コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
n a m e
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「ーーそうそう、良い感じ!みょうじさんは丁寧だね」
「わぁ…今のところ難しかった…!潮神さんが一緒に居てくれて良かった。本当にありがとう。忙しいのに無理言っちゃってごめんなさい。あの…このペースだと全部で何個作れるかな?」
「うーん…既に横断幕の綺麗な手直しが終わってるのを考慮してもギリギリ5個かなぁ…?連休も入っちゃうし明けのテスト期間とかも考えたら…」
「~~っ、そうだよね…やっぱり私の裁縫の腕ではスムーズに行かないよね…」
「えっ!いやいや、みょうじさんは仕事が丁寧で綺麗なんだよ。ミスも無いし!?」
「潮神さん、ありがとう」
「ーーで、誰に渡すの?及川くんと岩泉くん?」
ここ最近、休み時間や昼休みになれば同じクラスメイトであり手芸部である潮神にお世話になってるなまえは、針と糸の使用部位が特に難しい箇所を指導されながら、先ずは男子バレー部の横断幕を見事綺麗に手直し、そしてインハイに向けて小さな手作りの御守りを丁寧に気持ちを込めて一個ずつ作成していた。それでも足りない時間は、少しの空き時間や寝る前(あまり夜更かししない程度)にチクチク…と針仕事を熟す日が暫く続く。今のなまえ自身にとって寧ろ何か作業に集中している時間がある方がとても有難かった。
「(あれから…堅ちゃんから特に気になる様な事は言われて無いから誤魔化せたって事だよね…?変に思われて無いよね…大丈夫だよね…?)」
何故なら先日、自身の知らない部分をじゅわり、じゅわり、と溢れさせ、罪悪感に蝕われながら自覚した部分に出会って仕舞い、その事を出来るだけ思い出したく無かったからーーそんな最中、タイムリーな質問をしてしまう潮神は全く悪気無く、女子トークの一つの楽しみとしてなまえに問うのだった。
なまえは及川くん、と云うキーワードにトクン、と胸を跳ねさせる。伊達工の女生徒から気持ちを放たれたあの日を境にして、及川と二口に対しての対応も抱く気持ちも、なまえの中で今迄とは打って変わって何かが確実に変わった日でもあった。この気持ちの正体は未だ理解出来ずに居り、言ってしまえば正直、知り得るのが怖い。知りたくなんかない。これは凄くイケナイコトな気がして非常に怖くて、辛いのだ。
「うん…5個しか作れないから貴大くんと一静くんに作る…あとは…っ」
「うんうん?誰?」
「あ、ううん…!なんでもない…」
ーーそんな事、誰にも絶対に言えない。言えるわけが無い。青城マネージャーがライバル校の男の子に作るなんて…それでも自身の気持ちに抗えない。そんな彼は及川同様、サーブのスタイルも似ていた。お願いしたストレッチや柔軟も取り入れてくれてそこは安心ではあるが、それでいて学校柄、数多くの実務実習もあるだろうから怪我しない様にとの祈りを込めての健康祈願の御守りとして、なんて言い訳して作る自分がもう既に存在するのだ。この様に様々に混濁する気持ちに襲われながらも針を持ち布に糸を紡いでゆく。ああ、こんな気持ちを抱きながら作った御守りなんて迷惑千万、逆効果では無かろうか?潮神の前なのに、なまえの綺麗なゼリーの様な瞳から液がうるうる…っとつい溢れそうになったが必死に堪えた。
「みょうじさん…最近、何だか元気が無い様に見えるけど、悩みかな?」
「!?」
「私がこんな事言うなんて流石にお節介だと思うし、万が一…勘違いだったらゴメン。ーーみょうじさんって何だか最近、及川くんとの接し方変わったよね?」
「~~えっ!?どんな風に…っ」
