コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「ーー大王様と茶髪アシメの人、本気でなまえさんの事が好きなんだな」
和久南戦を突破し現在は青城vs伊達工を観戦している烏野の日向は、自身の手にある食べ終えた栄養補助食品チョコバーの包み紙をクシャッ、と握り、隣に座る影山にポツリ、と零す。
「なまえさんは及川さんにとって人生の半分だからな。単純に好きって言葉の枠じゃ収まらねぇぞ。然もそれは決して大袈裟なんかじゃねぇ。もし其の事を理解して及川さんに立ち向かってるのなら…伊達工のあの人はスゲーよ」
俺には出来なかったから、なんて心内の深淵で泡となった本心をゴポッ…と僅かに溢れさせて仕舞えば、彼女に対しては何時の日か恩返しが出来れば其れで良いんだ、其れだけを考えるべきだ、と早急に自身に言い聞かせては気持ちを覆い被せ、繰り広げられている熱戦なる試合を目で追うのだ。
「つーかイキナリ何だよ。軽々しくなまえさんの名前呼んでんじゃねーよ」
「…昨日、大王様になまえさんには指一本触れるな、って言われた」
「ーー!悪い事は言わねぇからなまえさんの事で及川さんに触れるな「いいや!そんなのオカシイだろ。確かに二人の間には俺が知らない長い時間があるのかもしれないけどさ…大体、そんなの俺の気持ちもなまえさんの気持ちも無視してるじゃんか!ーーそれにっ、も、若しかしたら…なまえさんが俺の事好きになってくれるかも、しれないじゃん?」いや、それはねぇな」
「ーー俺が将来オリンピックで金メダルをたくさん得たら…ッ」
「青葉城西に通って忘れがち…まぁ、青葉城西も十分にエリート学校だけど、なまえさんに至っては生粋のお嬢様だぞ?富や名声はもう十分だろ。大体、なまえさんはそういう事で人を判断する御方だと思ってんのか?あと!今のお前の実力で何がオリンピックだよ口より練習しろボケ」
天地がひっくり返っても無いとキッパリ断言する影山は、ズガンッ!との衝撃と共に短い唸りを発する後に項垂れながらも、決して諦めないと意気込み、真っ直ぐに一途に想う夕焼けの色を見て、正直、無理矢理に蓋をし泣いて諦めた自身の心の何処かで、強く羨しくも思うのだ。
「なまえさんと出逢って、それが例え叶わない苦しい恋愛であったとしても…彼女を好きになって良かった、って心の底から思うんだーー…だから俺、無理だ。この気持ちに嘘ついて切り捨てる、なんて事は出来ねぇもん。~~未だ告白の返事だって貰ってねぇしな!」
「ーーなまえさんが及川さんと結婚しても、か?ま、当たって砕けるのも一つの選択肢としてはあるよな」
「影山君は色々と勝手に決めつけないでくれますかね!?ーーそんときはそんときで…夫婦とか恋愛とか、そういうのとは別の愛情の形でなまえさんをずーっと護り続けるんだよ!そりゃぁ…夜な夜な枕を濡らすンだろうけど…ッ、でも誰かを生涯一途に愛するなんてめちゃくちゃスゲー事じゃん!それに…他人に迷惑を掛けなきゃ心の中だけで密かに想う事なんて自由だろ!」
先程も含め、及川から何度も牽制やら警告をされて居るが日向は諦めない。例え、なまえが及川若しくは二口との未来を描いたとしても日向の心にはなまえが永遠に存在するのだ。正直、日向から言わせて貰えば、なまえとの思い出全てが謂わば”天使の梯子”である。彼女自身である天使の導き、幸運の象徴、日向(及川二口)自身の魂や精神の維持や安定ーー其れは、及川も二口も全く同じであると云う事。天界からの贈り物である天使の絵画をロープパーテーションの外側から眺め魅了されるだけでは終わらず、理性を失い心を奪われ手を伸ばす行為に及んだ場合は、代償として儚くも虚しくもそういう事に繋がる。聖なる彼女には、生半可な意志及び安易に手を出しては決して成らないのだから。
