コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「~~及川は真剣にやれ!大体、この間までなまえにベタベタベタすんのやめてたじゃねぇか!この歳になってやっっと適正で健全な距離感に気付いたかと安心したかと思えばっ…!」
「えー?まぁアノトキは思春期って奴だよネ。それに今迄ずっと我慢してきたからさー(その分、或る意味反動も怖いから)徐々に自分に素直になろうって思ってー☆ね、なまえ?」
「アァ!?今迄だって散々くっついてただろうが!」
「…徹くん、今くっつかれてたら動きにくいかな?」
岩泉となまえの手には生地が入ったボールと泡立て器が握られ、キッチンにはチョコ、生クリーム等のお菓子を作る材料などが置いてある。なまえに対するホワイトデーのお返し、と云う事でカップケーキを作ろう!岩泉と及川が、なまえの為にと意気込んでいた筈が…結局、なまえも一緒になって作って居た。
「わぁ…!はじめちゃん、すごーい!デコレーション素敵!」
「フフン」
「あれー?岩ちゃんってばこんな繊細な事も出来たの?常に手に握るのは虫取り網と虫籠、シャツには泥と兜虫くっつけてた子が成長したね…!」
「なんかスゲー俺と虫取りを馬鹿にされた気がしたんだが…テメェの顔面にチョコ塗りたくって便所に流すぞコラ」
「駄目だよ勿体ない!チョコや生クリームが余ってるならなまえの身体に塗って俺が美味しく頂くーーふぎゃん!」
本日はボールでは無く見事、及川の頭に空のボウルがスコーン☆とヒットし床に沈まる最中、1人じゃ絶対無理だけどなまえに教えて貰いながらならスイーツ作りも案外面白ぇかも、なんてトントンと上手く進めていく岩泉のおかげで、なんだかんだで無事に完成し、後の後片付けも綺麗に全て終え、お茶を居れて3人で上手に出来上がったカップケーキを美味しく頂いたのだった。
ーー同じ頃、なまえの部屋には、見た目も香りもなまえをイメージした様な甘くふわふわととても可愛らしい香水が置いてあった。差出人曰くなまえの匂いが一番好きだからインテリアにでも使え、との事だったので言われた通りにしているが(偶に手首や手に付けてる)シンデレラのガラスの靴の雰囲気なる光をキラキラッ、と軽く纏って見えて、とても可愛くて只管眺めても飽きず、毎日励まされて頑張れる気がした。お揃いで買ったイルカのモチーフである綺麗なキーホルダーと香水を並べても実は似合っていて絵になる様な仕組みになっているのでは無いか、とも思える。流石は彼、センスが良い。
そんな彼曰く首輪、という名のネクタイは、大切にポーチに閉まって日々肌身離さず持ち運ぶ事にした。なまえにとっては彼特有の強さを分け与えてくれる様な勇気の出る御守りの様だった。普段は離れていて中々会えなくは成ってしまってはいるが、至る所に彼の温もりがあるので不思議と傍に居る様な感覚にもなった。
◇◇◇
「みょうじなまえです!マネージャー志望です。どうか宜しくお願いします…!」
ーー桜舞い散る中、新たに新学期が始まり2年生から3年生へと無事に進級したなまえは、ぷるぷる震える小さな手で、綺麗な字で記入済みである入部届を青葉城西男子バレー部主将に手渡す。今迄学んで来た自分自身の全て…(微力ながらも)参加していたお手伝いの中でも、誰にも手を借りず自分だけの力で自分なりに調べて事細かにノートや頭に纏めあげてきた青城や他校の情報、そして+αクラブチームで培った知識や養護やサポート力等を全て抱えては強豪校のマネージャーとして恥じぬ様にと主将の前に立ち、やっと、やっとやっとここまで辿り着いた…と鳴り響く心臓を抑えながら、貴方達に精一杯尽くします、と云う視線を向ける。
「ーー男子バレー部主将の及川徹です。宜しくね。ずっと待ってたよ」
改めて確りと丁寧に挨拶するなまえの頼もしい姿勢に、及川はジーン…とし直ぐにじわりと涙腺を滲ませるが意地でも此処はグッ、と我慢して、なまえから確りと入部届けを受け取る。及川の、ずっと待ってたよ、の言葉に、なまえの持つ大きな瞳をうるうるうる…ッと滲ませて今にも泣きそうな表情でふわり、と微笑めば、及川にとっても待ち焦がれ望んでいた日がやっと、やっと来た、と強く心に刻むのだ。
ーーー
ーー
ー
「ふふ、これで青葉城西は安泰且つ最強ですね」
「渡、それな!」
「なまえさぁぁん!ずっとずっと待ってましたぁぁ!」
