コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「~~潔子ちゃんっ…!今日はどうぞ宜しくお願いします…!」
「こちらこそ。あはは…緊張解いてリラックスリラックス!なまえちゃんは対応が丁寧で心地よいね。口には出さないけど、うちの顧問やコーチも実はほんわか癒されてたりするんだよ」
各々全ての備品等の支度や最終確認、チェック、準備も滞り無く完璧に全て終えた体育館入りする前の空き時間ーーなまえは時間に随分と余裕を持たせては、事前に烏野の烏養や武田、後に現在、廊下に二人きりである清水にも丁寧に挨拶していた。清水の心温まる言葉と綺麗な顔で和やかに微笑まれれば、なまえは頬を染めてぽぽぽ…と見蕩れ「潔子ちゃん…今日も美しいです…!」と烏野の田中口調になる。
「ーーふふ、日向はなまえちゃんの事を天使だって言うけど、私は垂れ耳子うさぎちゃんの様に思えて可愛くて仕方ないなぁ。えいっ…!」
「きゃーっ♡潔子ちゃん大好き…!はぅっ…良い香り…ほよほよ…」
「あははっ擽ったいよ」
清水は、ふわりとした柔らかな表情で身長差のあるなまえをきゅっ、と優しく抱くと、嬉しそうに蕩けた表情をするなまえは、清水の魅力な胸にぽふゅん、と顔を埋まるのだ。いつも自身がされてる及川の行動が伝染ったかの如く其れで居て、直ぐに胸に埋まる及川の気持ちを理解した気がした。柔らかさに何だかとっても落ちつくのだ。徹くん、恥ずかしさのあまりいつも怒っちゃってごめんね…なんて思考して仕舞い、及川にとってみれば、よっしゃーラッキーちょろいぜ☆なんて思わぬ棚ぼた方向に辿り着きそうになる。お待ちなさいなまえさん。其れは成りませぬぞ。
「~~あ!なまえ、探したよっと…あら、烏野のマネちゃん?えっ…!?いやいやいやちょっと何してるの…!」
「あのね、潔子ちゃんと両想いなの」
「はぁ?ーーはいはい、こっちおいで。俺のなまえがいつもお世話になっちゃってゴメンね☆」
「(青城の主将…)なまえちゃん、私行くね!何方が勝っても負けても私達の関係は絶対に変わらないからね…!」
俺の、なんて簡単に言ってくれちゃって(何時ぞやの二口から言われたウチの、も違和感あったのにも拘わらず)尚且つなまえの身体を慣れた手つきで簡単にヒョイッ、と引き寄せお腹や胸に閉じ込めて仕舞う及川の行動に、なまえを取られて悔しくて、清水は言葉を返した後、急いでパタパタッ…と離れて行ってしまった。
「あらら。俺は見事に無視されちゃった」
「~~徹くんが私の事を急にぎゅってしたから潔子ちゃんもきっと凄く驚いちゃったんだよ…!だから、人前で抱っこしちゃ、めっ…」
「ふーん?なまえだってこんな場所でイチャイチャして俺に見せつけてたじゃん。浮気者」
「私と潔子ちゃんは両想いーーんぅっ…!」
トン、と壁に華奢な身体を押し付けられ且つ両手をも壁に縫い付けられては早急に唇を重ねられ、しかも直ぐには終わらず何度目かの啄むキスの際に、なまえの弱い力ながらも及川の手を押し返す行動、これ以上はもうやめての意思表示があったのにも関わらず、それを無視して更にくちゅ、ぐち、と水音をわざと鳴らしながら深く貪る。ーー今の及川にとって正直に言えば、些細な嫉妬や独占欲でも強い刺激になる。なまえの可愛い小さなお口から伝われる、両想い、と云う言葉は、どうか俺だけを想って使って欲しい。お願いだから俺以外の人には使わないで、と及川の核心の底で強く響かせるのだ。
「…隙、だらけ…っ」
「…ん…ふぁ…らめ…ぇ」
「我慢。もっと舌出せよヘタクソ」