顔を真っ赤に染め上げては手を止めて向き合うなまえを見て、つい潮神は一瞬だけ見蕩れて息を呑み込む。ハッ、として彼女の顔から目を逸らせば、新雪の様に透明感ありふれる綺麗な彼女の小さく細い綺麗な指には似合わない数枚の絆創膏が巻いてあって、その小さな手を護ってあげたい、なんて気持ちをつい抱き握りたくなるのだ。ーーまぁ、其れは私の役目では無いんだけどね、なんて心内で吐き出した。
「ーー…以前のみょうじさんなら及川くんは親密な幼なじみ、大好きなお兄ちゃんに寄り添う妹って感じだったんだけど…最近は特に一人の女性の顔かな?」
「えっ…一人の女性…?」
「うん。私思うんだけど、何事に於いても自身の気持ちに対して誤魔化したり、早急に焦って答えを見つける事なんて無いんだよ?ゆっくり、ゆっくり時間を掛けて大切に育むんだよ。私達は機械じゃなくて生きているんだから!其れに、ウチらはピチピチでまだまだ若いしリカバリ可能な年齢なんだからさ!」
潮神は最近、なまえとの過ごす時間がグンと増えたのもキッカケにあり自身の知り得る、又は新たに知り得たなまえの性格や人物像などから様々な思考し現在に至る自身の予想と照らし合わせれば、更に色々と汲み取っている節がある様だが明言は避け、兎に角、なまえを励ます事に徹する。
「私、実は、及川くんと岩泉くん両方に恋心を抱いてるの。えへ♡贅沢でしょ?だから大切にされてるみょうじさんが凄く凄く凄く羨ましくて」
「ーー!?っあ…あの…っ」
「あ、でも勘違いしないでね?みょうじさんに悪態ついたり牽制なんてそんな事思っても無いし?寧ろ私が惚れてる男の子が大切にしてる女の子って、どんな子なのかな?って知りたくて。んで案の定やっぱり納得だよねー。これでみょうじさんの性格最悪だったら即2人のもとへ告白暴露GO!だったかも?ふふ、今なんかは寧ろ仲良く成りたいなんて思っちゃってるよ。あ、だからって気遣いとかつまんない事は絶対にヤメテよね?私は全部自分でどうにかしたいんだから」
ふわり、と微笑む潮神はなまえと真剣に向き合い視線を交えれば「2人を同時に好きになる事、しかも絶対に叶う事も無い悲しい恋を未だ心に抱き続けて、ましてや未だに諦め切れない私は頭オカシイかな?」なんてなまえに問えば、なまえは、ふるふる…と顔を横に振る。さすれば潮神は「ーー最終的には、諦めるって事にはなるんだろうけど…何れは私のタイミングで私自身で何かしらの形できっちりケリをつけるんだ」なんて決意的な言葉を言いながら眩しい太陽の様な笑顔を魅せるのだ。凄いなーーこの人は、おそらく何回も自分と確り向き合っていて強く成った女性なんだろう。其れは純粋にキラキラと彼女を包み混んでは美しく輝いて見えた。今の目の前にあるだろう未知なる道だって、きっと彼女なら自分なりに切り開いて成長していけるのだろう。
「…潮神さんは、その…本当に…諦めるの?」
「はー!?ちょっ…みょうじさんからそんな随分な事を言われちゃ私辛いな~。じゃあさー、及川くん貰っても良い?」
「!?~~ごめんなさい」
「(あらま。あからさま泣きそうな辛い顔しながらも意味が良く分かってない、って顔しちゃって…みょうじさんは色々と気が付いてないんだなぁ…こりゃ拗らせるね…ププッ)まぁ発端としては、あなた達の仲睦まじい光景を見てから彼らの幸せそうな表情に見事に惚れちゃったんだから…。気持ちを割り切るまで時間も準備もまだまだ掛かるんだろうけどーー仕方ないよ。…みょうじさんも恋愛してる?」
「ーー私は…恥ずかしながら…そういうのまだ、よくわからなくて…」
「ふふっ、本当の気持ちに気付いた時はねー、心臓がキュゥゥッ!てなってポカポカ温かくなるんだよ。でもね、それはさっき私が言った様に私達は生きてるんだから、慌てずに自分のペースで育んでいかないとね?ーーっと、そろそろ王子様登場かな?みょうじさん、今日はここまでにしよっか?」
