コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「クッ…!やっぱブロック腹立つくらいスゲェな。相手の桜下は空気完璧に呑まれてスパイカーなんもさせて貰えねぇじゃん。…伊達工は今んとこ目立つサーブすんの1番と6番だけど、あと数人育ちゃえばマジで怖ぇ…」
「高伸く…青根くんとふ、二口くんのブロックに体力も精神的にも乱されるね…」
「うーん…パワー系なイメージのある伊達工だけどリベロは足りない部分を補う様に頭キレるンだよね…やってくれるよ」
なまえのシャーペンがノート上を軽やかに走る中、貴重なる伊達工と桜下戦を食入るように観戦し、両校の今得られる最大限の情報を事細かく収集する。
「(ーー堅ちゃん、綺麗だなぁ…)」
彼と出会って間も無い頃から何回も耳にする、自身はバレーボールに夢中だ、と揺るぎない言葉通り、なまえと会う時のプライベートの時とはまた異なる二口の真剣な表情やキラキラと笑う表情、バレーボールに向き合う姿勢に、なまえの胸はトクン、トクンーーと高鳴る。或る程度は情報は収穫し纏めあげた頃に終了の笛が鳴り、この試合は伊達工が圧勝し試合を終えた。
「行くぞ。俺たちも次勝たなきゃ其処に行けないんだ」
「ーーまっつん、マッキー!なまえは無事!?何でなまえを伊達工の方に行かせたのさ!」
「(はいキター)無事に決まってんじゃん。大体、なまえちゃんは一生懸命マネの仕事をしてんだからお前の独占欲で口出す事じゃネェダロ(松川の受け売り)」
「なっ…!クソっ言い返せない…!」
「お姫様はお花摘みと提出書類の最終確認に行ってるよ。俺らも行くべ」
「何でなまえだけでぴょこぴょこ行かせるの?攫われたらどうすんの!」
「!?お前馬鹿か!俺らがぴょこぴょこそんな場所まで着いてったらお縄だろーが!」
「ーーいちいち騒ぐな!時間あんだから途中まで迎えに行きゃイイだろうがよ!」
ギャーギャー騒ぐ主将らに対し副主将の喝が入れば、ギャーギャーからゴニョニョに変えただけの遣り取りは(内容は変わらず)未だ引き続くも取り敢えず観客席から離れ、先ずは目の前の大岬戦を控える為、次の試合のミーティングと準備に備える事にしたのだ。
◇◇◇
「(戻るにはこっちの廊下が近道かな…)」
「あーーっ!二口先輩の彼女さん!!」
一方、なまえはお花摘みと提出書類の最終確認を終え、皆の居る場所へ向かおうと比較的人が少ない廊下を歩いて居れば、目の前から大きな身体とぴょこん、とした可愛い黒髪前髪、パワフルな声をした伊達工ジャージを着た金髪の男の子の姿と、そして「二口先輩の彼女」と云う言葉がハッキリと聞こえて、その言葉につい胸がズキン、としたと同時に思わずビクッ、とし立ち止まり、彼の発する"彼女"の存在が強く気になり辺りをキョロキョロ…と見渡し探して仕舞うのだが、その男の子は一目散になまえの至近距離まで寄り小さな両手をキュッ、と握り「はじめまして!いつも二口先輩にはお世話になってます!」と人懐っこくニコニコしながら挨拶して来たのだ。
「…あ、あの…?」
「~~あ!申し遅れました、俺、伊達工1年、黄金川ッス!ウチの先輩方のお話の中に何度も話題になる彼女さんの事は色々聞いてたんですけど、さっきの試合前の貴女の丁寧な対応を直接、俺のこの目で見てスゲー感動しました!貴女は見た目も心も綺麗なんですね…!~~ううっ…ぐすっ…二口先輩は見た目は怖いけど俺達にもすげー優しくて頼りになる先輩なんです…!どうか二口先輩の事、これからも宜しくお願いしますぅっ…!」
