コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「落ち着いて先ずは一本切ってこー!」
「マッチポイントね…フフン、やっぱり最後に飾るのは俺だ…なッ!」
「…ナイサー」
ドキュッ、と花巻のサーブが撃たれれば、女川の腕に当たりボールが空に上がる。及川の言う様に”今の青城は血反吐を吐いて今迄の全てを注ぎ込んで完成させたチーム”であり、他にも注力して来たが特に全体的に遺憾無くサーブの威力は上げて来た。ーーなのにも拘わらず、伊達工は簡単にサービスエースを取らせてくれない。寧ろ絶対に離してたまるか、と喰らい付いて来ては万が一、ファイナルセットまで持ち越されて仕舞えば、もれなく消化不良、胃痛、胸焼けが待っている。恐らく青城と伊達工の食い合わせの相性は悪い。
「…雑草でも飾ったか?」
「…ゔっ…ウルセぇ雑草ナメんなよっ…!ドウゾお前ら何卒よしなに!」
「ーーさて、この局面で伊達工はどうくるか…!」
「二口行けっ!」
「!(二口クンか…!エースだしまぁ、そうだよなーー…ッ!?)」
作並が二口に向けてトスを綺麗に上げれば二口の決意の瞳が英明を帯びる。その勢いに不覚に一瞬怯むも、確りと2枚で挑んだ松川の左手を堅い銃弾がガツン、と強く弾き背いては、青城コートへと深く抉るのだ。
「っしゃァァ!お前ら絶対に諦めんなよ!」
「ぁっ…一静くん!指は大丈夫…!?」
「ひー痛ぇー…んあ、ヘーキヘーキ!なまえちゃん有難うね。然しまァ凄い鬼迫。相当なもん背負ってるね二口新主将…ふふっ、なまえちゃんに対する想いも関係あるのかな?」
「……っ、あ…の…(ぼふん)」
"…ただ、あなたもバレーボール好きなんだなって…" "…夢中だよ"
なまえが初めて二口の部屋にお邪魔した時の事を思い出す。彼曰く夢中になっているバレーボールの事を語る時の表情と今現在、目の前で熱戦を繰り広げ青葉城西から勝ちを捥ぎ取ろうとする姿に心を強く打たれ、なまえの大きな瞳からは涙が自然と溢れて仕舞い、彼女が記しているノートの伊達工の文字の部分は、ぽた、ぽた、と流れ零れた彼女の温かい涙で滲み跡が残るのだ。
「ヒュー♪二口はホントかっけえな!」
「トーゼンだろ?奴らに負けてたまるかよ…!青城終わらせて烏野にリベンジマッチ挑むんだからな!ギャーギャー大声上げて観戦してるあの暇な先輩共に雪辱を果たす場面を見せ付けてやりたいわけー」
「!ーーぷッ、相変わらず素直じゃねぇな」
「yes,sir!…二口先輩、そしたら次どうしますか…?」
「連続得点するに決まってンだろ。お前も次に前衛回るけど、さっき言った通りツーのチャンスがあればフェイントじゃ無くてイイからな?」
「!ーーウッス!」
黄金川が前衛に回る事で青根、二口と共に伊達工が誇る県内最強3枚が完成するので必然と防御力が上がる。そうなれば司令塔である及川の意識がブロックに対して強く反映し「小賢しい…!」と苦虫を噛み潰す。非常に目障りである3枚を如何に掻い潜り弾を撃ち抜くかーー計略を頭の中で巡らせるのだ。
「ーー岩ちゃん!」
「(ーーらしくねぇなァ及川…ッ)」
女川のサーブを花巻が不本意にも少し短めに上げ、及川は伊達工ブロックを警戒しネットから少し離れた位置に岩泉へとトスを上げ、若干打ち難いながらもスパイクを放つが鉄壁から上手く弾かれる。
「パンタロン!」
「オーライ!」
ワンチ!との青根の掛け声に女川が素早く反応し、黄金川へとボールが絶妙に繋がって行く。これを落とせば自身は伊達工にとって無価値である、と意地でもボールを繋げる黄金川は、まさにこの次の瞬間、二口の言う反撃の狼煙を上げるチャンスかもしれない、と熱く思った。
"「ブッ叩け」"
「(ーー誰の陣地に許可無くナメたモン、ブッ放してやがんだよこのクソガキ共が…!)」
