コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「なまえちゃんもその高さになってボール叩いてみる?」
「いいの…?」
「今は二人きりだしトスは上げてやれねぇから、どうしても雰囲気だけになっちまうけどさ」
「ううんっ…!それでもいいの。是非お願いします」
「ヨッシャ。んじゃ肩車しましょうか?お姫様」
身長や最高到達点の話題から徐々に話が盛り上がり、なまえがネットの上からボールを打ってみたいな、なんてふと零せば、花巻が機転を利かせてなまえを肩車をしネットの前に立ってボールを打たせて(雰囲気にはなるけど)なまえの望みを叶える事になった。
「なまえちゃん、ナイスキー!」
肩車されたなまえが自分で持ったボールをポン、と掌で叩けば、勢いは弱々しいがネットの向こう側にぽてん、と落ちていく。ネットの上からボールを叩いて、しかも普段見ることが出来ない普段とはまた異なる視界からコート上の景色を見れるなんて…と、なまえはジィン…と深く感動し目を潤ませて輝かせた。そして、いつも比較にならない程に早いボールを、目でも身体でも追い掛け真剣勝負をしている彼らに対して更に感銘を受けるのだ。
「貴大くん、ありがとう!」
「いえいえ〜、お安い御用よ」
「ーー私ね、徹くんがマッキー!って声掛けしてセットしたボールを貴大くんがあいよ!って繋げる流れが、海と青空とキラキラと反射する太陽の光の景色に見えて、それがとても綺麗で大好きなの。あのね!守備の範囲も広くて何でも拾う貴大くんは海で、太陽はボールに喩えてみたんだけど…はわわっ、なんだか変な事言っちゃってごめん…!」
「なまえちゃん…」
「…っ、あのね、私が何が言いたいかと言うとね、貴大くんは青城にとって居なくちゃならない人って事で…勿論、皆そうなんだけど…!」
「ーーふふっ。俺らって強豪とか言われて練習環境も申し分無いし練習だって頑張ってるけど、最近は特に一度も全国行けて無いじゃん?そうなると影でヒソヒソ言われたりする事もあんのよねー。安定デスネ、いつも報われないヨネ、なんてさ」
「ーーっ!」
「…それでも腐らず誰一人として逃げ出さず厳しい道を踏ん張ってるのか、及川が主将になってから1年の伸びが更に良くなった、と言われ始めたのか。さて、如何してだか解る?」
「えっと…やっぱり白鳥沢に勝ちたいという一貫性が強かったから…?」
「ウーン…今の3年生全員との話となれば其れだけの気力だけじゃあ流石に踏ん張れねぇわな。ご存知の通り、俺ら上級生とだいぶバチバチしてた環境や時期もあったからね。ーー正解は、なまえちゃんが俺らの傍に居てくれる事を選んでくれて、そしていつも救ってくれるから。…今の青城になまえちゃんの存在は大きくて必要不可欠である事ーー君はいつも自分を謙遜するけど、この事は「そんな事ない」なんて否定しないで。ちゃんと覚えておいてね」
花巻が陽だまりの様な柔らかい笑顔で言葉を丁寧に伝えると共に、なまえの大きな瞳からは、ぽろぽろぽろぽろ…ッと大粒の宝石が沢山溢れ花巻の鼻先に零れ落ちては、丁寧に拾い集める気持ちと共に大きな確りとした掌で太腿にぽんぽん、と励ます様に撫でられるのだ。
ーーそっか、勝手にバレーボールに夢中になる意味を僅かでも共感する事を果たして彼らは許してくれるだろうか?なんて無意識に三歩引いて抱いて居たけど、彼らの答えは、とても優しく共感し共に手を取り合い確りと前に進む、だった。雨あがりの晴れた空と新緑の微風と光及び雨粒に集まって、七色の綺麗な虹が夢を語る。
ーーー
ーー
ー
「(…ありゃあ、ウチの副主将から甘やかすなと言われましても、あんなんじゃ溺愛になるわなぁ…てか吠えてる本人が一番甘やかしてるしな)」
まさかの想像以上に幸福であった先程の思い出深い出来事となかなか味わえない見事な感触につい思い深く浸る最中、今行っている練習はめちゃくちゃ体力的にもキツいが、内心はめちゃくちゃ天国であった。寧ろ活力がどんどん溢れ漲る。然しながらこんな緊張感のある場面の最中、内心抱いている素直な感情が表情や声になんか出たら、様々な理由により息の根を止められそうなので絶対に隠し通すと決めた。
「ーーッやべ…流れ弾…ッ!」
万が一バレた際の自身の死因且つ容疑者複数名、動機が多々であり最期が合宿中、なんてマジで嫌過ぎるし勘弁である。こんな猛者共に埋もれながらなんて心の底から御遠慮願います。死ぬ時は男らしく女を護りながら若しくは腹上死が良い。
「(今日みたいになまえちゃんと長い時間、二人きりで話す機会なんかなかなか難しいからなぁ…先ずあの護衛から彼女を離さなきゃならねぇし)」
先程のなまえちゃんと俺との思い出は、我が人生の中で上位に幸せだと思う。それに、甘い匂いに纏われて、彼女の太腿と股、豊満な胸が自身に隙間無く密着して柔らか過ぎる感触は至極幸せだった。あああっめちゃくちゃ柔らかくて、すげー可愛くて、めちゃくちゃ堪らなかった(おいおい俺の語彙力よ)偶には許せ及川岩泉。我が人生悔いなーーバコーン!!