「御丁寧にありがとうございます…!私、青葉城西高校のみょうじです…っ!先ずは初戦おめでとうございます。あの…勘違いされてるみたいなのですが…私、堅ちゃんの彼女じゃないの…。そんな事言ったら堅ちゃんにたくさん叱られちゃうっ…」
「……へ?」
「ふふっ、黄金川くんはとても優しいんですね。…あ、良かったらティッシュ使って涙を拭いてください」
「~~ぐすん、ありがとこざいまひゅ」
「あ"ーー!こんな所まで来やがって!黄金テメェ走り回るな逸れるな周りに迷惑掛けんなコラァ!ーーっ、なまえ…!?~~お前何なまえに勝手に…ッ俺のに触んな!」
「いや俺、二口先輩の彼女かと思って挨拶しようと…でも彼女じゃないって…ほえ?」
「~~グッ…!ウルセー!彼女じゃねェけど俺のなの!」
「???」
黄金川を追いかけ遅らせながら登場した二口が二人でいる場面を目にして、黄金川の返しについ顔面を真っ赤にムキになりながら言い合いが始まり、その様子をなまえがぽかん…として眺めて居れば、二口がなまえに視線を向けて「…で、お前は俺らの情報を吸い出して満足したみてぇだな?ーー次は俺の番だからな。帰ったら覚悟しとけよ」と言い放ち、なまえの頭をわしゃわしゃ、と撫で混乱する黄金川の首根っこ捕まえて戻っていく。その際に、なまえを探し迎えに来た及川と丁度よくすれ違い、互いにバチバチバチバチッ、と激しい電気と鋭い視線を混じり合わせるのだ。
「伊達工は試合終わったばかりなのに元気有り余ってるねー?ウンウン、やっぱりさすがだよね☆でもさー、ちゃんと大型犬の躾はしてよね。ーーナメた事教えてンじゃねぇぞ」
「何の事だよ。俺はいつだって真面目に正直ですけど。今は仕方ないので俺の大切なモノを及川サンに預けますけど、後で必ず俺に返してクダサイネ。ーー絶対に手ェつけんなよ」
すれ違いざまに言われた二口の返しにブチブチブチ…!と青筋を立てるが、世界一愛しい声に自身の名前を呼ばれ傍に寄って来られたので、直ぐにパァッ、と表情を明るく変えた。あのクソガキいつか絶対俺が直々に凹ませてやる…ッ!
◇◇◇
「なまえさーん!俺達、初戦勝ちましたー!次も勝ちます!とにかく勝って勝って勝ちまくって強くなって、俺が大王様の魔の手や鉄壁の意地悪な檻からいつか貴女を解放させますから、その綺麗な羽根で太陽の光と共に存分に空を舞ってくださいね…!」
「?大王様…鉄壁…んん…?翔ちゃんは何を言ってるの…?」
主に喧嘩を売られた及川や二口双方の強い怒りでプルプルプル…と肩が震える中で始まった烏野と伊達工戦では、日向との約束通りなまえも途中まで傍で見守り、後半からは青城の試合の為のドリンクやタオル、ボール、衛生用品等の救急セットの各々の準備や、選手のコンディションや体調確認等に入る為、致し方無いが途中からの経過は分からず終いになって仕舞ったのだが、結果として烏野が勝利した、と云う事は後ほど二口の言葉から直接、知る事になるのだ。
ーーー
ーー
ー
「なまえさん、それ逆に目立たない?金田一スゲー鼻の下伸びてるし…!」
「ちょっ…国見…余計な事言うな…ッなまえさんあんまりそこでもぞもぞしないでくだひゃ…!んぅいっ!?(ヤバいいい匂い気持ちいい柔らかい…)」
「~~だって絶対にテレビに映りたくないんだもん…!だから今は3年生の傍には近付かない…!」
「3年生のなまえセンパーイ♡出ておいで~」
「~~矢巾くんのいじわるっ…」
「デレッ(カワイイ…)」
「はぁ…なまえさんさ、今更だけど試合中にすげーカメラ向けられてたよ?気が付かなかった?でももう諦めなよ。めちゃくちゃ可愛いもん。そりゃ仕方ない」
