コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「白戸と伊達工ドッチが来るかな」
「ーー俺は伊達工が上がってくると思うけど。そう考えると、春高前になまえさんが見学行ってくれて良かった。なまえさんの気遣いというか先を見据える心持というか、ホントに凄いっスよね!彼処は情報拾うのも大変だから、もし今回伊達工と当たんなくても今後の事も考えたら知れて有難いよな」
「まぁね。伊達工かー…うげー…(正直、あの我武者羅具合はお前も同じようにやれって言われてるみたいでゲンナリするんだよなぁ…(嫌いな言葉第2位))なまえさんはどう思う?」
「………」
「?」
「…なまえさん、どうかしました…?まさか、何処か痛いとか急な体調不良とか…!?」
「ーーえ?あ、ううん!ごめんなさい…!いつも通りだよ!」
「? そうッスか…?あの、なんかあればすぐ遠慮無く言ってくださいね!俺は少しでもなまえさんの力になれればって何時も思ってますから!」
「俺にももっと頼ってって言ってるのに、なまえさんはすぐ遠慮するからさ~」
「っ…勇くんも英くんも、ありが「なまえは青葉城西なんだから僅かでも余所見しちゃ駄目だよ。余計な事考えたら許さないからね」ーーっ、」
「「(ヒュン)!?」」
遂に春高宮城県代表決定戦が始まる。
事前に配布されたトーナメント表を見ながらなまえと面して自身らとの対戦相手である各校の事柄を話していた居た金田一と国見は、伊達工の話題が上がった際に何故だかなまえの様子に変化が見えた様な気がして、金田一は心配になり優しく声掛けしたのだが急に背後からの発言が耳に入れば、気が付いた際には既にビクンと肩を跳ね上げて怯える自身らが存在した。
「(マジ…?いや、俺に言ったんだよな?でもなまえさんの名前…ええウソだろ…放つ言葉の一文字毎が妙に鋭くねぇか…?)」
「あっ…違うの…!徹くん、ごめんなさ…」
「ーーちゃんと自覚持てよ。今の青城は血反吐を吐いて今迄の全てを注ぎ込んで完成させたチームなのに、なまえも一緒に戦ってくれなきゃ勝てる試合も勝てないよ」
「そうだよね…とっても大切な時に考え事なんかしてる暇無いよね…ごめんなさい…」
「(や、やっぱりなまえさんに言ってる…!ウソだろあの及川さんがそんな対応すんの!?)お、及川さん!すんません…!俺がなまえさんに余計な事を言ったからです。あ、あとなまえさんは充分すぎる程に今日も俺達の為に尽くしてくれて、決して余所見なんか…っ、だから、そんな強く言わなくても…」
「金田一。…俺はね、ソウイウコトを言ってるわけじゃないんだよ」
周囲の皆は、発言元である方へとギギギ…と振り向けば普段、いつも彼がなまえに対して見せる溺愛や寵愛とは、程遠い雰囲気に非常に強い驚き且つ萎縮しギョッと顔色を変える。然しながらその中でもやはり異を唱える金田一はグッと自身の意を決し及川からなまえを強く庇うが、いとも簡単に撥ね付けられ金田一の声は散る。目の前のこの人には如何なる理由であってもなまえとの事と成れば、決して同じ舞台にさえ上げて貰えず負けるのだ。
「あーあー、アリャなんか一悶着あったな?なまえちゃんおいで~。よしよし貴女はどんな時も健やかにイイコだね」
「花巻は及川にヨシヨシしてきたら?」
「ーー松川クンは俺を火傷させたいのかな?立ち入る場合は先ず消炎させなきゃ駄目でしょ。今はkeepout」
「(ホッ)~~先輩方っ…!」
「ワリィな金田一、及川の事は気にすんな。でもよ、金田一も国見も先ずは目の前の相手だぞ」