「ひょえー…!マッキー大丈夫…?」
「お前の邪念にボールが吸い込まれてったのか何かは知らんが、とにかくスマンな花巻」
「~~グッ…!世紀末の美男子の顔に…ッ!全女が泣くぞ!(岩泉ビンゴ怖)」
「頭も顔も普段と特に変化なく元気印。ヨシ、問題ナシ」
「~~松川…!」
◇◇◇
「二口、新しいストレッチと柔軟取り入れたの?」
「おう。てか今更かよ?特に膝や太腿、脹脛の怪我予防にだと」
「ごめんごめん。他の部員にも広めても良い?」
二口がなまえからお願いされたストレッチと柔軟を念入りに行っている際に、後ろから滑津が話し掛けて来て接する。そんなん一々聞く事なのか?別に構わねぇだろ、と思いつつ身体を動かしながら「ドーゾ」と頷くのだ。ーー実は発端は完璧になまえにあるのだが滑津を見るとついなまえを思い出す。思えば、なまえとの会話の中では何故か、滑津が羨ましい、から始まって最後には自分と滑津をマネとしても女性としても比べないで欲しい、等の主旨の話題が偶にある気がする。何故、あの彼女が其んなにも彼女らしくない事を発言するのかの理由も解らないが、只言えるのは比べた事なんて一度たりとも無い。なまえのマネの手腕は周囲から耳に入った話や感覚でしか知り得ない故に、大体、そんなモン比べる事でも無いと思う。或る意味、共通して言える事は、ウチも青城も部員の人数に対してマネは一人だしそんなん全部なんか出来やしない。足りない分があるとしたなら周囲が協力して補えば良いだろ。あー、そっか。またその手の話題を振られた時にはなまえにハッキリ言ったろって事でハイ解決。次、女性としての魅力の面。余り聞こえは良くないだろうけど(女のタイプとして)男子高校生の常套句である、俺の好みを教えて、とか、敢えて何方か選ぶとしたらタイプはどっちなの?なんて聞かれりゃ、そりゃあ断然、滑津のほう。理由は依然としてスラッとして顔は綺麗系の女が好きだから。其れは多分、昔も今も変わってないと思う。ーーでも今、息もできない程に自身が心底、胸を焦がす女性はなまえだけなのである。そんななまえに対して抱く自身の情の正体に、無理矢理名前を探したり決めつけたりするのは無粋なのでもう止めた。だから先ず俺に異性として双方を比べさせると云う事自体、フェアじゃ無いわけ。…なんて、ンなもん口に出してまでなんか言ってやんねーけど!だって俺ばっかり悔しいじゃねーかよ。そんな感じで其処から徐々に情報が枝分かれし辿り着く先には当然、及川の顔が二口の脳裏を見事に占める。
「(ーーチッ…俺の方があの人の事をすげー羨ましいって思う…!なまえと朝から晩までずっと一緒だもんな…クッソ腹立つ…!)」
俺もなまえの作る飯をずっと食いたい(御飯作るんだ、と眩しい笑顔で教えてくれたのを覚えてる)練習終わりのなまえのうなじの汗を舐めたい(こらこら)風呂上がりのなまえを部屋に連れ込んでキスしながら身体中弄りたい(アカンやつ)ーー正直、今の俺がなまえの傍に居たら間違い無く執り行うリストである(ステイ!冷静になれ)ーーだからこそ尚更、強く不安にもなるし腸が煮えくり返る思いである。あの華やかな仮面の下の(ヘラヘラ…と言いたいトコだけど)俊邁なる鋭い視線のナイフに一瞬でも気を抜けば、喉元を突かれ息の根を止められる。さすれば自身の大切な女の子は一生、あの男の花瓶に生けられるーー負けたくない、譲りたくない、幾ら自身が様々な条件下に於いて不利だとしても諦める訳にはいかない。
「ーー今、青葉城西も合宿なんだってよ」
「大体、何処もそうでしょ?インハイも近いんだし。ねぇねぇそういえばみょうじさんもマネになったんだよね?噂で聞いたんだけど青葉城西、中でも特に及川さんと岩泉さんからすっごく大切にされてるんだって。あの二人から愛でられるなんて流石だよね!」
「………」
「(あ、しまった私とした事がつい…(笑)然し、この子は本当に表情が豊かだわ)」
