コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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新山工戦を見事突破し無事に代表決定戦2日目を迎えた。アリーナでは烏野と和久南の試合の最中、時計の針は待ってくれず一刻をじわりじわりと狭めては、胸が張り裂けそうな強い緊張感に襲われるなまえであったが、次の運命の伊達工戦に備えて事前に各々全ての備品等の支度や最終確認、部員の体調管理チェック、諸処の準備も滞り無く終え、伊達工の追分と滑津に挨拶をする流れは、決して何一つ怠らず熟して居た。
「こちらこそ宜しく。いや~いつもご丁寧に有難いね」
「私はみょうじさんの事を心から尊敬しています。本日は宜しくお願いします」
「…そんな!わ、私なんか滑津さんが羨ましくて…失礼な事をたくさん…っ、ごめんなさい…!」
「?えっと、私は特に身に覚えが無くて…?とにかくそんなジメジメはやめましょう!今日は両校にとって大切な日なんですから…!勝っても負けても関係性は変わらないって事で!」
傍から見れば少々、強面ではあるが実は和やかな雰囲気である追分の為人、そして滑津の凛として綺麗な風貌に気持ちが施され、ぽわり、ぽわり、と胸を鳴らす。
ーーー
ーー
ー
「先生、お忙しい中ごめんなさい。消毒液とガーゼを少し頂けますか?足りなくて…」
「あらら?模範解答のなまえちゃんが珍しいね。どうぞお好きに持ってって~」
「(っ…皆の足引っ張りしてしまうなんて…そんな事は間違っても絶対にしてはだめ…!)」
挨拶を済ませ青城の誰よりも先にアリーナへ向かう途中で、なまえは、衛生用品の備品が少し足りない事に気付き顔色を変え慌てて医務室に足を急がせた。いけない…!こういう僅かな気の抜け所が駄目なんだ、だから見抜かれて指摘されるんだ、と、小さな手をぎゅっと握り自身を深く責めるのだ。早く、早く、早く気持ちを切り替えなければ…!
◇◇◇
「先生!ウチのが試合中に接触しちまって…!見てやってください…!」
やはり常に時間に余裕を持たせて行動する、と云うなまえの考えは絶対に間違って無かった、と実感する出来事に出会う。備品を鞄の中に仕舞い込み再度厳重に確認し次こそ完璧に準備し終えた今でも、大分時間に余裕が生まれている。そんな瞬間、医務室の扉をガラッと開けてバタバタバタ…っと慌てて入室してきた烏野の烏養と谷地そして口から血を流している澤村が現われ、なまえはサァッ…と顔色を青く変えては自身の口に手を抑えた。聞けば和久南戦の途中、選手と接触し顔を強く打った衝撃で歯を折り流血、頭等の体調確認をしに医務室に訪れた、との事だった。
「大地さん、先ずは容態を確認しましょう。先生、私も時間の許す限り手伝います…!」
「OK。時間配分は気をつけるけど一応アラーム掛けとく。青葉城西にはなまえちゃんは不可欠だからね…恨まれたくないもの。澤村くん、先ずは目の動きを見せてくれるかな?」
「ーーなまえちゃん…スマン。助かる」
未だ時間が余って居たなまえも医師の指示に従い助手に入り、なまえが助手に入るから問題無いと判断した医師が、先に烏養を試合に戻る様に促し判断通り直ぐに処置、問題無しと診断及び最終確認を終えた後、なまえが気を利かせ澤村の抜けた歯の保管の為に滅菌ケースに歯を入れ渡し、今後困ったことが何か在れば気軽に直ぐに相談してと、みょうじ系列の繋がりのある有名病院の名刺を渡す等の素早い対応の後、では私はそろそろ…と、その場の全員に丁寧且つ軽やかに挨拶しては、直ぐに自身の仕事を全力で全うする為に急いでその場から離れたのだ。
