コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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起床予定時間まで未だ早い時間、身体に心地よい重たさと温もりを感じながらゆっくりと瞼を開けば、自身の頬のすぐ前には落ち着く香りと広い胸があった。自身を抱き締める相手が誰だかなんて顔を見なくても直ぐ理解し、すりすりっ…と頬を擦り寄せて甘えた後、其の相手も周りの3人も起こさない様にゆっくりと部屋を出て朝のシャワーを浴びにいく。
「……っ、」
顔や首、胸あたりから勢いよくお湯を浴びなまえ御愛用モコモコ泡のボディソープ(お高い)を纏う最中、何故か自身のうなじの皮膚にツキン、と傷口に沁みる様な軽い痛みがして、あれ?と不思議には思ったが、自身が知らないうちに何か引っ掻いてしまったのかな、なんて特に気にもせず浴び終え着替えをする前に全身に保湿クリームと痛かった箇所に自らの感覚で傷薬を少しだけ塗った。後で鏡で確認して傷が出来ていて且つ目立つのなら絆創膏貼っておこう、と思考するが、マネ業務が始まれば忙しくパタパタしてその事などすっかりと頭から抜けて忘れてしまい、後にある事に気が付いた温田から思いっ切り赤面され「~~またアイツか!?」と耳元でコッソリと指摘されたなまえだった。温田から問われる意味を全く理解出来ないで居る中、透き通る新雪のうなじにくっきりと残る歯型目掛けて少し大きめの絆創膏をペタリと貼られるのだった。
「~~とにかく!暫くはそこに絆創膏つけとけよな!お前ができなければ俺が貼ってやるからそん時は絶対言えよ!」
「う、うん…ありがとう…!(やっぱり知らず知らずのうちに引っ掻いちゃったのかな…傷跡が目立つって事?恥ずかしいな…)」
ーーー
ーー
ー
「フンフンフフーン♪今日も主になまえのお陰で御飯がとっても美味しいねー!…で、温田っちはさっきから俺に何か言いたげな目をしてるけど、どうかした?イケメンでつい見蕩れちゃった?」
「…ッ勘違いすんな。つーかマジで図太いな…!一周回ってやっぱその余裕さ流石だわ」
確証は無く推測であるが断定して言える歯型の犯人であろう及川に対して、コイツが絶対に犯人な筈なのに尻尾が掴めない、何事も無かった如く余裕に振舞っていつも通りなのが尚更腹立つ、なんて思いながら、もきゅもきゅとなまえの拵えた有難く美味しい食事を頂きつつも隣に座る我らが主将を涙目で軽く睨んだ。大体、みょうじの細い新雪の首筋に、あんな痕が残る位に容赦なく噛み付く事ねぇだろうよ…!
「ーーお前らがナニしてどんな関係なんて俺は全く知らないけど、頼むからみょうじにあんまり無茶させるな。合宿始まって特に尚更、あんな華奢な身体で毎日精一杯動いてんのに今突っつかれて壊れたらマジでどうすんだよ。…さすがに可哀想だろ」
敢えて目線も合わす事無くポツリ、と及川にしか聞こえない声で呟きながら今回のメインのおかずである食事に箸を入れて、箸越しから伝わる見事に絶妙な感触になまえに対する感謝を何度も想う。そしてそんな最中、及川の雰囲気が一瞬だけ鋭く変化したのも神経に確りと伝わり、次いでに言えば落ち度無くいつもの御得意なる華やかな表情に摩り替えた事も伝わった。ーーやはりバレーボールとみょうじの事に成れば、怖い程に真剣である及川を見習いたいし強くも憧れる。僅かな瞬間の刻でさえ、俺の所有物に対してお前なんかが横から口出すな、なんて瞬時に雲行き怪しく雷がパチッ、とする如くであるのだから。でも言わせて貰えば流石にちょっと余裕無いんじゃない?なんて面した場合、ごく普通な高校生である我が身は果たしてどうなる事やら…くわばらくわばら。
「ーーフフ、なまえの事を心配してくれてありがとネ。温田っちの言う様に、あの子は頑張り屋さんな反面きっと色々と我慢しちゃう所もあるからね。俺も気を付けて見ておくよ。大丈夫だよ、主将に全て任せなさい」
「ーー肝に銘じておく、の間違いだろ?」
「ナンノコトカナ」
◇◇◇
岩泉の言いつけ通り、練習して汗だくの皆を差し置いて誠に申し訳無い気持ちを抱きながら一番にお風呂を済ませたなまえは、部員達のお風呂の時間内の待機時間にメッセージアプリを開き二口との会話を読めば、滑津さんに対しても堅ちゃんに対しても失礼なメッセージを私ったら無意識に送ったの…!?信じられない…!と余りにも恥ずかしく情けない強い気持ちと後悔から見事に床にべちゃりと平伏す。もう此の儘、蕩けて無くなっちゃいたい…っ!
