コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「すまん」
「…いいえ」
「余りのボリュームに驚「~~若利くんっ、めっ…!」
テスト期間直前であるこの日、参考書と今を輝かせる男子高校生バレーボール選手特集雑誌(こちらはこっそり)を買いに来たなまえは、本屋で偶々遭遇した牛島と折角なので…と云う事で共に図書館にある学習室で勉強していた。相手は、驚いたと言葉にしようとはしていたが、特に変わり無く普段通りの表情で対応してくるので(なまえの内心は羞恥心からとても慌てふためいたが)ぽっぽっと茹だった顔しながらも小声で一言返し、牛島の口に小さな掌で軽く押さえた。ーー当然、牛島のシャーペンを持つ手が左手であれば左腕が頻繁に動く。ならばなまえだって相手との立ち位置や距離感を思考し無ければならなかった立場であったのだが、つい分からない箇所の質問されたり解き方を聞かれれば、いつもの親しい関係である異性との距離感で寄り添い説明をして仕舞えば(しかも左側)牛島の腕が動いた際に、なまえの豊満な胸に、ぽにゅん、と肘が当たり柔らかさに包まれた、と云う流れである。
ーーー
ーー
ー
「分からない箇所を的確に教えてくれて助かった」
「ううん…!私も色々と教えて貰っちゃってごめんなさい…。寧ろ、私が一緒にお邪魔して邪魔になっちゃったかな…?」
「そんな事はない。己の為にもなったからな。ーーそういえば参考書を買う際にレジで目に入ったのだが、なまえでもバレーボール関連の雑誌買うのか?まぁ、今回の特集内容はインタビュー等も普段とは異なり特別だったんだが。まさかなまえが購入とは意外だった」
「あ、うん…!(一応、青城マネなんだけど、その事はきっと忘れてるかな?ま、いっか)皆の事、少しでも知りたくて…!あっ、私が買いに行った事は徹くんには内緒にしてね?その…恥ずかしいから…あっ、あとね、稲荷崎っていう兵庫の強豪校も掲載してるんだって」
「ーー及川」
図書館での勉強を終えた後、噴水や綺麗な花畑がある広い公園でまったりしながらテイクアウトした飲み物を楽しむ事にした二人は、さっそく色々な会話を楽しんでいた。不意に及川の話題になり表情を僅かに変えた牛島は、なまえにポツリ、ポツリと言葉を溢れさせていく。及川にとって牛島は打倒したい相手であるが、牛島にとっては現時点ではまた異なる感情を抱く相手であるのだ。
「ーーもっと力を発揮できる場所があったのに道を間違えた。それは及川だけじゃない。なまえ、お前もかも知れないな」
「え…?」
「学業もバレーボールも素晴らしく環境が整う白鳥沢に来れば…故に、俺の傍に居ればーー」
噴水が水飛沫をあげキラキラと反射し花畑の色彩との綺麗な一枚が完成すれば、牛島がなまえの艶やかな髪の毛を僅かに手に取り真剣な視線を絡ませる。確かに、絶対なる王者のその鋭い瞳に吸い込まれそうではあったが、なまえはグッ、と大きな瞳に自身の意思を強く灯して、ふるふる…と首を横に振るのだ。
「若利くんは…徹くん、と云う人の事を知ってる?」
「? ーー天才では無いのだから己の秀才を活かし適している環境を選べば良かったものを…プライドが邪魔をしたのだろう。非常に勿体無い」
「…きっと、辛く苦しい道を選んで歩く人ではあるんだろうけど、全ての正しい努力を重ねて才能を開花させる人なんだよ。私にとって徹くんの存在は深くて大きくて温かくて…ずっと、ずっと、誰よりも傍に居たくて今まで彼の背中を信じて着いてきたの。だって、彼の選択に一度たりとも間違いはないもの」
なまえの力強い瞳の輝きに、牛島は強く魅入りながらも羨望し、初めて及川に敵わないな、との感情が過ぎった瞬間だった。フッ、と頬を緩め髪の毛から手を離し、自身のカバンの中から先程こっそり見つけて買ったなまえにあげる為に用意した、可愛らしい小さなうさぎモチーフの棒付き飴をなまえに渡しながら「ーーバレーボールでは及川に負けるつもりは無い」と確りと放つのだ。