「ーーウス。すんません!」
「(しゅん…)勇くん、ごめんなさい…」
「エッ!?いやいやなまえさんは全然!謝んないでクダサイ!」
「ーーほら、なまえは俺とコッチ来て手伝え」
「はい…。あの…はじめちゃんも、ごめんなさい…私また徹くんを怒らせちゃった…」
「ーーん?あぁ、ありゃ拗ねてるだけだから放っておきゃ直る。お前は気にしねぇでさっさと気持ち切り替えろよ」
ーーー
ーー
ー
「ーー及川、コレはなまえの為に用意した物だから渡しておいてくれないか。本来であれば今回も直接、俺が食べさせてやりたかったんだがな。今日は会えなくて残念だーーお前らが試合に負け全国に行けない事でなまえを泣かせる事には成って仕舞うが、また本屋や図書館で出逢うだろう。その時になまえを励ましてやろうとは思っている」
「総合的にふざけんなよオイコラ。然も前回、俺が邪魔してやったの忘れたか?てめぇは懲りねぇな牛島…!」
「ーーー!なまえちゃんソックリ(ぽわん)」
「「「ーー…!?」」」
「はぁぁっ!まさかの乙女心を擽るプレゼント…!ぐぐぐ…先越されたァ…!?~~でも牛島さん、良くこんな可愛い飴見つけましたね。きらきら透き通っててスゲー綺麗…ほんとになまえさんみたいだ…ほぁわぁ…っめちゃくちゃ可愛い…ッ!ーーっへ?青根さん…!なまえちゃん…って…なまえさんとドノヨウナ関係デスカ…!?」
「ーーなまえちゃんは俺の大切なトモダチ。そして俺の大切な仲間の大切な女の子」
なまえは、いつも通りに事前に各々全ての備品等の支度や最終確認、体調管理チェック、諸処の準備も滞り無く完璧に全て終え新山工の監督達に挨拶をし終わる一方で、日向の云う"危険人物と遭遇する場所"である御手洗付近では現在、及川、岩泉と牛島(日向、青根は立ち会う様子)と面する機会が生じており、一触即発なる雰囲気を醸し出して居た。現在は、どうにか触発を食い止め続きは試合で、と上手く締めた「誰であろうと受けて立つ」の言葉の後に、牛島は及川にスッ、と小さくて可愛い子うさぎモチーフである棒付き飴を差し出せば、自身がなまえの為にいつも実家御用達和菓子屋から頼んで準備した物だ、と、威圧を含み重たく無言を貫く及川の窺う事の出来ない表情を全く気にする事無く、只管、言葉を繋げていく。
◇◇◇
「なまえっ…ごめんな!手短にするから」
「ううん、堅ちゃんも試合始まるね。…あのっ、お、おたが…い、頑張ろう、ね…っ…」
「ははっ…!そうだな。今日互いに勝ち上がったらーーまぁ、ドーセ遅かれ早かれいつかは打ち当たる壁だし俺から言わせて貰えばやっと一泡吹かせる日が来たか、って感じだわ。俺となまえーー及川さんの在籍、敢えてこの頃合に公式戦で打ち当たるのは運命だろうけど。…まさしく岐路に相応しい」
「~~っ、」
「ちょっ…!?頼むから今は泣くなよ…!」
「うん、うんっ、わかった…!」
「ーーっ、よし、じゃあ!今のチョーシの儘で俺の人生初の本題を…コホン。~~う"っ…つーかほら、カッコつけんのも気恥しいし先ず今までの人生で女に言った事ねぇから正解かは知らねぇけどーー…スゲー貴重なのは間違いねぇから有難く思って聞けよ」
先日の"伝えたい事がある"との約束を果たす為、互いに試合が始まる前の限られた時間にこっそりと落ち合う敵同士である二人はまるで、束の間の逢瀬を過ごす恋人同士の様であった。本日、伊達工も青葉城西も試合を控えている身であり互いの意思や言葉通りに勝ち進めば、明日の試合で定められた戦う運命にある。バレーボールに於いて絶対に負ける訳にはいかない、と云う気持ちは、互いにとって深く譲れない思いでは在るのだから。そして、二口からしてみれば別の無我夢中なる一途な想いも存在した。