「あの…流石に金田一が限界なんでそろそろ勘弁してやってクダサイ…!このままだと鼻血やらでこの場所が血の海になります…」
大岬との試合は、及川がサービスエースを四本連続決めたり普段通りに安定した連携スタイルによりストレート勝ちを収めたのだった。青葉城西や白鳥沢、伊達工あたりになればテレビが入り(ローカル)その中でも華やかでサービス精神旺盛な及川にはテレビカメラは向けられ易いので案の定、現在インタビュー中であった。なまえはどうしてもテレビカメラが嫌なので、必死に身を隠す為に金田一の着ている上着ジャージの中にもぞもぞ潜り込み、彼の背中からぎゅっ、と抱きつく。なまえの身体が密着し柔らかみや豊満な感触、甘い香りが身体に確りと伝わるので、金田一は硬直、心臓をバクバクさせ顔を真っ赤にし半泣きになりぶっ倒れる寸前になれば、流石に慌てた国見や矢巾から助け舟が出るのだ。
◇◇◇
「ほわぁっ、なまえさんだ…!俺の純白の天使がテレビに…ッ…!」
「ーー日向、気安くなまえさんに話し掛けるな。なまえさんは俺らなんかじゃ畏れ多い女性なんだよ…!」
「な"…ッ!何だか影山もなまえさんの事が好き、みたいな言い方じゃんか。腹立つ…!」
「~~ッ、ウルセー!俺は中学ン時に彼女には言葉には言い表せない位にスゲー世話になったんだよ…ッ羨ましいだろ…!?(ぼふん)」
「羨ましい…ッ!」
「こんな事言っちゃってる王様の世話してたその人が気の毒」
「ア"ァン!?」
「でもさ、影山がそんな風に言うなんて珍しいじゃん?あのなー日向、青城のマネージャーさんが好きなのは分かるけど、でも少し気持ち抑えような?じゃないと彼女もあんな皆の前で大っぴらに気持ちぶつけられちゃ困るだろうし、あと…俺らも全方位から向けられる別のビリビリバチバチ感に身体が耐えられねぇ…」
「ひえっ…菅原さん、すんません…!やっぱり俺、駄目ですか?こんな気持ち初めてで…なまえさんにも迷惑掛けちゃったかな…?それは嫌だ…!ううっ…俺、彼女を見ると気持ちが抑えられなくて…!」
"「いいチームですよね。全力で当たって砕けて欲しいですね」"
テレビ越しの及川の一言を聞いて、やれやれ…と菅原が言葉を続け「つーか彼女を想う周りの野郎共が猛者、強敵、って感じで強過ぎんだよな…。特に及川のこの二言目。日向が彼女に抱いてる気持ちに対しても確実に含んでるぞ」と容赦なく繋げた。
ーーー
ーー
ー
「先輩!俺らが事細かく取った烏野のデータとみょうじ先輩が既に纏めておいてくださったデータを資料に詳細に纏めて、今日の烏野と伊達工の試合のディスクと共に主将に渡してあります!」
「わぁっ…ありがとう!とても助かったよ…!」
「いえ、お安い御用です…!ーーさて、そろそろ帰宅して明日に備えましょうか。何だかんだで結構、遅くなっちゃいましたね。主将と岩泉先輩はもう少し残られるみたいなんですけど、みょうじ先輩はどうされますか…?あの…良かったら俺が家まで送って行きましょうか?」
「お気遣いありがとう。…でもね、今から会う人が居て…」
「そ、そうなんですね…(残念)では、俺は先に失礼します…!暗くなって来たので気をつけて帰ってくださいね」