「ーーなまえは、及川と結婚すると正式に決めているのか?未だ予定であるならば、及川に対してなまえを俺にくれ、と言えばいいのか?」
「結婚…え、ええっ…!?(ぼふん)」
「…くれ、じゃ駄目か。俺が結婚するからお前は黙って許せ、くらいにしとくか」
「~~若利くんまって…!話がちょっと分からないんだけど…でも絶対にそんな事言わないで…!徹くん、びっくりしちゃうよ…っ」
「言っては駄目なのか?残念だ」
◇◇◇
「稲荷崎の主将さん、北信介くん、っていうんだって。わぁ…凄い…!私と同い年なんだよね?凛として素敵…!えっと…最近の悩みは、バァちゃんが今から俺の結婚式を楽しみにしている事…?ふふっ…インタビューの言葉の端々からお祖母様を大切にされてるのが伝わって心が温かくなるね」
「あらまァ。同じ主将でも確かにウチの主将には無い雰囲気ダヨネ。でもね、なまえちゃんが選手紹介雑誌見ながら他の雄共に興奮してるなんて、アレ共が知ったらガルガルして果たしてどうなる事やら…まさに俺にもとばっちり被害が出ちゃう、なんてね」
「~~まって、なんか一静くん誤解してるっ!あとね…私が雑誌買ったって事、徹くんに言っちゃ駄目だよ…?」
「今月に至っては自分用にも買ったのって及川目的もあるんでしょ?ガッツリ特集組んでるもんね」
「…あああの、だめっ…恥ずかしいから言っちゃだめぇ…!」
「!?(蕩け顔イタダキマシター)ーー俺や花巻にとっちゃ、なまえちゃんが素直になってくれたらウチの主将は今よりも更にやる気に漲るだろうし(バレーボールの観念から言えば)有難いンだけどなー?フフ、なまえちゃん顔がタコさんみたいになってるよ。愛いやつめ」
両方の頬っぺたをぷにゅぷにゅぷにゅ、と摘んでくる松川と一緒に雑誌を読むなまえ曰く”青城が全国に行ったら彼らともいつか戦うんだよ”との事で、早速、稲荷崎の特集ページに目を通して居た。先ずは主将の北の紹介、そして稲荷崎のアイドル的な存在である宮双子の紹介ページへと連なって居て目を通していくのだ。北の特集ページにて祖母の件に触れた際に以前、なまえと清水が運命的な出逢いをした日、そして二人で道で困っていた高齢女性を助けた事をふと思い出し、あのお婆ちゃんは元気かな?そう云えば彼女も孫の結婚式を楽しみにしている、と言っていたな…と記憶を振り返る。彼女の話す言葉の方言から然して確か孫の名前も信ちゃん…って言っていた気がするのだけど、あれ?まさか…あの女性は北さんのお婆ちゃん…?とは一瞬思うが、でもそんなまさかの偶然が重なるとは中々無いよね、なんて頬をふにゃんと緩ませ、ぽやぽやとしながらも、しみじみ思うのだ。
「ーーなまえちゃんはコッチにウザイ程懐かれそう。ハイ絶対に及川と同族嫌悪。えっと…宮侑。やっぱり奇遇だねー、この子もセッターじゃん」
「~~え!そんな事言ったら侑さんに叱られちゃうよ…!」
「あながち間違ってないと思うけど?ーーじゃあ、このポヤヤンとした方の。治はどう?」
「…治さんは、ぽやんとしてないよ。だって雑誌からでも伝わってくる瞳の奥の灰青色の炎が怖いもの。現実に会って睨まれたら動けなくなっちゃう…。なんだろう…稲荷崎の方々は瞳の奥に宿す力が凄いね…!神秘的、というか…」
「ーーふむ。無意識に生じる(なまえちゃんにとって)危険予知じゃない?奴らに捕まれば、美味しくじっくり隅々まで残さず食べられちゃうワケだから。狐は子うさぎが大好物だしーーでもね、狐も自然には勝てないワケよ。そんな事させないから」
「…えっと…一静くん…?」
「だから、一人で城のお外に出ちゃダメだよ?」
一つの机に雑誌を置いて向かい合って読む体勢である為、松川はなでなで、となまえの頭を優しく撫で愛でる。大切なお姫様を護るのも彼にとっては重要な役割であるのだがーー
「(ーー俺ってこういう勘があたるんだよねー。いつまでも城に閉じ込めてはおけないンだから、俺らの手が届かない領域の場合は、お前が手段問わず直接動けよ主将。ーー…ま、心配御無用かな?女の子のファンも必ず読んでる雑誌に自分の好きな女の事、或る意味(文字で)晒してんだからさー。正直、読めばワカル人続出するンじゃないの?そんで、なまえちゃんが全く気付かないのは及川にとっちゃ逆に可哀想ではあるな)」