「…や…と、おる、く…誰か…きちゃ…」
「ーーねぇ、誰か来ないなら良いの?キスもセックスも、二人きりならしても良い?」
「!?~~何言ってるの…?酷いよ…!揶揄わないでっ…!」
「揶揄ってなんか無い…!俺は…っ…」
及川の真剣なアーモンドアイがなまえの大きな飴玉の潤む瞳を射抜いた瞬間、バタバタバタッ…!とした誰かの足音が廊下に響き、二人は肩をビクッと跳ね上がらせ急いで身体と距離を離し「主将、みょうじ先輩!監督が呼んでます。宜しくお願いします」との後輩の純粋な呼び掛けに素早く応じるのだった。ーー先ず、双方は気持ちを素早く切り替えるべきである。これから大切な烏野戦を控えているのだから。
◇◇◇
「(あれもよし、これも間違いない…うん、うん…!抜かり無く準備は完璧!そして皆もベストな状態…!)」
なまえがメンバーの個々一人ずつに声掛けし状態を確認した後、主将同士の挨拶をしコートに入りアップの為と及川によるメンバーの最終確認の為にボールを打っていく。対戦相手の烏野の気合いは以前とはまた異なり更に雰囲気が強く、なまえは少しだけ怯んで仕舞うのだが、兎に角、目の前の事、先の事を見据え完璧なる仕事を熟すのだ。
「岩ちゃーん、ちょっと力んでなーい?良いとこ見せようとしなくてイインダヨー。女の子は誰も岩ちゃんなんて見てないからね☆」
途中で岩泉と及川による遣り取り、じゃれ合いが絡んで仕舞い、なまえは怒る岩泉を背後から抑える金田一の助っ人に入る為、岩泉の前に立ち「~~私はっ、はじめちゃんの事をずっと傍で見てるからね…!」と岩泉に接すれば「おう、俺はお前だけが見ててくれりゃ良いからな」となまえの頭を優しく、ぽんぽん、と撫でるのだ。ホッ、とした金田一はやっと此処で岩泉から手を離せた。さすが青葉城西の天使である。ありがたや…!
「キャーッ!及川くーん♡頑張ってー!!」
「キャー♡キャー♡」
「及川先輩~!今日も素敵です♡」
「及川さーん!大好きです♡」
「ーーなまえ、ああやって毎日色んな女にキャーキャー言われて鼻の下伸ばしてヘラチャラしてるのだけはやめとけよ。お前は幸せにならなくちゃなンねぇからな」
「えっと…?う、うん…?」
「ヘラチャラ…(及川さんも岩泉さんもなまえさんの事になれば表情も感情も声のトーンもガラッと変わって、トクベツなんですけどね)」
「ーーで、今回の戦利品、烏の嘴と羽どっちが欲しい?お前らに一個ずつ分けてやるよ」
「…ヒェッ!?(怖ェ)いや俺は…奴らを自分の力で叩きのめすのが目標なんで…アハハ」
「はじめちゃん落ち着いて…!なんか怖いよ…」
◇◇◇
「被って来てンじゃねェよ日向コノヤロウ…!」
「「負けないッス!」」
「そして貴方に何言われても、幾ら貴方が凄い人でもーー俺はなまえさんの事をずっとずっと想っています…諦めきれない…!」
「忘れさせるって言ってあったのに態々宣言しちゃうなんて、チビちゃんは随分と威勢はいいよネ。或る意味、期待を裏切らないってヤツかな?ーーでもさ、自分で今何を言っているのか、誰に向かって言ってるのか…ちゃんと頭で理解してる?」
「~~バッ…カかお前は!及川さん失礼します!」
整列をし両校挨拶を済ませ及川と日向影山は互いに本日の試合、要するにバレーボールの内容について互いに良い意味で張り詰めた雰囲気の中、遣り取りを行う。只、なまえの事を口に出され宣言されるのはまた別であり、及川の目は全く異なる意味を持った支配の色彩にガラリと変わった。彼の人生に於いて主な根幹はバレーボールとなまえがあるのだから。如何やら烏野の日向は今後に於いても、及川に対しても火をつけ続ける人物であるのは間違いない様だ。
