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「……うわ」
部屋に足を踏み入れた瞬間匂った異臭に、狛枝は思わず顔を顰めた。換気のしていない部屋に籠る空気は、汗と煙草とそれから精液が混ざった匂いをしている。全く、よくこんな部屋に居れたなと狛枝は部屋に残してきた恋人と数十分前の自分を嘲るように笑った。
「あ、おかえり狛枝ぁ。どうしたんだよ変な顔して」
狛枝の帰着にベッドシーツの間から蕩けた笑みを見せたのは、恋人である日向だ。部屋に戻って早々にベッドに潜り込んだ狛枝の腰に巻きつき甘える彼を、狛枝は鬱陶しいと言わんばかりに見下ろし溜息を吐く。
「この部屋空気悪いよ。すごくイカ臭いし」
「そりゃあ……俺たちさっきまでシてたし……なぁ?」
さわさわと腰を撫でる日向の妖しげな指先を狛枝はペシリとはたき落とす。短い悲鳴と共に悪戯な手の動きは止んだが、日向の瞳は色が灯ったままだ。昨夜からずっと責め立てて潮まで吹かせたのに、まだ性欲があるらしい。これ程にもなると呆れを通り越して感心さえ湧いてくる。
日向の瞳から送られるラブコールを無視して、狛枝は今しがた買ってきたばかりの煙草の封を切り一本口に咥えた。葉に火を近づけて息を吸うと、馴染んだ味が口に広がり肺まで届く。ふぅと吐き出した白い煙が、ゆっくりと空中を舞いやがて完全に空気に同化していった。
「……俺、やっぱりお前の煙草吸ってる姿、好きだな」
「そう?」
「うん、色っぽくて格好いい」
「……ふーん」
興味なさげに返事をしたつもりだったが、くすくすと声を漏らす日向には狛枝が実のところ照れていた事がバレていたのだろう。照れ隠しの意で日向の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、また日向が鈴が転がるような笑い声を上げた。
「……あーあ、何だか俺も咥えたくなってきちゃったな」
「……煙草を?」
「ばーか、そんな訳ないだろ」
日向が赤い舌を見せて笑った。下腹部を滑り股間を撫で上げる指先。ぞくりと狛枝の背が震える。
「馬鹿はキミの性欲でしょ。一体何回すれば気が済むの」
「さあな。ていうかお前もするつもりだったんだろ?コレ買ってくるぐらいだし」
ニヤニヤする日向の手にはコンドームの箱が握られていた。先程、狛枝が煙草を買いに行った時に買ったものだ。
「……すぐ使うとは言ってないよ」
「意地悪な奴だな」
「でも……そうだな、キミが付けてくれたら考えてもいいよ」
勿論ココで。ふっくらとした柔らかい唇を指で押すと、日向の赤い舌は応えるかのように狛枝の指先を舐めた。
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