送って行く、と行ってくれた後輩の誘いを丁寧に断り、なまえは学校から離れていない待ち合わせの場所まで来れば、先程、体育館で会った二口と合流するのだ。実は二口から、無茶は承知だが少しだけ時間作って欲しい、とメッセージアプリで伝えられ、僅かな時間だが時間を割いて会う事になったのだ。なまえにしてみたら、いつも助けられ支えられてる大好きな二口からの滅多に無い頼みであり、そんなの会うに決まっている。ーー其して二口に会えば、彼の気遣いから今日の結果から単刀直入に包み隠さず伝えられ、なまえは、ぽろぽろぽろ…ッ、と涙を溢れさせる。いやいやなんでお前が泣くんだよ!とギョッ、とした表情で問われれば、なまえは、ごめんなさい…と謝りながらも、ひっく、ひっく…と小さな身体を震わせ更に泣き続けた。ーー今この瞬間、なまえが涙している事は烏野にとっては大変失礼な事だと理解している。其れでも、どうしても、どうしても、涙が溢れて止まらないのだ。
「ーー何事に於いても過程なんてモノはそんなに重要じゃねぇ。結局、求められるのは結果、ってのは嫌でも理解してる。ーー俺が悪い。最後、ボールを拾えなかった、腕に当てられなかった。ーーあの時、俺が動けなかったから伊達工は負けた。本心ではバレーボールを続けたかった先輩の引退を俺が早めたんだ」
「そんな…!堅ちゃ…違…っ…」
「ーーいや、いい。だから俺は腹括ったわけ。今まで先輩に甘えて面倒掛けて来た立場から全てが変わるけど、俺が意志を引継ぎたいと心の底から思ってる。あの時、茂庭さんの言っていた様に、絶対に鉄壁は崩れない、崩させない。ーー俺が居るうちに必ず結果出してやる」
青城が勝ったこんな時に、ごめん。やっぱりどうしても、なまえに聞いて欲しかった、と常に変わらず強くある眼差しに水膜が張り且つ震える声で伝えれば、なまえは「ーーでは、頑固たる決意表明をした伊達工業エースそして様々なる思いを背負った新主将に、頼れるお姉さんが特別に今だけ胸を貸し自尊心も鼻水も全部受け止めましょう…!」と、ぽろぽろぽろ…と大粒の涙を流しながら手を広げるものだから、二口は「~~ばーか…!明日…勝てよ、なんて絶対に言わねぇからな…っ」と霞れる声で華奢な身体を強く掻き抱いたのだった。
「ふふ、堅ちゃんの汗の匂いがする…」
「ーーお前、好きだろ?」
「…うん」
「高伸く…青根くんとふ、二口くんのブロックに体力も精神的にも乱されるね…」
「うーん…パワー系なイメージのある伊達工だけどリベロは足りない部分を補う様に頭キレるンだよね…やってくれるよ」
なまえのシャーペンがノート上を軽やかに走る中、貴重なる伊達工と桜下戦を食入るように観戦し、両校の今得られる最大限の情報を事細かく収集する。
「(ーー堅ちゃん、綺麗だなぁ…)」
彼と出会って間も無い頃から何回も耳にする、自身はバレーボールに夢中だ、と揺るぎない言葉通り、なまえと会う時のプライベートの時とはまた異なる二口の真剣な表情やキラキラと笑う表情、バレーボールに向き合う姿勢に、なまえの胸はトクン、トクンーーと高鳴る。或る程度は情報は収穫し纏めあげた頃に終了の笛が鳴り、この試合は伊達工が圧勝し試合を終えた。
「行くぞ。俺たちも次勝たなきゃ其処に行けないんだ」
「ーーまっつん、マッキー!なまえは無事!?何でなまえを伊達工の方に行かせたのさ!」
「(はいキター)無事に決まってんじゃん。大体、なまえちゃんは一生懸命マネの仕事をしてんだからお前の独占欲で口出す事じゃネェダロ(松川の受け売り)」
「なっ…!クソっ言い返せない…!」
「お姫様はお花摘みと提出書類の最終確認に行ってるよ。俺らも行くべ」
「何でなまえだけでぴょこぴょこ行かせるの?攫われたらどうすんの!」
「!?お前馬鹿か!俺らがぴょこぴょこそんな場所まで着いてったらお縄だろーが!」
「ーーいちいち騒ぐな!時間あんだから途中まで迎えに行きゃイイだろうがよ!」
