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「そんなちっちゃなナリしてよう食うわな」
「~~む、ぐ」
「およ。悪い意味やなくて…なまえちゃんは全く変わらんなぁと。ほい茶」
治から手に渡されたお茶をこくん、と飲み、ふぅ、と一息ついた後、頬を染めながら小さく御礼を言う。絶品であると好評なおにぎり宮は、東京オリンピック開催期間である間は会場販売しており、勿論、なまえもしょっちゅう足を運んでいた。本来であればイートインスペースは無いのだが、客足の落ち着いた時間帯、尚且つ治となまえとの関係があり、特別に販売するスペースの隣に小さなテーブルと椅子を準備して貰ってはお言葉に甘えて座る。会場には仕事で出向いており、その中でも休憩時間であったなまえは、治と楽しく会話しながら食事させて貰っていた。
「えっと…それは歳ばっかりとって中身は成長してないってこと?」
「ぷッ、なんや。ちゃんと自覚あるやん」
「うぅっ…治く、」
「安心せぇ。ーー美味そうにめし食う姿がずっと可愛い」
「~~っ、すぐ揶揄うんだから…」
「はいよ、なまえちゃんの好きな具材のおにぎり。たんと召し上がれ?食いしん坊チャン」
「わぁっ…嬉しい。ありがとう!治くんのおにぎりの虜になったきっかけの子なんだよ!」
「(ほれそういうとこやぞ)知っとる、もう何度も聞いたで。ーーなぁなまえちゃん、オリンピック終わったらまた暫くはコッチ帰ってこんの?」
「あ、うん。また仕事や帰省の際は美味しい食事を食べに伺うから宜しくね?ふふっ、おにぎり宮は私が日本に戻る時の楽しみのひとつなんだよ。幸せ~」
「……おん。何食いたいか事前に言いや。なまえちゃんの為に準備しといちゃる。トクベツやで」
「わーい!ありがとう食の神様、治さま…!」
あ、テイクアウトで梅と高菜と…と追加で頼むなまえに治は、ふふっと笑いながら可愛い彼女の為に愛情を込めて握っていく。如何かこれだけはなまえが全部食すのを祈って。
「ーーテイクアウト分はなまえちゃんが全部食うんか?」
「うん、そうだよ?~~あ!まさか食べ過ぎってドン引きしてる…!?」
「おん、しとる。俺より食いよるぞ?(嘘)」
「い、いいの!だって大好きなんだから仕方ないよ…!」
「大好き、ねぇ……ほれ、おにぎりが何処に消えて行ったんか調べたる。ちょっくら服捲りあげてその薄い腹を俺に見せてみぃ」
「…だめ!ついつい食べ過ぎちゃって今はお腹ぽこってなってるから恥ずかしい!後で運動しなきゃ…」
「ふふ。ええねその調子。ぽっこり可愛いしなまえちゃんはもっと肉付けんとあかん」
「…お肉付いたら付いたで侑くんと一緒になって太った、なんて意地悪言うの知ってるよ!」
「(ほんまこの子にはなんぼなっても敵わんな…癒される)」
二人が出会ったきっかけと云えば、あるバレーボール雑誌に載っている事から互いの存在のみを知り得る事に成り、ゆくゆくは治が高校二年生の頃(その際に北はじめ稲荷崎とも出会う)なまえが高校三年生の時に医務室や救護室の手伝いに来ていた春高会場で、初めて顔を合わせて出会うのだ。其れはまた後の御話でーー
◇◇◇
「ウチの片割れとええコンビになるんやないの?及川さん」
「ふふ、私もそう思う。例えば何かのイベントの機会でも、いつか侑くんと徹くんが同じチームで行う試合を見てみたいなぁ…」
「……なんや、今ので満足できへんのか。欲張りさんやなぁ、なまえちゃんは」
