このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

未分類

六月、梅雨の季節。しとしと雨が続くなか、久々のお天気に日向クンはご機嫌だ。
「おーい狛枝ー、今から洗濯物と布団取り込むからさ、お前畳んでいってくれよ」
「わかった」
そう言って日向クンがベランダに出て行ってから数十秒後、ぽいっぽいっと日向クンが乾いた洗濯物をボクに向かって放り投げてくる。あっという間にボクの周りは布だらけだ。
ほんのりと暖かいそれらを慣れた手つきで畳んでいく。ふたりぶんの洗濯物を畳むのにそれほど時間はかからない。すぐにそれらを綺麗に畳み終え、他にすることはないか日向クンに聞こうと思いボクは顔を上げた。
「……ん?狛枝どうした?」
日向クンは丁度布団の上にかけるシーツを取り込んでいたところだった。シーツを足元につけるまいと、高く掲げたそれが風になびく。日向クンの頭上で風に吹かれた真っ白いシーツは、まるで花嫁さんが頭につけるヴェールを連想させて。
「……日向クン、それ花嫁さんみたいだ」
無意識のうちに頬を緩ませながら、日向クンの頭を指差すとそれにつられ日向クンの視線も上に向く。
「……ヴェールみたいだって言いたいのはわかったけど、花嫁ってもしかして俺のことか?」
「そうだよ他に誰がいるのさ、ボクの花嫁……うわっ!?」
台詞はまだ途中だったのに、ボクはそれを中断する羽目になる。理由は日向クンがこちらに突進してきて……次の瞬間視界が真っ白になったからだ。
「ちょ、なに……うぐっ……っ……!」
白の視界から抜け出そうともがいていると膝の上が急に重くなった。見知った重さ、というか昨日だってボクの上に乗っかってたし。
「ははっ、これでお前も花嫁だぞ!」
ようやく真っ白い視界を掻き分け、最初に広がったのは白い歯を見せた日向クンの笑顔だった。
太陽のようなその笑顔。それを向けられているのはたった一人、ボクだけ。その事実がボクの胸をじんわりと満たしていく。
「別にいいけどさぁ……ねぇ、せっかく畳んだ洗濯物、くちゃくちゃになっちゃったよ」
「あぁ!?ご、ごめん!!」
わざとらしくため息をつきながらそう言うと日向クンはすぐにボクの膝の上から退こうと足に力を込めた。だけど、ボクの腕はとっくのとうに彼の腰を捉えている。
「いいよもう、あとで畳めばいいし……お詫びにキスしてくれたらね」
そう言って片目を瞑り唇を僅かに尖らせると、ボクの可愛い花嫁さんは頬をほんのり染め上げながらボクを包んだ白いヴェールを引き寄せた。
4/11ページ
スキ