ギャーギャー騒ぐ主将らに対し副主将の喝が入れば、ギャーギャーからゴニョニョに変えただけの遣り取りは(内容は変わらず)未だ引き続くも取り敢えず観客席から離れ、先ずは目の前の大岬戦を控える為、次の試合のミーティングと準備に備える事にしたのだ。
◇◇◇
「(戻るにはこっちの廊下が近道かな…)」
「あーーっ!二口先輩の彼女さん!!」
一方、なまえはお花摘みと提出書類の最終確認を終え、皆の居る場所へ向かおうと比較的人が少ない廊下を歩いて居れば、目の前から大きな身体とぴょこん、とした可愛い黒髪前髪、パワフルな声をした伊達工ジャージを着た金髪の男の子の姿と、そして「二口先輩の彼女」と云う言葉がハッキリと聞こえて、その言葉につい胸がズキン、としたと同時に思わずビクッ、とし立ち止まり、彼の発する"彼女"の存在が強く気になり辺りをキョロキョロ…と見渡し探して仕舞うのだが、その男の子は一目散になまえの至近距離まで寄り小さな両手をキュッ、と握り「はじめまして!いつも二口先輩にはお世話になってます!」と人懐っこくニコニコしながら挨拶して来たのだ。
「…あ、あの…?」
「~~あ!申し遅れました、俺、伊達工1年、黄金川ッス!ウチの先輩方のお話の中に何度も話題になる彼女さんの事は色々聞いてたんですけど、さっきの試合前の貴女の丁寧な対応を直接、俺のこの目で見てスゲー感動しました!貴女は見た目も心も綺麗なんですね…!~~ううっ…ぐすっ…二口先輩は見た目は怖いけど俺達にもすげー優しくて頼りになる先輩なんです…!どうか二口先輩の事、これからも宜しくお願いしますぅっ…!」
「御丁寧にありがとうございます…!私、青葉城西高校のみょうじです…っ!先ずは初戦おめでとうございます。あの…勘違いされてるみたいなのですが…私、堅ちゃんの彼女じゃないの…。そんな事言ったら堅ちゃんにたくさん叱られちゃうっ…」
「……へ?」
「ふふっ、黄金川くんはとても優しいんですね。…あ、良かったらティッシュ使って涙を拭いてください」
「~~ぐすん、ありがとこざいまひゅ」
「あ"ーー!こんな所まで来やがって!黄金テメェ走り回るな逸れるな周りに迷惑掛けんなコラァ!ーーっ、なまえ…!?~~お前何なまえに勝手に…ッ俺のに触んな!」
「いや俺、二口先輩の彼女かと思って挨拶しようと…でも彼女じゃないって…ほえ?」
「~~グッ…!ウルセー!彼女じゃねェけど俺のなの!」
「???」
黄金川を追いかけ遅らせながら登場した二口が二人でいる場面を目にして、黄金川の返しについ顔面を真っ赤にムキになりながら言い合いが始まり、その様子をなまえがぽかん…として眺めて居れば、二口がなまえに視線を向けて「…で、お前は俺らの情報を吸い出して満足したみてぇだな?ーー次は俺の番だからな。帰ったら覚悟しとけよ」と言い放ち、なまえの頭をわしゃわしゃ、と撫で混乱する黄金川の首根っこ捕まえて戻っていく。その際に、なまえを探し迎えに来た及川と丁度よくすれ違い、互いにバチバチバチバチッ、と激しい電気と鋭い視線を混じり合わせるのだ。
「伊達工は試合終わったばかりなのに元気有り余ってるねー?ウンウン、やっぱりさすがだよね☆でもさー、ちゃんと大型犬の躾はしてよね。ーーナメた事教えてンじゃねぇぞ」
「何の事だよ。俺はいつだって真面目に正直ですけど。今は仕方ないので俺の大切なモノを及川サンに預けますけど、後で必ず俺に返してクダサイネ。ーー絶対に手ェつけんなよ」
すれ違いざまに言われた二口の返しにブチブチブチ…!と青筋を立てるが、世界一愛しい声に自身の名前を呼ばれ傍に寄って来られたので、直ぐにパァッ、と表情を明るく変えた。あのクソガキいつか絶対俺が直々に凹ませてやる…ッ!