「ハイハイ矢巾は落ち着け」
「…あら、岩泉泣いてるの?俺も泣いて良い?」
「(グスン)ーー目から汗が垂れたんだよーーッ汚ねェな花巻!俺のシャツで拭くな!」
「なまえさん!あのっ…ホントに気遣い無く何でも俺らに言って下さい…!周りの奴に言い難い場合は俺だけでも良いっスから」
「勇くん、ありがとう。勇くんも何でも言ってね?私、頑張って尽くすからね」
「(ドギュンッ)~~尊いッ…!呼吸困難で苦しいっ…!あ、あのなまえさん…っ、気にして頂いてた影山なんスけど…「ーーへぇ、ほんとに何でもいいの?」
「!?バカ国見お前やめろ!マジで懲りねぇな!あとなまえさんに敬語使え!」
授業も終え放課後を迎え、なまえにとって初部活。新1年生の部員の子に混じってなまえも丁寧に挨拶すれば周りから歓喜があがる。諸事情により、なまえの分のジャージは誰よりも届くからね、なんて自然に放たれ手際良く事前に注文してくれていた主将に対し、周りの部員は、まぁ其れ程に部活全体で只管待ち望んで居た事だもんな…とも理解して居たので、特に突っ込む事無く部活に励むのだ。
勿論、なまえの仕事振りは即戦力になり普段の練習も試合も非常にスムーズに行われた。誰もが把握し見易いノートやスコアの取り方、邪魔にならないメモ等の心配りは勿論の事、なまえの真心や気遣い、彼女特有の工夫を上手に取り入れ大いに力発揮、なまえの思考により1年生達と力を合わせて、部室やビブス、タオル、ボール等の様々は備品等の掃除や洗濯の衛生面、メンテナンスも大幅に改善し常に清潔、ボールの汚れや空気圧チェックし常に使いやすく、スクイズボトルの取り間違いを無くす為の考慮や提案、個々の味の好みやバランス等の小さな細かい事までも取り計らってくれて、誰かが怪我をすれば手際良く手早く簡易的な応急処置や手当、テーピングを素早く巻いたりと、青葉城西にとっては心強く有難い存在になるのだ。そして見学に来ている生徒やファンに対する気遣いも絶対に怠ったりせず真摯に向き合う。見学で立ちっぱなしの彼女らには気分が悪くなったり熱中症にならない様に水分補給を促したり、体育館の換気をこまめに風通し良くエアコンを使う場合の調整、及川や他部員への差し入れやプレゼント等をなまえが代わりに受け取らなくてはならない状況の場合には、彼女達の気持ちに寄り添い丁寧に受け取り必ず御礼を確りと伝える。特に集中力を維持する際の及川には更になまえ自身も細心に気を配っていて、及川自身もそんななまえを勿論理解し感謝していた。唯、そんな彼女にも難点がやはり存在して、其れは彼女の体力と男まみれの無法地帯と云う現実、そして流れ弾等によるまさかの被害。クラブチームで少しは鍛えたと思いたいが果たして如何なのか…未だ朧げではある為に及川は、なまえや部員に口頭での注意喚起を行うしか術が無いのだ。
「(今なら大丈夫そう…)徹くん、忙しい時にごめんなさい。以前、お願いしたストレッチや柔軟を取り入れてから膝の調子はどうかな?」
「ウン!言う通りちゃんと続けてるしお陰様で調子バッチリ☆なまえはイイコだねー!ありがとうね」
「ううん。なら良かった…あのね、足を護る為にも引き続き宜しくお願いします」
「ーーそんなに心配?」
こくん、と頷き切ない表情をするなまえを見ながら、このストレッチや柔軟に至る経緯になったなまえの言葉をふと思い出せば優しさに浸り純粋に心がジィン…と染み渡る。
"「うんっ!一緒に居る…徹くんと一緒に居たい。ちゃんと消毒して…あっ、あとね、一緒に見てもらいたいストレッチや柔軟があるの。詳しくは後でまた言うね?」"
「生涯、大切にするから…これから先の誕生日もずっと俺と一緒に過ごしてね」
「うん?」
「あはは、急にゴメン。これからはなまえとずっと一緒だから嬉しいなって」
「?今迄もずっと一緒だったよ…?」
「ウンウン。只管待ち焦がれたなまえが青城マネちゃんになって、これからは朝から晩までずっと一緒なんだからそれって俺らもう夫婦「その理屈が罷り通るなら俺もそうだよな?及川」ーーンん"ッ!?(ヒュン)」
「なまえ、ほれ、コッチ来て旦那にボール出して嫁の役目を果たせ」
「うわぁ…(引)なまえちゃんさー、あんな束縛激しそうな重たい旦那共さっさと捨てて、俺と愛の逃避行しない?コッチにもボール頼むー」
「あ、はいっ」
「ちょっ…岩ちゃんもまっつんも急に何なの!?」
「なまえを唆しててムカついた」
