.
n a m e
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(高校2年生)(⚠︎及川さんにカノジョが居ます)(⚠︎致してる表現)(⚠︎勝手な男です)
時間の余裕で云えば十分に在るのだが、其れでもバレーボール(及び部活)大好きっ子の彼な筈なのに姿が見当たら無いのは心に引っ掛かり、然しながらなまえ自身に於いても男子バレー部の手伝いの準備がある為、取り敢えずは…と、時間の許す限りバレー人間及川を探しに校内を歩けば、人気の少ないある空き教室の前を通り掛かった瞬間、教室の扉の窓越しから探していた及川がカノジョの頬に唇を落としている一幕を視界に映す事になった。
「……っ」
ーー先ず彼には綺麗な彼女が居るのに自分が出しゃばるなんておかしな話であって、故に誰よりも彼を理解しているであろう存在が既に居るのだから結局は自分は邪魔になる。要は、ハッキリ申せば探しに来ない方が良かった。
教室内に居る二人は情事後であったが素早く着衣を直して居た為に、なまえに見られた頃合的には良く着衣の乱れは少なかった。然しながら、未だに恋愛経験の無いなまえからしてみれば情事後とは判断出来ておらずには居たのだが、戯れ合い程度な軽い場面であっても刺激的に感じて尚且つ幼なじみの秘密の一面を見てしまった様な衝撃、胸の奥底からチクン、とした未知なる僅かな痛みに襲われ、パタパタ…と踵を返し急いでその場を立ち去り部活の手伝いへと向かった。
ーーー
ーー
ー
「(スッキリするのは吐精の僅かな瞬間だけでシた後の嫌悪感が(特に)半端無く酷い…)」
そりゃ雄ですから?オンナノコの身体触って吐き出せば(性欲だけは)キモチイイのよ…なんて既に分かりきっている答えがある上で自問自答しながら、酸欠の余り生き急ぐ魚の様に空き教室から早急に出ては、高身長美人なカノジョとの情事後を無情にもサッサと過ごす。「ーー部活だから」と、その場で我ながら上手くカノジョの機嫌をコロコロ転がす様に取り、お見事である華やかな造り笑顔を添えて"バイバイ"しては、使用済みゴムを上手く包んでゴミ箱にポイ、部活に行く為に足を進めるのだ。ーーそんな及川の心内では、オ"ェッ、と舌を出す。この嫌悪感の根幹を自身なりに探れば、男女の身体だけの関係なんて不埒な!なんて全く思わず、たかが性行為なんて互いに納得、合意の上でスるのならば別に構いやしないだろうよ、な思考なので(モチロン及川だって本来なら(願いが叶うなら)自身の愛する女の子とヤりたい)違うだろうし、今のカノジョに対して不平不満とか決してそういうのでは無い。ーーいや、寧ろ及川自身こそオイシイ思いをさせて頂いている立場にあり、相手のオンナノコに対しては気の毒且つ酷い事してる、と云う自覚はこれでも一応ある。強いて言えば(決して言葉として発し伝え出せないが)形式としては今付き合ってるカノジョに対して注ぐ恋愛感情、そして愛情は皆無なワケだから。
「はぁ…」
不幸を招く如くデカい溜息が吐き出される。ーーほら、やっぱり俺ってば誠に純粋で産まれてからずっと一途な男の子でしょ?自身が真剣に片思いしてる女の子が居るのにも拘わらず、カノジョ作って下半身と欲を満たすだけ、なんて本来ならば器用になんか出来ないンじゃないかなぁ?ウンウン、多分きっとそうだ。まァ、雄なる生物として何もしなくても溜まるモンは溜まるから自身が生きる為に排泄してるだけであって、及川さんは心の底から優しいし特にオンナノコは泣かせたくないんだぞ☆…にしても、如何せん本日は特に嫌悪感含め気分が悪く何故だか落ち込み具合が最悪である。…んん、普段からの行いにとうとう天罰が下ったか?