「あ、はいっ。色々ありがとう…!」
潮神から及川に恋心を抱いている、と面と言われて、また例の複雑なるズキン、ズキンとする胸の痛みを堪えながら、確りと針の数や布を確認して片付けていれば、遠くから足音が聞こえ或る人物の第一声の、なまえを呼ぶ声が盛大に聞こえた。
「~~もう無理!我慢の限界!なまえッ、あと15分で昼休み終わっちゃうっ…お願いだからもう俺と居て!あと、ちゃんとご飯食べた!?」
「何時も思うけど、及川くんってバレーの試合の時と普段のギャップ凄まじいよね」
「ーーあ、潮神さん!最近、なまえが色々とお世話になって、どうもありがとうネ」
「いえ、こちらこそ」
バタバタバタコンコンガチャリ!と手芸部の教室まで急いで来てノックして入って来ちゃう及川に対して潮神は、やれやれ…私の事は全く眼中に無いんですかい、と苦笑いしながら心の中で小さな溜息をつけば、及川となまえに軽く手を振り挨拶しては出ていった。頭では理解していて強がって御託並べても、いざこの状況を目の当たりにすれば流石に辛い。
「あっ…潮神さ「あのさ、俺に隠れて彼女とコソコソ何してるの?横断幕は綺麗に手直ししてくれたよね?…何でこんなに指を怪我してるの?」!?あっ…えっとね…あの…」
「ーー俺に言えないの?なまえは俺に何でも言って欲しい、って言ってるのに?」
なまえが立ち去る潮神に声を掛けようとした瞬間、及川に遮られては両頬に両手を包み添え挟まれ目線を無理やり合わせられる。 なまえの意見としては、きちんと全て完成させてから時期を見て四人一斉に伝えて渡したく可能ならインハイ始まる前辺りが理想だが、余裕の無い及川に見つめられて真剣に問われれば、屈しそうになり隠し続けて居られなく成りそうだった。
「…違うの。あのね、潮神さんから手芸を教えて貰ってるの…だからそんな徹くんが気にする事じゃ…」
「へー、そうなんだ。態々、人から教えて貰ってそんなに急いで一体誰に渡すつもり?ーーまさか自分用なんて言わないよね?なまえなら本で調べたりしてからゆっくり作るでしょ?オマエが最初から人に頼んで付きっきりになって教えて貰うなんて珍しいじゃん」
なまえがぴくん、と肩を震わせて一驚し甘い瞳をゆらっと揺らせば、その反応が気に食わない及川は目の色と表情をギリッ、と鋭く変える。可愛くて大切ななまえと先日起こった二口との遣り取りがリンクして重なり合い連動すれば、及川の身体の中からは嫉妬の感情がゴポリ、ゴポリ、と勢い良く湧き上がるのだ。
「…なまえ、今すぐこの場でキスしても良い?」
「…えっ!?でもっ…手芸部のーー…んっ」
「…もっと口あーんして舌出して。なまえが出来ないなら俺が無理やり口開かせて舌摘もうか?」
「…あふ…ッん…ン…!」
なまえの小さな口端に親指の爪側で押さえ付けて開かせて小さな可愛いちろっ、とした赤い舌を親指と人差し指で軽く摘んで引っ張り、すぐに及川の唇で、はむッと舌を挟み甘く噛んでちゅるっと音を出して吸う。ふにゃふにゃふにゃ、と力が抜けるなまえの小さい身体を目の前の机の上に寝かせて逃がさない様にグッと固定すれば、更に彼女を貪り食す如く深く濃厚に美味しい、もっともっと欲しい、と味わうのだ。
「(…拒否しない)」
ぢゅ、ぐち、ぐち、ちゅ、と恥ずかしい水音が響き熱を持った息遣いが谺する最中、及川は余裕の無い頭の中である事に気付く。以前ならなまえの身体に触れた時、唇を落とした時、嫌、触らないで、等と拒否される言葉があった筈…と薄ら思考しながら、無我夢中に目の前の愛しい女の子を貪る。気持ち良くて動けない、かな?だって俺も気持ち良いもん。
「…なまえの涎…はァ、甘い…もっと…ッは…」
