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- 艶めく -
薄い割にしっかりと柔らかさを持つ唇が、日向のものと重なる。ふにり、ふにり。唇をほんの僅かに尖らせては、一ミリの隙間を開け再度その感触を楽しむ。戯れのようなそのキスが可笑しくて、笑いが込み上げてきた。
「ん……」
ぺろりと狛枝が日向の唇を舐めたのを合図に、日向は熱い吐息を漏らしつつ唇を割く。するとすぐに、ちろりと狛枝の舌先が日向の口内に侵入してきた。すかさず日向も舌を伸ばし、舌先同士でキスをする。唾液を纏ったそれがぬるぬるとぶつかり合う、その感覚が日向は好きだった。ぞくぞくと背が震え、脳みそが蕩けてしまうのではないかと錯覚してしまいそうになる。
「んっ……ふ……んんっ……はふっ……」
触れ合っていた箇所は舌先だけだったのに、いつしか口内全体を狛枝の舌で蹂躙されていた。舌の表面、裏側、歯列、上顎。ちゅくちゅくと音を立てながら滑っていく狛枝の舌に、日向もなんとか応えようとするも狛枝の舌は日向のものよりも長いのだ。狛枝と同じような動かし方が出来るはずもなく、日向はちろちろと舌を可愛らしく揺らしながら混ざり合う唾液を飲み込み続けた。
身体はどんどん昂り、呼吸も荒くなる。しかし、息を吸うことさえも忘れ夢中で唇を貪り合う。酸欠の息苦しさもこの状況では、快楽を高めるスパイスでしかないのだ。
理性がとろとろに融けていく感覚にうっとりとしながら、日向はうっすらと瞼を持ち上げる。至近距離で見た狛枝の顔は、いつもの涼しげなもののカケラもない。頬を紅潮させ必死に日向の舌にしゃぶりつくその様は、雄そのものだった。
日向の好きな狛枝の表情。だけど、それがもっと魅力的になることを日向は知っている。
そっと手を伸ばし日向は狛枝の髪に触れた。柔らかな白髪を耳にかけてやる。そして、剥き出しになった耳を日向はつぅと撫でた。
「っ……!」
人差し指で形を確かめるように往復して撫で、耳朶の裏を擽り柔く揉む。上部をコリコリと弄ってやったり、内側まで指先で辿ってやれば、狛枝の身体は面白いくらいヒクヒクと反応してみせた。
やらしいな。快楽に歪むその顔に見惚れていた矢先、口内を思いっきり吸われた。じゅるじゅると唾液を啜られ、捕食されている感覚に陥り日向の瞳からポロリと涙が溢れる。
「……はぁ……も、いきなり触らないでよね……制御できなくなっちゃったろ……」
唇の端から唾液を零し、桃色に染まった耳を押さえて狛枝が呟く。
「ははっ……ごめん……相変わらず耳、弱いな」
可愛い。剥れる狛枝につい思った事を零すと、狛枝が意地の悪い笑みを浮かべた。
「あは、それはこっちの台詞だよ……キスだけでそんな顔しちゃってさ……」
潤んだ狛枝の瞳に日向が映る。蕩けたその表情は他でもない、狛枝の快楽に酔いしれる様が引き出したものだと狛枝は勿論、日向自身さえも気が付かなかった。
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