◇◇◇
「ーーにゃろ…ッ!~~痛ぇし重てぇなクソがァ!!」
及川のジャンプサーブが二口の腕に当たり捉え、コート内に鈍い音が鳴り響いてはボールが空に打ち上がれば、二口からの声掛けにより伊達工は更に気迫が強まり鋭い闘心体勢に入る。
「チッ。崩れないのがホントに腹立つ…!」
「ーーへぇ?さっきからサーブにも確り喰い付いてきやがる。チャラい見掛けに寄らずバレーに対してもガッツリ根性あんじゃねーの」
「一理ある。それに伊達工は新体制だろ?短期間で此処まで仕上げて来た事に対しては新主将に素直に賞賛するべきじゃない?いやー、来年は伊達工に宮城総ナメされそうで怖いね」
「つーか、アンタら似過ぎてて見てるこっちがお腹いっぱいよ。寧ろ仲良くしたら?アイドルユニットでも組めよ。それかお笑い芸人」
「!?ブフォーー!(花巻さんヤメテ…!今俺の大事なターンだからやめて…!)」
「度々、あの子に対して母性こちょこちょ擽られないで岩ちゃん!そしてまっつんも恐ろしい予言ヤメテクダサイ!マッキーはマジでヤメテ!ほんとにヤメテ!」
「お前も二口に来年あるんだし、って言ってただろ。予言じゃねぇの?俺らが3年間掛けて打倒したい白鳥沢を来年、伊達工がボコボコにしたりしてー」
「~~っはァ!?」
「主将にエース張るなら素質十分ちゅー話だろ……ッ、金田一!一度コッチもどせ!」
1セット目は青葉城西が先取し2セット目が始まった。青葉城西としては、三年生が全員引退し新体制を組んで挑んだ伊達工の火勢にまさか此処まで喰らい付かれるとは…と、正直に思う所ではあった。こうなると今も今後も非常に厄介すぎる相手である。
「二口ナイスキー!!」
松川と及川の2枚で体勢に入るが、及川の右手に二口のスパイクが鈍い音を出しながら強く背き弾き、伊達工の貴重な1点となる。二口が及川に向けてピース☆しながら舌出した後に青根と共にウェーイ!と身体同士を当てる姿を見ながら、ビギギッと青筋を浮き立たせ「~~あんな意地悪ピース舌出し野郎とユニットなんて組めるわけないじゃん!組んでも方向性の違いにより直ぐに解散だね!」と怒る及川に対し花巻は「ドンマイ!ーーえー、ゴホン。君は仕事を選べる立場にあると思うのかね?」と続け、岩泉は金田一に「花巻がアホな事言って乱してスマンな(怒)俺もジャッジ遅かった」とフォローを入れては謝り「テメェら次!さっさと切り替えろ!」と双方に喝を入れるのだ。
「徹くん…っ、指は大丈夫!?」
「!モチロン☆なまえ、今此処でいつもの言葉で励ましてくれる?」
「あ、うんっ…!徹くんは絶対に大丈夫だよ!いつも見守ってるから頑張ってね!」
「ウンウン、なまえはずっと俺の傍に居テネ。余所見しちゃ駄目だよ。あ、この試合終わったら何時もの御褒美のチューをたっぷりオネガイね?」
「!?~~っ…信じられない…!私そんな事してない…っ!徹くんのファンの子も見に来てるんだよ!?やめなさい!」
「ピース☆(舌出し)」
なまえの可愛いひと言で上機嫌になり漲る及川に対して、青城からは一周回って呆れ気味にやれやれ…の声と怒号の交わり、向かいのコートに立つ二口はカチンとした表情をし及川を睨んだ。
「二口先輩、お願いしますっ」
「(!?堅ちゃん…高過ぎるトス苦手じゃ…っ…あ、ぅぅっ…やっぱり…!)」
「ラッキー!」
「すげー高いトスだな。あの大型セッター上手く磨けば鋭い武器になるぞ」
2セット目も激戦となる。花巻のフェイント、及川のサービスエース、互なる攻防戦、大型セッター黄金川のトリッキーな動き(セッターとしては未だ赤子同然の為、偶に大幅に失敗する)結果、良くも悪くも稀に見る非常に味わい深い試合になったのは間違い無い。