「~~しゅ、しゅしゅ、すごい…!背中を向けた髪の一本先までも天使や妖精さんみたい…!ふわとろうるうる透明感凄まじく半端ないッ…!?私、あんな清楚可憐な人と人生で初めて出会いました…!未だ胸がギュゥっとして心臓止まりそうであります…!お知り合いですか…!?」
「…あぁ、うん。彼女は青城のマネージャーでね。…参ったな…彼女の貴重な時間を奪ってしまったのに確りと御礼出来なかった…」
◇◇◇
「メンバー夫々のドリンク良し、タオル(温・冷)ストック含め良し、テーピング、冷却剤…必要備品準備良し、記録の為の準備、その他も大丈夫!今度こそ全てに於いて抜かりない…!ーーっ、あとは、私…っ!」
白鳥沢の試合が行われているアリーナの控え場の直ぐ横で、何時でもコートに出れる様にスタンバイをしているなまえは一人で胸付近に手をあて、ふるふる…と身体を震わせて居た。
「徹くん…堅ちゃん…」
自身が何時も甘えて頼って居る人達は真剣勝負を控える為にサブアリーナに居る。故にこの場所には誰一人居ない。即ち、自分だけで乗り越えなければ成らないのだ。
「前の試合、白鳥沢があと5点です」
一方、サブアリーナに居る伊達工と青城は「行くぞ」と声掛けと気合いを入れて戦場へとキュッ、と足を進めーー彼らの足音を時計の針の音に馳せて、なまえの心の中に今までの高校生活3年間を全て振り返る情景が鮮明に彩られると、なまえ自身の大きな目には天使の御加護の輝きを宿すのだ。
ーーー
ーー
ー
「オネガイシマース」
「…しァス」
「まあまあそんな気張んないで!君らには来年だってあるんだし?(いっちゃん言いたい奴に念願の言葉言ってやったり…!めちゃくちゃスカッとするざまぁ)」
「関係ねぇっスよ。立場とかそういうの…コートに入ったら関係ない…!」
「ダヨネー、知ってる。君と俺は思考も志向も嗜好もソックリだもん」
「「過程よりも結果」」
「……なーんか、主将になってから更に随分と良い顔付き身体付きになったじゃん。腕や腰の痣傷は練習の勲章かな?我武者羅と効率的は上手く使い分けなきゃ」
「ーーイケメン伊達男、だけじゃつまんねぇだろ?いくら形成が不利であろうが俺は戦うのをやめない。だから俺みたいなのに足元掬われないように気をつけてクダサイネ。…バレーボールも、大切な女も」
「~~ホンット腹立つし厄介だな…!」
コイントスにより二人の会話は此処で終了、果たしてどの様な会話が繰り広げられているかは分からないが、なまえは真剣な表情で主将同士の挨拶と握手を見届ける。
「先にレシーブ。今んとこ伊達工の目立つサーバーはあのクソガキ…2番ね。凹ますくらいはお前らにも譲るけど、心折れるまでブッ叩いて再起不能にさせるのは俺が直々に手を下すから横取りすんなよ」
「「ン"!?(ヒュン)」」
「っ、徹くん…!さすがにそんな言い方っ……むぐっ…!?」
「あ、ごめーん。口塞ぐの手じゃなくて唇が良かった?この場で今すぐ仕切り直しても俺は構わないけど」
「~~っ…!」
「(なんちゅーあからさま対応…なまえちゃん絡むとコイツ本当に怖え…)」
「~~!及川コラ…!」
「安心しなよ。向こうも全く同じ事言っててウケるわ。伊達に今まで及川に肩肘張って来ただけじゃねぇな」
言葉には出さないが苦笑いする花巻、なまえの口を掌で覆う及川を制止する岩泉、伊達工から似たり寄ったりの言葉と周囲の反応が見えて笑う松川の横で、主将がこんなん(なまえの取り合い繰り広げる)じゃ互いに(伊達工だって青葉城西だって)大変だよなー、なんて金田一はつい内心では思ってしまう反面、双方主将二人をここまで魅了させ動かし豹変させてしまう青城の天使の魅力には、毎度驚かされてばかりだ。金田一から見ても、なまえは世界にたった一人だけしか存在しない天界からの贈り物であった。