"「ウチのに何か?何かあるなら俺に直接言ってください」"
"「…なんだか、はじめちゃんの奥さんになった気分…!」"
"滑津はウチの自慢の子"と云う二口からのメッセージが表示された画面の文字を人差し指でツッ…と辿り読みながら、昨日、自身と岩泉との関わりを重なり合わせて思い出せば、チクン、チクン、とした痛みから又もや襲われる。もう嫌ーーと拒否し思い切り気持ちを濁し消しては無視し、滑津であれば奥様の如く大切にされるのも想われるのも至極当然である、と自身へ無理矢理突き付ける。
「ーーもしもし、お前は昨日から色々とイキナリ何なんだよ。まさかホームシックか?流石に今は俺だって合宿中でお前の事迎えに行けな「~~堅ちゃんっ、急に電話掛けて本当にごめんなさい…!あのね、昨日のメッセージは深い意味は無いの… ごめんなさい…っ」んあ、社交辞令の事か?つーかお前、何でそんな慌ててんの?」
結果としてクイズの答えは見事にチグハグで幕を閉じるが何より双方が心から思った事は単純で、僅かな時間ではあったが通話が出来て心地よい声が聞けた事が非常に嬉しかった、と云う事。和やかなる雰囲気で少しだけ話した後、電話の向こうから"二口そろそろ風呂行くぞ"なんて声がして、そっか…とシュンとしながら悟ったなまえが、また明日ね、合宿頑張ってね、と切り出そうとした瞬間、二口から思いがけない一言を宛てられる。
「なまえ…ッあのさ…その…っ大好き、っての言ってくれない?ーーいや、言って。なまえの口から聞きたい」
「…堅ちゃん…?」
「っ…あれだ!実は俺がホームシックなのかも?だからさ…励ましてよ」
「…堅ちゃん、大好きっ…たくさんたくさん大好きだよ…!」
「~~ッ……俺…も」
「ーーえ?ごめんなさい…よく聞こえ「じゃあな!」
通話を強制終了させた二口は、スマホを握り締めながら「あ"~~ッ!」とその場にしゃがみ込み、真っ赤に茹で上がる自身の顔を隠す様に頭を抱えた。いやいやいや俺も、じゃねぇわ何言っちゃってンの?もう知ったこっちゃねぇ俺は悪くないなまえが悪ィんだよ急に電話なんかしてきやがってめちゃくちゃ可愛すぎるから全部あの魔性の女の所為だあれもこれもいつだって此の俺を取り乱れさせやがってサキュバスの化身め!大体、たくさんたくさん大好きって何なんだよーー俺の全身の血液が沸騰するだろーが…!
「二口先輩!一緒に風呂行きましょー!…アレ?何でもう逆上せてんスか?」
「!?~~ウルセェ!」
ーーー
ーー
ー
「誰の事がたくさんたくさん大好き、だって?」
「ーーっ、はじめちゃん…!」
「まさか野郎相手に言ってねぇよな?」
軽くノック音と共に部屋の扉を開ける音の先には、風呂から上がってきた岩泉が不機嫌な表情でなまえに前置き無しで問う。なまえは、その表情を目の当たりにすればやはりぴくん、と怯みながら、岩泉の事は大好きだけど怒られるのはやっぱり怖いーーとも思ってしまう。それでも疑問に思った事を、ほんの少しだけ勇気を出して言葉にして伝えてみた。岩泉はいつだって、なまえと真剣勝負で向き合ってくれる心の支えの人。だから彼は何があっても絶対に受け止めてくれる。
「…どうして…?はじめちゃんは私が大好きな男の人に大好きって言ったら何で怒るの?」
「ーーッ!」
「だ…だって、私っ…!堅ちゃんの事も、徹くんの事も、はじめちゃんの事も、たくさんだいす…ーー!?」
なまえが岩泉から早急にドサッ、と床に押し倒され組み敷かれれば、片手で易々と両手首を捕まれ頭上で固定され身動きが取れなくなる。いつでも頼れる彼の口から珍しく切なそうに、お前は昔っから小せぇな…可愛い、なんて零された後そして瞬間、キュ、と軽く華奢な手首に力を込められ鋭い目付きで見下ろされた。
「…ッや…だ…痛いよ…!はじめちゃん…」
「ーーお前が言う大好き、って奴らの腹ん中は所詮、腐ってドロドロ、ってワケだ。その気になりゃ子うさぎなんぞ瞬間に跡形もなく喰い散らかすぞ?…覚えとけ、奴らも俺もちっとも可愛くなんかねェからな」