「ーー及川さん!」
「ッ青根!一瞬でも気ぃ抜くとアレに心臓撃ち抜かれるぞ!」
及川の瞳の色が鋭く変わり渡がセットしたボールに鋭敏を込め殺気を放ち、其れを全身で受けた二口は青根に言葉を発する。ブロックを乱す事無く青根と二口の2枚を造り上げるが、及川はその先を見定め叩き撃ち硝煙をあげた瞬間、トリッキーなる黄金川の3枚の鉄壁が急に繋がり完成し、重たい弾を見事にバチィン、とガードし弾いた。
「ひえ~っ」
「ボェーッ」
「黄金ナイスキー!!」
「~~ッ…毎度毎度、痛ってぇな!ちったァ加減しろやコノヤロォォオ!」
「ウッス!毎度毎度スンマセン二口先輩!みょうじさんもスンマセン!この通り大丈夫そうなんで可愛いお顔の涙を拭いてください!試合終わったら二口先輩の手当てを宜しくお願いします!」
「~~えっ、わ、私…あの…ごめんなさい…!あの…大丈夫そうなら、良かった、です…」
「…ッ、いちいちなまえを挟むな!お前の頭ん中が大丈夫じゃなさそうだなコラァ!」
なまえの心臓がドクン、となる。
3枚ブロックの際に、二口が黄金川と青根に勢い良く強めに押され倒れた瞬間、支柱との至近距離もあり保護材があるといっても万が一…とつい深く考えて仕舞い、何より先程の澤村の事もあり場面を思い出して仕舞えば強く情緒が揺れ、瞬時に目に涙を溜め込み顔色を変え口に手を抑え身体が前屈みになり一粒涙を零せば、足元にノートをバサッ、と落として仕舞うのだ。
「(怖い…どうか怪我だけは…神様、お願いします…!)」
ーーなまえは、いつか二口が怪我をするのでは無いかと非常に不安であった。先日の様にいくら本人に強くお願いしたとしても他人からの発端として繋がれば塞ぎようがない。伊達工の火勢なる劇的な成長の裏には、必ずそれ相応のモノが伴い存在する。
「ーークッソめんっどくせぇチームと当たったもんだ…!」
「正直ちょっとスカッとしたな。ーーおいなまえ、誰も怪我してねぇから安心してその場に座ってろ」
「確かに。ま、及川にも二口にもなー?」
「聞こえてっから!」
ーーー
ーー
ー
他の部員は決してなまえに対して行わないが(阿吽が怖すぎる)もう既になまえの名前を呼ばすとも寧ろ声を出さずとも、岩泉や及川が手を掲げた瞬間に彼らが今一番欲しい物が手に渡って居るのが至極神業である。決して誰の邪魔をしない、空気が流れる様にスムーズである、軽やかに自然に溶け込むーーなまえの仕事の範疇を超えた行動が凄すぎる最中で行われたタイムアウトは、1セット目より2セット目の方が接戦し、執拗く噛み付いては牙を食い込ませた鬼迫のある伊達工、あの絶対王者である白鳥沢と何度も接戦してきた強豪なる青葉城西に対して、如何にしてファイナルセットまで持ち越し次に繋げるか、互いに最善を尽くしながら先を見据えて深く思考し、接戦する激動の試合は続いたのだ。
「態度も感情もバレバレのツーほど美味しいボールは無いんだよね。先程はゴチソウサマ☆」
「~~クッソが…!」
岩泉のレシーブを及川がセットしようと見せ掛けた瞬間、綺麗な指で押されて軽やかにストン、と伊達工コートにボールが吸い込まれる様に落ちては、及川のお見事であるお手本を目の前で見せつけられた二口と黄金川が、今度はビキビキビキッ…と青筋を浮かべた。
「ーー俺ら窮地っすね二口先輩。ふふっ、この試合苦しいですけどその分、心臓がバクバクして生きてる心地がハンパねぇっす…!」
「ーーフルで心臓鳴らしてろ。そんで奴らをファイナルセットまで引き摺り込んで心折りに行くんだよ。鉄壁は崩れねぇンだからな!」