バキャン、と黄金川のツー尚且つ強打を床を抉る様に撃ち抜けば、連続得点を成し青城に新たな銃創を確実に遺すと、背後に浮かび上がる独眼から親指を下に向けられながら色の無い瞳で銃口を向けて撃ち放たれ、結果的には銃弾が容赦無く身体を掠められた様な感覚を覚えた岩泉は、自身の瞳の奥の蝋燭を激しく燃やす。
「ーーいつも通りでいい。俺に勝負させろ」
オレに勝負させろ、の"オ"の一言目から始まり"ろ"迄に駆け、岩泉の強い瞳は徐々に開きながら力強い目の色のトーンへと変えていく。ーー及川はビクッ、と身体を跳ねさせ敬礼して居たが、なまえは寧ろとくん、と鼓動を覚えるのだ。
「(はじめちゃん…かっこいい…!)」
昔から誰よりも優しくて力強い目が大好きだった。何時だって一番最初に傍に駆け寄り嬉しい時は一緒に喜んでくれて、泣いた時や悲しい時は抱き締めて励ましてくれて、どんな時だって味方で居てくれて護ってくれて、その瞳で真っ直ぐに真剣に向き合い全てを受け止め支えてくれる。ーーなまえがなまえで在り続けると云う核心と根幹の意味を一番に理解して、心の底から許してくれる瞳の持ち主であるのだから。
「ーーなまえ、俺にも気合いの一発!」
「うんっ…!はじめちゃんは私自身にとっても素敵で無敵のエースだよ!ずっと傍で見てるからね!」
「ははっ、俄然無敵な気分だな」
「~~なまえはいつも岩ちゃん贔屓でずるい!俺にはやめなさい、って怒ったのに…!しかも岩ちゃんそれ俺の台詞…(事情が事情でめちゃくちゃ恥ずかしい)」
「~~っ…徹くんは私のヒーローだよ!それに…私は徹くんの傍に誰よりも居たつもりだよ…?」
「フッフーン!俄然無敵な気分!」
(及川はもう論外だからノーカン)なまえの事に成れば岩泉だって大概だ、世話が掛かって仕方ねぇな、なんて今も周囲は茶化して言うけれど、なまえは頬を染めてふわりと優しく微笑む。岩泉に幾度となく救われてきたのだから、なまえだって岩泉の望む事は沢山叶えたいと心から思ってる。故に岩泉とはこれからもずっと家族の様な大切な関係で居たい。
「岩ちゃん!」
「オオッ!」
「青根、黄金!岩泉さん来るぞ…!簡単に斃ンなよ!」
「ーーー!(ギンッ)」
「ウッス!」
「「「ーー此処で終わってたまるか…ッ!!」」」
「ーー締めが甘いぜ、一年坊主!」
岩泉の前に3枚壁である鉄壁が聳え立つ。青白い蝋燭で瞬時に黄金川の僅かに空いた腕の隙間に狙いを定めて灯し、腕のド真ん中に弾を通し撃ち抜き鈍い音をコート中に響き渡らせれば、天下分け目の合戦は、最後の切り札であるエーススペードが剣と共に突き射さりチェックメイト、終幕する。
「ッシ!!」
青葉城西25-伊達工業22、セットカウントは2-0で青葉城西は勝利し準決勝へと進むのだ。
「~~ッ…!ぐすっ…ぅッ…!」
「ーー…行くぞ」
「泣くんじゃねぇよ整列と挨拶。…お前は真面目過ぎるんだよ。マジで疲れねぇの?」
「ーー二口先輩すん"ま"せん"…!俺の所為で…ッ」
"「ーー何事に於いても過程なんてモノはそんなに重要じゃねぇ。結局、求められるのは結果、ってのは嫌でも理解してる。ーー俺が悪い。最後、ボールを拾えなかった、腕に当てられなかった。ーーあの時、俺が動けなかったから伊達工は負けた。本心ではバレーボールを続けたかった先輩の引退を俺が早めたんだ」"
「ーーんや?俺だろ」
ーーー
ーー
ー
「ーーよくやった。褒めて遣わす」
「はァ?何でアンタが俺に…ッ」
「及川さんからのお褒めの言葉を有難く受け取るんだね。ーーそれにさ、二口くんも主将になってからドーセなまえからしか褒めて貰ってないんでしょ?如何したって主将は常に完璧且つ絶対的であれ、周囲は主将に頼るのはトーゼン、って思われやすいからねー」
「~~ゔぐッ…!?ウゼー…!(図星)」
「まぁ俺の場合はそんなもん全然ヘーキだったけど!(本当はなまえにめちゃくちゃ甘えまくってた時期がある)…それでもほんのちょこーーっとは理解してるつもり」
「……まぁ、自分で全てを決意して腹括ってきたつもりで居たけど…っ…クソッ…っ、すげ、悔し…ッ…やめ、コッチ見んな…!」
