コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「………」
「(えぇ~……?)」
「ーーあーらら、今の気持ちが全部顔にそのまんま書いてありますよ。胡散臭」
「~~相変わらずだな!実は飛雄ちゃんの方が可愛いんじゃない…!?」
及川は、心内で人生初と言っていい程の溜息をゲッソリと吐き出す。一応、自身は相手から云えば年上故に先輩。そう、俺は高3!然しながら非常に強い複雑なる感情は、ペタリ、と張り付く笑顔に浮かび上がり映し出されて仕舞えば、元凶である相手にはとっくに見透かされ更にはお見通しであった。カワイクナイヨー
「はぁ…二口クンとこんな場所で会うなんて奇遇だね。1人?」
「ーースゲー執拗い派手な女からしたくもねェ事を強要されそうになって逃げて来たんですよ(自業自得らしいけどンなもん知ったこっちゃねェ)あぁ、そうだ。及川サンが代わりにヤッてくれません?その女紹介しますから」
「ーーはァ?結構デス。寧ろ俺にとって不利益且つ嫌な予感しか無いんだけど」
「濃厚セックス一発か二発です。容易いでしょ?コレで俺は救われる、アンタも気持ち良くなれる。ハッピーじゃないスか(ブイブイ)」
「ーーブフゥ"ッ…!!」
新しいカフェを見つけたもんで良ければ今度なまえを誘って来ようと思って入ったのに暫くして、店員から「お客様、申し訳御座いませんが相席をお願いします」と言われ及川が顔を上げると、其処には恋敵である伊達工の二口が居た。うわーマジかよ如何したらあーなってこうなるの?なんて互いに思ってる筈なのに、何だか2人で向かい合い仲良く茶を啜らなくては成らず且つ逃げられない雰囲気に双方が呑み込まれ断れず、二口も小さく溜息をつきながらもガタリ、と席に座る。もうこうなれば致し方無いので手元の看板商品とやらを存分に味わう事にした。美味い。美味かったのに…!コイツがワケわからん事をイキナリ抜かすから吹き出したじゃんかっ…!カワイクネェ…!
「うっわ~そんなんでキョドります?まさか童貞ですかオイカワセンパイ?」
「(ピースじゃねぇわクソガキが…!)いやさ、色々オカシイだろふざけんなよ☆予定通り二口クンがその子可愛がってあげたら?…!…あーあ、こんなんじゃなまえもキミの本性を知って見事に幻滅だよネ。あの子は綺麗で繊細で純粋だから。フフンざまぁ」
「ーーチッ。どの口が言ってんだよ。なまえに出会ってから想うのもキスすんのもヤるのも一途に捧げる、って決めてますから」
「へー!チャラい二口クンがそんな事言っちゃうんだー以外ー☆ーー…そのムカつく程に綺麗なお顔を此の儘維持したけりゃ間違っても手ェ出すなよ?」
「ーーはァ?其れはコッチの台詞だよ。大体、何で俺らとの関係にアンタの承諾が必要なんスかね?なまえが俺としたい、って言った瞬間に俺は愛でながらヤる」
あ、ヤバい。流石の優しい及川サンも堪忍袋の緒がブチ切れそう。ピキピキブチブチ…ッ、と頭の細い血管が切れてるのが嫌でもわかる。然し此処は公共の場だ堪えろ…!下手したらこのナマ言ってやがるクソ厄介な後輩の所為で俺がお巡りさんにお世話になっちゃう。いやいや、マジでふざけんなよでも今年で高校最後のインハイインハイインハイ…!あ"~~!このクソガキにさっさとオモテデロ、って声高らかにして言いたい…!