「一本ナイッサー!二口先輩の勝利の女神、みょうじさんがすぐ傍で見てますよー!」
「!?~~にゃろ…っ、」
無自覚なる純粋な黄金川の声がコート上に響けば、ぼふん!と頬を染める二口のジャンプサーブが青城コートに綺麗に突き刺さり、先ずはサービスエースを取る。黄金川の発言した言葉だけ拾えば、確かに励ましの常套句ではあるのだが、いやいやマジで色々とオカシイだろうが…!とワナワナと肩を震えさせる人物達が立つ痛恨をした青城コートは、一瞬にしてビキビキビキビキ…ッ、と怒り心頭し空気も一瞬にして冷え固まる。
そして追い討ちをかけたのはなまえの表情だった。二口と同じ様に真っ赤な顔をしながら小さく驚いた声が可愛く零れた事が引き金となり、ブッチーン、と青城のやる気スイッチは連打されれば、及川の先程の言葉通りに絶対凹ます…ッ!との如く目の色が鋭くなるのだ。
「(スゲー…)ナ、ナイッサー二口」
「ーー…(ギョッ)」
「~~黄金!おめーはひと言余計なんだよ!パンタロンも小原も青根も此奴を甘やかすな!」
「…まぁ、結果オーライ…?」
「???だって本当の事じゃないっスか!然もこの間だって俺にめちゃくちゃ言ってましたよね?」
「~~う"ぐっ…!~~ウルセェやめろ今すぐに口閉じろ!!」
「ーー任せろ。次の堅ちゃんのボールはこの海の男、貴大くんがレシーブ、んで次に徹くんのセットアップ、一静くんは囮からのはじめちゃんナイスキー!…このパターンでさっさと目障りなサーブ切るぞ。アイツにとっちゃあ俺が敗北の女神だ」
「~~マッキー、呼び方…!」
「…お前に呼ばれるとイラッとするヤメロ」
「今までは呼ばれる度に胸がホクホクして温かかったのに呼ばれる人によっちゃゾワゾワして寒いのね、同意」
真っ赤になる二口とわちゃわちゃする伊達工の仲間の様子、入畑の隣に座るなまえが恥ずかしさの余りしゅるる…と小さく縮こまる様子を見て息巻く青城側は、花巻の妙な指令により姿勢とやる気と苛立ちが大幅にパワーアップし火がついた。
「もう一本ナイッサー!」
二口の鋭い目は狙いを定め、弾を装着し音を立ててボールを撃ち放てば、青城コートからは「貴大くん!」と野郎共の低い声が響き渡り花巻と伊達工含む周囲はついギョッとしながらも「ーーッ、あいよ…ッ、徹くん!」と弾の強さと重さに表情を歪めながらも腕で確りとボールを空に上げた。
「ナイスレシーブ…!でも…ひょえ~…悪寒がするぅ…助けて一静くん…!」
「…ほいほーい」
及川の視線を含む遣り取りと松川の華麗なる囮との連携により、伊達工は松川にブロックを音をたてながら確りと揃えて備えた瞬間、掻い潜る岩泉の圧倒的な威力スパイクが伊達工コートにズドン、と音を立てて炸裂する。
「ーーチョーシにのるなよ?なまえはウチの女神だ」
「クソッ…!」
最後の切り札の奥に揺れる蝋燭、灯る霹に、伊達工側はつい無意識にも怯んで仕舞う。これが青葉城西のスペードのエース、スパディルであり、故に戦う相手にとっては古くからの伝承によりカードの見方は地獄行きへと変わるのだ。
「「「「はじめちゃーん、ナイスキー!」」」」
「「岩泉さんナイスキーです!」」(掻き消された)
「なまえ以外の野郎共三名、俺の夢にまでその面と呼び方で出てきやがったらブットバスからな!」
ボールを落とされた伊達工側は青城三年同士の中での急な名前呼びに対し、何かの作戦のサインか…?と顔を顰め警戒を強める。(然しながら意図は無し)
兎に角、岩泉のスパイクは要注意であり下手すれば鉄壁のド真ん中をブチ抜く勢いなので非常に脅威なのだ。
「さすが連携と柔軟、安定の青城っスね…!」
「ーー(コクリ)」
「…チッ。やっぱり岩泉さんは要注意だな…っクソ!作並、お前ならどう考える?」