「ーー泣き終わったら今より更に練習して強くなれよ。…もっと出来るだろ?お前のバレーボールは何一つ終わってない、決意の選択は何一つ間違いなんかじゃないって事を、来年こそ証明してみせろ」
「ーーッ…ス…!」
「あとさー、バレーボールは6人で強い方が強いんだからね?俺が俺がは煩いし見苦しいのでヤメテクダサーイ」
「~~ゔっ…!?」
最後の挨拶時、及川と二口だけの接する或る一面が生じる。会話内容は二人以外には誰にも聞こえる事無く、故に誰も本人達から聞き出す事も無く、只遠くから二人を温かく見守っていたのだ。
「あらまァ、何だかんだで結局は良いコンビになるんでないの?」
「岩泉なんか嫉妬しちゃったりなんかしたりして」
「いや何で俺が」
なまえは、及川が二口の頭をワシャワシャワシャと撫で回す事から始まり互いに戯れ合う情景を見ては、胸がポカポカと温かくなり、ぽろぽろぽろ…ッと大粒の涙をたくさん溢れさせながら、ふわりと微笑むのだった。
◇◇◇
「ーーで、なまえちゃんはウチの主将と伊達工の新主将、皆の麗しい天使様からドッチの野郎専属女神様になるの?もうそろそろ言い付け通りにイイコにオスワリして待ってるアイツらに答え出してやったら?ーーあんまりマテを続けたら飢えた猛獣化、若しくは隙を狙う烏やゴリラ、狐共に横からガブッと噛み付かれるかもよん。それとも、俺にする?一生、お姫様の如く大切にするよ?」
「~~ひぅっ…!?一静くん…耳…だめぇ…もぅっ…すぐに揶揄わないで!」
「(ウーン、冗談じゃなくて本気になっちゃいそう)」
松川からコッソリ耳許で囁かれたなまえは、ぴゃっ、と肩を跳ね上げさせ、真実を全部を見透かして居るであろう松川と目を合わせれば、ぼふん!と真っ赤になり目にじわぁっ…と涙を溜めながらも「ーー私も、彼に私の本心を真剣に伝えなきゃ…!」と小さな身体で決心するのだ。
「(ーーさて、なまえちゃんの純白で純粋な透き通る真心に、真っ先に浮かび上がるのはドッチかな?)」
さぁ、賽は投げられた。もう二度と後戻りは出来ない
「マッチポイントね…フフン、やっぱり最後に飾るのは俺だ…なッ!」
「…ナイサー」
ドキュッ、と花巻のサーブが撃たれれば、女川の腕に当たりボールが空に上がる。及川の言う様に”今の青城は血反吐を吐いて今迄の全てを注ぎ込んで完成させたチーム”であり、他にも注力して来たが特に全体的に遺憾無くサーブの威力は上げて来た。ーーなのにも拘わらず、伊達工は簡単にサービスエースを取らせてくれない。寧ろ絶対に離してたまるか、と喰らい付いて来ては万が一、ファイナルセットまで持ち越されて仕舞えば、もれなく消化不良、胃痛、胸焼けが待っている。恐らく青城と伊達工の食い合わせの相性は悪い。
「…雑草でも飾ったか?」
「…ゔっ…ウルセぇ雑草ナメんなよっ…!ドウゾお前ら何卒よしなに!」
「ーーさて、この局面で伊達工はどうくるか…!」
「二口行けっ!」
「!(二口クンか…!エースだしまぁ、そうだよなーー…ッ!?)」
作並が二口に向けてトスを綺麗に上げれば二口の決意の瞳が英明を帯びる。その勢いに不覚に一瞬怯むも、確りと2枚で挑んだ松川の左手を堅い銃弾がガツン、と強く弾き背いては、青城コートへと深く抉るのだ。
「っしゃァァ!お前ら絶対に諦めんなよ!」
「ぁっ…一静くん!指は大丈夫…!?」
「ひー痛ぇー…んあ、ヘーキヘーキ!なまえちゃん有難うね。然しまァ凄い鬼迫。相当なもん背負ってるね二口新主将…ふふっ、なまえちゃんに対する想いも関係あるのかな?」
「……っ、あ…の…(ぼふん)」
"…ただ、あなたもバレーボール好きなんだなって…" "…夢中だよ"
なまえが初めて二口の部屋にお邪魔した時の事を思い出す。彼曰く夢中になっているバレーボールの事を語る時の表情と今現在、目の前で熱戦を繰り広げ青葉城西から勝ちを捥ぎ取ろうとする姿に心を強く打たれ、なまえの大きな瞳からは涙が自然と溢れて仕舞い、彼女が記しているノートの伊達工の文字の部分は、ぽた、ぽた、と流れ零れた彼女の温かい涙で滲み跡が残るのだ。