「…悔しいけど青城エースはめちゃくちゃかっけぇよ。いつか鉄壁のド真ん中ブチ抜かれそうで脅威」
「フフーン?やっとおわかりいただけただろうか」
「いやなんでお前が自慢してんだよ」
「で、及川さんは?」
「ーー練習試合の時に特に感じたけど、無意識に目の前の俺らなんかよりずっとその先に居る誰かを常に意識して居やがるのな。…寧ろ其処を強くド突いて、俺らから出し抜かれるぞって事を気付かせてやりたい。んで、いつかあの新緑枯らして破城、踏み台にして俺らが全国行く」
「~~なんと…っ茂庭さん聞きました!?二口が成長していますっ…!」
「(涙ぶわァっ)大人になって…!でも言い方が平和的じゃないぞ…!」
んで!もし万が一気が狂って野獣化したオイカワが(心の中では呼び捨て)合宿中になまえに手ぇ出してたら先ずは一発ケツに蹴りブチ込んでから次は(先程のカッコ良さ台無し)
ーーー
ーー
ー
「!?…徹くん…っ待って…そこは怪我してて痛いの~~ひ、ぅ」
「ーーあらまぁ、本当だ。どうしたの?」
「わ、かんな…っ…」
「透き通る肌がこんなに紅くなって、カワイソウにね。俺が舐めたら治るんじゃない?」
「あの…っ、私にキッチンに着いて来てってお願いしたのは…ホットミルク作って欲しかったからじゃないの…っ…?」
「んー…?あぁそうだネ。消毒の後に作ってくれる?」
「~~っ!…おねがい…痛いの…やだ…っ」
「我慢」
合宿最終日前夜ーー
全くどの口が言うか、とはまさにこの事であり、及川はなまえを背後から抱き締めて少しだけ薄くなったうなじの噛み痕に舌を這わせ、強く吸って痕を残し少しだけ強く歯を立てる。ぞくぞくぞく…っとする強い甘い痺れに逆らえず抗えないなまえは、ふるふる、と小さく首を横に揺らす事がもう既に限界であり、もう及川が満足するのを只管に待つしかない領域までに事が運んでいた。及川は及川で、なまえには可哀想な事をしているのは重々承知であるが、ある思考の元に意地になってる部分もあった。ーー悔しいけど、この合宿が終わったらなまえは絶対にアイツと会うに決まってる。一番は"行くな"と無理矢理繋ぎ止めれば良いのだが流石に今は行動に移す事は出来ない。ーー彼女は俺のものであって、俺のものじゃない。ならば、あのクソ生意気な瞳と脳ミソに嫌でも認識させ、あわよくばなまえの存在を消させるまで、意固地でも意地でも何だろうが痕を消す訳にはいかない。ーー今の俺は、駄々を捏ねてる子供?ハッ、傍観者共は好きな様に言ってろ。情けなく縋る様になまえの身体をくるりと反転させ、身体を持ち上げてキッチンの上の空いてるスペースに座らせ、ゆっくりと唇を重ね合わせる。ーー…お願い。どうか、俺だけ見て。決して言葉にして伝えられないウンザリする一途な真剣な想いを、なまえに八つ当たりするのだ。そんな今宵の内緒話
「いいの…?」
「今は二人きりだしトスは上げてやれねぇから、どうしても雰囲気だけになっちまうけどさ」
「ううんっ…!それでもいいの。是非お願いします」
「ヨッシャ。んじゃ肩車しましょうか?お姫様」
身長や最高到達点の話題から徐々に話が盛り上がり、なまえがネットの上からボールを打ってみたいな、なんてふと零せば、花巻が機転を利かせてなまえを肩車をしネットの前に立ってボールを打たせて(雰囲気にはなるけど)なまえの望みを叶える事になった。
「なまえちゃん、ナイスキー!」
肩車されたなまえが自分で持ったボールをポン、と掌で叩けば、勢いは弱々しいがネットの向こう側にぽてん、と落ちていく。ネットの上からボールを叩いて、しかも普段見ることが出来ない普段とはまた異なる視界からコート上の景色を見れるなんて…と、なまえはジィン…と深く感動し目を潤ませて輝かせた。そして、いつも比較にならない程に早いボールを、目でも身体でも追い掛け真剣勝負をしている彼らに対して更に感銘を受けるのだ。
「貴大くん、ありがとう!」
