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召日

びりびりと、暴力的なまでに激しい快楽に支配される身体。胸を必死に上下させ酸素を取り込み、バラバラになった理性を掻き集める最中、不意に唇を塞がれた。
「ん……んん」
まだ、十分な酸素が頭に回っていない。息苦しさについくぐもった声を漏らすと、日向の唇を塞ぐ彼は、不満だと言わんばかりに日向の首に下がる鎖を強く引っ張った。鉄が柔い肌に食い込む。圧迫され、更に息苦しさを覚える。目の前の彼の苛立ちを肌に感じ、日向は慌てて唇を開き、舌を動かした。
そろりと舌を伸ばし、彼の口内へ差し入れる。やがて出会った柔らかな舌先を恐る恐る突き、唾液を纏わせ丹念に舐める。
ぎこちない所作でそれでも懸命に奉仕を続けると、彼の舌がぬろりとゆっくり動いた。日向の舌の動きに合わせ舌は恐々と日向の口内を撫でる。甘い、チョコレートを食べるかのように優しく噛み付いてくる唇。
乱暴な行為の幕下ろしは、いつもこうだった。
初めこそ一方的な行為の延長だと思い拙くも必死に舌を伸ばし奉仕に努めていたが、そうではないらしい。この行為だけは、彼は日向に応えてくれるのだ。それも、直前の暴力的な行為とは打って変わってとびきり優しく、だ。
厳密に言えば、優しいではなくそれは拙い、子供らしい行為という表現が近い。恐る恐る、まるで許しを請うかのように動く舌先。甘えるように食む唇。そのひと時を味わうたび、日向は脳を直接触れられているような不思議な感覚と、激しい切なさに襲われるのだ。
静かに鳴り響いてた水音は、やがてすっかりと消え失せる。そっと持ち上げた瞼の先、視界に映る彼の顔。その瞳の奥は相変わらず得体の知れない何かが潜んでいる気がして、身震いを覚える。
それでも、あのアンバランスなキスをするたびに日向は思うのだ。
彼のことを理解したい、と。
自分をレイプし続ける犯罪者にそんな感情を抱くなんて、何て愚かしくて馬鹿げているのだろう。
そんな倫理観や道徳論を連ねる奴はいない。
この世界は日向と彼の二人っきりなのだから。
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