◇◇◇
「なまえさーん!俺達、初戦勝ちましたー!次も勝ちます!とにかく勝って勝って勝ちまくって強くなって、俺が大王様の魔の手や鉄壁の意地悪な檻からいつか貴女を解放させますから、その綺麗な羽根で太陽の光と共に存分に空を舞ってくださいね…!」
「?大王様…鉄壁…んん…?翔ちゃんは何を言ってるの…?」
主に喧嘩を売られた及川や二口双方の強い怒りでプルプルプル…と肩が震える中で始まった烏野と伊達工戦では、日向との約束通りなまえも途中まで傍で見守り、後半からは青城の試合の為のドリンクやタオル、ボール、衛生用品等の救急セットの各々の準備や、選手のコンディションや体調確認等に入る為、致し方無いが途中からの経過は分からず終いになって仕舞ったのだが、結果として烏野が勝利した、と云う事は後ほど二口の言葉から直接、知る事になるのだ。
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「なまえさん、それ逆に目立たない?金田一スゲー鼻の下伸びてるし…!」
「ちょっ…国見…余計な事言うな…ッなまえさんあんまりそこでもぞもぞしないでくだひゃ…!んぅいっ!?(ヤバいいい匂い気持ちいい柔らかい…)」
「~~だって絶対にテレビに映りたくないんだもん…!だから今は3年生の傍には近付かない…!」
「3年生のなまえセンパーイ♡出ておいで~」
「~~矢巾くんのいじわるっ…」
「デレッ(カワイイ…)」
「はぁ…なまえさんさ、今更だけど試合中にすげーカメラ向けられてたよ?気が付かなかった?でももう諦めなよ。めちゃくちゃ可愛いもん。そりゃ仕方ない」
「あの…流石に金田一が限界なんでそろそろ勘弁してやってクダサイ…!このままだと鼻血やらでこの場所が血の海になります…」
大岬との試合は、及川がサービスエースを四本連続決めたり普段通りに安定した連携スタイルによりストレート勝ちを収めたのだった。青葉城西や白鳥沢、伊達工あたりになればテレビが入り(ローカル)その中でも華やかでサービス精神旺盛な及川にはテレビカメラは向けられ易いので案の定、現在インタビュー中であった。なまえはどうしてもテレビカメラが嫌なので、必死に身を隠す為に金田一の着ている上着ジャージの中にもぞもぞ潜り込み、彼の背中からぎゅっ、と抱きつく。なまえの身体が密着し柔らかみや豊満な感触、甘い香りが身体に確りと伝わるので、金田一は硬直、心臓をバクバクさせ顔を真っ赤にし半泣きになりぶっ倒れる寸前になれば、流石に慌てた国見や矢巾から助け舟が出るのだ。
◇◇◇
「ほわぁっ、なまえさんだ…!俺の純白の天使がテレビに…ッ…!」
「ーー日向、気安くなまえさんに話し掛けるな。なまえさんは俺らなんかじゃ畏れ多い女性なんだよ…!」
「な"…ッ!何だか影山もなまえさんの事が好き、みたいな言い方じゃんか。腹立つ…!」
「~~ッ、ウルセー!俺は中学ン時に彼女には言葉には言い表せない位にスゲー世話になったんだよ…ッ羨ましいだろ…!?(ぼふん)」
「羨ましい…ッ!」
「こんな事言っちゃってる王様の世話してたその人が気の毒」
「ア"ァン!?」
「でもさ、影山がそんな風に言うなんて珍しいじゃん?あのなー日向、青城のマネージャーさんが好きなのは分かるけど、でも少し気持ち抑えような?じゃないと彼女もあんな皆の前で大っぴらに気持ちぶつけられちゃ困るだろうし、あと…俺らも全方位から向けられる別のビリビリバチバチ感に身体が耐えられねぇ…」
「ひえっ…菅原さん、すんません…!やっぱり俺、駄目ですか?こんな気持ち初めてで…なまえさんにも迷惑掛けちゃったかな…?それは嫌だ…!ううっ…俺、彼女を見ると気持ちが抑えられなくて…!」