当たり前だがなまえが岩泉相手に振り解けず身動きも取れるワケが無く、何よりいつもと雰囲気が異なる鋭さを宛つけられれば、なまえは顔を真っ赤にしながら、ひぐひぐ…っと瞳に大粒の涙を堪え岩泉の名前を消え入りそうな声で呼ぶ事しか出来ない。そんな無防備で且つ捕食状態である可愛いなまえを見れば、ドキッ、ともズキッ、とも胸と頭の両方に熱い痛みが走るのだ。悔しいが、比較的には及川にフォーカスが合たり易いのだが、岩泉にとってもなまえと云う清楚可憐で繊細なお花を、ずっとずっとずっと大切に愛でてきた。小さい頃から今までもずっと、なまえが泣けば誰よりも早く駆け寄って、可愛く笑えば一緒に喜んでーー気持ちこそ及川に負けない自負がある。故に自身でも分かってる。唯の八つ当たりだって事も、なまえの言う"大好き"の言葉の奥底の深い隠された真実の意味もーー今は未だ気持ちがついていかなくとも頭の隅の方ではちゃんと理解しているのだ。
「今日は俺がお前の隣で寝るからな。精々、喰われんなよ」
「ーーっ、はじめちゃんは私が私で無くなっちゃう様な事は絶対にしないもん…」
「!?…はっ…ホント、お前は天使みてぇな顔した悪魔だな!ーーまぁ当然だろ。其れが俺の役目だからな」
頑固たる決意を再度改めた今だけは、なまえに覆い被さり潰さない様に優しく抱き締める。自身の広い背中に小さな手が回り、きゅ、と捕まる感覚にホッと胸を撫で下ろす。可愛い、大切、愛でる。ーー残酷である昔も今も変わる事は不可能である現実。故にいつかきっとこの手から離れていって仕舞うこの可憐な花の、やがてその運命が訪れる日まではーー岩泉の護り方で彼女を大切に愛でていくのだ。それでも奥底の抗えない彼の泡の中の本心は、残念ながら彼のみぞ知る。
「ーー来月、はじめちゃんのお誕生日だね。今年は何が食べたい?」
「なまえの御手製の揚げ出し豆腐。あとは味噌汁、肉じゃが、煮付、稲荷寿司。あ、バースデーケーキは一緒に作ろうぜ」
「うんっ!」
「……っ、」
顔や首、胸あたりから勢いよくお湯を浴びなまえ御愛用モコモコ泡のボディソープ(お高い)を纏う最中、何故か自身のうなじの皮膚にツキン、と傷口に沁みる様な軽い痛みがして、あれ?と不思議には思ったが、自身が知らないうちに何か引っ掻いてしまったのかな、なんて特に気にもせず浴び終え着替えをする前に全身に保湿クリームと痛かった箇所に自らの感覚で傷薬を少しだけ塗った。後で鏡で確認して傷が出来ていて且つ目立つのなら絆創膏貼っておこう、と思考するが、マネ業務が始まれば忙しくパタパタしてその事などすっかりと頭から抜けて忘れてしまい、後にある事に気が付いた温田から思いっ切り赤面され「~~またアイツか!?」と耳元でコッソリと指摘されたなまえだった。温田から問われる意味を全く理解出来ないで居る中、透き通る新雪のうなじにくっきりと残る歯型目掛けて少し大きめの絆創膏をペタリと貼られるのだった。
「~~とにかく!暫くはそこに絆創膏つけとけよな!お前ができなければ俺が貼ってやるからそん時は絶対言えよ!」
「う、うん…ありがとう…!(やっぱり知らず知らずのうちに引っ掻いちゃったのかな…傷跡が目立つって事?恥ずかしいな…)」
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「フンフンフフーン♪今日も主になまえのお陰で御飯がとっても美味しいねー!…で、温田っちはさっきから俺に何か言いたげな目をしてるけど、どうかした?イケメンでつい見蕩れちゃった?」
「…ッ勘違いすんな。つーかマジで図太いな…!一周回ってやっぱその余裕さ流石だわ」
確証は無く推測であるが断定して言える歯型の犯人であろう及川に対して、コイツが絶対に犯人な筈なのに尻尾が掴めない、何事も無かった如く余裕に振舞っていつも通りなのが尚更腹立つ、なんて思いながら、もきゅもきゅとなまえの拵えた有難く美味しい食事を頂きつつも隣に座る我らが主将を涙目で軽く睨んだ。大体、みょうじの細い新雪の首筋に、あんな痕が残る位に容赦なく噛み付く事ねぇだろうよ…!