及川の特集ページにて記載してあった女の子のタイプのインタビュー欄の文章を一文字ずつ思い出せば、余りにも露骨であり呆れを通り越しもう笑う事しか出来ず肩を震わせる。故に稲荷崎に至っては、会ったことも無く今現状では雑誌越しでしか知らない彼らの筈なのに、狐共の鋭く醶い牙と爪が可愛いなまえに剥けられてる気がして、そして何故だかーーいつの日か必ず、独占欲を含んだ舌で舐められそうな心底、ウンザリする胸騒ぎがして、松川は額に手をやり頭を抱えるのだ。
◇◇◇
「~~二口先輩!俺も先輩が大切に持ってる御守り欲しいっす…!何処で手に入るんすか?全部が俺好みでしかも伊達工カラーなのもエモいっす!」
「ゲッ…(マジかよ最悪)いやいやいや無理。勘弁して。てか隠してたのに目敏いな黄金…!お前はイチイチ俺の事見んな。次いでに犬みたいに纏わりつくな!」
「だって先輩、日々スゲー幸せそうなんですもん!周囲の人間も幸せにするっていうか…御守りの御利益もあるんッスかね!?」
「(ウンウン)」
「ーー黄金川は知らねぇけどさ、入学時と比べたらこの子ったらスゲー変わったのよ。今よりも更にナマ言って手が掛かってた二口の姿、お前にもマジで見せてやりたいぜ…!で、最高視聴率は様々な事態に巻き込まれ踏ん張った周囲の人間全員だな。ヨシヨシお前らは良く頑張った…って優しく褒めちぎって欲しいくらいよ…!まぁ、今もクソ生意気なのは1ミリたりとも全く変わらないけど、顔や雰囲気は柔らかくなったっつーか…人間的に成長してるっつーの?ーー…ま、理由は敢えて言わないけど(鎌先さんがメンド…じゃなかったまだ傷が癒えてないから)」
「!?ヒェッ、そうなんスか?二口さん怖ェー!!」
「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」
「ニコッ(なまえちゃん…本当に本当にアリガトウ…!)」
「…いいえ」
「余りのボリュームに驚「~~若利くんっ、めっ…!」
テスト期間直前であるこの日、参考書と今を輝かせる男子高校生バレーボール選手特集雑誌(こちらはこっそり)を買いに来たなまえは、本屋で偶々遭遇した牛島と折角なので…と云う事で共に図書館にある学習室で勉強していた。相手は、驚いたと言葉にしようとはしていたが、特に変わり無く普段通りの表情で対応してくるので(なまえの内心は羞恥心からとても慌てふためいたが)ぽっぽっと茹だった顔しながらも小声で一言返し、牛島の口に小さな掌で軽く押さえた。ーー当然、牛島のシャーペンを持つ手が左手であれば左腕が頻繁に動く。ならばなまえだって相手との立ち位置や距離感を思考し無ければならなかった立場であったのだが、つい分からない箇所の質問されたり解き方を聞かれれば、いつもの親しい関係である異性との距離感で寄り添い説明をして仕舞えば(しかも左側)牛島の腕が動いた際に、なまえの豊満な胸に、ぽにゅん、と肘が当たり柔らかさに包まれた、と云う流れである。
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「分からない箇所を的確に教えてくれて助かった」
「ううん…!私も色々と教えて貰っちゃってごめんなさい…。寧ろ、私が一緒にお邪魔して邪魔になっちゃったかな…?」
「そんな事はない。己の為にもなったからな。ーーそういえば参考書を買う際にレジで目に入ったのだが、なまえでもバレーボール関連の雑誌買うのか?まぁ、今回の特集内容はインタビュー等も普段とは異なり特別だったんだが。まさかなまえが購入とは意外だった」
「あ、うん…!(一応、青城マネなんだけど、その事はきっと忘れてるかな?ま、いっか)皆の事、少しでも知りたくて…!あっ、私が買いに行った事は徹くんには内緒にしてね?その…恥ずかしいから…あっ、あとね、稲荷崎っていう兵庫の強豪校も掲載してるんだって」
「ーー及川」