「…んぁぁ…頭が蕩けひゃ…たひゅ、けへぇ…」
「ーーくそ…!…死ぬほど可愛い…!」
「~~ッ!?」
でろぉ…ッと濡れ汚す舌奥の細く頼り無くヒュッ、と抜ける音を合図に、腰の髄から強く甘い痺れが伝う感覚は怖い程に癖に成りそうだった。及川にとって初めて味わう感覚。ああ、そうか。相手がなまえだからかーーなまえ特有の魅力に視界も頭もクラクラしながら荒い息遣いと深い口付けを続けて彼女の言葉を無理矢理塞いで、彼女のスクールセーターを捲り弄りシャツの上から豊満な胸を鷲掴みにし愛撫しようと試みるーーが、残念ながらタイミング良く予鈴が鳴り、及川がビクッ、と一瞬固まった隙になまえがとんっ、と押し退けて、自分の大切な荷物を持ち急いでぱたぱたぱた…っと逃げて行って仕舞うのだ。
ーーー
ーー
ー
「なまえちゃん、横断幕すげー綺麗にしてくれてサンキュー。マジで助かるわ!」
「もうね、感動だよね。いつも頑張ってくれてるなまえちゃんに何か御礼しないとなー。何がいい?」
「この後、3人でラーメン食いに行く?偶には俺が奢っちゃる!」
「チョット待ちなさいよ。なまえちゃんがラーメン…?」
「うんっ、行く!奢ってくれなくて大丈夫だからラーメンに連れてって!私ね、魚介つけ麺か味噌ラーメンか焼豚ラーメンが良い…!餃子と炒飯も食べたいからシェアしない?あとね、ラーメンの後には締めのアイス食べに行こう!」
「「(あれ?なまえちゃんってば、今日何かあったのかな…?)」」
「なまえちゃん、アイスの店は何処のか決めてるの?この間テレビで紹介されてた彼処の店?一緒に写真撮ろうね」
「あ、そしたらメッセージアプリのアイコンにしよーっと(及川怖ぇけど3人ならイイっしょ)」
「及川どうした?ウザイ程に静かだな。風邪なんかひいたらぶっ飛ばすからな」
「……静かなのにウザイってどういう事かな?(だって俺の自業自得なのは分かるけど警戒されて距離取られて無性に気になって気になって気になって…!)」
「わぁ…今のところ難しかった…!潮神さんが一緒に居てくれて良かった。本当にありがとう。忙しいのに無理言っちゃってごめんなさい。あの…このペースだと全部で何個作れるかな?」
「うーん…既に横断幕の綺麗な手直しが終わってるのを考慮してもギリギリ5個かなぁ…?連休も入っちゃうし明けのテスト期間とかも考えたら…」
「~~っ、そうだよね…やっぱり私の裁縫の腕ではスムーズに行かないよね…」
「えっ!いやいや、みょうじさんは仕事が丁寧で綺麗なんだよ。ミスも無いし!?」
「潮神さん、ありがとう」
「ーーで、誰に渡すの?及川くんと岩泉くん?」
ここ最近、休み時間や昼休みになれば同じクラスメイトであり手芸部である潮神にお世話になってるなまえは、針と糸の使用部位が特に難しい箇所を指導されながら、先ずは男子バレー部の横断幕を見事綺麗に手直し、そしてインハイに向けて小さな手作りの御守りを丁寧に気持ちを込めて一個ずつ作成していた。それでも足りない時間は、少しの空き時間や寝る前(あまり夜更かししない程度)にチクチク…と針仕事を熟す日が暫く続く。今のなまえ自身にとって寧ろ何か作業に集中している時間がある方がとても有難かった。
「(あれから…堅ちゃんから特に気になる様な事は言われて無いから誤魔化せたって事だよね…?変に思われて無いよね…大丈夫だよね…?)」
何故なら先日、自身の知らない部分をじゅわり、じゅわり、と溢れさせ、罪悪感に蝕われながら自覚した部分に出会って仕舞い、その事を出来るだけ思い出したく無かったからーーそんな最中、タイムリーな質問をしてしまう潮神は全く悪気無く、女子トークの一つの楽しみとしてなまえに問うのだった。