「そうですねーーでは今から僕が言う事を皆さん試して貰えますか?」
「ーーハッ!あと俺らも真似してみますか?先ずは名前呼びから「お前は練習しろ!」」
「こちらこそ宜しく。いや~いつもご丁寧に有難いね」
「私はみょうじさんの事を心から尊敬しています。本日は宜しくお願いします」
「…そんな!わ、私なんか滑津さんが羨ましくて…失礼な事をたくさん…っ、ごめんなさい…!」
「?えっと、私は特に身に覚えが無くて…?とにかくそんなジメジメはやめましょう!今日は両校にとって大切な日なんですから…!勝っても負けても関係性は変わらないって事で!」
傍から見れば少々、強面ではあるが実は和やかな雰囲気である追分の為人、そして滑津の凛として綺麗な風貌に気持ちが施され、ぽわり、ぽわり、と胸を鳴らす。
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「先生、お忙しい中ごめんなさい。消毒液とガーゼを少し頂けますか?足りなくて…」
「あらら?模範解答のなまえちゃんが珍しいね。どうぞお好きに持ってって~」
「(っ…皆の足引っ張りしてしまうなんて…そんな事は間違っても絶対にしてはだめ…!)」
挨拶を済ませ青城の誰よりも先にアリーナへ向かう途中で、なまえは、衛生用品の備品が少し足りない事に気付き顔色を変え慌てて医務室に足を急がせた。いけない…!こういう僅かな気の抜け所が駄目なんだ、だから見抜かれて指摘されるんだ、と、小さな手をぎゅっと握り自身を深く責めるのだ。早く、早く、早く気持ちを切り替えなければ…!
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「先生!ウチのが試合中に接触しちまって…!見てやってください…!」
やはり常に時間に余裕を持たせて行動する、と云うなまえの考えは絶対に間違って無かった、と実感する出来事に出会う。備品を鞄の中に仕舞い込み再度厳重に確認し次こそ完璧に準備し終えた今でも、大分時間に余裕が生まれている。そんな瞬間、医務室の扉をガラッと開けてバタバタバタ…っと慌てて入室してきた烏野の烏養と谷地そして口から血を流している澤村が現われ、なまえはサァッ…と顔色を青く変えては自身の口に手を抑えた。聞けば和久南戦の途中、選手と接触し顔を強く打った衝撃で歯を折り流血、頭等の体調確認をしに医務室に訪れた、との事だった。
「大地さん、先ずは容態を確認しましょう。先生、私も時間の許す限り手伝います…!」
「OK。時間配分は気をつけるけど一応アラーム掛けとく。青葉城西にはなまえちゃんは不可欠だからね…恨まれたくないもの。澤村くん、先ずは目の動きを見せてくれるかな?」
「ーーなまえちゃん…スマン。助かる」
未だ時間が余って居たなまえも医師の指示に従い助手に入り、なまえが助手に入るから問題無いと判断した医師が、先に烏養を試合に戻る様に促し判断通り直ぐに処置、問題無しと診断及び最終確認を終えた後、なまえが気を利かせ澤村の抜けた歯の保管の為に滅菌ケースに歯を入れ渡し、今後困ったことが何か在れば気軽に直ぐに相談してと、みょうじ系列の繋がりのある有名病院の名刺を渡す等の素早い対応の後、では私はそろそろ…と、その場の全員に丁寧且つ軽やかに挨拶しては、直ぐに自身の仕事を全力で全うする為に急いでその場から離れたのだ。
「~~しゅ、しゅしゅ、すごい…!背中を向けた髪の一本先までも天使や妖精さんみたい…!ふわとろうるうる透明感凄まじく半端ないッ…!?私、あんな清楚可憐な人と人生で初めて出会いました…!未だ胸がギュゥっとして心臓止まりそうであります…!お知り合いですか…!?」