現在、2セット目ーー伊達工20青葉城西24 マッチポイントである。
和久南戦を突破し現在は青城vs伊達工を観戦している烏野の日向は、自身の手にある食べ終えた栄養補助食品チョコバーの包み紙をクシャッ、と握り、隣に座る影山にポツリ、と零す。
「なまえさんは及川さんにとって人生の半分だからな。単純に好きって言葉の枠じゃ収まらねぇぞ。然もそれは決して大袈裟なんかじゃねぇ。もし其の事を理解して及川さんに立ち向かってるのなら…伊達工のあの人はスゲーよ」
俺には出来なかったから、なんて心内の深淵で泡となった本心をゴポッ…と僅かに溢れさせて仕舞えば、彼女に対しては何時の日か恩返しが出来れば其れで良いんだ、其れだけを考えるべきだ、と早急に自身に言い聞かせては気持ちを覆い被せ、繰り広げられている熱戦なる試合を目で追うのだ。
「つーかイキナリ何だよ。軽々しくなまえさんの名前呼んでんじゃねーよ」
「…昨日、大王様になまえさんには指一本触れるな、って言われた」
「ーー!悪い事は言わねぇからなまえさんの事で及川さんに触れるな「いいや!そんなのオカシイだろ。確かに二人の間には俺が知らない長い時間があるのかもしれないけどさ…大体、そんなの俺の気持ちもなまえさんの気持ちも無視してるじゃんか!ーーそれにっ、も、若しかしたら…なまえさんが俺の事好きになってくれるかも、しれないじゃん?」いや、それはねぇな」
「ーー俺が将来オリンピックで金メダルをたくさん得たら…ッ」
「青葉城西に通って忘れがち…まぁ、青葉城西も十分にエリート学校だけど、なまえさんに至っては生粋のお嬢様だぞ?富や名声はもう十分だろ。大体、なまえさんはそういう事で人を判断する御方だと思ってんのか?あと!今のお前の実力で何がオリンピックだよ口より練習しろボケ」
天地がひっくり返っても無いとキッパリ断言する影山は、ズガンッ!との衝撃と共に短い唸りを発する後に項垂れながらも、決して諦めないと意気込み、真っ直ぐに一途に想う夕焼けの色を見て、正直、無理矢理に蓋をし泣いて諦めた自身の心の何処かで、強く羨しくも思うのだ。
「なまえさんと出逢って、それが例え叶わない苦しい恋愛であったとしても…彼女を好きになって良かった、って心の底から思うんだーー…だから俺、無理だ。この気持ちに嘘ついて切り捨てる、なんて事は出来ねぇもん。~~未だ告白の返事だって貰ってねぇしな!」
「ーーなまえさんが及川さんと結婚しても、か?ま、当たって砕けるのも一つの選択肢としてはあるよな」
「影山君は色々と勝手に決めつけないでくれますかね!?ーーそんときはそんときで…夫婦とか恋愛とか、そういうのとは別の愛情の形でなまえさんをずーっと護り続けるんだよ!そりゃぁ…夜な夜な枕を濡らすンだろうけど…ッ、でも誰かを生涯一途に愛するなんてめちゃくちゃスゲー事じゃん!それに…他人に迷惑を掛けなきゃ心の中だけで密かに想う事なんて自由だろ!」
先程も含め、及川から何度も牽制やら警告をされて居るが日向は諦めない。例え、なまえが及川若しくは二口との未来を描いたとしても日向の心にはなまえが永遠に存在するのだ。正直、日向から言わせて貰えば、なまえとの思い出全てが謂わば”天使の梯子”である。彼女自身である天使の導き、幸運の象徴、日向(及川二口)自身の魂や精神の維持や安定ーー其れは、及川も二口も全く同じであると云う事。天界からの贈り物である天使の絵画をロープパーテーションの外側から眺め魅了されるだけでは終わらず、理性を失い心を奪われ手を伸ばす行為に及んだ場合は、代償として儚くも虚しくもそういう事に繋がる。聖なる彼女には、生半可な意志及び安易に手を出しては決して成らないのだから。
◇◇◇