「ーーなまえと会うまでは、なんつーかこう…勿論、例えの話だけど!視界や生きてる心地に色が足りなくて…夢中なバレーボールで補っても六割はモノクロだったーー…それがなまえのお陰で花が徐々に咲く様に色付き初め…っ、あ"ーー要は…ッ俺は誰よりもなまえが可愛くて誰よりもなまえが好きだ!…俺はお前の全部を護って背負う覚悟でいる。例え斃ったとしても諦めない。なまえの生涯も引っ括めて俺が欲しいって心の底から思ってる…!」
傍から見ればガキが何ほざいてる、と笑われるだろう。
バレーボールのみならず人生に於いても立ち開かる見えない壁に襲われる事なんて、或いは藻掻くなんて…そんな事は障壁を示す横断幕を背負う自身だってそうだ。故に知り得ない未知なる鉄壁は怖い。只、無我夢中になるバレーボールとその先の、自身が知り得なかった初めてを沢山を抱いた今、そして護りたいモノが幾つも出来た俺が今此処にあるのは、互いに第一印象は最悪であろう運命的な出会いを果たしたなまえのお陰でもあり、ほぼモノクロだった人生を色鮮やかに移したなまえの所為でもある。
儚くて美しく繊細、管丁字の花言葉をつい口にポツ、ポツ、と灯させ、藪手毬の言の葉に指一本一本を絡め透し、擬宝珠水仙から産まれた硝子細工の如く贅沢な彼女にそっと触れればーーこんなに綺麗な色彩且つ純白な人間が居るのかと羨ましくもあり、尚且つ初恋で最後の恋は、息が出来ない程に愛おしい。
「今、なまえの中に及川さんが色濃く映って居ても構わない。そんなモンはとっくに腹括って来たし過程の内だからな。ーー何より俺自身が、なまえが俺と添い遂げたいと思える男になってまた迎えに行けば良い話。ーー全ての責任は俺に在る。だからなまえは全部、俺の所為にしたら良い」
誰かが耳許で囁く"満月の夜に万華鏡から彼女を見透すだけでもお前にとっては贅沢なんだよ"なんて重々弁えて居るのにも関わらず、強く望んで仕舞うのは性であるか。
将来、如何なる結果であろうが全ての力をつけて戦うのを止めない。口先だけの男、銃声に従って万華鏡の星屑に散り、滲み染まる自身は何処にも存在しない。
「ーーっ…堅ちゃ…わ、私っ…ひっ…ぐしゅ…」
「お前はっ…泣くなって約束だっただろーが…!ったく仕方ねぇな…。そのブスな顔直したらBコートの支度行けよ!今日の青城の動きとなまえがぽやぽやしてねぇかも俺はちゃんと見てるからな!」
運命の赤い糸とやらが必要ならば、小指を噛み切って血液で無理矢理紬いだって構わない。愛を誓う手段を選べる余地が無いのならば、痛みを伴っても喜んで絡ませよう。二口はなまえを抱き寄せ自身の着ている伊達工業のシャツに涙を拾って、ジャージの柔らかい部分でなまえのぐしゅぐしゅの顔を拭い、彼女の肩をぽん、と優しく押しては、眩しい笑顔で見送るのだった。
◇◇◇
「ーーなァ、この際だから牛島だけじゃなくてこの場に居る全員、聞けよ。なまえに指一本触れるな」
牛島からなまえに渡してくれと頼まれた飴の包み紙をペリペリッ、と無断で剥がし容赦無く自身の口内に含み、ミシッ…と歯を立てられた子うさぎモチーフの棒付き飴は、脅しの後に及川の歯によりガリガリ…パキィン、と音を立てて粉々に砕け散る。
満月から逃げた子うさぎは、銃声と万華鏡、指切りげんまん、小指から薬指へと噛み付かれ、掬ぶ運命の赤い糸が食込み、新雪の肌に絡まるのだ。