「…あぁ、うん。彼女は青城のマネージャーでね。…参ったな…彼女の貴重な時間を奪ってしまったのに確りと御礼出来なかった…」
◇◇◇
「メンバー夫々のドリンク良し、タオル(温・冷)ストック含め良し、テーピング、冷却剤…必要備品準備良し、記録の為の準備、その他も大丈夫!今度こそ全てに於いて抜かりない…!ーーっ、あとは、私…っ!」
白鳥沢の試合が行われているアリーナの控え場の直ぐ横で、何時でもコートに出れる様にスタンバイをしているなまえは一人で胸付近に手をあて、ふるふる…と身体を震わせて居た。
「徹くん…堅ちゃん…」
自身が何時も甘えて頼って居る人達は真剣勝負を控える為にサブアリーナに居る。故にこの場所には誰一人居ない。即ち、自分だけで乗り越えなければ成らないのだ。
「前の試合、白鳥沢があと5点です」
一方、サブアリーナに居る伊達工と青城は「行くぞ」と声掛けと気合いを入れて戦場へとキュッ、と足を進めーー彼らの足音を時計の針の音に馳せて、なまえの心の中に今までの高校生活3年間を全て振り返る情景が鮮明に彩られると、なまえ自身の大きな目には天使の御加護の輝きを宿すのだ。
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「オネガイシマース」
「…しァス」
「まあまあそんな気張んないで!君らには来年だってあるんだし?(いっちゃん言いたい奴に念願の言葉言ってやったり…!めちゃくちゃスカッとするざまぁ)」
「関係ねぇっスよ。立場とかそういうの…コートに入ったら関係ない…!」
「ダヨネー、知ってる。君と俺は思考も志向も嗜好もソックリだもん」
「「過程よりも結果」」
「……なーんか、主将になってから更に随分と良い顔付き身体付きになったじゃん。腕や腰の痣傷は練習の勲章かな?我武者羅と効率的は上手く使い分けなきゃ」
「ーーイケメン伊達男、だけじゃつまんねぇだろ?いくら形成が不利であろうが俺は戦うのをやめない。だから俺みたいなのに足元掬われないように気をつけてクダサイネ。…バレーボールも、大切な女も」
「~~ホンット腹立つし厄介だな…!」
コイントスにより二人の会話は此処で終了、果たしてどの様な会話が繰り広げられているかは分からないが、なまえは真剣な表情で主将同士の挨拶と握手を見届ける。
「先にレシーブ。今んとこ伊達工の目立つサーバーはあのクソガキ…2番ね。凹ますくらいはお前らにも譲るけど、心折れるまでブッ叩いて再起不能にさせるのは俺が直々に手を下すから横取りすんなよ」
「「ン"!?(ヒュン)」」
「っ、徹くん…!さすがにそんな言い方っ……むぐっ…!?」
「あ、ごめーん。口塞ぐの手じゃなくて唇が良かった?この場で今すぐ仕切り直しても俺は構わないけど」
「~~っ…!」
「(なんちゅーあからさま対応…なまえちゃん絡むとコイツ本当に怖え…)」
「~~!及川コラ…!」
「安心しなよ。向こうも全く同じ事言っててウケるわ。伊達に今まで及川に肩肘張って来ただけじゃねぇな」
言葉には出さないが苦笑いする花巻、なまえの口を掌で覆う及川を制止する岩泉、伊達工から似たり寄ったりの言葉と周囲の反応が見えて笑う松川の横で、主将がこんなん(なまえの取り合い繰り広げる)じゃ互いに(伊達工だって青葉城西だって)大変だよなー、なんて金田一はつい内心では思ってしまう反面、双方主将二人をここまで魅了させ動かし豹変させてしまう青城の天使の魅力には、毎度驚かされてばかりだ。金田一から見ても、なまえは世界にたった一人だけしか存在しない天界からの贈り物であった。
「一本ナイッサー!二口先輩の勝利の女神、みょうじさんがすぐ傍で見てますよー!」
「!?~~にゃろ…っ、」