図書館での勉強を終えた後、噴水や綺麗な花畑がある広い公園でまったりしながらテイクアウトした飲み物を楽しむ事にした二人は、さっそく色々な会話を楽しんでいた。不意に及川の話題になり表情を僅かに変えた牛島は、なまえにポツリ、ポツリと言葉を溢れさせていく。及川にとって牛島は打倒したい相手であるが、牛島にとっては現時点ではまた異なる感情を抱く相手であるのだ。
「ーーもっと力を発揮できる場所があったのに道を間違えた。それは及川だけじゃない。なまえ、お前もかも知れないな」
「え…?」
「学業もバレーボールも素晴らしく環境が整う白鳥沢に来れば…故に、俺の傍に居ればーー」
噴水が水飛沫をあげキラキラと反射し花畑の色彩との綺麗な一枚が完成すれば、牛島がなまえの艶やかな髪の毛を僅かに手に取り真剣な視線を絡ませる。確かに、絶対なる王者のその鋭い瞳に吸い込まれそうではあったが、なまえはグッ、と大きな瞳に自身の意思を強く灯して、ふるふる…と首を横に振るのだ。
「若利くんは…徹くん、と云う人の事を知ってる?」
「? ーー天才では無いのだから己の秀才を活かし適している環境を選べば良かったものを…プライドが邪魔をしたのだろう。非常に勿体無い」
「…きっと、辛く苦しい道を選んで歩く人ではあるんだろうけど、全ての正しい努力を重ねて才能を開花させる人なんだよ。私にとって徹くんの存在は深くて大きくて温かくて…ずっと、ずっと、誰よりも傍に居たくて今まで彼の背中を信じて着いてきたの。だって、彼の選択に一度たりとも間違いはないもの」
なまえの力強い瞳の輝きに、牛島は強く魅入りながらも羨望し、初めて及川に敵わないな、との感情が過ぎった瞬間だった。フッ、と頬を緩め髪の毛から手を離し、自身のカバンの中から先程こっそり見つけて買ったなまえにあげる為に用意した、可愛らしい小さなうさぎモチーフの棒付き飴をなまえに渡しながら「ーーバレーボールでは及川に負けるつもりは無い」と確りと放つのだ。
「ーーなまえは、及川と結婚すると正式に決めているのか?未だ予定であるならば、及川に対してなまえを俺にくれ、と言えばいいのか?」
「結婚…え、ええっ…!?(ぼふん)」
「…くれ、じゃ駄目か。俺が結婚するからお前は黙って許せ、くらいにしとくか」
「~~若利くんまって…!話がちょっと分からないんだけど…でも絶対にそんな事言わないで…!徹くん、びっくりしちゃうよ…っ」
「言っては駄目なのか?残念だ」
◇◇◇
「稲荷崎の主将さん、北信介くん、っていうんだって。わぁ…凄い…!私と同い年なんだよね?凛として素敵…!えっと…最近の悩みは、バァちゃんが今から俺の結婚式を楽しみにしている事…?ふふっ…インタビューの言葉の端々からお祖母様を大切にされてるのが伝わって心が温かくなるね」
「あらまァ。同じ主将でも確かにウチの主将には無い雰囲気ダヨネ。でもね、なまえちゃんが選手紹介雑誌見ながら他の雄共に興奮してるなんて、アレ共が知ったらガルガルして果たしてどうなる事やら…まさに俺にもとばっちり被害が出ちゃう、なんてね」
「~~まって、なんか一静くん誤解してるっ!あとね…私が雑誌買ったって事、徹くんに言っちゃ駄目だよ…?」
「今月に至っては自分用にも買ったのって及川目的もあるんでしょ?ガッツリ特集組んでるもんね」
「…あああの、だめっ…恥ずかしいから言っちゃだめぇ…!」
「!?(蕩け顔イタダキマシター)ーー俺や花巻にとっちゃ、なまえちゃんが素直になってくれたらウチの主将は今よりも更にやる気に漲るだろうし(バレーボールの観念から言えば)有難いンだけどなー?フフ、なまえちゃん顔がタコさんみたいになってるよ。愛いやつめ」