「青城主将の心を折るんだよ」
「ちょっーー唆してなんか無いしそれホンっトやめてよね!あの鉄壁クソ生意気な顔と白鳥沢ゲスブロッカーの顔が脳裏を占めるから!」
真剣の中で時に交わされる3年生のクスッと笑って癒される関わり合いに、他部員曰くこれこそ青城の仲良しの秘訣!やら青城男バレのこのギャップが堪らなく好き!等と和やかに日々、見守って居り、なまえが正式に入って彼らの関わり合いも更に面白そうだ。
「でもさ、みょうじさんマジで可愛すぎるよなぁ…言って仕舞えば、猛者い男まみれの森に迷い込んだ小さな垂れ耳ぽやぽや子うさぎちゃん、って感じ?今迄は嫌でも他校のマネが可愛い!とか散々聞いたり見たりしてきたけど、みょうじさん入ったからウチに勝るトコ無くなったんじゃないかな?どーだ、ふふん!」
「おいおい、お前が威張ってどうする」
後に練習試合や遠征が行われれば必然的になまえの事は即広まり、他校諸処から青葉城西から愛でられる可愛い垂れ耳子うさぎちゃん、と大きく騒がれ、隙あらばあちこちから声を掛けられる事になる。女の子からモテる及川をも抱えて更になまえの出現により、青葉城西は忙しく色々な意味で気が休まらないのだ。
ーーー
ーー
ー
「あのォ、私まだ入学したばっかりで分からないので教えて欲しいんですけどぉ、何で3年生でマネになったんですかぁ?まさか男目当て?」
「ヤダー、及川先輩狙いですか?いやいや系統違いすぎるでしょー!」
「そんなぽやぽやな見た目じゃ、部活の足引っ張りません?」
「みょうじ先輩、めちゃくちゃ可愛いんだから言ってくれれば俺達がたっぷり可愛がるのに♡」
「何人でシます?あんな野郎ばっかりに囲まれたいんだからそう思ってるんですよね?可愛いなぁ~!」
「は?キモ。アンタ黙ってなよ」
部活を終えて女子バレー部の部室を一緒に使わせて貰い着替えが済んだなまえが廊下へ出ると、1年生だと云う男女数人が悪態をつく為に話し掛けて来た。その間にタイミング良く及川と岩泉がなまえを迎えに部室の近くの廊下まで歩いて来ていて、何だか騒がしい話声が近付くにつれ段々と嫌な予感がし、なまえに対する綺麗では無い言葉の数々を確実に耳に入れた瞬間、岩泉及川双方ブチブチブチ…!と怒髪天を衝き同時に一歩を踏み出すが、なまえの放った言葉によりその場にギッ、と思い切り踏み止まる。
「青葉城西の皆が全国に行く為なら出来る事は何だって支える覚悟を持ってマネージャーになったの!私は誰に何て言われても構わないっ…!」
◇◇◇
「はぁーーー(溜息)…まあ、そりゃそうだよな。俺が及川サンの立場ならそうする。…言っとくけど、幾らお前の事が可愛くても伊達工の情報は割らねぇからな?自分で調べな」
「そんな事しないよ!わ、私だって皆の事は絶対に喋らないもん…!」
「ーー(有る程度は青城データ揃えてるわ。それは向こうもだろうけど)…まぁ、いざとなりゃなまえの身体に聞いてみよっかな。なんたってあの及川サンが態々俺に喧嘩売ってくる程、血眼になる女だもんな?そうなりゃ情報もたっぷり詰まってそうだし小さな奥を深く突けばイロイロ出てくんだろ?(夢中なのは俺にも言える事なんだろうけどーーやべ、自分で言って勃った...)」
「!?~~なんでそんな意地悪言うの…?」
「ーー今ので分かれよ。そんくらい俺だってお前の何もかもを繋ぎ止めたいくらい必死なワケ」
「堅ちゃん…っ、今迄の様に会えなくて寂しいのは私もだよ…!時間合う時は絶対に遊ぼうね!」
「~~ったく、言ってもわかんねぇなら直接身体に教えてやるから泊まりに来い。子うさぎ一匹、責任持って世話してやる」
「わぁっ…うんうんっ…泊まりにいきたいっ…!一緒に夜更かしして御話したり映画鑑賞したりこっそり真夜中アイスやお菓子食べたりしたいっ…!ふふっ、2人でイケないコトしてドキドキだね…!あのね、抱き枕ぬいぐるみのあの子は私に貸してくれる…?」
「~~ッあーーメンドクセェー!貸してやるから好きなだけぬいぐるみと抱っこして寝てろ!」
なまえは電話越しで二口にも青葉城西のマネージャーになった事を伝えた。及川に嫉妬から苛立ちモヤモヤする複雑な心境を隠し切れない二口は、ついなまえに対して直球に気持ちを伝えるが、彼女節で見事に切り返されて二口は項垂れ額に手をやるのだ。だからと言って死んでも負けるつもりは無いですけどー。因みに言質取ったから絶対に泊まり来いよ?