なまえは及川くん、と云うキーワードにトクン、と胸を跳ねさせる。伊達工の女生徒から気持ちを放たれたあの日を境にして、及川と二口に対しての対応も抱く気持ちも、なまえの中で今迄とは打って変わって何かが確実に変わった日でもあった。この気持ちの正体は未だ理解出来ずに居り、言ってしまえば正直、知り得るのが怖い。知りたくなんかない。これは凄くイケナイコトな気がして非常に怖くて、辛いのだ。
「うん…5個しか作れないから貴大くんと一静くんに作る…あとは…っ」
「うんうん?誰?」
「あ、ううん…!なんでもない…」
ーーそんな事、誰にも絶対に言えない。言えるわけが無い。青城マネージャーがライバル校の男の子に作るなんて…それでも自身の気持ちに抗えない。そんな彼は及川同様、サーブのスタイルも似ていた。お願いしたストレッチや柔軟も取り入れてくれてそこは安心ではあるが、それでいて学校柄、数多くの実務実習もあるだろうから怪我しない様にとの祈りを込めての健康祈願の御守りとして、なんて言い訳して作る自分がもう既に存在するのだ。この様に様々に混濁する気持ちに襲われながらも針を持ち布に糸を紡いでゆく。ああ、こんな気持ちを抱きながら作った御守りなんて迷惑千万、逆効果では無かろうか?潮神の前なのに、なまえの綺麗なゼリーの様な瞳から液がうるうる…っとつい溢れそうになったが必死に堪えた。
「みょうじさん…最近、何だか元気が無い様に見えるけど、悩みかな?」
「!?」
「私がこんな事言うなんて流石にお節介だと思うし、万が一…勘違いだったらゴメン。ーーみょうじさんって何だか最近、及川くんとの接し方変わったよね?」
「~~えっ!?どんな風に…っ」
顔を真っ赤に染め上げては手を止めて向き合うなまえを見て、つい潮神は一瞬だけ見蕩れて息を呑み込む。ハッ、として彼女の顔から目を逸らせば、新雪の様に透明感ありふれる綺麗な彼女の小さく細い綺麗な指には似合わない数枚の絆創膏が巻いてあって、その小さな手を護ってあげたい、なんて気持ちをつい抱き握りたくなるのだ。ーーまぁ、其れは私の役目では無いんだけどね、なんて心内で吐き出した。
「ーー…以前のみょうじさんなら及川くんは親密な幼なじみ、大好きなお兄ちゃんに寄り添う妹って感じだったんだけど…最近は特に一人の女性の顔かな?」
「えっ…一人の女性…?」
「うん。私思うんだけど、何事に於いても自身の気持ちに対して誤魔化したり、早急に焦って答えを見つける事なんて無いんだよ?ゆっくり、ゆっくり時間を掛けて大切に育むんだよ。私達は機械じゃなくて生きているんだから!其れに、ウチらはピチピチでまだまだ若いしリカバリ可能な年齢なんだからさ!」
潮神は最近、なまえとの過ごす時間がグンと増えたのもキッカケにあり自身の知り得る、又は新たに知り得たなまえの性格や人物像などから様々な思考し現在に至る自身の予想と照らし合わせれば、更に色々と汲み取っている節がある様だが明言は避け、兎に角、なまえを励ます事に徹する。
「私、実は、及川くんと岩泉くん両方に恋心を抱いてるの。えへ♡贅沢でしょ?だから大切にされてるみょうじさんが凄く凄く凄く羨ましくて」
「ーー!?っあ…あの…っ」
「あ、でも勘違いしないでね?みょうじさんに悪態ついたり牽制なんてそんな事思っても無いし?寧ろ私が惚れてる男の子が大切にしてる女の子って、どんな子なのかな?って知りたくて。んで案の定やっぱり納得だよねー。これでみょうじさんの性格最悪だったら即2人のもとへ告白暴露GO!だったかも?ふふ、今なんかは寧ろ仲良く成りたいなんて思っちゃってるよ。あ、だからって気遣いとかつまんない事は絶対にヤメテよね?私は全部自分でどうにかしたいんだから」