「ーーお前らがナニしてどんな関係なんて俺は全く知らないけど、頼むからみょうじにあんまり無茶させるな。合宿始まって特に尚更、あんな華奢な身体で毎日精一杯動いてんのに今突っつかれて壊れたらマジでどうすんだよ。…さすがに可哀想だろ」
敢えて目線も合わす事無くポツリ、と及川にしか聞こえない声で呟きながら今回のメインのおかずである食事に箸を入れて、箸越しから伝わる見事に絶妙な感触になまえに対する感謝を何度も想う。そしてそんな最中、及川の雰囲気が一瞬だけ鋭く変化したのも神経に確りと伝わり、次いでに言えば落ち度無くいつもの御得意なる華やかな表情に摩り替えた事も伝わった。ーーやはりバレーボールとみょうじの事に成れば、怖い程に真剣である及川を見習いたいし強くも憧れる。僅かな瞬間の刻でさえ、俺の所有物に対してお前なんかが横から口出すな、なんて瞬時に雲行き怪しく雷がパチッ、とする如くであるのだから。でも言わせて貰えば流石にちょっと余裕無いんじゃない?なんて面した場合、ごく普通な高校生である我が身は果たしてどうなる事やら…くわばらくわばら。
「ーーフフ、なまえの事を心配してくれてありがとネ。温田っちの言う様に、あの子は頑張り屋さんな反面きっと色々と我慢しちゃう所もあるからね。俺も気を付けて見ておくよ。大丈夫だよ、主将に全て任せなさい」
「ーー肝に銘じておく、の間違いだろ?」
「ナンノコトカナ」
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岩泉の言いつけ通り、練習して汗だくの皆を差し置いて誠に申し訳無い気持ちを抱きながら一番にお風呂を済ませたなまえは、部員達のお風呂の時間内の待機時間にメッセージアプリを開き二口との会話を読めば、滑津さんに対しても堅ちゃんに対しても失礼なメッセージを私ったら無意識に送ったの…!?信じられない…!と余りにも恥ずかしく情けない強い気持ちと後悔から見事に床にべちゃりと平伏す。もう此の儘、蕩けて無くなっちゃいたい…っ!
"「ウチのに何か?何かあるなら俺に直接言ってください」"
"「…なんだか、はじめちゃんの奥さんになった気分…!」"
"滑津はウチの自慢の子"と云う二口からのメッセージが表示された画面の文字を人差し指でツッ…と辿り読みながら、昨日、自身と岩泉との関わりを重なり合わせて思い出せば、チクン、チクン、とした痛みから又もや襲われる。もう嫌ーーと拒否し思い切り気持ちを濁し消しては無視し、滑津であれば奥様の如く大切にされるのも想われるのも至極当然である、と自身へ無理矢理突き付ける。
「ーーもしもし、お前は昨日から色々とイキナリ何なんだよ。まさかホームシックか?流石に今は俺だって合宿中でお前の事迎えに行けな「~~堅ちゃんっ、急に電話掛けて本当にごめんなさい…!あのね、昨日のメッセージは深い意味は無いの… ごめんなさい…っ」んあ、社交辞令の事か?つーかお前、何でそんな慌ててんの?」
結果としてクイズの答えは見事にチグハグで幕を閉じるが何より双方が心から思った事は単純で、僅かな時間ではあったが通話が出来て心地よい声が聞けた事が非常に嬉しかった、と云う事。和やかなる雰囲気で少しだけ話した後、電話の向こうから"二口そろそろ風呂行くぞ"なんて声がして、そっか…とシュンとしながら悟ったなまえが、また明日ね、合宿頑張ってね、と切り出そうとした瞬間、二口から思いがけない一言を宛てられる。
「なまえ…ッあのさ…その…っ大好き、っての言ってくれない?ーーいや、言って。なまえの口から聞きたい」
「…堅ちゃん…?」
「っ…あれだ!実は俺がホームシックなのかも?だからさ…励ましてよ」
「…堅ちゃん、大好きっ…たくさんたくさん大好きだよ…!」
「~~ッ……俺…も」
「ーーえ?ごめんなさい…よく聞こえ「じゃあな!」
通話を強制終了させた二口は、スマホを握り締めながら「あ"~~ッ!」とその場にしゃがみ込み、真っ赤に茹で上がる自身の顔を隠す様に頭を抱えた。いやいやいや俺も、じゃねぇわ何言っちゃってンの?もう知ったこっちゃねぇ俺は悪くないなまえが悪ィんだよ急に電話なんかしてきやがってめちゃくちゃ可愛すぎるから全部あの魔性の女の所為だあれもこれもいつだって此の俺を取り乱れさせやがってサキュバスの化身め!大体、たくさんたくさん大好きって何なんだよーー俺の全身の血液が沸騰するだろーが…!