ーーー
ーー
ー
「よーし、やるかあ!それじゃあ今日もーー信じてるよ、お前ら」
及川の掛けるこの試合前の一言で空気は頗る良い方向へ変化する。互いに心の奥底から純粋に信じ合ってるこそ、濁る事無く確立し全てを成し得るのだ。其れは確実に、青葉城西の強さの一つであると言える。
「円陣組むよー!はいはい、なまえもおいで~」
「え…?あの…私もいいの…?」
「今更何言ってんの?当たり前でしょ。でもね、今日はなまえだけ立ち位置を変えてくれる?なまえは円陣の真ん中にきて、膝立ちで両腕を少し上に掲げて、両手で掬うポーズしてネ。そうそう…やべっ…上目遣いのオネダリ…!ッすげー可愛「クソがハヤクシロ」ーーう"っ…何だかロがネに変わる物騒なパワーワードに聞こえたンだけどっ…!「気の所為、じゃねーかもな」~~兎に角、そこに俺らの手を重ねるから」
「(良く良く考えりゃ絵面が非常にエロいので健全なる男子高校生にはキツい。なので円陣は早めにお願いしたい)」
「…花巻、邪念垂れ流して鼻の穴がピクついてんぞ。一発気合い入れるか?(拳パキポキ)」
「ーー行くぞ!」
及川の掛け声で気合いをいれる青葉城西の円陣の周りには、天使の梯子と羽根が神秘的に浮かび上がった。そして試合開始の笛の合図が鳴れば、真四角の氷がカラン…と鳴りながら収まる冷えたグラスに、淡い色のラムネのサイダーをトクトク…と注いで、シュワシュワ、パチパチ…と小さな泡が弾き徐々に収まる頃合、及川のツーアタックが烏野のコートに炸裂する。
◇◇◇
ーー及川さんを見た瞬間、この人を超えれば先ずは県で一番のセッターになれるんだと、ずっと胸に憧れと共に抱いて日々を過ごして来た。そして今は、彼にセッターとしては絶対に負けたくない、と強く思う。試合では指揮者が変われば全てが別物になる。青葉城西との真剣勝負の戦いが進むに連れて其れは敵味方問わず、及川からも途中で交代した菅原からも目の前の現実に全身打ちのめされたが如く、今は痛い程に影山に伝わる。
「(ーーなまえさん…)」
自身が今座る位置からコート越しに見える向う側の席、ノートを持って一生懸命に情報を書き込みながら仲間に声掛けする可愛らしい女性は、特に及川さんにとって生命線でありアキレス腱である。故に今も昔も変わらない。ーー寧ろ、影山自身にとっても特別な女性でもあった。
及川さんは、人よりも体格に優れセンスにも恵まれて居た。俺は純粋な気持ちで彼に憧れて、彼からバレーボールの全てを教わり可能な限り盗みたかった。強い憧れが捻れて、及川さんのモノ、持っているモノが全てが欲しい、とさえも思った。ーーそんな自身の当時を振り返ってみれば、及川さんの気持ちなんてこれっぽっちも考えて無かった。だって彼はいつだって凄くて強い人。風貌のみならず気持ちだって大人びていて特に何も困る事なんか無いだろうし全てに対して余裕なんかあるに決まってる。ーーそんな最中、こんな俺でも理解出来る程に、あの及川さんが特別に想う女性の存在を知る。あぁ、そっか。先ずはこの女性に近付いて彼女を上手く利用すれば、及川さんにもっと近付けるかもしれない。その時の俺は一与さんの事も色々と重なって、兎に角、誰かに強く縋りたかったのもあったんだと思う。自身が強く憧れる人に近付く為に、故に超える為に利用しようとしていた女性は、いつの間にか気付いた時にはもう既に…俺にとっても強く特別な女性になっていったのだ。
「ーー影山、入ってみろ」