「いえいえ〜、お安い御用よ」
「ーー私ね、徹くんがマッキー!って声掛けしてセットしたボールを貴大くんがあいよ!って繋げる流れが、海と青空とキラキラと反射する太陽の光の景色に見えて、それがとても綺麗で大好きなの。あのね!守備の範囲も広くて何でも拾う貴大くんは海で、太陽はボールに喩えてみたんだけど…はわわっ、なんだか変な事言っちゃってごめん…!」
「なまえちゃん…」
「…っ、あのね、私が何が言いたいかと言うとね、貴大くんは青城にとって居なくちゃならない人って事で…勿論、皆そうなんだけど…!」
「ーーふふっ。俺らって強豪とか言われて練習環境も申し分無いし練習だって頑張ってるけど、最近は特に一度も全国行けて無いじゃん?そうなると影でヒソヒソ言われたりする事もあんのよねー。安定デスネ、いつも報われないヨネ、なんてさ」
「ーーっ!」
「…それでも腐らず誰一人として逃げ出さず厳しい道を踏ん張ってるのか、及川が主将になってから1年の伸びが更に良くなった、と言われ始めたのか。さて、如何してだか解る?」
「えっと…やっぱり白鳥沢に勝ちたいという一貫性が強かったから…?」
「ウーン…今の3年生全員との話となれば其れだけの気力だけじゃあ流石に踏ん張れねぇわな。ご存知の通り、俺ら上級生とだいぶバチバチしてた環境や時期もあったからね。ーー正解は、なまえちゃんが俺らの傍に居てくれる事を選んでくれて、そしていつも救ってくれるから。…今の青城になまえちゃんの存在は大きくて必要不可欠である事ーー君はいつも自分を謙遜するけど、この事は「そんな事ない」なんて否定しないで。ちゃんと覚えておいてね」
花巻が陽だまりの様な柔らかい笑顔で言葉を丁寧に伝えると共に、なまえの大きな瞳からは、ぽろぽろぽろぽろ…ッと大粒の宝石が沢山溢れ花巻の鼻先に零れ落ちては、丁寧に拾い集める気持ちと共に大きな確りとした掌で太腿にぽんぽん、と励ます様に撫でられるのだ。
ーーそっか、勝手にバレーボールに夢中になる意味を僅かでも共感する事を果たして彼らは許してくれるだろうか?なんて無意識に三歩引いて抱いて居たけど、彼らの答えは、とても優しく共感し共に手を取り合い確りと前に進む、だった。雨あがりの晴れた空と新緑の微風と光及び雨粒に集まって、七色の綺麗な虹が夢を語る。
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「(…ありゃあ、ウチの副主将から甘やかすなと言われましても、あんなんじゃ溺愛になるわなぁ…てか吠えてる本人が一番甘やかしてるしな)」
まさかの想像以上に幸福であった先程の思い出深い出来事となかなか味わえない見事な感触につい思い深く浸る最中、今行っている練習はめちゃくちゃ体力的にもキツいが、内心はめちゃくちゃ天国であった。寧ろ活力がどんどん溢れ漲る。然しながらこんな緊張感のある場面の最中、内心抱いている素直な感情が表情や声になんか出たら、様々な理由により息の根を止められそうなので絶対に隠し通すと決めた。
「ーーッやべ…流れ弾…ッ!」
万が一バレた際の自身の死因且つ容疑者複数名、動機が多々であり最期が合宿中、なんてマジで嫌過ぎるし勘弁である。こんな猛者共に埋もれながらなんて心の底から御遠慮願います。死ぬ時は男らしく女を護りながら若しくは腹上死が良い。
「(今日みたいになまえちゃんと長い時間、二人きりで話す機会なんかなかなか難しいからなぁ…先ずあの護衛から彼女を離さなきゃならねぇし)」
先程のなまえちゃんと俺との思い出は、我が人生の中で上位に幸せだと思う。それに、甘い匂いに纏われて、彼女の太腿と股、豊満な胸が自身に隙間無く密着して柔らか過ぎる感触は至極幸せだった。あああっめちゃくちゃ柔らかくて、すげー可愛くて、めちゃくちゃ堪らなかった(おいおい俺の語彙力よ)偶には許せ及川岩泉。我が人生悔いなーーバコーン!!