「ヒュー♪二口はホントかっけえな!」
「トーゼンだろ?奴らに負けてたまるかよ…!青城終わらせて烏野にリベンジマッチ挑むんだからな!ギャーギャー大声上げて観戦してるあの暇な先輩共に雪辱を果たす場面を見せ付けてやりたいわけー」
「!ーーぷッ、相変わらず素直じゃねぇな」
「yes,sir!…二口先輩、そしたら次どうしますか…?」
「連続得点するに決まってンだろ。お前も次に前衛回るけど、さっき言った通りツーのチャンスがあればフェイントじゃ無くてイイからな?」
「!ーーウッス!」
黄金川が前衛に回る事で青根、二口と共に伊達工が誇る県内最強3枚が完成するので必然と防御力が上がる。そうなれば司令塔である及川の意識がブロックに対して強く反映し「小賢しい…!」と苦虫を噛み潰す。非常に目障りである3枚を如何に掻い潜り弾を撃ち抜くかーー計略を頭の中で巡らせるのだ。
「ーー岩ちゃん!」
「(ーーらしくねぇなァ及川…ッ)」
女川のサーブを花巻が不本意にも少し短めに上げ、及川は伊達工ブロックを警戒しネットから少し離れた位置に岩泉へとトスを上げ、若干打ち難いながらもスパイクを放つが鉄壁から上手く弾かれる。
「パンタロン!」
「オーライ!」
ワンチ!との青根の掛け声に女川が素早く反応し、黄金川へとボールが絶妙に繋がって行く。これを落とせば自身は伊達工にとって無価値である、と意地でもボールを繋げる黄金川は、まさにこの次の瞬間、二口の言う反撃の狼煙を上げるチャンスかもしれない、と熱く思った。
"「ブッ叩け」"
「(ーー誰の陣地に許可無くナメたモン、ブッ放してやがんだよこのクソガキ共が…!)」
バキャン、と黄金川のツー尚且つ強打を床を抉る様に撃ち抜けば、連続得点を成し青城に新たな銃創を確実に遺すと、背後に浮かび上がる独眼から親指を下に向けられながら色の無い瞳で銃口を向けて撃ち放たれ、結果的には銃弾が容赦無く身体を掠められた様な感覚を覚えた岩泉は、自身の瞳の奥の蝋燭を激しく燃やす。
「ーーいつも通りでいい。俺に勝負させろ」
オレに勝負させろ、の"オ"の一言目から始まり"ろ"迄に駆け、岩泉の強い瞳は徐々に開きながら力強い目の色のトーンへと変えていく。ーー及川はビクッ、と身体を跳ねさせ敬礼して居たが、なまえは寧ろとくん、と鼓動を覚えるのだ。
「(はじめちゃん…かっこいい…!)」
昔から誰よりも優しくて力強い目が大好きだった。何時だって一番最初に傍に駆け寄り嬉しい時は一緒に喜んでくれて、泣いた時や悲しい時は抱き締めて励ましてくれて、どんな時だって味方で居てくれて護ってくれて、その瞳で真っ直ぐに真剣に向き合い全てを受け止め支えてくれる。ーーなまえがなまえで在り続けると云う核心と根幹の意味を一番に理解して、心の底から許してくれる瞳の持ち主であるのだから。
「ーーなまえ、俺にも気合いの一発!」
「うんっ…!はじめちゃんは私自身にとっても素敵で無敵のエースだよ!ずっと傍で見てるからね!」
「ははっ、俄然無敵な気分だな」
「~~なまえはいつも岩ちゃん贔屓でずるい!俺にはやめなさい、って怒ったのに…!しかも岩ちゃんそれ俺の台詞…(事情が事情でめちゃくちゃ恥ずかしい)」
「~~っ…徹くんは私のヒーローだよ!それに…私は徹くんの傍に誰よりも居たつもりだよ…?」
「フッフーン!俄然無敵な気分!」
(及川はもう論外だからノーカン)なまえの事に成れば岩泉だって大概だ、世話が掛かって仕方ねぇな、なんて今も周囲は茶化して言うけれど、なまえは頬を染めてふわりと優しく微笑む。岩泉に幾度となく救われてきたのだから、なまえだって岩泉の望む事は沢山叶えたいと心から思ってる。故に岩泉とはこれからもずっと家族の様な大切な関係で居たい。
「岩ちゃん!」
「オオッ!」
「青根、黄金!岩泉さん来るぞ…!簡単に斃ンなよ!」
「ーーー!(ギンッ)」
「ウッス!」