そして徐々に良い方向に風向きが変わった、とも思える出来事がある一定の時期だけ増えた。中学の練習試合、あの及川さんと交代してセッターを担う機会が増えた期間が存在して居た。ーー及川さんには悪いけど、あわよくば此の儘、セッターの座もこの可愛らしい女性も…なんて気持ちを少なからず抱いて仕舞ったのは、正直言うと嘘では無かった。
「正直、如何して貴女みたいなお嬢様が北川第一なんですか?超有名お嬢様学園とか…もっと引く手数多でしょうに」
「ーー私が、徹くんとはじめちゃんとずっと一緒に居たかったからだよ。私が勝手に着いてきてるだけ」
「あのさ、影山くんも毎日毎日懲りないよね…!そろそろなまえの事、返して貰ってもいいかな?私たちもなまえと過ごしたいのよ。さっさと教室戻りなさい!」
幾ら彼女と過ごす時間を増やしても、はたまた着いて行っても、自身にとっては知りたくも無い事実を知るばかりだった。其れでも彼女と過ごす時間は俺にとって凄く特別で、故に彼女が卒業する迄其れは続き、彼女にはもう十分過ぎる程、大変世話になった。いつか何かの形で当時の恩返しが出来たら良いな、とは変わらず今でも思っている。
「青葉城西に行くんですか…?ーーまた、及川さんですか?」
こくん…と頷く彼女の綺麗な瞳に揺るぎなく映り、彼女曰く「私が勝手に着いてきてるだけ」とあの時と全く変わらぬ言葉を残し三歩下がって追い掛けながらも、彼女が常に寄り添う強い背中を傍から眺めてはーーもう、俺が入り込む隙なんか少しも無い。全く無い。彼女の手を引いても俺が望む展開には成らない。要は、全て意味は無い。此の儘、潔く黙って諦め無くては成らないんだ、と決心するしか無いのだ。ーーラムネの瓶の中にある魅力的であるたった一個しか存在しないビー玉は、絶対に取れやしないのだから。
あの天才影山が唯一(女性関連の事柄で)泣き苦しんだ過去、感を押し殺したある一幕でもあった。
「こちらこそ。あはは…緊張解いてリラックスリラックス!なまえちゃんは対応が丁寧で心地よいね。口には出さないけど、うちの顧問やコーチも実はほんわか癒されてたりするんだよ」
各々全ての備品等の支度や最終確認、チェック、準備も滞り無く完璧に全て終えた体育館入りする前の空き時間ーーなまえは時間に随分と余裕を持たせては、事前に烏野の烏養や武田、後に現在、廊下に二人きりである清水にも丁寧に挨拶していた。清水の心温まる言葉と綺麗な顔で和やかに微笑まれれば、なまえは頬を染めてぽぽぽ…と見蕩れ「潔子ちゃん…今日も美しいです…!」と烏野の田中口調になる。
「ーーふふ、日向はなまえちゃんの事を天使だって言うけど、私は垂れ耳子うさぎちゃんの様に思えて可愛くて仕方ないなぁ。えいっ…!」
「きゃーっ♡潔子ちゃん大好き…!はぅっ…良い香り…ほよほよ…」
「あははっ擽ったいよ」
清水は、ふわりとした柔らかな表情で身長差のあるなまえをきゅっ、と優しく抱くと、嬉しそうに蕩けた表情をするなまえは、清水の魅力な胸にぽふゅん、と顔を埋まるのだ。いつも自身がされてる及川の行動が伝染ったかの如く其れで居て、直ぐに胸に埋まる及川の気持ちを理解した気がした。柔らかさに何だかとっても落ちつくのだ。徹くん、恥ずかしさのあまりいつも怒っちゃってごめんね…なんて思考して仕舞い、及川にとってみれば、よっしゃーラッキーちょろいぜ☆なんて思わぬ棚ぼた方向に辿り着きそうになる。お待ちなさいなまえさん。其れは成りませぬぞ。
「~~あ!なまえ、探したよっと…あら、烏野のマネちゃん?えっ…!?いやいやいやちょっと何してるの…!」