「ーーはぁ…正直、今まで俺ら随分と女泣かせて来たデショ?コレって或る意味、罪と罰だと思うンスよね。…きっと俺もアンタも簡単に幸せには成れない。要するになまえ相手なら尚更、って事でこれからは互いに俺らなりの方法で潔くいきません?此処まで堕ちれば立場も関係ないし何も無い。寝ても覚めてもドウセ俺らが無性に求めるのは皮肉にもーー…たった一人の世界で一番可愛い女の子なんだから」
「ウンウン、随分と綺麗な言葉揃えてるケドーー真剣勝負の末、手段は問わず核心を奪った者が勝者。敗者は恨みっこ無し、って事でOK?宣戦布告も今の宣言も絶対に覚えておけよ」
「まぁ、もしなまえが欲しがり欲張りだったとしたら、そん時、最悪は俺ら同時で的な及川サン救済ルートも存在したりしてーーは、想像しただけでも嫉妬でブチ殺しそう」
色々とすっ飛ばして先ずは問いたい。なまえの気持ちは果たして如何成ってる?寧ろ双方が選ばれない、って選択肢は無いのか?ーーそんな事は一切有り得ないと考えもせず互いに引かず顬にゴリッ、と銃口を突きつけ合い、或る意味、利害の一致をしながらも指を引き金に掛ける。もし別の出会い方をして居たら、きっと良い友人に成って居たのかも知れないね。ほら御覧の通り見事な同族嫌悪。そして最後に伊達工主将の茂庭クン、あんた凄いよ…強者よ…
◇◇◇
「連休合宿なんだけど大学生とも練習試合する機会も取り入れてる…となると少なからずOBも在籍する。なまえ、どうする…?もし会いたくないならその場だけはーー」
「勿論、私も全部参加するよ!私は誰に何を言われても平気だよ」
「(涙ぶわァっ)なまえ…!(スカッ)」
「ーー安心しろ。なまえに手出しなんかさせねぇよ。お前には俺がついてる」
「はじめちゃん…かっこいい…!」
新入生に悪態を付かれて居たあの時の場面を思い出し、あの時の衝撃や感銘を思い出した及川がなまえを抱き締めようとした時に、横からヒョイッと漢・岩泉に奪われる。
4月もあっという間に残り僅かでありもう少しすればGWがやってくる。大切なインハイの為にも連休は合宿して更に力を付けたいと考える青葉城西は、合宿場から食事、日程、スケジュール管理、練習強化内容等…様々な事柄を何度も見直しては時間を作り掛け、皆で相談し念入りに計画を立て組んでいた。部員の食物アレルギー等を全て把握しているなまえが主に食事に携わってくれる、との事で更にやる気が漲るのだが、然しながら今迄存在し得なかった或る問題が今回は生じてくる。そう、正にそのなまえである。
「あの…お風呂は仕方ないけど、寝るお部屋は私も皆と一緒が良いです…。知らない場所で私だけ一人の部屋でポツン…と寝るのは怖い…」
「「!?」」
及川が握っていたペンが床にカシャン、と落下する。いや待ってこの子今なんて?いやいや合宿なもんで野郎は大部屋に雑魚寝なんですよ。そんな中に大切な可愛いなまえちゃんを寝かせるの?いやいや無理無理無理…!
「えっとねー?あのね、なまえ「そんなん駄目に決まってんだろ!ガキじゃねぇんだ大人しく一人で寝ろ!」ちょっ…岩ちゃん言い方…!」
「~~どうして?はじめちゃんのお部屋にお泊まりする時はぎゅっ、てして添い寝してくれるのに…今言ってくれた、お前には俺がついてる、って言葉は嘘だったの…?」
「はぁ!?~~ちょっ、ちょっと…!添い寝って…!俺が納得する様に詳しく説明してくれる!?これは由々しき事態だよ!」
「~~あ"ーー!!(赤面)」
例えが適してるかは不明だが、飢えた猛獣共の檻にぽわぽわ垂れ耳子うさぎを放り込む様な訳だから、ハイソーデスカ、なんて簡単には決められない。万が一、そうならざるを得ないのならば必ず策を講じ慎重に考えなければ成らない。結果、何度も何度も話し合い、又、今回利用する合宿施設の設備や広さ、部屋数等の様々な全体的な観念、考慮からも、致し方無く条件付きで一緒の部屋になる事に成った。ズキズキ、とする頭を手で抑え机に項垂れる岩泉の悩みは全く枯れない。彼にとって夜や睡眠時間でも気が抜けない事が一つ増えたのだから。
「あのっ…徹くん…あのね、寝る時は徹くんと一緒がいいな…だめ…?」
なまえが後からこっそりと及川の耳元でこしょこしょ囁けば、上擦った短い声と共に及川の背がピィンーー!と張り一気にブワァッと顔に熱を保つ。然しながら、如何しても赤面とニヤケ顔を上手く誤魔化し気付かれたく無くて「じゃあ…次いでに、俺と一緒にお風呂入ろうか?」なんてホロり、と言い終わった後に、しまった…調子に乗りすぎた…なんて我に返りながら後悔すれば「(もし怖くなって不安になったら)一緒に着いてきてくれる?」なんて、こてん、と可愛く首を傾げられたもんで、見事に及川は机に撃沈した。~~なまえちゃんマジでどうしちゃったの…!此の儘だと俺が色々と持たないよ…!