そ、そうだよね、贅沢言っちゃって恥ずかしい…と頬を染めるなまえの姿に、つい言葉の選択や発言、状況下を脳内で無理に逸脱させて妄想して仕舞えば、治の口角が満足気、そして悪戯に上がるのになまえは全く気が付かない。
「ーー俺、毎度思うんやけど…何で青葉城西が全国来なかったんかって…すまん、意味わからん事言うとんのは分かっとる」
「えっ…?」
「アンタらが二年の時に全国来とったらーー…俺にだってチャンスあったのに。…こんな形で、俺が何も出来ずに負けるなんて絶対に無かったんや」
「治、くん…?」
灰色の瞳の奥に潜む狐火で出会った瞬間から一切変わらない彼女の瞳の輝きをジッ…と射貫く様に見つめれば、瞞された時間の針がカチリ、と止まる。然しながら、させてなるものかと華やかな強き守護が入ったので在ろう次の瞬間ーー…"及川先生!すみません。ちょっと宜しいですか?"なんて頃合良くスタッフからお呼出がかかり、なまえは返事をし手荷物をまとめて、治に、ご馳走様でした、また来ます、暑いから体調に気をつけてね、色々有難う、等の挨拶を丁寧に行えば、おん、ほなね、の治の声掛けの後に、ぱたぱた、と急いで仕事に戻って行った。
「(…腹、減った)」
なまえを見てると無性に腹減ってくる。其れは彼女を雑誌で見た時から、春高の際に出会った頃から今までずっと変わらない。ーー残念ながら、世の中には稀に理屈じゃ罷り通らない事が存在する。故に無情にも自身(等)も味わっている最中であるのだ。自身の持つ遺伝子や細胞が彼女を必然的に欲しがって居る様で偶にキツい。懐かしい当時、ぽやぽや垂れ耳子うさぎに目の前で無自覚にぷりぷりされれば、当然、肉食である遺伝子細胞レーダーが反応し彼女の細い喉元を幾度となく噛み付きたく成った…そんな淡い思い出が蘇る。治は彼女の笑顔を心に思い浮かばせながら、次の販売分のおにぎりを拵えるのだ。
「~~む、ぐ」
「およ。悪い意味やなくて…なまえちゃんは全く変わらんなぁと。ほい茶」
治から手に渡されたお茶をこくん、と飲み、ふぅ、と一息ついた後、頬を染めながら小さく御礼を言う。絶品であると好評なおにぎり宮は、東京オリンピック開催期間である間は会場販売しており、勿論、なまえもしょっちゅう足を運んでいた。本来であればイートインスペースは無いのだが、客足の落ち着いた時間帯、尚且つ治となまえとの関係があり、特別に販売するスペースの隣に小さなテーブルと椅子を準備して貰ってはお言葉に甘えて座る。会場には仕事で出向いており、その中でも休憩時間であったなまえは、治と楽しく会話しながら食事させて貰っていた。
「えっと…それは歳ばっかりとって中身は成長してないってこと?」
「ぷッ、なんや。ちゃんと自覚あるやん」
「うぅっ…治く、」
「安心せぇ。ーー美味そうにめし食う姿がずっと可愛い」
「~~っ、すぐ揶揄うんだから…」
「はいよ、なまえちゃんの好きな具材のおにぎり。たんと召し上がれ?食いしん坊チャン」
「わぁっ…嬉しい。ありがとう!治くんのおにぎりの虜になったきっかけの子なんだよ!」
「(ほれそういうとこやぞ)知っとる、もう何度も聞いたで。ーーなぁなまえちゃん、オリンピック終わったらまた暫くはコッチ帰ってこんの?」
「あ、うん。また仕事や帰省の際は美味しい食事を食べに伺うから宜しくね?ふふっ、おにぎり宮は私が日本に戻る時の楽しみのひとつなんだよ。幸せ~」
「……おん。何食いたいか事前に言いや。なまえちゃんの為に準備しといちゃる。トクベツやで」
「わーい!ありがとう食の神様、治さま…!」