「あのね、潔子ちゃんと両想いなの」
「はぁ?ーーはいはい、こっちおいで。俺のなまえがいつもお世話になっちゃってゴメンね☆」
「(青城の主将…)なまえちゃん、私行くね!何方が勝っても負けても私達の関係は絶対に変わらないからね…!」
俺の、なんて簡単に言ってくれちゃって(何時ぞやの二口から言われたウチの、も違和感あったのにも拘わらず)尚且つなまえの身体を慣れた手つきで簡単にヒョイッ、と引き寄せお腹や胸に閉じ込めて仕舞う及川の行動に、なまえを取られて悔しくて、清水は言葉を返した後、急いでパタパタッ…と離れて行ってしまった。
「あらら。俺は見事に無視されちゃった」
「~~徹くんが私の事を急にぎゅってしたから潔子ちゃんもきっと凄く驚いちゃったんだよ…!だから、人前で抱っこしちゃ、めっ…」
「ふーん?なまえだってこんな場所でイチャイチャして俺に見せつけてたじゃん。浮気者」
「私と潔子ちゃんは両想いーーんぅっ…!」
トン、と壁に華奢な身体を押し付けられ且つ両手をも壁に縫い付けられては早急に唇を重ねられ、しかも直ぐには終わらず何度目かの啄むキスの際に、なまえの弱い力ながらも及川の手を押し返す行動、これ以上はもうやめての意思表示があったのにも関わらず、それを無視して更にくちゅ、ぐち、と水音をわざと鳴らしながら深く貪る。ーー今の及川にとって正直に言えば、些細な嫉妬や独占欲でも強い刺激になる。なまえの可愛い小さなお口から伝われる、両想い、と云う言葉は、どうか俺だけを想って使って欲しい。お願いだから俺以外の人には使わないで、と及川の核心の底で強く響かせるのだ。
「…隙、だらけ…っ」
「…ん…ふぁ…らめ…ぇ」
「我慢。もっと舌出せよヘタクソ」
「…や…と、おる、く…誰か…きちゃ…」
「ーーねぇ、誰か来ないなら良いの?キスもセックスも、二人きりならしても良い?」
「!?~~何言ってるの…?酷いよ…!揶揄わないでっ…!」
「揶揄ってなんか無い…!俺は…っ…」
及川の真剣なアーモンドアイがなまえの大きな飴玉の潤む瞳を射抜いた瞬間、バタバタバタッ…!とした誰かの足音が廊下に響き、二人は肩をビクッと跳ね上がらせ急いで身体と距離を離し「主将、みょうじ先輩!監督が呼んでます。宜しくお願いします」との後輩の純粋な呼び掛けに素早く応じるのだった。ーー先ず、双方は気持ちを素早く切り替えるべきである。これから大切な烏野戦を控えているのだから。
◇◇◇
「(あれもよし、これも間違いない…うん、うん…!抜かり無く準備は完璧!そして皆もベストな状態…!)」
なまえがメンバーの個々一人ずつに声掛けし状態を確認した後、主将同士の挨拶をしコートに入りアップの為と及川によるメンバーの最終確認の為にボールを打っていく。対戦相手の烏野の気合いは以前とはまた異なり更に雰囲気が強く、なまえは少しだけ怯んで仕舞うのだが、兎に角、目の前の事、先の事を見据え完璧なる仕事を熟すのだ。
「岩ちゃーん、ちょっと力んでなーい?良いとこ見せようとしなくてイインダヨー。女の子は誰も岩ちゃんなんて見てないからね☆」
途中で岩泉と及川による遣り取り、じゃれ合いが絡んで仕舞い、なまえは怒る岩泉を背後から抑える金田一の助っ人に入る為、岩泉の前に立ち「~~私はっ、はじめちゃんの事をずっと傍で見てるからね…!」と岩泉に接すれば「おう、俺はお前だけが見ててくれりゃ良いからな」となまえの頭を優しく、ぽんぽん、と撫でるのだ。ホッ、とした金田一はやっと此処で岩泉から手を離せた。さすが青葉城西の天使である。ありがたや…!
