこかしこに散らばっていた。首元だけに留まらず、胸や腹、腰、そして太腿の付け根にまで日向の身体の至る所に所有印が刻まれている。
そう、第二ボタンまで開けると、首元に咲いた毒々しい赤色が周囲にまる見えなのだ。しかし、それは日向が第一ボタンまで締める直接的な原因ではない。日向の本音としては関係がバレようが周囲から奇異の目で見られようが、一向に構わないのだから。
日向が律儀に第一ボタンまで留める本当の理由。それは、行為の後にぽつりと吐かれた彼の言葉が原因だった。
『あは……日向クンの身体、ボクの痕でいっぱいだ……これでもう、人前に肌なんて晒せないね?』
赤く腫れ熱を持つそこをなぞり満足そうに微笑む彼を見た瞬間、日向はその真意に気付きそして、堪らなく興奮した。
彼の所有物として全てを支配される。それが、こんなにも心地の良いことだなんて知らなかった。思い返しふつふつと腹の奥から熱が湧き立つのを感じ、日向はほぅと溜息を零す。
日向の思考までもが彼のものなのだ。朝からこれでは、今日もきっと授業に専念できないだろう。そんな色惚けした生徒が真面目だなんて、笑わずにはいられないのだ。あぁだけど、日向としては校則を破っているつもりは毛頭ない。だって、禁止されているのは不純異性交友であるのだから。
こんな屁理屈を言うようになったのもきっとあいつの影響だ。日向は知らずのうちに艶っぽい笑みを浮かべ、真っ白なシャツの下に隠された所有印を愛おしげに撫でた。

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