◇◇◇
「なまえ、今日もお疲れ様。…今、誰も居ないしこっちおいで?両方のほっぺたむにむに揉ませて。それか膝枕して」
「あっ…お疲れ様。…あのね…っ、しない」
「ンん"!?えっ…と…じゃあ、頭なでなでいいこいいこしても…」
「それも…ごめん、なさい」
「え?えぇ…!?じゃあ、ハグは?ほっぺたチューは?ほっぺスリスリしても「!?~~っ、徹くんとはしない…!あの…そういうのは徹くんじゃなくて、はじめちゃんにしてもらうから…だから、ごめんなさい」
「ちょっ…はぁ?何で!?」
「徹くんも幼なじみに甘えたい時は私じゃなくてはじめちゃんにお願いしてみたら?」
「(ヒュン)いやいや勘弁してよ!癒じゃなくて嫌だわ!」
そうだ!今日はなまえのお手伝いの日だ、なんて瞬時に気分を変えては、ウザい先輩共からなまえを出来る限り護ろうと気合いを入れ部活に参加して、本日も無事に部活終了そして片付け終了の際になまえと二人きりになったから、いつもの如く親密なる幼なじみ特権のスキンシップをお願いしてみたら、可愛い小さなお顔がふるふる、と横に振られては、ある一定の距離を取られて仕舞うのだ。…へ?何で?いつもほっぺたむにむには許してくれるじゃん…!そりゃ膝枕からの後半の過程に於いては流石に範疇を超えてる事もついツルンツルンと口滑ったけどサ、でもちょっと待ってよ何で嫌だ急にそんな待って本気で泣けちゃうんですけど…!なんで?
「待ってよ俺なんか怒らせる事した…?ごめん、俺分かってなくて…ッ、だからちゃんと話し合いたい!」
「違うの…怒ってないよ?」
「ハッキリ言わなきゃ分からないじゃん」
「ーーっ、徹くんが悪いとかじゃなくて…」
「だったらそういう態度やめろよ!俺は駄目で岩ちゃんに甘える、なんて…なんだよそれ!~~大体、幼なじみはハグもチューも膝枕もほっぺたスリスリもしねぇんだよ!だからなまえは岩ちゃんと絶対にすんなよ!」
「?」
なまえに拒否されれば余裕なんて無くなり幼い駄々っ子に戻る。及川の行動指針である筈の一貫性(感情)が、なまえが関わるとグラリと揺らいで仕舞う。及川がつい子供っぽい口調で甘え放って仕舞えば、なまえは肩をぴくん、と跳ねさせた。
「徹くんには、御付き合いしている女性が居るでしょ?」
「ーーだから、何だよ…!」
「大切だから御付き合いしてるんじゃないの…?なのに、なんで私に…っ」
「は?なまえには関係ないでしょ?ーー俺と俺のカノジョの事でお前が口挟んでくるな」
「~~!?…とにかく、もう触らないで…!」
見事に双方の意見が拗れ違う。及川は恋焦がれてる片思いの子から自身のカノジョの事を僅かな話題でも触れて、ましてや見当違いな事を彼女の口から言って欲しくない。だって及川にとってはなまえだけが愛おしく大切でーー…なまえが大切だからカノジョと付き合って居るのだから。延いては自身を拒むなんて以ての外であるのだ。一方のなまえは、及川から自分が叱られている感覚、そして自身にとっては親密な幼なじみであり且つ心の支えになる及川からガッツリと一線引かれた戸惑いと(当然だろうけど)カノジョが大切だからお前は余計な口を出すな、と突き放された衝撃に揺れては、先程の空き教室での一幕を思い返し、つい視界がじわっ…と滲み瞳に零れ落ちそうな涙を浮かべ及川を見上げれば、なまえを待ち受けていたのは、酷く傷付いた及川の表情と次の瞬間にドンッ、と壁に身体を押し付けられ逃げられない様に捕まえられて、なまえの華奢な身体をギュゥッ、と抱きしめ閉じ込められた事だった。
「ーー徹く、」
「うるさい…!俺に対して…っもう触らないで、なんて言い過ぎだろ…ほんっとムカつく…!」
「だって私…ふぎゅ」
「…なまえの言う事なんか、聞いてやんない」