「えー?まぁアノトキは思春期って奴だよネ。それに今迄ずっと我慢してきたからさー(その分、或る意味反動も怖いから)徐々に自分に素直になろうって思ってー☆ね、なまえ?」
「アァ!?今迄だって散々くっついてただろうが!」
「…徹くん、今くっつかれてたら動きにくいかな?」
岩泉となまえの手には生地が入ったボールと泡立て器が握られ、キッチンにはチョコ、生クリーム等のお菓子を作る材料などが置いてある。なまえに対するホワイトデーのお返し、と云う事でカップケーキを作ろう!岩泉と及川が、なまえの為にと意気込んでいた筈が…結局、なまえも一緒になって作って居た。
「わぁ…!はじめちゃん、すごーい!デコレーション素敵!」
「フフン」
「あれー?岩ちゃんってばこんな繊細な事も出来たの?常に手に握るのは虫取り網と虫籠、シャツには泥と兜虫くっつけてた子が成長したね…!」
「なんかスゲー俺と虫取りを馬鹿にされた気がしたんだが…テメェの顔面にチョコ塗りたくって便所に流すぞコラ」
「駄目だよ勿体ない!チョコや生クリームが余ってるならなまえの身体に塗って俺が美味しく頂くーーふぎゃん!」
本日はボールでは無く見事、及川の頭に空のボウルがスコーン☆とヒットし床に沈まる最中、1人じゃ絶対無理だけどなまえに教えて貰いながらならスイーツ作りも案外面白ぇかも、なんてトントンと上手く進めていく岩泉のおかげで、なんだかんだで無事に完成し、後の後片付けも綺麗に全て終え、お茶を居れて3人で上手に出来上がったカップケーキを美味しく頂いたのだった。
ーー同じ頃、なまえの部屋には、見た目も香りもなまえをイメージした様な甘くふわふわととても可愛らしい香水が置いてあった。差出人曰くなまえの匂いが一番好きだからインテリアにでも使え、との事だったので言われた通りにしているが(偶に手首や手に付けてる)シンデレラのガラスの靴の雰囲気なる光をキラキラッ、と軽く纏って見えて、とても可愛くて只管眺めても飽きず、毎日励まされて頑張れる気がした。お揃いで買ったイルカのモチーフである綺麗なキーホルダーと香水を並べても実は似合っていて絵になる様な仕組みになっているのでは無いか、とも思える。流石は彼、センスが良い。
そんな彼曰く首輪、という名のネクタイは、大切にポーチに閉まって日々肌身離さず持ち運ぶ事にした。なまえにとっては彼特有の強さを分け与えてくれる様な勇気の出る御守りの様だった。普段は離れていて中々会えなくは成ってしまってはいるが、至る所に彼の温もりがあるので不思議と傍に居る様な感覚にもなった。
◇◇◇
「みょうじなまえです!マネージャー志望です。どうか宜しくお願いします…!」
ーー桜舞い散る中、新たに新学期が始まり2年生から3年生へと無事に進級したなまえは、ぷるぷる震える小さな手で、綺麗な字で記入済みである入部届を青葉城西男子バレー部主将に手渡す。今迄学んで来た自分自身の全て…(微力ながらも)参加していたお手伝いの中でも、誰にも手を借りず自分だけの力で自分なりに調べて事細かにノートや頭に纏めあげてきた青城や他校の情報、そして+αクラブチームで培った知識や養護やサポート力等を全て抱えては強豪校のマネージャーとして恥じぬ様にと主将の前に立ち、やっと、やっとやっとここまで辿り着いた…と鳴り響く心臓を抑えながら、貴方達に精一杯尽くします、と云う視線を向ける。
「ーー男子バレー部主将の及川徹です。宜しくね。ずっと待ってたよ」