「ーー俺は伊達工が上がってくると思うけど。そう考えると、春高前になまえさんが見学行ってくれて良かった。なまえさんの気遣いというか先を見据える心持というか、ホントに凄いっスよね!彼処は情報拾うのも大変だから、もし今回伊達工と当たんなくても今後の事も考えたら知れて有難いよな」
「まぁね。伊達工かー…うげー…(正直、あの我武者羅具合はお前も同じようにやれって言われてるみたいでゲンナリするんだよなぁ…(嫌いな言葉第2位))なまえさんはどう思う?」
「………」
「?」
「…なまえさん、どうかしました…?まさか、何処か痛いとか急な体調不良とか…!?」
「ーーえ?あ、ううん!ごめんなさい…!いつも通りだよ!」
「? そうッスか…?あの、なんかあればすぐ遠慮無く言ってくださいね!俺は少しでもなまえさんの力になれればって何時も思ってますから!」
「俺にももっと頼ってって言ってるのに、なまえさんはすぐ遠慮するからさ~」
「っ…勇くんも英くんも、ありが「なまえは青葉城西なんだから僅かでも余所見しちゃ駄目だよ。余計な事考えたら許さないからね」ーーっ、」
「「(ヒュン)!?」」
遂に春高宮城県代表決定戦が始まる。
事前に配布されたトーナメント表を見ながらなまえと面して自身らとの対戦相手である各校の事柄を話していた居た金田一と国見は、伊達工の話題が上がった際に何故だかなまえの様子に変化が見えた様な気がして、金田一は心配になり優しく声掛けしたのだが急に背後からの発言が耳に入れば、気が付いた際には既にビクンと肩を跳ね上げて怯える自身らが存在した。
「(マジ…?いや、俺に言ったんだよな?でもなまえさんの名前…ええウソだろ…放つ言葉の一文字毎が妙に鋭くねぇか…?)」
「あっ…違うの…!徹くん、ごめんなさ…」
「ーーちゃんと自覚持てよ。今の青城は血反吐を吐いて今迄の全てを注ぎ込んで完成させたチームなのに、なまえも一緒に戦ってくれなきゃ勝てる試合も勝てないよ」
「そうだよね…とっても大切な時に考え事なんかしてる暇無いよね…ごめんなさい…」
「(や、やっぱりなまえさんに言ってる…!ウソだろあの及川さんがそんな対応すんの!?)お、及川さん!すんません…!俺がなまえさんに余計な事を言ったからです。あ、あとなまえさんは充分すぎる程に今日も俺達の為に尽くしてくれて、決して余所見なんか…っ、だから、そんな強く言わなくても…」
「金田一。…俺はね、ソウイウコトを言ってるわけじゃないんだよ」
周囲の皆は、発言元である方へとギギギ…と振り向けば普段、いつも彼がなまえに対して見せる溺愛や寵愛とは、程遠い雰囲気に非常に強い驚き且つ萎縮しギョッと顔色を変える。然しながらその中でもやはり異を唱える金田一はグッと自身の意を決し及川からなまえを強く庇うが、いとも簡単に撥ね付けられ金田一の声は散る。目の前のこの人には如何なる理由であってもなまえとの事と成れば、決して同じ舞台にさえ上げて貰えず負けるのだ。
「あーあー、アリャなんか一悶着あったな?なまえちゃんおいで~。よしよし貴女はどんな時も健やかにイイコだね」
「花巻は及川にヨシヨシしてきたら?」
「ーー松川クンは俺を火傷させたいのかな?立ち入る場合は先ず消炎させなきゃ駄目でしょ。今はkeepout」
「(ホッ)~~先輩方っ…!」
「ワリィな金田一、及川の事は気にすんな。でもよ、金田一も国見も先ずは目の前の相手だぞ」
「ーーウス。すんません!」
「(しゅん…)勇くん、ごめんなさい…」