クソ、クソクソクソ…!悔しい。こんなんただの八つ当たりでしか無く故に益々、なまえを困らせてるだけだ。なまえの言う存在の件だって至極当然であり、現在に於いてなまえを困らせてる現状も及川の頭では確りと理解してるのにも拘わらず、それでもこんな事態に成ろうが僅かに身体が震える及川の背に手を回し、余計な事は言わず黙ってポンポン…と背中を擦り慰め受け止めてくれるなまえは、やはり及川にとっても非常に心の支えにあるのだろう。スゥッ…と蔑んだ心を簡単に溶かしていくのだ。
「私、徹くんの事ーー…ずっとずっと、大好き。いつでも貴方の味方だよ」
「何今更トーゼンな事言ってんの。幾ら俺を手のひらで転がそうとしても俺は謝りません。俺は間違った事言ってねぇからな…っ(ーー"大好き"の言葉の意味合いが、俺とお前じゃ違うんだよ)」
「ふふっ、"ごめんなさい"の言葉なんていらないよ。…大丈夫、伝わってるから」
「~~何さ、俺がガキみたいじゃん」
「うーん…猛くんの方がお兄ちゃん、かな?」
「はァー!?」
なのに心地よく温かい光で心がトクン、トクン、と満たされる。この子はずるい。そんななまえの秘めた力に毎度驚かされるばかりだった。ーーそう云えば、こうして以前にも似た様な情景があった。及川が笑わなくなった在る時期、中学の在の頃。前方後方に挟まれ"天才"による脅威から強い葛藤により酷く押し潰されそうになった現在の様な在る放課後、純粋ななまえに勝手に八つ当たって無理やり腕を引いては抱き締め今のようにポンポン…と撫でられ包み込まれて励まされたのは、今も鮮明に覚えている。
「ーーあと三秒、三秒だけ此の儘で居させて。そしたら今日は帰してやる」
「今だけ、だよ?徹くんに御付き合いされている女性が居る時は…私に過剰に触らない、でね…っ」
「(カノジョ捨てたらオマエが俺の全てを受けとめてくれんのかよ)ーーほら、さっさと数えろ」
「っ、いち」(嫌い)(好き)
「にー」(他の女性に触れた貴方の手が)(頭の天辺から足の爪先、深淵まで)
「さん…」(私をおいていかないで)(俺だけを愛してくれたらいいのに)
心地よい可憐な声で儚い想いを込めた一輪の花のスリーカウント。天使の輪を円盤とした子守唄の中、故に三秒しか許されない砂時計をひっくり返せば、一秒刻む事に及川の核心をキラキラ…した小さな金平糖の砂に願いと想いを馳せた。本来であれば、流れ星に頼るなんて馬鹿げてる。全ては自身で掴み取るモノなんて綺麗事は随分と前から聞き飽きた台詞だ。
「…ほらほら、さっさと帰んべ帰んべ」
「あ、はいっ…早く戸締りしなくちゃ」
「ーーなまえ」
「うん…?」
「さっきの質問の答え。俺にカノジョが居てもさ、なまえの胸と尻だけは触って良いよね?」
ぱちん、と乾いた音の後に星の記号がオマケに一文字キラキラ光り、及川の片頬に小さな痛みが広がったのだった。
時間の余裕で云えば十分に在るのだが、其れでもバレーボール(及び部活)大好きっ子の彼な筈なのに姿が見当たら無いのは心に引っ掛かり、然しながらなまえ自身に於いても男子バレー部の手伝いの準備がある為、取り敢えずは…と、時間の許す限りバレー人間及川を探しに校内を歩けば、人気の少ないある空き教室の前を通り掛かった瞬間、教室の扉の窓越しから探していた及川がカノジョの頬に唇を落としている一幕を視界に映す事になった。
「……っ」
ーー先ず彼には綺麗な彼女が居るのに自分が出しゃばるなんておかしな話であって、故に誰よりも彼を理解しているであろう存在が既に居るのだから結局は自分は邪魔になる。要は、ハッキリ申せば探しに来ない方が良かった。
教室内に居る二人は情事後であったが素早く着衣を直して居た為に、なまえに見られた頃合的には良く着衣の乱れは少なかった。然しながら、未だに恋愛経験の無いなまえからしてみれば情事後とは判断出来ておらずには居たのだが、戯れ合い程度な軽い場面であっても刺激的に感じて尚且つ幼なじみの秘密の一面を見てしまった様な衝撃、胸の奥底からチクン、とした未知なる僅かな痛みに襲われ、パタパタ…と踵を返し急いでその場を立ち去り部活の手伝いへと向かった。