「キャーッ!及川くーん♡頑張ってー!!」
「キャー♡キャー♡」
「及川先輩~!今日も素敵です♡」
「及川さーん!大好きです♡」
「ーーなまえ、ああやって毎日色んな女にキャーキャー言われて鼻の下伸ばしてヘラチャラしてるのだけはやめとけよ。お前は幸せにならなくちゃなンねぇからな」
「えっと…?う、うん…?」
「ヘラチャラ…(及川さんも岩泉さんもなまえさんの事になれば表情も感情も声のトーンもガラッと変わって、トクベツなんですけどね)」
「ーーで、今回の戦利品、烏の嘴と羽どっちが欲しい?お前らに一個ずつ分けてやるよ」
「…ヒェッ!?(怖ェ)いや俺は…奴らを自分の力で叩きのめすのが目標なんで…アハハ」
「はじめちゃん落ち着いて…!なんか怖いよ…」
◇◇◇
「被って来てンじゃねェよ日向コノヤロウ…!」
「「負けないッス!」」
「そして貴方に何言われても、幾ら貴方が凄い人でもーー俺はなまえさんの事をずっとずっと想っています…諦めきれない…!」
「忘れさせるって言ってあったのに態々宣言しちゃうなんて、チビちゃんは随分と威勢はいいよネ。或る意味、期待を裏切らないってヤツかな?ーーでもさ、自分で今何を言っているのか、誰に向かって言ってるのか…ちゃんと頭で理解してる?」
「~~バッ…カかお前は!及川さん失礼します!」
整列をし両校挨拶を済ませ及川と日向影山は互いに本日の試合、要するにバレーボールの内容について互いに良い意味で張り詰めた雰囲気の中、遣り取りを行う。只、なまえの事を口に出され宣言されるのはまた別であり、及川の目は全く異なる意味を持った支配の色彩にガラリと変わった。彼の人生に於いて主な根幹はバレーボールとなまえがあるのだから。如何やら烏野の日向は今後に於いても、及川に対しても火をつけ続ける人物であるのは間違いない様だ。
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「よーし、やるかあ!それじゃあ今日もーー信じてるよ、お前ら」
及川の掛けるこの試合前の一言で空気は頗る良い方向へ変化する。互いに心の奥底から純粋に信じ合ってるこそ、濁る事無く確立し全てを成し得るのだ。其れは確実に、青葉城西の強さの一つであると言える。
「円陣組むよー!はいはい、なまえもおいで~」
「え…?あの…私もいいの…?」
「今更何言ってんの?当たり前でしょ。でもね、今日はなまえだけ立ち位置を変えてくれる?なまえは円陣の真ん中にきて、膝立ちで両腕を少し上に掲げて、両手で掬うポーズしてネ。そうそう…やべっ…上目遣いのオネダリ…!ッすげー可愛「クソがハヤクシロ」ーーう"っ…何だかロがネに変わる物騒なパワーワードに聞こえたンだけどっ…!「気の所為、じゃねーかもな」~~兎に角、そこに俺らの手を重ねるから」
「(良く良く考えりゃ絵面が非常にエロいので健全なる男子高校生にはキツい。なので円陣は早めにお願いしたい)」
「…花巻、邪念垂れ流して鼻の穴がピクついてんぞ。一発気合い入れるか?(拳パキポキ)」
「ーー行くぞ!」
及川の掛け声で気合いをいれる青葉城西の円陣の周りには、天使の梯子と羽根が神秘的に浮かび上がった。そして試合開始の笛の合図が鳴れば、真四角の氷がカラン…と鳴りながら収まる冷えたグラスに、淡い色のラムネのサイダーをトクトク…と注いで、シュワシュワ、パチパチ…と小さな泡が弾き徐々に収まる頃合、及川のツーアタックが烏野のコートに炸裂する。
◇◇◇