両方の頬っぺたをぷにゅぷにゅぷにゅ、と摘んでくる松川と一緒に雑誌を読むなまえ曰く”青城が全国に行ったら彼らともいつか戦うんだよ”との事で、早速、稲荷崎の特集ページに目を通して居た。先ずは主将の北の紹介、そして稲荷崎のアイドル的な存在である宮双子の紹介ページへと連なって居て目を通していくのだ。北の特集ページにて祖母の件に触れた際に以前、なまえと清水が運命的な出逢いをした日、そして二人で道で困っていた高齢女性を助けた事をふと思い出し、あのお婆ちゃんは元気かな?そう云えば彼女も孫の結婚式を楽しみにしている、と言っていたな…と記憶を振り返る。彼女の話す言葉の方言から然して確か孫の名前も信ちゃん…って言っていた気がするのだけど、あれ?まさか…あの女性は北さんのお婆ちゃん…?とは一瞬思うが、でもそんなまさかの偶然が重なるとは中々無いよね、なんて頬をふにゃんと緩ませ、ぽやぽやとしながらも、しみじみ思うのだ。
「ーーなまえちゃんはコッチにウザイ程懐かれそう。ハイ絶対に及川と同族嫌悪。えっと…宮侑。やっぱり奇遇だねー、この子もセッターじゃん」
「~~え!そんな事言ったら侑さんに叱られちゃうよ…!」
「あながち間違ってないと思うけど?ーーじゃあ、このポヤヤンとした方の。治はどう?」
「…治さんは、ぽやんとしてないよ。だって雑誌からでも伝わってくる瞳の奥の灰青色の炎が怖いもの。現実に会って睨まれたら動けなくなっちゃう…。なんだろう…稲荷崎の方々は瞳の奥に宿す力が凄いね…!神秘的、というか…」
「ーーふむ。無意識に生じる(なまえちゃんにとって)危険予知じゃない?奴らに捕まれば、美味しくじっくり隅々まで残さず食べられちゃうワケだから。狐は子うさぎが大好物だしーーでもね、狐も自然には勝てないワケよ。そんな事させないから」
「…えっと…一静くん…?」
「だから、一人で城のお外に出ちゃダメだよ?」
一つの机に雑誌を置いて向かい合って読む体勢である為、松川はなでなで、となまえの頭を優しく撫で愛でる。大切なお姫様を護るのも彼にとっては重要な役割であるのだがーー
「(ーー俺ってこういう勘があたるんだよねー。いつまでも城に閉じ込めてはおけないンだから、俺らの手が届かない領域の場合は、お前が手段問わず直接動けよ主将。ーー…ま、心配御無用かな?女の子のファンも必ず読んでる雑誌に自分の好きな女の事、或る意味(文字で)晒してんだからさー。正直、読めばワカル人続出するンじゃないの?そんで、なまえちゃんが全く気付かないのは及川にとっちゃ逆に可哀想ではあるな)」
及川の特集ページにて記載してあった女の子のタイプのインタビュー欄の文章を一文字ずつ思い出せば、余りにも露骨であり呆れを通り越しもう笑う事しか出来ず肩を震わせる。故に稲荷崎に至っては、会ったことも無く今現状では雑誌越しでしか知らない彼らの筈なのに、狐共の鋭く醶い牙と爪が可愛いなまえに剥けられてる気がして、そして何故だかーーいつの日か必ず、独占欲を含んだ舌で舐められそうな心底、ウンザリする胸騒ぎがして、松川は額に手をやり頭を抱えるのだ。
◇◇◇
「~~二口先輩!俺も先輩が大切に持ってる御守り欲しいっす…!何処で手に入るんすか?全部が俺好みでしかも伊達工カラーなのもエモいっす!」
「ゲッ…(マジかよ最悪)いやいやいや無理。勘弁して。てか隠してたのに目敏いな黄金…!お前はイチイチ俺の事見んな。次いでに犬みたいに纏わりつくな!」
「だって先輩、日々スゲー幸せそうなんですもん!周囲の人間も幸せにするっていうか…御守りの御利益もあるんッスかね!?」
「(ウンウン)」
「ーー黄金川は知らねぇけどさ、入学時と比べたらこの子ったらスゲー変わったのよ。今よりも更にナマ言って手が掛かってた二口の姿、お前にもマジで見せてやりたいぜ…!で、最高視聴率は様々な事態に巻き込まれ踏ん張った周囲の人間全員だな。ヨシヨシお前らは良く頑張った…って優しく褒めちぎって欲しいくらいよ…!まぁ、今もクソ生意気なのは1ミリたりとも全く変わらないけど、顔や雰囲気は柔らかくなったっつーか…人間的に成長してるっつーの?ーー…ま、理由は敢えて言わないけど(鎌先さんがメンド…じゃなかったまだ傷が癒えてないから)」
「!?ヒェッ、そうなんスか?二口さん怖ェー!!」
「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」
「ニコッ(なまえちゃん…本当に本当にアリガトウ…!)」