あ、テイクアウトで梅と高菜と…と追加で頼むなまえに治は、ふふっと笑いながら可愛い彼女の為に愛情を込めて握っていく。如何かこれだけはなまえが全部食すのを祈って。
「ーーテイクアウト分はなまえちゃんが全部食うんか?」
「うん、そうだよ?~~あ!まさか食べ過ぎってドン引きしてる…!?」
「おん、しとる。俺より食いよるぞ?(嘘)」
「い、いいの!だって大好きなんだから仕方ないよ…!」
「大好き、ねぇ……ほれ、おにぎりが何処に消えて行ったんか調べたる。ちょっくら服捲りあげてその薄い腹を俺に見せてみぃ」
「…だめ!ついつい食べ過ぎちゃって今はお腹ぽこってなってるから恥ずかしい!後で運動しなきゃ…」
「ふふ。ええねその調子。ぽっこり可愛いしなまえちゃんはもっと肉付けんとあかん」
「…お肉付いたら付いたで侑くんと一緒になって太った、なんて意地悪言うの知ってるよ!」
「(ほんまこの子にはなんぼなっても敵わんな…癒される)」
二人が出会ったきっかけと云えば、あるバレーボール雑誌に載っている事から互いの存在のみを知り得る事に成り、ゆくゆくは治が高校二年生の頃(その際に北はじめ稲荷崎とも出会う)なまえが高校三年生の時に医務室や救護室の手伝いに来ていた春高会場で、初めて顔を合わせて出会うのだ。其れはまた後の御話でーー
◇◇◇
「ウチの片割れとええコンビになるんやないの?及川さん」
「ふふ、私もそう思う。例えば何かのイベントの機会でも、いつか侑くんと徹くんが同じチームで行う試合を見てみたいなぁ…」
「……なんや、今ので満足できへんのか。欲張りさんやなぁ、なまえちゃんは」
そ、そうだよね、贅沢言っちゃって恥ずかしい…と頬を染めるなまえの姿に、つい言葉の選択や発言、状況下を脳内で無理に逸脱させて妄想して仕舞えば、治の口角が満足気、そして悪戯に上がるのになまえは全く気が付かない。
「ーー俺、毎度思うんやけど…何で青葉城西が全国来なかったんかって…すまん、意味わからん事言うとんのは分かっとる」
「えっ…?」
「アンタらが二年の時に全国来とったらーー…俺にだってチャンスあったのに。…こんな形で、俺が何も出来ずに負けるなんて絶対に無かったんや」
「治、くん…?」
灰色の瞳の奥に潜む狐火で出会った瞬間から一切変わらない彼女の瞳の輝きをジッ…と射貫く様に見つめれば、瞞された時間の針がカチリ、と止まる。然しながら、させてなるものかと華やかな強き守護が入ったので在ろう次の瞬間ーー…"及川先生!すみません。ちょっと宜しいですか?"なんて頃合良くスタッフからお呼出がかかり、なまえは返事をし手荷物をまとめて、治に、ご馳走様でした、また来ます、暑いから体調に気をつけてね、色々有難う、等の挨拶を丁寧に行えば、おん、ほなね、の治の声掛けの後に、ぱたぱた、と急いで仕事に戻って行った。
「(…腹、減った)」
なまえを見てると無性に腹減ってくる。其れは彼女を雑誌で見た時から、春高の際に出会った頃から今までずっと変わらない。ーー残念ながら、世の中には稀に理屈じゃ罷り通らない事が存在する。故に無情にも自身(等)も味わっている最中であるのだ。自身の持つ遺伝子や細胞が彼女を必然的に欲しがって居る様で偶にキツい。懐かしい当時、ぽやぽや垂れ耳子うさぎに目の前で無自覚にぷりぷりされれば、当然、肉食である遺伝子細胞レーダーが反応し彼女の細い喉元を幾度となく噛み付きたく成った…そんな淡い思い出が蘇る。治は彼女の笑顔を心に思い浮かばせながら、次の販売分のおにぎりを拵えるのだ。