ーーー
ーー
ー
「(スッキリするのは吐精の僅かな瞬間だけでシた後の嫌悪感が(特に)半端無く酷い…)」
そりゃ雄ですから?オンナノコの身体触って吐き出せば(性欲だけは)キモチイイのよ…なんて既に分かりきっている答えがある上で自問自答しながら、酸欠の余り生き急ぐ魚の様に空き教室から早急に出ては、高身長美人なカノジョとの情事後を無情にもサッサと過ごす。「ーー部活だから」と、その場で我ながら上手くカノジョの機嫌をコロコロ転がす様に取り、お見事である華やかな造り笑顔を添えて"バイバイ"しては、使用済みゴムを上手く包んでゴミ箱にポイ、部活に行く為に足を進めるのだ。ーーそんな及川の心内では、オ"ェッ、と舌を出す。この嫌悪感の根幹を自身なりに探れば、男女の身体だけの関係なんて不埒な!なんて全く思わず、たかが性行為なんて互いに納得、合意の上でスるのならば別に構いやしないだろうよ、な思考なので(モチロン及川だって本来なら(願いが叶うなら)自身の愛する女の子とヤりたい)違うだろうし、今のカノジョに対して不平不満とか決してそういうのでは無い。ーーいや、寧ろ及川自身こそオイシイ思いをさせて頂いている立場にあり、相手のオンナノコに対しては気の毒且つ酷い事してる、と云う自覚はこれでも一応ある。強いて言えば(決して言葉として発し伝え出せないが)形式としては今付き合ってるカノジョに対して注ぐ恋愛感情、そして愛情は皆無なワケだから。
「はぁ…」
不幸を招く如くデカい溜息が吐き出される。ーーほら、やっぱり俺ってば誠に純粋で産まれてからずっと一途な男の子でしょ?自身が真剣に片思いしてる女の子が居るのにも拘わらず、カノジョ作って下半身と欲を満たすだけ、なんて本来ならば器用になんか出来ないンじゃないかなぁ?ウンウン、多分きっとそうだ。まァ、雄なる生物として何もしなくても溜まるモンは溜まるから自身が生きる為に排泄してるだけであって、及川さんは心の底から優しいし特にオンナノコは泣かせたくないんだぞ☆…にしても、如何せん本日は特に嫌悪感含め気分が悪く何故だか落ち込み具合が最悪である。…んん、普段からの行いにとうとう天罰が下ったか?
◇◇◇
「なまえ、今日もお疲れ様。…今、誰も居ないしこっちおいで?両方のほっぺたむにむに揉ませて。それか膝枕して」
「あっ…お疲れ様。…あのね…っ、しない」
「ンん"!?えっ…と…じゃあ、頭なでなでいいこいいこしても…」
「それも…ごめん、なさい」
「え?えぇ…!?じゃあ、ハグは?ほっぺたチューは?ほっぺスリスリしても「!?~~っ、徹くんとはしない…!あの…そういうのは徹くんじゃなくて、はじめちゃんにしてもらうから…だから、ごめんなさい」
「ちょっ…はぁ?何で!?」
「徹くんも幼なじみに甘えたい時は私じゃなくてはじめちゃんにお願いしてみたら?」
「(ヒュン)いやいや勘弁してよ!癒じゃなくて嫌だわ!」
そうだ!今日はなまえのお手伝いの日だ、なんて瞬時に気分を変えては、ウザい先輩共からなまえを出来る限り護ろうと気合いを入れ部活に参加して、本日も無事に部活終了そして片付け終了の際になまえと二人きりになったから、いつもの如く親密なる幼なじみ特権のスキンシップをお願いしてみたら、可愛い小さなお顔がふるふる、と横に振られては、ある一定の距離を取られて仕舞うのだ。…へ?何で?いつもほっぺたむにむには許してくれるじゃん…!そりゃ膝枕からの後半の過程に於いては流石に範疇を超えてる事もついツルンツルンと口滑ったけどサ、でもちょっと待ってよ何で嫌だ急にそんな待って本気で泣けちゃうんですけど…!なんで?