◇◇◇
「堅ちゃんっ…会いたかったよ…!」
会いたかった人物に久しぶりに会えたなまえは、ぽぁっ、と表情が明るくなりつい二口のお腹にギュッ、と手を回す。コラやめろ外だぞ恥ずかしいだろ離れろ、なんてなまえの頭を軽く抑えるが、二口の頬も染まりながらふにゃ、と緩みとても嬉しそうであり、結局は自分からもなまえの小さな身体に手を回し抱き締める。自身が待ち望みずっと会いたかった可愛い女の子であるのだから。デートスポットで有名であるこの景色も雰囲気も綺麗である公園は、周囲を見渡せば今の時間帯は若い子達でありふれてあちらこちらからハートがフワフワと飛び交って居た。この状況に上手く紛れて触れるだけ触って仕舞え。
「ちゃんと首輪付けてきたな。イイコ」
「…強くなれる御守りなの」
「ーーそ。マネージャーちゃんとやれてんの?迷惑掛けてねぇよな?ダメダメだと保護者の俺が代わりに謝りに行かなきゃなんねぇじゃん?」
「えっ!えっと…頑張ってるよ…!」
「ぷッ、何だそれ。そんなんで青城は大丈夫かよ?」
「~~もうっ、滑津さんと比べちゃだめっ…」
「いや別に比べてねぇけど。そんな怒るなよ。…あー、そういやさ…俺達の親密な関係は既に及川サン公認だから安心しろよ」
「?うん。えっと…とりあえず、堅ちゃんは徹くんと仲直りしたって事かな?良かったね…!」
「(あーあー、こっちも相変わらずだな)~~そうそう、この間仲良く(大嘘)二人きりでカフェでまったりしてさー」
「わぁ、羨ましい…!私も行きたかったなぁ…あのね、今度三人で遊ばない?」
「いや無理冗談だろ。絶対ヤダ」
「~~!?えっ…えっとね…2人で何の話したの…?」
「………ナイショ」
「…そっか…」
堅ちゃんは徹くんと遊んだのに私が居ると駄目なの?と勘違いしたなまえは、ガーンと肩を落としながら、しょんぼり…と落ち込む。何だか其れが凄く寂しくて二口の腕にそっと触れれば、感触に気付いた二口からその手を自然と取られて恋人繋ぎにされる。及川としかした事無い手の繋ぎ方にドキッ、と心臓が跳ねては、ポポポッと湯気が上がる様に顔が真っ赤になって、且つ蕩けた表情を向けてぱちっ、と目が合うと、二口も「ゲッ…!少し手繋いだくらいで何て顔してんだよ…!信じらんねぇ…」なんて口では言いながらも自身もなまえに負けずに顔を真っ赤にしていた。
「(堅治のあの幸せそうな顔何なの…!何なのあの女、マジでイライラする…!)」
二口をこっそり追ってきた例の女生徒が2人の親密さを嫌でも理解し遠くから見てギリッ…と悔しそうに表情を歪ませ、お洒落な売店で二口が飲み物を買いに席を離れなまえが一人に成ったのを見計らい、此方も嫉妬から産み出した強い感情から一方的に、たかがネクタイくらいで調子にノるな、キーホルダーくらいで勘違いするな、堅治が可愛がってる女はアンタだけじゃない!私とだって濃厚えっちするんだから!と最後に捨て台詞を吐いて去っていったのだ。及川の元カノと異なり暴力は無かったものの、やはり言われた衝撃は非常に強かったのだ。やはり及川の一部ファンからなまえに対して稀にチクチクと言われたりはするが、でも流石に今の様なセンシティブな言葉で当たられる、と云う事は今迄は無かった。二口とは通う学校が異なるので勿論、二口の立ち位置や周りの環境、学校の雰囲気を詳しく理解や把握している訳では無いので解らないが、其れは普段、一緒に居る彼との素敵な時間を思い出せば一目瞭然であり、及川の様に女の子達から凄く慕われたりモテるんだろうなと思えるし、何より今ので確証を得たのだ。ズキン、ズキン、と胸が痛くなる。ーーそして更に確証を得た事は、二口も及川も自身以外の女の子と既に経験済、と云う事になる。先程の女の子が言う事を信じれば、二口に至っては今もーー…?若しかしたら及川だって彼の言う、今は好きな女の子としかしたくない、と云う旨であり恋人対象なる好きな女の子と性行為をしてるのかもしれない。だってなまえは、及川にとって恋人の様に好きな人が、一体誰なのかも知らないのだから。