「ひょえー…!マッキー大丈夫…?」
「お前の邪念にボールが吸い込まれてったのか何かは知らんが、とにかくスマンな花巻」
「~~グッ…!世紀末の美男子の顔に…ッ!全女が泣くぞ!(岩泉ビンゴ怖)」
「頭も顔も普段と特に変化なく元気印。ヨシ、問題ナシ」
「~~松川…!」
◇◇◇
「二口、新しいストレッチと柔軟取り入れたの?」
「おう。てか今更かよ?特に膝や太腿、脹脛の怪我予防にだと」
「ごめんごめん。他の部員にも広めても良い?」
二口がなまえからお願いされたストレッチと柔軟を念入りに行っている際に、後ろから滑津が話し掛けて来て接する。そんなん一々聞く事なのか?別に構わねぇだろ、と思いつつ身体を動かしながら「ドーゾ」と頷くのだ。ーー実は発端は完璧になまえにあるのだが滑津を見るとついなまえを思い出す。思えば、なまえとの会話の中では何故か、滑津が羨ましい、から始まって最後には自分と滑津をマネとしても女性としても比べないで欲しい、等の主旨の話題が偶にある気がする。何故、あの彼女が其んなにも彼女らしくない事を発言するのかの理由も解らないが、只言えるのは比べた事なんて一度たりとも無い。なまえのマネの手腕は周囲から耳に入った話や感覚でしか知り得ない故に、大体、そんなモン比べる事でも無いと思う。或る意味、共通して言える事は、ウチも青城も部員の人数に対してマネは一人だしそんなん全部なんか出来やしない。足りない分があるとしたなら周囲が協力して補えば良いだろ。あー、そっか。またその手の話題を振られた時にはなまえにハッキリ言ったろって事でハイ解決。次、女性としての魅力の面。余り聞こえは良くないだろうけど(女のタイプとして)男子高校生の常套句である、俺の好みを教えて、とか、敢えて何方か選ぶとしたらタイプはどっちなの?なんて聞かれりゃ、そりゃあ断然、滑津のほう。理由は依然としてスラッとして顔は綺麗系の女が好きだから。其れは多分、昔も今も変わってないと思う。ーーでも今、息もできない程に自身が心底、胸を焦がす女性はなまえだけなのである。そんななまえに対して抱く自身の情の正体に、無理矢理名前を探したり決めつけたりするのは無粋なのでもう止めた。だから先ず俺に異性として双方を比べさせると云う事自体、フェアじゃ無いわけ。…なんて、ンなもん口に出してまでなんか言ってやんねーけど!だって俺ばっかり悔しいじゃねーかよ。そんな感じで其処から徐々に情報が枝分かれし辿り着く先には当然、及川の顔が二口の脳裏を見事に占める。
「(ーーチッ…俺の方があの人の事をすげー羨ましいって思う…!なまえと朝から晩までずっと一緒だもんな…クッソ腹立つ…!)」
俺もなまえの作る飯をずっと食いたい(御飯作るんだ、と眩しい笑顔で教えてくれたのを覚えてる)練習終わりのなまえのうなじの汗を舐めたい(こらこら)風呂上がりのなまえを部屋に連れ込んでキスしながら身体中弄りたい(アカンやつ)ーー正直、今の俺がなまえの傍に居たら間違い無く執り行うリストである(ステイ!冷静になれ)ーーだからこそ尚更、強く不安にもなるし腸が煮えくり返る思いである。あの華やかな仮面の下の(ヘラヘラ…と言いたいトコだけど)俊邁なる鋭い視線のナイフに一瞬でも気を抜けば、喉元を突かれ息の根を止められる。さすれば自身の大切な女の子は一生、あの男の花瓶に生けられるーー負けたくない、譲りたくない、幾ら自身が様々な条件下に於いて不利だとしても諦める訳にはいかない。