ふわり、と微笑む潮神はなまえと真剣に向き合い視線を交えれば「2人を同時に好きになる事、しかも絶対に叶う事も無い悲しい恋を未だ心に抱き続けて、ましてや未だに諦め切れない私は頭オカシイかな?」なんてなまえに問えば、なまえは、ふるふる…と顔を横に振る。さすれば潮神は「ーー最終的には、諦めるって事にはなるんだろうけど…何れは私のタイミングで私自身で何かしらの形できっちりケリをつけるんだ」なんて決意的な言葉を言いながら眩しい太陽の様な笑顔を魅せるのだ。凄いなーーこの人は、おそらく何回も自分と確り向き合っていて強く成った女性なんだろう。其れは純粋にキラキラと彼女を包み混んでは美しく輝いて見えた。今の目の前にあるだろう未知なる道だって、きっと彼女なら自分なりに切り開いて成長していけるのだろう。
「…潮神さんは、その…本当に…諦めるの?」
「はー!?ちょっ…みょうじさんからそんな随分な事を言われちゃ私辛いな~。じゃあさー、及川くん貰っても良い?」
「!?~~ごめんなさい」
「(あらま。あからさま泣きそうな辛い顔しながらも意味が良く分かってない、って顔しちゃって…みょうじさんは色々と気が付いてないんだなぁ…こりゃ拗らせるね…ププッ)まぁ発端としては、あなた達の仲睦まじい光景を見てから彼らの幸せそうな表情に見事に惚れちゃったんだから…。気持ちを割り切るまで時間も準備もまだまだ掛かるんだろうけどーー仕方ないよ。…みょうじさんも恋愛してる?」
「ーー私は…恥ずかしながら…そういうのまだ、よくわからなくて…」
「ふふっ、本当の気持ちに気付いた時はねー、心臓がキュゥゥッ!てなってポカポカ温かくなるんだよ。でもね、それはさっき私が言った様に私達は生きてるんだから、慌てずに自分のペースで育んでいかないとね?ーーっと、そろそろ王子様登場かな?みょうじさん、今日はここまでにしよっか?」
「あ、はいっ。色々ありがとう…!」
潮神から及川に恋心を抱いている、と面と言われて、また例の複雑なるズキン、ズキンとする胸の痛みを堪えながら、確りと針の数や布を確認して片付けていれば、遠くから足音が聞こえ或る人物の第一声の、なまえを呼ぶ声が盛大に聞こえた。
「~~もう無理!我慢の限界!なまえッ、あと15分で昼休み終わっちゃうっ…お願いだからもう俺と居て!あと、ちゃんとご飯食べた!?」
「何時も思うけど、及川くんってバレーの試合の時と普段のギャップ凄まじいよね」
「ーーあ、潮神さん!最近、なまえが色々とお世話になって、どうもありがとうネ」
「いえ、こちらこそ」
バタバタバタコンコンガチャリ!と手芸部の教室まで急いで来てノックして入って来ちゃう及川に対して潮神は、やれやれ…私の事は全く眼中に無いんですかい、と苦笑いしながら心の中で小さな溜息をつけば、及川となまえに軽く手を振り挨拶しては出ていった。頭では理解していて強がって御託並べても、いざこの状況を目の当たりにすれば流石に辛い。
「あっ…潮神さ「あのさ、俺に隠れて彼女とコソコソ何してるの?横断幕は綺麗に手直ししてくれたよね?…何でこんなに指を怪我してるの?」!?あっ…えっとね…あの…」
「ーー俺に言えないの?なまえは俺に何でも言って欲しい、って言ってるのに?」
なまえが立ち去る潮神に声を掛けようとした瞬間、及川に遮られては両頬に両手を包み添え挟まれ目線を無理やり合わせられる。 なまえの意見としては、きちんと全て完成させてから時期を見て四人一斉に伝えて渡したく可能ならインハイ始まる前辺りが理想だが、余裕の無い及川に見つめられて真剣に問われれば、屈しそうになり隠し続けて居られなく成りそうだった。
「…違うの。あのね、潮神さんから手芸を教えて貰ってるの…だからそんな徹くんが気にする事じゃ…」