「二口先輩!一緒に風呂行きましょー!…アレ?何でもう逆上せてんスか?」
「!?~~ウルセェ!」
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「誰の事がたくさんたくさん大好き、だって?」
「ーーっ、はじめちゃん…!」
「まさか野郎相手に言ってねぇよな?」
軽くノック音と共に部屋の扉を開ける音の先には、風呂から上がってきた岩泉が不機嫌な表情でなまえに前置き無しで問う。なまえは、その表情を目の当たりにすればやはりぴくん、と怯みながら、岩泉の事は大好きだけど怒られるのはやっぱり怖いーーとも思ってしまう。それでも疑問に思った事を、ほんの少しだけ勇気を出して言葉にして伝えてみた。岩泉はいつだって、なまえと真剣勝負で向き合ってくれる心の支えの人。だから彼は何があっても絶対に受け止めてくれる。
「…どうして…?はじめちゃんは私が大好きな男の人に大好きって言ったら何で怒るの?」
「ーーッ!」
「だ…だって、私っ…!堅ちゃんの事も、徹くんの事も、はじめちゃんの事も、たくさんだいす…ーー!?」
なまえが岩泉から早急にドサッ、と床に押し倒され組み敷かれれば、片手で易々と両手首を捕まれ頭上で固定され身動きが取れなくなる。いつでも頼れる彼の口から珍しく切なそうに、お前は昔っから小せぇな…可愛い、なんて零された後そして瞬間、キュ、と軽く華奢な手首に力を込められ鋭い目付きで見下ろされた。
「…ッや…だ…痛いよ…!はじめちゃん…」
「ーーお前が言う大好き、って奴らの腹ん中は所詮、腐ってドロドロ、ってワケだ。その気になりゃ子うさぎなんぞ瞬間に跡形もなく喰い散らかすぞ?…覚えとけ、奴らも俺もちっとも可愛くなんかねェからな」
当たり前だがなまえが岩泉相手に振り解けず身動きも取れるワケが無く、何よりいつもと雰囲気が異なる鋭さを宛つけられれば、なまえは顔を真っ赤にしながら、ひぐひぐ…っと瞳に大粒の涙を堪え岩泉の名前を消え入りそうな声で呼ぶ事しか出来ない。そんな無防備で且つ捕食状態である可愛いなまえを見れば、ドキッ、ともズキッ、とも胸と頭の両方に熱い痛みが走るのだ。悔しいが、比較的には及川にフォーカスが合たり易いのだが、岩泉にとってもなまえと云う清楚可憐で繊細なお花を、ずっとずっとずっと大切に愛でてきた。小さい頃から今までもずっと、なまえが泣けば誰よりも早く駆け寄って、可愛く笑えば一緒に喜んでーー気持ちこそ及川に負けない自負がある。故に自身でも分かってる。唯の八つ当たりだって事も、なまえの言う"大好き"の言葉の奥底の深い隠された真実の意味もーー今は未だ気持ちがついていかなくとも頭の隅の方ではちゃんと理解しているのだ。
「今日は俺がお前の隣で寝るからな。精々、喰われんなよ」
「ーーっ、はじめちゃんは私が私で無くなっちゃう様な事は絶対にしないもん…」
「!?…はっ…ホント、お前は天使みてぇな顔した悪魔だな!ーーまぁ当然だろ。其れが俺の役目だからな」
頑固たる決意を再度改めた今だけは、なまえに覆い被さり潰さない様に優しく抱き締める。自身の広い背中に小さな手が回り、きゅ、と捕まる感覚にホッと胸を撫で下ろす。可愛い、大切、愛でる。ーー残酷である昔も今も変わる事は不可能である現実。故にいつかきっとこの手から離れていって仕舞うこの可憐な花の、やがてその運命が訪れる日まではーー岩泉の護り方で彼女を大切に愛でていくのだ。それでも奥底の抗えない彼の泡の中の本心は、残念ながら彼のみぞ知る。
「ーー来月、はじめちゃんのお誕生日だね。今年は何が食べたい?」
「なまえの御手製の揚げ出し豆腐。あとは味噌汁、肉じゃが、煮付、稲荷寿司。あ、バースデーケーキは一緒に作ろうぜ」
「うんっ!」