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帰宅してから、学校にノートを忘れ物をしたことに気付いた。態々取りに戻るのははっきりいって面倒だったが、そのノートは生憎明日のテストに必要なもので。帰宅早々に戻る羽目となった。
再び戻った学校は、夕暮れに包まれていた。足を踏み入れた校舎は、がらんと静まり返っている。もう六時半になろうとしているのだ。残っている生徒なんていないのだろう。
オレの教室は四階だ。早く帰路につきたい気持ちが、階段を駆け上がらせる。
四階にたどり着いた頃には息もすっかり上がっていた。平地を滑るように歩いて、やがて教室の前に辿り着く。その時、オレは教室の中に人影が二つあることに気付いた。目を凝らしてオレは丸く見開く。片方が栗色の──希望ヶ峰学園本科生の制服を身につけていたから。
本科生と一緒にいるのは、同じクラスの日向創だった。いつも教室の端で一人でいる、生真面目で地味な奴。いつも難しい顔をしていて、笑った顔なんて一度も見たことがない。
それが、今はどうだろう。本科生の彼に向ける表情は、遠くから見てもわかるほど柔らかい。差し込む夕日に照らされた日向の顔はどこか大人びていて、ゾッとするような色香さえ感じる。
(あ、)
瞬きをして次に開いた時、二人は唇を重ねていた。互いを味わうかのように唇を噛んで、舌を絡めて。そんないやらしいキスがオレの目の先で、オレのクラスメイトがしている。
日向の唇を塞いでいた口が、今度は日向の首元に収まる。普段きっちりと締まっているシャツは乱れ、日に触れない肌が晒されている。本科生の舌が日向の鎖骨をなぞり、ひくんと身体を揺らして日向が天を仰ぐ。
あの日向が。いつも凛と澄ました表情を崩さないあの日向が。瞳を濡らし、顔を色で溢れさせ、悦びに震えている。
なんて排他的で、淫靡で──。
「っ……!」
情欲を浮かべた瞳が、確かにオレを捕らえた。ドクンと心臓が高鳴り、時間が動き出す。オレはその場から逃げた。なりふり構わず、足を音を踏み鳴らして。
気づけばオレは、学園の外にいた。夕日はもう沈みかけで、闇が世界を包み始めている。
オレは、校舎を見上げて教室をみた。日向と本科生は今もまだあそこにいる。誰もいない二人の世界で、何を、しているのだろう。
バクバクとがなる心臓は、走ったせいではない。下半身が熱を孕み疼くのが酷く情けない。
脳裏に焼き付いたあいつの淫らな顔が、いつまでも頭から離れなかった。
「……どうしたの?」
「……クラスの奴に……見られた、気がする。もう帰ったみたいだけど」
「ふぅん……もういないなら、こっちに集中してよ」
「う、ぁ」
「なに、萎えちゃったの?」
「ちがう、けど……」
「……面白くないな」
「あっ……!ごめ、狛枝……俺、ちゃんとするから……」
「……次気を逸らしたら、酷くするからね」
「んっ……あ、こま、えだ……」
再び戻った学校は、夕暮れに包まれていた。足を踏み入れた校舎は、がらんと静まり返っている。もう六時半になろうとしているのだ。残っている生徒なんていないのだろう。
オレの教室は四階だ。早く帰路につきたい気持ちが、階段を駆け上がらせる。
四階にたどり着いた頃には息もすっかり上がっていた。平地を滑るように歩いて、やがて教室の前に辿り着く。その時、オレは教室の中に人影が二つあることに気付いた。目を凝らしてオレは丸く見開く。片方が栗色の──希望ヶ峰学園本科生の制服を身につけていたから。
本科生と一緒にいるのは、同じクラスの日向創だった。いつも教室の端で一人でいる、生真面目で地味な奴。いつも難しい顔をしていて、笑った顔なんて一度も見たことがない。
それが、今はどうだろう。本科生の彼に向ける表情は、遠くから見てもわかるほど柔らかい。差し込む夕日に照らされた日向の顔はどこか大人びていて、ゾッとするような色香さえ感じる。
(あ、)
瞬きをして次に開いた時、二人は唇を重ねていた。互いを味わうかのように唇を噛んで、舌を絡めて。そんないやらしいキスがオレの目の先で、オレのクラスメイトがしている。
日向の唇を塞いでいた口が、今度は日向の首元に収まる。普段きっちりと締まっているシャツは乱れ、日に触れない肌が晒されている。本科生の舌が日向の鎖骨をなぞり、ひくんと身体を揺らして日向が天を仰ぐ。
あの日向が。いつも凛と澄ました表情を崩さないあの日向が。瞳を濡らし、顔を色で溢れさせ、悦びに震えている。
なんて排他的で、淫靡で──。
「っ……!」
情欲を浮かべた瞳が、確かにオレを捕らえた。ドクンと心臓が高鳴り、時間が動き出す。オレはその場から逃げた。なりふり構わず、足を音を踏み鳴らして。
気づけばオレは、学園の外にいた。夕日はもう沈みかけで、闇が世界を包み始めている。
オレは、校舎を見上げて教室をみた。日向と本科生は今もまだあそこにいる。誰もいない二人の世界で、何を、しているのだろう。
バクバクとがなる心臓は、走ったせいではない。下半身が熱を孕み疼くのが酷く情けない。
脳裏に焼き付いたあいつの淫らな顔が、いつまでも頭から離れなかった。
「……どうしたの?」
「……クラスの奴に……見られた、気がする。もう帰ったみたいだけど」
「ふぅん……もういないなら、こっちに集中してよ」
「う、ぁ」
「なに、萎えちゃったの?」
「ちがう、けど……」
「……面白くないな」
「あっ……!ごめ、狛枝……俺、ちゃんとするから……」
「……次気を逸らしたら、酷くするからね」
「んっ……あ、こま、えだ……」