「(堅ちゃん…キスは私だけとしかしない、って言ったよね…?…っ、えっちはまた別で違うの…?徹くんも…私が知らないだけで好きな人としてるのかな…?…ううん、堅ちゃんとも徹くんともキスした私がこんな風に言える事なんかじゃない…!それに…もしかしたら私が変に考えすぎてるだけで、堅ちゃんだけじゃなくて皆にとってもえっちは実はどうって事ないのかな…?でも…私はやだよ…苦しい…徹くんも…っ、好きな女の子としてたらやだ…っ、頭の中がこんがらがって…もうわかんな…っ)」
なまえ自身、大切な彼らに対して恋人でも無いのに非常に身勝手な感情を抱いて、しかも同時に双方に対して…なんて普通に考えれば有り得ないし最低な事を考えて仕舞えば、そんな自身が自身で強い罪悪感に襲われていた。この気持ちは何なの…?なんか自分がヘン…気持ち悪い…苦しい…自分でも全く理解出来ないこんな感情を抱いて仕舞っている自分が本当に大っ嫌い…!でもこんな事、誰にも言えない。どうしたら良いの?自分が自分でもとても嫌なのにこんな事、気持ち悪い事、誰にも言える訳がない…二人ともごめんなさい、なんて感情が混濁しながら頬にぽたぽた…と涙が溢れては、一粒、一粒、制服のスカートに沁みていった。
「(えぇ~……?)」
「ーーあーらら、今の気持ちが全部顔にそのまんま書いてありますよ。胡散臭」
「~~相変わらずだな!実は飛雄ちゃんの方が可愛いんじゃない…!?」
及川は、心内で人生初と言っていい程の溜息をゲッソリと吐き出す。一応、自身は相手から云えば年上故に先輩。そう、俺は高3!然しながら非常に強い複雑なる感情は、ペタリ、と張り付く笑顔に浮かび上がり映し出されて仕舞えば、元凶である相手にはとっくに見透かされ更にはお見通しであった。カワイクナイヨー
「はぁ…二口クンとこんな場所で会うなんて奇遇だね。1人?」
「ーースゲー執拗い派手な女からしたくもねェ事を強要されそうになって逃げて来たんですよ(自業自得らしいけどンなもん知ったこっちゃねェ)あぁ、そうだ。及川サンが代わりにヤッてくれません?その女紹介しますから」
「ーーはァ?結構デス。寧ろ俺にとって不利益且つ嫌な予感しか無いんだけど」
「濃厚セックス一発か二発です。容易いでしょ?コレで俺は救われる、アンタも気持ち良くなれる。ハッピーじゃないスか(ブイブイ)」
「ーーブフゥ"ッ…!!」
新しいカフェを見つけたもんで良ければ今度なまえを誘って来ようと思って入ったのに暫くして、店員から「お客様、申し訳御座いませんが相席をお願いします」と言われ及川が顔を上げると、其処には恋敵である伊達工の二口が居た。うわーマジかよ如何したらあーなってこうなるの?なんて互いに思ってる筈なのに、何だか2人で向かい合い仲良く茶を啜らなくては成らず且つ逃げられない雰囲気に双方が呑み込まれ断れず、二口も小さく溜息をつきながらもガタリ、と席に座る。もうこうなれば致し方無いので手元の看板商品とやらを存分に味わう事にした。美味い。美味かったのに…!コイツがワケわからん事をイキナリ抜かすから吹き出したじゃんかっ…!カワイクネェ…!