「エッ!?いやいやなまえさんは全然!謝んないでクダサイ!」
「ーーほら、なまえは俺とコッチ来て手伝え」
「はい…。あの…はじめちゃんも、ごめんなさい…私また徹くんを怒らせちゃった…」
「ーーん?あぁ、ありゃ拗ねてるだけだから放っておきゃ直る。お前は気にしねぇでさっさと気持ち切り替えろよ」
ーーー
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「ーー及川、コレはなまえの為に用意した物だから渡しておいてくれないか。本来であれば今回も直接、俺が食べさせてやりたかったんだがな。今日は会えなくて残念だーーお前らが試合に負け全国に行けない事でなまえを泣かせる事には成って仕舞うが、また本屋や図書館で出逢うだろう。その時になまえを励ましてやろうとは思っている」
「総合的にふざけんなよオイコラ。然も前回、俺が邪魔してやったの忘れたか?てめぇは懲りねぇな牛島…!」
「ーーー!なまえちゃんソックリ(ぽわん)」
「「「ーー…!?」」」
「はぁぁっ!まさかの乙女心を擽るプレゼント…!ぐぐぐ…先越されたァ…!?~~でも牛島さん、良くこんな可愛い飴見つけましたね。きらきら透き通っててスゲー綺麗…ほんとになまえさんみたいだ…ほぁわぁ…っめちゃくちゃ可愛い…ッ!ーーっへ?青根さん…!なまえちゃん…って…なまえさんとドノヨウナ関係デスカ…!?」
「ーーなまえちゃんは俺の大切なトモダチ。そして俺の大切な仲間の大切な女の子」
なまえは、いつも通りに事前に各々全ての備品等の支度や最終確認、体調管理チェック、諸処の準備も滞り無く完璧に全て終え新山工の監督達に挨拶をし終わる一方で、日向の云う"危険人物と遭遇する場所"である御手洗付近では現在、及川、岩泉と牛島(日向、青根は立ち会う様子)と面する機会が生じており、一触即発なる雰囲気を醸し出して居た。現在は、どうにか触発を食い止め続きは試合で、と上手く締めた「誰であろうと受けて立つ」の言葉の後に、牛島は及川にスッ、と小さくて可愛い子うさぎモチーフである棒付き飴を差し出せば、自身がなまえの為にいつも実家御用達和菓子屋から頼んで準備した物だ、と、威圧を含み重たく無言を貫く及川の窺う事の出来ない表情を全く気にする事無く、只管、言葉を繋げていく。
◇◇◇
「なまえっ…ごめんな!手短にするから」
「ううん、堅ちゃんも試合始まるね。…あのっ、お、おたが…い、頑張ろう、ね…っ…」
「ははっ…!そうだな。今日互いに勝ち上がったらーーまぁ、ドーセ遅かれ早かれいつかは打ち当たる壁だし俺から言わせて貰えばやっと一泡吹かせる日が来たか、って感じだわ。俺となまえーー及川さんの在籍、敢えてこの頃合に公式戦で打ち当たるのは運命だろうけど。…まさしく岐路に相応しい」
「~~っ、」
「ちょっ…!?頼むから今は泣くなよ…!」
「うん、うんっ、わかった…!」
「ーーっ、よし、じゃあ!今のチョーシの儘で俺の人生初の本題を…コホン。~~う"っ…つーかほら、カッコつけんのも気恥しいし先ず今までの人生で女に言った事ねぇから正解かは知らねぇけどーー…スゲー貴重なのは間違いねぇから有難く思って聞けよ」
先日の"伝えたい事がある"との約束を果たす為、互いに試合が始まる前の限られた時間にこっそりと落ち合う敵同士である二人はまるで、束の間の逢瀬を過ごす恋人同士の様であった。本日、伊達工も青葉城西も試合を控えている身であり互いの意思や言葉通りに勝ち進めば、明日の試合で定められた戦う運命にある。バレーボールに於いて絶対に負ける訳にはいかない、と云う気持ちは、互いにとって深く譲れない思いでは在るのだから。そして、二口からしてみれば別の無我夢中なる一途な想いも存在した。