「へー、そうなんだ。態々、人から教えて貰ってそんなに急いで一体誰に渡すつもり?ーーまさか自分用なんて言わないよね?なまえなら本で調べたりしてからゆっくり作るでしょ?オマエが最初から人に頼んで付きっきりになって教えて貰うなんて珍しいじゃん」
なまえがぴくん、と肩を震わせて一驚し甘い瞳をゆらっと揺らせば、その反応が気に食わない及川は目の色と表情をギリッ、と鋭く変える。可愛くて大切ななまえと先日起こった二口との遣り取りがリンクして重なり合い連動すれば、及川の身体の中からは嫉妬の感情がゴポリ、ゴポリ、と勢い良く湧き上がるのだ。
「…なまえ、今すぐこの場でキスしても良い?」
「…えっ!?でもっ…手芸部のーー…んっ」
「…もっと口あーんして舌出して。なまえが出来ないなら俺が無理やり口開かせて舌摘もうか?」
「…あふ…ッん…ン…!」
なまえの小さな口端に親指の爪側で押さえ付けて開かせて小さな可愛いちろっ、とした赤い舌を親指と人差し指で軽く摘んで引っ張り、すぐに及川の唇で、はむッと舌を挟み甘く噛んでちゅるっと音を出して吸う。ふにゃふにゃふにゃ、と力が抜けるなまえの小さい身体を目の前の机の上に寝かせて逃がさない様にグッと固定すれば、更に彼女を貪り食す如く深く濃厚に美味しい、もっともっと欲しい、と味わうのだ。
「(…拒否しない)」
ぢゅ、ぐち、ぐち、ちゅ、と恥ずかしい水音が響き熱を持った息遣いが谺する最中、及川は余裕の無い頭の中である事に気付く。以前ならなまえの身体に触れた時、唇を落とした時、嫌、触らないで、等と拒否される言葉があった筈…と薄ら思考しながら、無我夢中に目の前の愛しい女の子を貪る。気持ち良くて動けない、かな?だって俺も気持ち良いもん。
「…なまえの涎…はァ、甘い…もっと…ッは…」
「…んぁぁ…頭が蕩けひゃ…たひゅ、けへぇ…」
「ーーくそ…!…死ぬほど可愛い…!」
「~~ッ!?」
でろぉ…ッと濡れ汚す舌奥の細く頼り無くヒュッ、と抜ける音を合図に、腰の髄から強く甘い痺れが伝う感覚は怖い程に癖に成りそうだった。及川にとって初めて味わう感覚。ああ、そうか。相手がなまえだからかーーなまえ特有の魅力に視界も頭もクラクラしながら荒い息遣いと深い口付けを続けて彼女の言葉を無理矢理塞いで、彼女のスクールセーターを捲り弄りシャツの上から豊満な胸を鷲掴みにし愛撫しようと試みるーーが、残念ながらタイミング良く予鈴が鳴り、及川がビクッ、と一瞬固まった隙になまえがとんっ、と押し退けて、自分の大切な荷物を持ち急いでぱたぱたぱた…っと逃げて行って仕舞うのだ。
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「なまえちゃん、横断幕すげー綺麗にしてくれてサンキュー。マジで助かるわ!」
「もうね、感動だよね。いつも頑張ってくれてるなまえちゃんに何か御礼しないとなー。何がいい?」
「この後、3人でラーメン食いに行く?偶には俺が奢っちゃる!」
「チョット待ちなさいよ。なまえちゃんがラーメン…?」
「うんっ、行く!奢ってくれなくて大丈夫だからラーメンに連れてって!私ね、魚介つけ麺か味噌ラーメンか焼豚ラーメンが良い…!餃子と炒飯も食べたいからシェアしない?あとね、ラーメンの後には締めのアイス食べに行こう!」
「「(あれ?なまえちゃんってば、今日何かあったのかな…?)」」
「なまえちゃん、アイスの店は何処のか決めてるの?この間テレビで紹介されてた彼処の店?一緒に写真撮ろうね」
「あ、そしたらメッセージアプリのアイコンにしよーっと(及川怖ぇけど3人ならイイっしょ)」
「及川どうした?ウザイ程に静かだな。風邪なんかひいたらぶっ飛ばすからな」
「……静かなのにウザイってどういう事かな?(だって俺の自業自得なのは分かるけど警戒されて距離取られて無性に気になって気になって気になって…!)」