「うっわ~そんなんでキョドります?まさか童貞ですかオイカワセンパイ?」
「(ピースじゃねぇわクソガキが…!)いやさ、色々オカシイだろふざけんなよ☆予定通り二口クンがその子可愛がってあげたら?…!…あーあ、こんなんじゃなまえもキミの本性を知って見事に幻滅だよネ。あの子は綺麗で繊細で純粋だから。フフンざまぁ」
「ーーチッ。どの口が言ってんだよ。なまえに出会ってから想うのもキスすんのもヤるのも一途に捧げる、って決めてますから」
「へー!チャラい二口クンがそんな事言っちゃうんだー以外ー☆ーー…そのムカつく程に綺麗なお顔を此の儘維持したけりゃ間違っても手ェ出すなよ?」
「ーーはァ?其れはコッチの台詞だよ。大体、何で俺らとの関係にアンタの承諾が必要なんスかね?なまえが俺としたい、って言った瞬間に俺は愛でながらヤる」
あ、ヤバい。流石の優しい及川サンも堪忍袋の緒がブチ切れそう。ピキピキブチブチ…ッ、と頭の細い血管が切れてるのが嫌でもわかる。然し此処は公共の場だ堪えろ…!下手したらこのナマ言ってやがるクソ厄介な後輩の所為で俺がお巡りさんにお世話になっちゃう。いやいや、マジでふざけんなよでも今年で高校最後のインハイインハイインハイ…!あ"~~!このクソガキにさっさとオモテデロ、って声高らかにして言いたい…!
「ーーはぁ…正直、今まで俺ら随分と女泣かせて来たデショ?コレって或る意味、罪と罰だと思うンスよね。…きっと俺もアンタも簡単に幸せには成れない。要するになまえ相手なら尚更、って事でこれからは互いに俺らなりの方法で潔くいきません?此処まで堕ちれば立場も関係ないし何も無い。寝ても覚めてもドウセ俺らが無性に求めるのは皮肉にもーー…たった一人の世界で一番可愛い女の子なんだから」
「ウンウン、随分と綺麗な言葉揃えてるケドーー真剣勝負の末、手段は問わず核心を奪った者が勝者。敗者は恨みっこ無し、って事でOK?宣戦布告も今の宣言も絶対に覚えておけよ」
「まぁ、もしなまえが欲しがり欲張りだったとしたら、そん時、最悪は俺ら同時で的な及川サン救済ルートも存在したりしてーーは、想像しただけでも嫉妬でブチ殺しそう」
色々とすっ飛ばして先ずは問いたい。なまえの気持ちは果たして如何成ってる?寧ろ双方が選ばれない、って選択肢は無いのか?ーーそんな事は一切有り得ないと考えもせず互いに引かず顬にゴリッ、と銃口を突きつけ合い、或る意味、利害の一致をしながらも指を引き金に掛ける。もし別の出会い方をして居たら、きっと良い友人に成って居たのかも知れないね。ほら御覧の通り見事な同族嫌悪。そして最後に伊達工主将の茂庭クン、あんた凄いよ…強者よ…
◇◇◇
「連休合宿なんだけど大学生とも練習試合する機会も取り入れてる…となると少なからずOBも在籍する。なまえ、どうする…?もし会いたくないならその場だけはーー」
「勿論、私も全部参加するよ!私は誰に何を言われても平気だよ」
「(涙ぶわァっ)なまえ…!(スカッ)」
「ーー安心しろ。なまえに手出しなんかさせねぇよ。お前には俺がついてる」
「はじめちゃん…かっこいい…!」
新入生に悪態を付かれて居たあの時の場面を思い出し、あの時の衝撃や感銘を思い出した及川がなまえを抱き締めようとした時に、横からヒョイッと漢・岩泉に奪われる。
4月もあっという間に残り僅かでありもう少しすればGWがやってくる。大切なインハイの為にも連休は合宿して更に力を付けたいと考える青葉城西は、合宿場から食事、日程、スケジュール管理、練習強化内容等…様々な事柄を何度も見直しては時間を作り掛け、皆で相談し念入りに計画を立て組んでいた。部員の食物アレルギー等を全て把握しているなまえが主に食事に携わってくれる、との事で更にやる気が漲るのだが、然しながら今迄存在し得なかった或る問題が今回は生じてくる。そう、正にそのなまえである。
「あの…お風呂は仕方ないけど、寝るお部屋は私も皆と一緒が良いです…。知らない場所で私だけ一人の部屋でポツン…と寝るのは怖い…」
「「!?」」
及川が握っていたペンが床にカシャン、と落下する。いや待ってこの子今なんて?いやいや合宿なもんで野郎は大部屋に雑魚寝なんですよ。そんな中に大切な可愛いなまえちゃんを寝かせるの?いやいや無理無理無理…!