「ーーにゃろ…ッ!~~痛ぇし重てぇなクソがァ!!」
及川のジャンプサーブが二口の腕に当たり捉え、コート内に鈍い音が鳴り響いてはボールが空に打ち上がれば、二口からの声掛けにより伊達工は更に気迫が強まり鋭い闘心体勢に入る。
「チッ。崩れないのがホントに腹立つ…!」
「ーーへぇ?さっきからサーブにも確り喰い付いてきやがる。チャラい見掛けに寄らずバレーに対してもガッツリ根性あんじゃねーの」
「一理ある。それに伊達工は新体制だろ?短期間で此処まで仕上げて来た事に対しては新主将に素直に賞賛するべきじゃない?いやー、来年は伊達工に宮城総ナメされそうで怖いね」
「つーか、アンタら似過ぎてて見てるこっちがお腹いっぱいよ。寧ろ仲良くしたら?アイドルユニットでも組めよ。それかお笑い芸人」
「!?ブフォーー!(花巻さんヤメテ…!今俺の大事なターンだからやめて…!)」
「度々、あの子に対して母性こちょこちょ擽られないで岩ちゃん!そしてまっつんも恐ろしい予言ヤメテクダサイ!マッキーはマジでヤメテ!ほんとにヤメテ!」
「お前も二口に来年あるんだし、って言ってただろ。予言じゃねぇの?俺らが3年間掛けて打倒したい白鳥沢を来年、伊達工がボコボコにしたりしてー」
「~~っはァ!?」
「主将にエース張るなら素質十分ちゅー話だろ……ッ、金田一!一度コッチもどせ!」
1セット目は青葉城西が先取し2セット目が始まった。青葉城西としては、三年生が全員引退し新体制を組んで挑んだ伊達工の火勢にまさか此処まで喰らい付かれるとは…と、正直に思う所ではあった。こうなると今も今後も非常に厄介すぎる相手である。
「二口ナイスキー!!」
松川と及川の2枚で体勢に入るが、及川の右手に二口のスパイクが鈍い音を出しながら強く背き弾き、伊達工の貴重な1点となる。二口が及川に向けてピース☆しながら舌出した後に青根と共にウェーイ!と身体同士を当てる姿を見ながら、ビギギッと青筋を浮き立たせ「~~あんな意地悪ピース舌出し野郎とユニットなんて組めるわけないじゃん!組んでも方向性の違いにより直ぐに解散だね!」と怒る及川に対し花巻は「ドンマイ!ーーえー、ゴホン。君は仕事を選べる立場にあると思うのかね?」と続け、岩泉は金田一に「花巻がアホな事言って乱してスマンな(怒)俺もジャッジ遅かった」とフォローを入れては謝り「テメェら次!さっさと切り替えろ!」と双方に喝を入れるのだ。
「徹くん…っ、指は大丈夫!?」
「!モチロン☆なまえ、今此処でいつもの言葉で励ましてくれる?」
「あ、うんっ…!徹くんは絶対に大丈夫だよ!いつも見守ってるから頑張ってね!」
「ウンウン、なまえはずっと俺の傍に居テネ。余所見しちゃ駄目だよ。あ、この試合終わったら何時もの御褒美のチューをたっぷりオネガイね?」
「!?~~っ…信じられない…!私そんな事してない…っ!徹くんのファンの子も見に来てるんだよ!?やめなさい!」
「ピース☆(舌出し)」
なまえの可愛いひと言で上機嫌になり漲る及川に対して、青城からは一周回って呆れ気味にやれやれ…の声と怒号の交わり、向かいのコートに立つ二口はカチンとした表情をし及川を睨んだ。
「二口先輩、お願いしますっ」
「(!?堅ちゃん…高過ぎるトス苦手じゃ…っ…あ、ぅぅっ…やっぱり…!)」
「ラッキー!」
「すげー高いトスだな。あの大型セッター上手く磨けば鋭い武器になるぞ」
2セット目も激戦となる。花巻のフェイント、及川のサービスエース、互なる攻防戦、大型セッター黄金川のトリッキーな動き(セッターとしては未だ赤子同然の為、偶に大幅に失敗する)結果、良くも悪くも稀に見る非常に味わい深い試合になったのは間違い無い。
「ーー及川さん!」