"「いいチームですよね。全力で当たって砕けて欲しいですね」"
テレビ越しの及川の一言を聞いて、やれやれ…と菅原が言葉を続け「つーか彼女を想う周りの野郎共が猛者、強敵、って感じで強過ぎんだよな…。特に及川のこの二言目。日向が彼女に抱いてる気持ちに対しても確実に含んでるぞ」と容赦なく繋げた。
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「先輩!俺らが事細かく取った烏野のデータとみょうじ先輩が既に纏めておいてくださったデータを資料に詳細に纏めて、今日の烏野と伊達工の試合のディスクと共に主将に渡してあります!」
「わぁっ…ありがとう!とても助かったよ…!」
「いえ、お安い御用です…!ーーさて、そろそろ帰宅して明日に備えましょうか。何だかんだで結構、遅くなっちゃいましたね。主将と岩泉先輩はもう少し残られるみたいなんですけど、みょうじ先輩はどうされますか…?あの…良かったら俺が家まで送って行きましょうか?」
「お気遣いありがとう。…でもね、今から会う人が居て…」
「そ、そうなんですね…(残念)では、俺は先に失礼します…!暗くなって来たので気をつけて帰ってくださいね」
送って行く、と行ってくれた後輩の誘いを丁寧に断り、なまえは学校から離れていない待ち合わせの場所まで来れば、先程、体育館で会った二口と合流するのだ。実は二口から、無茶は承知だが少しだけ時間作って欲しい、とメッセージアプリで伝えられ、僅かな時間だが時間を割いて会う事になったのだ。なまえにしてみたら、いつも助けられ支えられてる大好きな二口からの滅多に無い頼みであり、そんなの会うに決まっている。ーー其して二口に会えば、彼の気遣いから今日の結果から単刀直入に包み隠さず伝えられ、なまえは、ぽろぽろぽろ…ッ、と涙を溢れさせる。いやいやなんでお前が泣くんだよ!とギョッ、とした表情で問われれば、なまえは、ごめんなさい…と謝りながらも、ひっく、ひっく…と小さな身体を震わせ更に泣き続けた。ーー今この瞬間、なまえが涙している事は烏野にとっては大変失礼な事だと理解している。其れでも、どうしても、どうしても、涙が溢れて止まらないのだ。
「ーー何事に於いても過程なんてモノはそんなに重要じゃねぇ。結局、求められるのは結果、ってのは嫌でも理解してる。ーー俺が悪い。最後、ボールを拾えなかった、腕に当てられなかった。ーーあの時、俺が動けなかったから伊達工は負けた。本心ではバレーボールを続けたかった先輩の引退を俺が早めたんだ」
「そんな…!堅ちゃ…違…っ…」
「ーーいや、いい。だから俺は腹括ったわけ。今まで先輩に甘えて面倒掛けて来た立場から全てが変わるけど、俺が意志を引継ぎたいと心の底から思ってる。あの時、茂庭さんの言っていた様に、絶対に鉄壁は崩れない、崩させない。ーー俺が居るうちに必ず結果出してやる」
青城が勝ったこんな時に、ごめん。やっぱりどうしても、なまえに聞いて欲しかった、と常に変わらず強くある眼差しに水膜が張り且つ震える声で伝えれば、なまえは「ーーでは、頑固たる決意表明をした伊達工業エースそして様々なる思いを背負った新主将に、頼れるお姉さんが特別に今だけ胸を貸し自尊心も鼻水も全部受け止めましょう…!」と、ぽろぽろぽろ…と大粒の涙を流しながら手を広げるものだから、二口は「~~ばーか…!明日…勝てよ、なんて絶対に言わねぇからな…っ」と霞れる声で華奢な身体を強く掻き抱いたのだった。
「ふふ、堅ちゃんの汗の匂いがする…」
「ーーお前、好きだろ?」
「…うん」