「えっとねー?あのね、なまえ「そんなん駄目に決まってんだろ!ガキじゃねぇんだ大人しく一人で寝ろ!」ちょっ…岩ちゃん言い方…!」
「~~どうして?はじめちゃんのお部屋にお泊まりする時はぎゅっ、てして添い寝してくれるのに…今言ってくれた、お前には俺がついてる、って言葉は嘘だったの…?」
「はぁ!?~~ちょっ、ちょっと…!添い寝って…!俺が納得する様に詳しく説明してくれる!?これは由々しき事態だよ!」
「~~あ"ーー!!(赤面)」
例えが適してるかは不明だが、飢えた猛獣共の檻にぽわぽわ垂れ耳子うさぎを放り込む様な訳だから、ハイソーデスカ、なんて簡単には決められない。万が一、そうならざるを得ないのならば必ず策を講じ慎重に考えなければ成らない。結果、何度も何度も話し合い、又、今回利用する合宿施設の設備や広さ、部屋数等の様々な全体的な観念、考慮からも、致し方無く条件付きで一緒の部屋になる事に成った。ズキズキ、とする頭を手で抑え机に項垂れる岩泉の悩みは全く枯れない。彼にとって夜や睡眠時間でも気が抜けない事が一つ増えたのだから。
「あのっ…徹くん…あのね、寝る時は徹くんと一緒がいいな…だめ…?」
なまえが後からこっそりと及川の耳元でこしょこしょ囁けば、上擦った短い声と共に及川の背がピィンーー!と張り一気にブワァッと顔に熱を保つ。然しながら、如何しても赤面とニヤケ顔を上手く誤魔化し気付かれたく無くて「じゃあ…次いでに、俺と一緒にお風呂入ろうか?」なんてホロり、と言い終わった後に、しまった…調子に乗りすぎた…なんて我に返りながら後悔すれば「(もし怖くなって不安になったら)一緒に着いてきてくれる?」なんて、こてん、と可愛く首を傾げられたもんで、見事に及川は机に撃沈した。~~なまえちゃんマジでどうしちゃったの…!此の儘だと俺が色々と持たないよ…!
◇◇◇
「堅ちゃんっ…会いたかったよ…!」
会いたかった人物に久しぶりに会えたなまえは、ぽぁっ、と表情が明るくなりつい二口のお腹にギュッ、と手を回す。コラやめろ外だぞ恥ずかしいだろ離れろ、なんてなまえの頭を軽く抑えるが、二口の頬も染まりながらふにゃ、と緩みとても嬉しそうであり、結局は自分からもなまえの小さな身体に手を回し抱き締める。自身が待ち望みずっと会いたかった可愛い女の子であるのだから。デートスポットで有名であるこの景色も雰囲気も綺麗である公園は、周囲を見渡せば今の時間帯は若い子達でありふれてあちらこちらからハートがフワフワと飛び交って居た。この状況に上手く紛れて触れるだけ触って仕舞え。
「ちゃんと首輪付けてきたな。イイコ」
「…強くなれる御守りなの」
「ーーそ。マネージャーちゃんとやれてんの?迷惑掛けてねぇよな?ダメダメだと保護者の俺が代わりに謝りに行かなきゃなんねぇじゃん?」
「えっ!えっと…頑張ってるよ…!」
「ぷッ、何だそれ。そんなんで青城は大丈夫かよ?」
「~~もうっ、滑津さんと比べちゃだめっ…」
「いや別に比べてねぇけど。そんな怒るなよ。…あー、そういやさ…俺達の親密な関係は既に及川サン公認だから安心しろよ」
「?うん。えっと…とりあえず、堅ちゃんは徹くんと仲直りしたって事かな?良かったね…!」
「(あーあー、こっちも相変わらずだな)~~そうそう、この間仲良く(大嘘)二人きりでカフェでまったりしてさー」
「わぁ、羨ましい…!私も行きたかったなぁ…あのね、今度三人で遊ばない?」
「いや無理冗談だろ。絶対ヤダ」
「~~!?えっ…えっとね…2人で何の話したの…?」
「………ナイショ」
「…そっか…」