「ーー今、青葉城西も合宿なんだってよ」
「大体、何処もそうでしょ?インハイも近いんだし。ねぇねぇそういえばみょうじさんもマネになったんだよね?噂で聞いたんだけど青葉城西、中でも特に及川さんと岩泉さんからすっごく大切にされてるんだって。あの二人から愛でられるなんて流石だよね!」
「………」
「(あ、しまった私とした事がつい…(笑)然し、この子は本当に表情が豊かだわ)」
「…悔しいけど青城エースはめちゃくちゃかっけぇよ。いつか鉄壁のド真ん中ブチ抜かれそうで脅威」
「フフーン?やっとおわかりいただけただろうか」
「いやなんでお前が自慢してんだよ」
「で、及川さんは?」
「ーー練習試合の時に特に感じたけど、無意識に目の前の俺らなんかよりずっとその先に居る誰かを常に意識して居やがるのな。…寧ろ其処を強くド突いて、俺らから出し抜かれるぞって事を気付かせてやりたい。んで、いつかあの新緑枯らして破城、踏み台にして俺らが全国行く」
「~~なんと…っ茂庭さん聞きました!?二口が成長していますっ…!」
「(涙ぶわァっ)大人になって…!でも言い方が平和的じゃないぞ…!」
んで!もし万が一気が狂って野獣化したオイカワが(心の中では呼び捨て)合宿中になまえに手ぇ出してたら先ずは一発ケツに蹴りブチ込んでから次は(先程のカッコ良さ台無し)
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「!?…徹くん…っ待って…そこは怪我してて痛いの~~ひ、ぅ」
「ーーあらまぁ、本当だ。どうしたの?」
「わ、かんな…っ…」
「透き通る肌がこんなに紅くなって、カワイソウにね。俺が舐めたら治るんじゃない?」
「あの…っ、私にキッチンに着いて来てってお願いしたのは…ホットミルク作って欲しかったからじゃないの…っ…?」
「んー…?あぁそうだネ。消毒の後に作ってくれる?」
「~~っ!…おねがい…痛いの…やだ…っ」
「我慢」
合宿最終日前夜ーー
全くどの口が言うか、とはまさにこの事であり、及川はなまえを背後から抱き締めて少しだけ薄くなったうなじの噛み痕に舌を這わせ、強く吸って痕を残し少しだけ強く歯を立てる。ぞくぞくぞく…っとする強い甘い痺れに逆らえず抗えないなまえは、ふるふる、と小さく首を横に揺らす事がもう既に限界であり、もう及川が満足するのを只管に待つしかない領域までに事が運んでいた。及川は及川で、なまえには可哀想な事をしているのは重々承知であるが、ある思考の元に意地になってる部分もあった。ーー悔しいけど、この合宿が終わったらなまえは絶対にアイツと会うに決まってる。一番は"行くな"と無理矢理繋ぎ止めれば良いのだが流石に今は行動に移す事は出来ない。ーー彼女は俺のものであって、俺のものじゃない。ならば、あのクソ生意気な瞳と脳ミソに嫌でも認識させ、あわよくばなまえの存在を消させるまで、意固地でも意地でも何だろうが痕を消す訳にはいかない。ーー今の俺は、駄々を捏ねてる子供?ハッ、傍観者共は好きな様に言ってろ。情けなく縋る様になまえの身体をくるりと反転させ、身体を持ち上げてキッチンの上の空いてるスペースに座らせ、ゆっくりと唇を重ね合わせる。ーー…お願い。どうか、俺だけ見て。決して言葉にして伝えられないウンザリする一途な真剣な想いを、なまえに八つ当たりするのだ。そんな今宵の内緒話