「ーーなまえと会うまでは、なんつーかこう…勿論、例えの話だけど!視界や生きてる心地に色が足りなくて…夢中なバレーボールで補っても六割はモノクロだったーー…それがなまえのお陰で花が徐々に咲く様に色付き初め…っ、あ"ーー要は…ッ俺は誰よりもなまえが可愛くて誰よりもなまえが好きだ!…俺はお前の全部を護って背負う覚悟でいる。例え斃ったとしても諦めない。なまえの生涯も引っ括めて俺が欲しいって心の底から思ってる…!」
傍から見ればガキが何ほざいてる、と笑われるだろう。
バレーボールのみならず人生に於いても立ち開かる見えない壁に襲われる事なんて、或いは藻掻くなんて…そんな事は障壁を示す横断幕を背負う自身だってそうだ。故に知り得ない未知なる鉄壁は怖い。只、無我夢中になるバレーボールとその先の、自身が知り得なかった初めてを沢山を抱いた今、そして護りたいモノが幾つも出来た俺が今此処にあるのは、互いに第一印象は最悪であろう運命的な出会いを果たしたなまえのお陰でもあり、ほぼモノクロだった人生を色鮮やかに移したなまえの所為でもある。
儚くて美しく繊細、管丁字の花言葉をつい口にポツ、ポツ、と灯させ、藪手毬の言の葉に指一本一本を絡め透し、擬宝珠水仙から産まれた硝子細工の如く贅沢な彼女にそっと触れればーーこんなに綺麗な色彩且つ純白な人間が居るのかと羨ましくもあり、尚且つ初恋で最後の恋は、息が出来ない程に愛おしい。
「今、なまえの中に及川さんが色濃く映って居ても構わない。そんなモンはとっくに腹括って来たし過程の内だからな。ーー何より俺自身が、なまえが俺と添い遂げたいと思える男になってまた迎えに行けば良い話。ーー全ての責任は俺に在る。だからなまえは全部、俺の所為にしたら良い」
誰かが耳許で囁く"満月の夜に万華鏡から彼女を見透すだけでもお前にとっては贅沢なんだよ"なんて重々弁えて居るのにも関わらず、強く望んで仕舞うのは性であるか。
将来、如何なる結果であろうが全ての力をつけて戦うのを止めない。口先だけの男、銃声に従って万華鏡の星屑に散り、滲み染まる自身は何処にも存在しない。
「ーーっ…堅ちゃ…わ、私っ…ひっ…ぐしゅ…」
「お前はっ…泣くなって約束だっただろーが…!ったく仕方ねぇな…。そのブスな顔直したらBコートの支度行けよ!今日の青城の動きとなまえがぽやぽやしてねぇかも俺はちゃんと見てるからな!」
運命の赤い糸とやらが必要ならば、小指を噛み切って血液で無理矢理紬いだって構わない。愛を誓う手段を選べる余地が無いのならば、痛みを伴っても喜んで絡ませよう。二口はなまえを抱き寄せ自身の着ている伊達工業のシャツに涙を拾って、ジャージの柔らかい部分でなまえのぐしゅぐしゅの顔を拭い、彼女の肩をぽん、と優しく押しては、眩しい笑顔で見送るのだった。
◇◇◇
「ーーなァ、この際だから牛島だけじゃなくてこの場に居る全員、聞けよ。なまえに指一本触れるな」
牛島からなまえに渡してくれと頼まれた飴の包み紙をペリペリッ、と無断で剥がし容赦無く自身の口内に含み、ミシッ…と歯を立てられた子うさぎモチーフの棒付き飴は、脅しの後に及川の歯によりガリガリ…パキィン、と音を立てて粉々に砕け散る。
満月から逃げた子うさぎは、銃声と万華鏡、指切りげんまん、小指から薬指へと噛み付かれ、掬ぶ運命の赤い糸が食込み、新雪の肌に絡まるのだ。