堅ちゃんは徹くんと遊んだのに私が居ると駄目なの?と勘違いしたなまえは、ガーンと肩を落としながら、しょんぼり…と落ち込む。何だか其れが凄く寂しくて二口の腕にそっと触れれば、感触に気付いた二口からその手を自然と取られて恋人繋ぎにされる。及川としかした事無い手の繋ぎ方にドキッ、と心臓が跳ねては、ポポポッと湯気が上がる様に顔が真っ赤になって、且つ蕩けた表情を向けてぱちっ、と目が合うと、二口も「ゲッ…!少し手繋いだくらいで何て顔してんだよ…!信じらんねぇ…」なんて口では言いながらも自身もなまえに負けずに顔を真っ赤にしていた。
「(堅治のあの幸せそうな顔何なの…!何なのあの女、マジでイライラする…!)」
二口をこっそり追ってきた例の女生徒が2人の親密さを嫌でも理解し遠くから見てギリッ…と悔しそうに表情を歪ませ、お洒落な売店で二口が飲み物を買いに席を離れなまえが一人に成ったのを見計らい、此方も嫉妬から産み出した強い感情から一方的に、たかがネクタイくらいで調子にノるな、キーホルダーくらいで勘違いするな、堅治が可愛がってる女はアンタだけじゃない!私とだって濃厚えっちするんだから!と最後に捨て台詞を吐いて去っていったのだ。及川の元カノと異なり暴力は無かったものの、やはり言われた衝撃は非常に強かったのだ。やはり及川の一部ファンからなまえに対して稀にチクチクと言われたりはするが、でも流石に今の様なセンシティブな言葉で当たられる、と云う事は今迄は無かった。二口とは通う学校が異なるので勿論、二口の立ち位置や周りの環境、学校の雰囲気を詳しく理解や把握している訳では無いので解らないが、其れは普段、一緒に居る彼との素敵な時間を思い出せば一目瞭然であり、及川の様に女の子達から凄く慕われたりモテるんだろうなと思えるし、何より今ので確証を得たのだ。ズキン、ズキン、と胸が痛くなる。ーーそして更に確証を得た事は、二口も及川も自身以外の女の子と既に経験済、と云う事になる。先程の女の子が言う事を信じれば、二口に至っては今もーー…?若しかしたら及川だって彼の言う、今は好きな女の子としかしたくない、と云う旨であり恋人対象なる好きな女の子と性行為をしてるのかもしれない。だってなまえは、及川にとって恋人の様に好きな人が、一体誰なのかも知らないのだから。
「(堅ちゃん…キスは私だけとしかしない、って言ったよね…?…っ、えっちはまた別で違うの…?徹くんも…私が知らないだけで好きな人としてるのかな…?…ううん、堅ちゃんとも徹くんともキスした私がこんな風に言える事なんかじゃない…!それに…もしかしたら私が変に考えすぎてるだけで、堅ちゃんだけじゃなくて皆にとってもえっちは実はどうって事ないのかな…?でも…私はやだよ…苦しい…徹くんも…っ、好きな女の子としてたらやだ…っ、頭の中がこんがらがって…もうわかんな…っ)」
なまえ自身、大切な彼らに対して恋人でも無いのに非常に身勝手な感情を抱いて、しかも同時に双方に対して…なんて普通に考えれば有り得ないし最低な事を考えて仕舞えば、そんな自身が自身で強い罪悪感に襲われていた。この気持ちは何なの…?なんか自分がヘン…気持ち悪い…苦しい…自分でも全く理解出来ないこんな感情を抱いて仕舞っている自分が本当に大っ嫌い…!でもこんな事、誰にも言えない。どうしたら良いの?自分が自分でもとても嫌なのにこんな事、気持ち悪い事、誰にも言える訳がない…二人ともごめんなさい、なんて感情が混濁しながら頬にぽたぽた…と涙が溢れては、一粒、一粒、制服のスカートに沁みていった。