無自覚なる純粋な黄金川の声がコート上に響けば、ぼふん!と頬を染める二口のジャンプサーブが青城コートに綺麗に突き刺さり、先ずはサービスエースを取る。黄金川の発言した言葉だけ拾えば、確かに励ましの常套句ではあるのだが、いやいやマジで色々とオカシイだろうが…!とワナワナと肩を震えさせる人物達が立つ痛恨をした青城コートは、一瞬にしてビキビキビキビキ…ッ、と怒り心頭し空気も一瞬にして冷え固まる。
そして追い討ちをかけたのはなまえの表情だった。二口と同じ様に真っ赤な顔をしながら小さく驚いた声が可愛く零れた事が引き金となり、ブッチーン、と青城のやる気スイッチは連打されれば、及川の先程の言葉通りに絶対凹ます…ッ!との如く目の色が鋭くなるのだ。
「(スゲー…)ナ、ナイッサー二口」
「ーー…(ギョッ)」
「~~黄金!おめーはひと言余計なんだよ!パンタロンも小原も青根も此奴を甘やかすな!」
「…まぁ、結果オーライ…?」
「???だって本当の事じゃないっスか!然もこの間だって俺にめちゃくちゃ言ってましたよね?」
「~~う"ぐっ…!~~ウルセェやめろ今すぐに口閉じろ!!」
「ーー任せろ。次の堅ちゃんのボールはこの海の男、貴大くんがレシーブ、んで次に徹くんのセットアップ、一静くんは囮からのはじめちゃんナイスキー!…このパターンでさっさと目障りなサーブ切るぞ。アイツにとっちゃあ俺が敗北の女神だ」
「~~マッキー、呼び方…!」
「…お前に呼ばれるとイラッとするヤメロ」
「今までは呼ばれる度に胸がホクホクして温かかったのに呼ばれる人によっちゃゾワゾワして寒いのね、同意」
真っ赤になる二口とわちゃわちゃする伊達工の仲間の様子、入畑の隣に座るなまえが恥ずかしさの余りしゅるる…と小さく縮こまる様子を見て息巻く青城側は、花巻の妙な指令により姿勢とやる気と苛立ちが大幅にパワーアップし火がついた。
「もう一本ナイッサー!」
二口の鋭い目は狙いを定め、弾を装着し音を立ててボールを撃ち放てば、青城コートからは「貴大くん!」と野郎共の低い声が響き渡り花巻と伊達工含む周囲はついギョッとしながらも「ーーッ、あいよ…ッ、徹くん!」と弾の強さと重さに表情を歪めながらも腕で確りとボールを空に上げた。
「ナイスレシーブ…!でも…ひょえ~…悪寒がするぅ…助けて一静くん…!」
「…ほいほーい」
及川の視線を含む遣り取りと松川の華麗なる囮との連携により、伊達工は松川にブロックを音をたてながら確りと揃えて備えた瞬間、掻い潜る岩泉の圧倒的な威力スパイクが伊達工コートにズドン、と音を立てて炸裂する。
「ーーチョーシにのるなよ?なまえはウチの女神だ」
「クソッ…!」
最後の切り札の奥に揺れる蝋燭、灯る霹に、伊達工側はつい無意識にも怯んで仕舞う。これが青葉城西のスペードのエース、スパディルであり、故に戦う相手にとっては古くからの伝承によりカードの見方は地獄行きへと変わるのだ。
「「「「はじめちゃーん、ナイスキー!」」」」
「「岩泉さんナイスキーです!」」(掻き消された)
「なまえ以外の野郎共三名、俺の夢にまでその面と呼び方で出てきやがったらブットバスからな!」
ボールを落とされた伊達工側は青城三年同士の中での急な名前呼びに対し、何かの作戦のサインか…?と顔を顰め警戒を強める。(然しながら意図は無し)
兎に角、岩泉のスパイクは要注意であり下手すれば鉄壁のド真ん中をブチ抜く勢いなので非常に脅威なのだ。
「さすが連携と柔軟、安定の青城っスね…!」
「ーー(コクリ)」
「…チッ。やっぱり岩泉さんは要注意だな…っクソ!作並、お前ならどう考える?」
「そうですねーーでは今から僕が言う事を皆さん試して貰えますか?」
「ーーハッ!あと俺らも真似してみますか?先ずは名前呼びから「お前は練習しろ!」」