ーー及川さんを見た瞬間、この人を超えれば先ずは県で一番のセッターになれるんだと、ずっと胸に憧れと共に抱いて日々を過ごして来た。そして今は、彼にセッターとしては絶対に負けたくない、と強く思う。試合では指揮者が変われば全てが別物になる。青葉城西との真剣勝負の戦いが進むに連れて其れは敵味方問わず、及川からも途中で交代した菅原からも目の前の現実に全身打ちのめされたが如く、今は痛い程に影山に伝わる。
「(ーーなまえさん…)」
自身が今座る位置からコート越しに見える向う側の席、ノートを持って一生懸命に情報を書き込みながら仲間に声掛けする可愛らしい女性は、特に及川さんにとって生命線でありアキレス腱である。故に今も昔も変わらない。ーー寧ろ、影山自身にとっても特別な女性でもあった。
及川さんは、人よりも体格に優れセンスにも恵まれて居た。俺は純粋な気持ちで彼に憧れて、彼からバレーボールの全てを教わり可能な限り盗みたかった。強い憧れが捻れて、及川さんのモノ、持っているモノが全てが欲しい、とさえも思った。ーーそんな自身の当時を振り返ってみれば、及川さんの気持ちなんてこれっぽっちも考えて無かった。だって彼はいつだって凄くて強い人。風貌のみならず気持ちだって大人びていて特に何も困る事なんか無いだろうし全てに対して余裕なんかあるに決まってる。ーーそんな最中、こんな俺でも理解出来る程に、あの及川さんが特別に想う女性の存在を知る。あぁ、そっか。先ずはこの女性に近付いて彼女を上手く利用すれば、及川さんにもっと近付けるかもしれない。その時の俺は一与さんの事も色々と重なって、兎に角、誰かに強く縋りたかったのもあったんだと思う。自身が強く憧れる人に近付く為に、故に超える為に利用しようとしていた女性は、いつの間にか気付いた時にはもう既に…俺にとっても強く特別な女性になっていったのだ。
「ーー影山、入ってみろ」
そして徐々に良い方向に風向きが変わった、とも思える出来事がある一定の時期だけ増えた。中学の練習試合、あの及川さんと交代してセッターを担う機会が増えた期間が存在して居た。ーー及川さんには悪いけど、あわよくば此の儘、セッターの座もこの可愛らしい女性も…なんて気持ちを少なからず抱いて仕舞ったのは、正直言うと嘘では無かった。
「正直、如何して貴女みたいなお嬢様が北川第一なんですか?超有名お嬢様学園とか…もっと引く手数多でしょうに」
「ーー私が、徹くんとはじめちゃんとずっと一緒に居たかったからだよ。私が勝手に着いてきてるだけ」
「あのさ、影山くんも毎日毎日懲りないよね…!そろそろなまえの事、返して貰ってもいいかな?私たちもなまえと過ごしたいのよ。さっさと教室戻りなさい!」
幾ら彼女と過ごす時間を増やしても、はたまた着いて行っても、自身にとっては知りたくも無い事実を知るばかりだった。其れでも彼女と過ごす時間は俺にとって凄く特別で、故に彼女が卒業する迄其れは続き、彼女にはもう十分過ぎる程、大変世話になった。いつか何かの形で当時の恩返しが出来たら良いな、とは変わらず今でも思っている。
「青葉城西に行くんですか…?ーーまた、及川さんですか?」
こくん…と頷く彼女の綺麗な瞳に揺るぎなく映り、彼女曰く「私が勝手に着いてきてるだけ」とあの時と全く変わらぬ言葉を残し三歩下がって追い掛けながらも、彼女が常に寄り添う強い背中を傍から眺めてはーーもう、俺が入り込む隙なんか少しも無い。全く無い。彼女の手を引いても俺が望む展開には成らない。要は、全て意味は無い。此の儘、潔く黙って諦め無くては成らないんだ、と決心するしか無いのだ。ーーラムネの瓶の中にある魅力的であるたった一個しか存在しないビー玉は、絶対に取れやしないのだから。
あの天才影山が唯一(女性関連の事柄で)泣き苦しんだ過去、感を押し殺したある一幕でもあった。