「「「ーー此処で終わってたまるか…ッ!!」」」
「ーー締めが甘いぜ、一年坊主!」
岩泉の前に3枚壁である鉄壁が聳え立つ。青白い蝋燭で瞬時に黄金川の僅かに空いた腕の隙間に狙いを定めて灯し、腕のド真ん中に弾を通し撃ち抜き鈍い音をコート中に響き渡らせれば、天下分け目の合戦は、最後の切り札であるエーススペードが剣と共に突き射さりチェックメイト、終幕する。
「ッシ!!」
青葉城西25-伊達工業22、セットカウントは2-0で青葉城西は勝利し準決勝へと進むのだ。
「~~ッ…!ぐすっ…ぅッ…!」
「ーー…行くぞ」
「泣くんじゃねぇよ整列と挨拶。…お前は真面目過ぎるんだよ。マジで疲れねぇの?」
「ーー二口先輩すん"ま"せん"…!俺の所為で…ッ」
"「ーー何事に於いても過程なんてモノはそんなに重要じゃねぇ。結局、求められるのは結果、ってのは嫌でも理解してる。ーー俺が悪い。最後、ボールを拾えなかった、腕に当てられなかった。ーーあの時、俺が動けなかったから伊達工は負けた。本心ではバレーボールを続けたかった先輩の引退を俺が早めたんだ」"
「ーーんや?俺だろ」
ーーー
ーー
ー
「ーーよくやった。褒めて遣わす」
「はァ?何でアンタが俺に…ッ」
「及川さんからのお褒めの言葉を有難く受け取るんだね。ーーそれにさ、二口くんも主将になってからドーセなまえからしか褒めて貰ってないんでしょ?如何したって主将は常に完璧且つ絶対的であれ、周囲は主将に頼るのはトーゼン、って思われやすいからねー」
「~~ゔぐッ…!?ウゼー…!(図星)」
「まぁ俺の場合はそんなもん全然ヘーキだったけど!(本当はなまえにめちゃくちゃ甘えまくってた時期がある)…それでもほんのちょこーーっとは理解してるつもり」
「……まぁ、自分で全てを決意して腹括ってきたつもりで居たけど…っ…クソッ…っ、すげ、悔し…ッ…やめ、コッチ見んな…!」
「ーー泣き終わったら今より更に練習して強くなれよ。…もっと出来るだろ?お前のバレーボールは何一つ終わってない、決意の選択は何一つ間違いなんかじゃないって事を、来年こそ証明してみせろ」
「ーーッ…ス…!」
「あとさー、バレーボールは6人で強い方が強いんだからね?俺が俺がは煩いし見苦しいのでヤメテクダサーイ」
「~~ゔっ…!?」
最後の挨拶時、及川と二口だけの接する或る一面が生じる。会話内容は二人以外には誰にも聞こえる事無く、故に誰も本人達から聞き出す事も無く、只遠くから二人を温かく見守っていたのだ。
「あらまァ、何だかんだで結局は良いコンビになるんでないの?」
「岩泉なんか嫉妬しちゃったりなんかしたりして」
「いや何で俺が」
なまえは、及川が二口の頭をワシャワシャワシャと撫で回す事から始まり互いに戯れ合う情景を見ては、胸がポカポカと温かくなり、ぽろぽろぽろ…ッと大粒の涙をたくさん溢れさせながら、ふわりと微笑むのだった。
◇◇◇
「ーーで、なまえちゃんはウチの主将と伊達工の新主将、皆の麗しい天使様からドッチの野郎専属女神様になるの?もうそろそろ言い付け通りにイイコにオスワリして待ってるアイツらに答え出してやったら?ーーあんまりマテを続けたら飢えた猛獣化、若しくは隙を狙う烏やゴリラ、狐共に横からガブッと噛み付かれるかもよん。それとも、俺にする?一生、お姫様の如く大切にするよ?」
「~~ひぅっ…!?一静くん…耳…だめぇ…もぅっ…すぐに揶揄わないで!」
「(ウーン、冗談じゃなくて本気になっちゃいそう)」
松川からコッソリ耳許で囁かれたなまえは、ぴゃっ、と肩を跳ね上げさせ、真実を全部を見透かして居るであろう松川と目を合わせれば、ぼふん!と真っ赤になり目にじわぁっ…と涙を溜めながらも「ーー私も、彼に私の本心を真剣に伝えなきゃ…!」と小さな身体で決心するのだ。
「(ーーさて、なまえちゃんの純白で純粋な透き通る真心に、真っ先に浮かび上がるのはドッチかな?)」
さぁ、賽は投げられた。もう二度と後戻りは出来ない