「ッ青根!一瞬でも気ぃ抜くとアレに心臓撃ち抜かれるぞ!」
及川の瞳の色が鋭く変わり渡がセットしたボールに鋭敏を込め殺気を放ち、其れを全身で受けた二口は青根に言葉を発する。ブロックを乱す事無く青根と二口の2枚を造り上げるが、及川はその先を見定め叩き撃ち硝煙をあげた瞬間、トリッキーなる黄金川の3枚の鉄壁が急に繋がり完成し、重たい弾を見事にバチィン、とガードし弾いた。
「ひえ~っ」
「ボェーッ」
「黄金ナイスキー!!」
「~~ッ…毎度毎度、痛ってぇな!ちったァ加減しろやコノヤロォォオ!」
「ウッス!毎度毎度スンマセン二口先輩!みょうじさんもスンマセン!この通り大丈夫そうなんで可愛いお顔の涙を拭いてください!試合終わったら二口先輩の手当てを宜しくお願いします!」
「~~えっ、わ、私…あの…ごめんなさい…!あの…大丈夫そうなら、良かった、です…」
「…ッ、いちいちなまえを挟むな!お前の頭ん中が大丈夫じゃなさそうだなコラァ!」
なまえの心臓がドクン、となる。
3枚ブロックの際に、二口が黄金川と青根に勢い良く強めに押され倒れた瞬間、支柱との至近距離もあり保護材があるといっても万が一…とつい深く考えて仕舞い、何より先程の澤村の事もあり場面を思い出して仕舞えば強く情緒が揺れ、瞬時に目に涙を溜め込み顔色を変え口に手を抑え身体が前屈みになり一粒涙を零せば、足元にノートをバサッ、と落として仕舞うのだ。
「(怖い…どうか怪我だけは…神様、お願いします…!)」
ーーなまえは、いつか二口が怪我をするのでは無いかと非常に不安であった。先日の様にいくら本人に強くお願いしたとしても他人からの発端として繋がれば塞ぎようがない。伊達工の火勢なる劇的な成長の裏には、必ずそれ相応のモノが伴い存在する。
「ーークッソめんっどくせぇチームと当たったもんだ…!」
「正直ちょっとスカッとしたな。ーーおいなまえ、誰も怪我してねぇから安心してその場に座ってろ」
「確かに。ま、及川にも二口にもなー?」
「聞こえてっから!」
ーーー
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他の部員は決してなまえに対して行わないが(阿吽が怖すぎる)もう既になまえの名前を呼ばすとも寧ろ声を出さずとも、岩泉や及川が手を掲げた瞬間に彼らが今一番欲しい物が手に渡って居るのが至極神業である。決して誰の邪魔をしない、空気が流れる様にスムーズである、軽やかに自然に溶け込むーーなまえの仕事の範疇を超えた行動が凄すぎる最中で行われたタイムアウトは、1セット目より2セット目の方が接戦し、執拗く噛み付いては牙を食い込ませた鬼迫のある伊達工、あの絶対王者である白鳥沢と何度も接戦してきた強豪なる青葉城西に対して、如何にしてファイナルセットまで持ち越し次に繋げるか、互いに最善を尽くしながら先を見据えて深く思考し、接戦する激動の試合は続いたのだ。
「態度も感情もバレバレのツーほど美味しいボールは無いんだよね。先程はゴチソウサマ☆」
「~~クッソが…!」
岩泉のレシーブを及川がセットしようと見せ掛けた瞬間、綺麗な指で押されて軽やかにストン、と伊達工コートにボールが吸い込まれる様に落ちては、及川のお見事であるお手本を目の前で見せつけられた二口と黄金川が、今度はビキビキビキッ…と青筋を浮かべた。
「ーー俺ら窮地っすね二口先輩。ふふっ、この試合苦しいですけどその分、心臓がバクバクして生きてる心地がハンパねぇっす…!」
「ーーフルで心臓鳴らしてろ。そんで奴らをファイナルセットまで引き摺り込んで心折りに行くんだよ。鉄壁は崩れねぇンだからな!」
現在、2セット目ーー伊達工20青葉城西24 マッチポイントである。