「待ってよ俺なんか怒らせる事した…?ごめん、俺分かってなくて…ッ、だからちゃんと話し合いたい!」
「違うの…怒ってないよ?」
「ハッキリ言わなきゃ分からないじゃん」
「ーーっ、徹くんが悪いとかじゃなくて…」
「だったらそういう態度やめろよ!俺は駄目で岩ちゃんに甘える、なんて…なんだよそれ!~~大体、幼なじみはハグもチューも膝枕もほっぺたスリスリもしねぇんだよ!だからなまえは岩ちゃんと絶対にすんなよ!」
「?」
なまえに拒否されれば余裕なんて無くなり幼い駄々っ子に戻る。及川の行動指針である筈の一貫性(感情)が、なまえが関わるとグラリと揺らいで仕舞う。及川がつい子供っぽい口調で甘え放って仕舞えば、なまえは肩をぴくん、と跳ねさせた。
「徹くんには、御付き合いしている女性が居るでしょ?」
「ーーだから、何だよ…!」
「大切だから御付き合いしてるんじゃないの…?なのに、なんで私に…っ」
「は?なまえには関係ないでしょ?ーー俺と俺のカノジョの事でお前が口挟んでくるな」
「~~!?…とにかく、もう触らないで…!」
見事に双方の意見が拗れ違う。及川は恋焦がれてる片思いの子から自身のカノジョの事を僅かな話題でも触れて、ましてや見当違いな事を彼女の口から言って欲しくない。だって及川にとってはなまえだけが愛おしく大切でーー…なまえが大切だからカノジョと付き合って居るのだから。延いては自身を拒むなんて以ての外であるのだ。一方のなまえは、及川から自分が叱られている感覚、そして自身にとっては親密な幼なじみであり且つ心の支えになる及川からガッツリと一線引かれた戸惑いと(当然だろうけど)カノジョが大切だからお前は余計な口を出すな、と突き放された衝撃に揺れては、先程の空き教室での一幕を思い返し、つい視界がじわっ…と滲み瞳に零れ落ちそうな涙を浮かべ及川を見上げれば、なまえを待ち受けていたのは、酷く傷付いた及川の表情と次の瞬間にドンッ、と壁に身体を押し付けられ逃げられない様に捕まえられて、なまえの華奢な身体をギュゥッ、と抱きしめ閉じ込められた事だった。
「ーー徹く、」
「うるさい…!俺に対して…っもう触らないで、なんて言い過ぎだろ…ほんっとムカつく…!」
「だって私…ふぎゅ」
「…なまえの言う事なんか、聞いてやんない」
クソ、クソクソクソ…!悔しい。こんなんただの八つ当たりでしか無く故に益々、なまえを困らせてるだけだ。なまえの言う存在の件だって至極当然であり、現在に於いてなまえを困らせてる現状も及川の頭では確りと理解してるのにも拘わらず、それでもこんな事態に成ろうが僅かに身体が震える及川の背に手を回し、余計な事は言わず黙ってポンポン…と背中を擦り慰め受け止めてくれるなまえは、やはり及川にとっても非常に心の支えにあるのだろう。スゥッ…と蔑んだ心を簡単に溶かしていくのだ。
「私、徹くんの事ーー…ずっとずっと、大好き。いつでも貴方の味方だよ」
「何今更トーゼンな事言ってんの。幾ら俺を手のひらで転がそうとしても俺は謝りません。俺は間違った事言ってねぇからな…っ(ーー"大好き"の言葉の意味合いが、俺とお前じゃ違うんだよ)」
「ふふっ、"ごめんなさい"の言葉なんていらないよ。…大丈夫、伝わってるから」
「~~何さ、俺がガキみたいじゃん」
「うーん…猛くんの方がお兄ちゃん、かな?」
「はァー!?」
なのに心地よく温かい光で心がトクン、トクン、と満たされる。この子はずるい。そんななまえの秘めた力に毎度驚かされるばかりだった。ーーそう云えば、こうして以前にも似た様な情景があった。及川が笑わなくなった在る時期、中学の在の頃。前方後方に挟まれ"天才"による脅威から強い葛藤により酷く押し潰されそうになった現在の様な在る放課後、純粋ななまえに勝手に八つ当たって無理やり腕を引いては抱き締め今のようにポンポン…と撫でられ包み込まれて励まされたのは、今も鮮明に覚えている。
「ーーあと三秒、三秒だけ此の儘で居させて。そしたら今日は帰してやる」
「今だけ、だよ?徹くんに御付き合いされている女性が居る時は…私に過剰に触らない、でね…っ」
「(カノジョ捨てたらオマエが俺の全てを受けとめてくれんのかよ)ーーほら、さっさと数えろ」
「っ、いち」(嫌い)(好き)
「にー」(他の女性に触れた貴方の手が)(頭の天辺から足の爪先、深淵まで)
「さん…」(私をおいていかないで)(俺だけを愛してくれたらいいのに)
心地よい可憐な声で儚い想いを込めた一輪の花のスリーカウント。天使の輪を円盤とした子守唄の中、故に三秒しか許されない砂時計をひっくり返せば、一秒刻む事に及川の核心をキラキラ…した小さな金平糖の砂に願いと想いを馳せた。本来であれば、流れ星に頼るなんて馬鹿げてる。全ては自身で掴み取るモノなんて綺麗事は随分と前から聞き飽きた台詞だ。
「…ほらほら、さっさと帰んべ帰んべ」
「あ、はいっ…早く戸締りしなくちゃ」
「ーーなまえ」
「うん…?」
「さっきの質問の答え。俺にカノジョが居てもさ、なまえの胸と尻だけは触って良いよね?」
ぱちん、と乾いた音の後に星の記号がオマケに一文字キラキラ光り、及川の片頬に小さな痛みが広がったのだった。