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「狛枝、最後ここ寄りたい。」
約一週間分くらいの食料と日常品を沢山買い込み最後に日向が寄りたいと言い出したのは和菓子屋さん。
「あぁ…いいよ、寄ろうか。」
カランと心地よい音と共に中に入る。色彩豊か様々な和菓子が並ぶ中、日向の視線を集めているのはたった一つ、緑の餅。
「すいません、草餅五個ください。」
「あいよー…っておやおや、誰かと思ったら草餅のお兄さんじゃない。」
草餅のお兄さん?聞きなれない呼び名に日向は店員のお婆さんの顔を見る、お婆さんの視線の先には狛枝。
「お前、顔馴染みなのか?それに草餅のお兄さんってなんだよ?」
「あぁ、ほらボクたまにキミに草餅買って帰ったりするでしょ?実はここで買ってたんだよ。」
「あらあら、じゃあ君が例の子なのかい!会えて嬉しいわぁ。」
「例の子…?」
突然握手を求められされるがままに交わす。日向の頭上にははてなマークが浮かぶばかりだ。
「そこの草餅のお兄さんがのぉ、いつも草餅を買って行ってくれるからな、私はてっきりそこのお兄さんが草餅好きなのかと思ってたんじゃよ、そしたら『いえ、ボクじゃなくて一緒に住んでいる恋人が好きなんです。』っていうもんじゃからなぁ、いやぁ一度会ってみたかったんじゃよ。」
お婆さんの話を聞いて日向の顔は段々と赤く染まっていく。
「こ、ここ狛枝!!おまっ、何言ってるんだよ!こい、恋人って!!」
「嘘ついてないでしょ。」
「そ、そういう問題じゃなくて!!」
「ほほ、本当にお二人さんは仲がいいんじゃのう。」
「あはは、わかります?」
「も、もう黙れお前!!…すいません、あの、草餅…。」
「おぉすまん、今包むからのぉ。」
ショーケースの中の草餅を一つずつ丁寧にお婆さんは包みだす。
「草餅のお兄さんがな。」
狛枝が他の和菓子を見ようと少しだけ日向のそばから離れた時、お婆さんの口が不意に動き小さな声でしゃべりだした。
「いつも草餅を買う時のな、それはもう幸せそうな顔、よっぽどその人の事を想っとるんじゃなあっていつも思っていたよ。」
草餅の包装が全て終わり、はい、350円と代金を告げられる。が、日向の反応は少し遅れた。
「、あ、すいません!」
日向は急いで財布の中の小銭を出す。
「お兄さん、愛されてるのぉ。」
代金を渡す代わりに草餅が入った袋が渡される。
「……そう…ですね……。」
お婆さんはニコニコ微笑むが日向は顔を見れない、否、顔を上げることができなかった。


「また来てのぉ。」
手を振るお婆さんに振りかえす狛枝とその隣で手を繋ぎながら日向は小さくお辞儀をした。
「お前もう人前でああいうこというなよな…」
帰り道。日向がぽつりと呟く。
「なんで?」
「恥ずかしいからに決まってるだろ!!」
「しょうがないでしょ、キミのこと考えてると頬緩むし、惚気たくもなっちゃうんだよ。」
「…あ~!もう!!早く帰って草食う!」
「ボクは日向クンを「却下!」
夕焼けに染まった二つの影はやがて夜の闇の中へと消えていった。
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