改めて確りと丁寧に挨拶するなまえの頼もしい姿勢に、及川はジーン…とし直ぐにじわりと涙腺を滲ませるが意地でも此処はグッ、と我慢して、なまえから確りと入部届けを受け取る。及川の、ずっと待ってたよ、の言葉に、なまえの持つ大きな瞳をうるうるうる…ッと滲ませて今にも泣きそうな表情でふわり、と微笑めば、及川にとっても待ち焦がれ望んでいた日がやっと、やっと来た、と強く心に刻むのだ。
ーーー
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「ふふ、これで青葉城西は安泰且つ最強ですね」
「渡、それな!」
「なまえさぁぁん!ずっとずっと待ってましたぁぁ!」
「ハイハイ矢巾は落ち着け」
「…あら、岩泉泣いてるの?俺も泣いて良い?」
「(グスン)ーー目から汗が垂れたんだよーーッ汚ねェな花巻!俺のシャツで拭くな!」
「なまえさん!あのっ…ホントに気遣い無く何でも俺らに言って下さい…!周りの奴に言い難い場合は俺だけでも良いっスから」
「勇くん、ありがとう。勇くんも何でも言ってね?私、頑張って尽くすからね」
「(ドギュンッ)~~尊いッ…!呼吸困難で苦しいっ…!あ、あのなまえさん…っ、気にして頂いてた影山なんスけど…「ーーへぇ、ほんとに何でもいいの?」
「!?バカ国見お前やめろ!マジで懲りねぇな!あとなまえさんに敬語使え!」
授業も終え放課後を迎え、なまえにとって初部活。新1年生の部員の子に混じってなまえも丁寧に挨拶すれば周りから歓喜があがる。諸事情により、なまえの分のジャージは誰よりも届くからね、なんて自然に放たれ手際良く事前に注文してくれていた主将に対し、周りの部員は、まぁ其れ程に部活全体で只管待ち望んで居た事だもんな…とも理解して居たので、特に突っ込む事無く部活に励むのだ。
勿論、なまえの仕事振りは即戦力になり普段の練習も試合も非常にスムーズに行われた。誰もが把握し見易いノートやスコアの取り方、邪魔にならないメモ等の心配りは勿論の事、なまえの真心や気遣い、彼女特有の工夫を上手に取り入れ大いに力発揮、なまえの思考により1年生達と力を合わせて、部室やビブス、タオル、ボール等の様々は備品等の掃除や洗濯の衛生面、メンテナンスも大幅に改善し常に清潔、ボールの汚れや空気圧チェックし常に使いやすく、スクイズボトルの取り間違いを無くす為の考慮や提案、個々の味の好みやバランス等の小さな細かい事までも取り計らってくれて、誰かが怪我をすれば手際良く手早く簡易的な応急処置や手当、テーピングを素早く巻いたりと、青葉城西にとっては心強く有難い存在になるのだ。そして見学に来ている生徒やファンに対する気遣いも絶対に怠ったりせず真摯に向き合う。見学で立ちっぱなしの彼女らには気分が悪くなったり熱中症にならない様に水分補給を促したり、体育館の換気をこまめに風通し良くエアコンを使う場合の調整、及川や他部員への差し入れやプレゼント等をなまえが代わりに受け取らなくてはならない状況の場合には、彼女達の気持ちに寄り添い丁寧に受け取り必ず御礼を確りと伝える。特に集中力を維持する際の及川には更になまえ自身も細心に気を配っていて、及川自身もそんななまえを勿論理解し感謝していた。唯、そんな彼女にも難点がやはり存在して、其れは彼女の体力と男まみれの無法地帯と云う現実、そして流れ弾等によるまさかの被害。クラブチームで少しは鍛えたと思いたいが果たして如何なのか…未だ朧げではある為に及川は、なまえや部員に口頭での注意喚起を行うしか術が無いのだ。
「(今なら大丈夫そう…)徹くん、忙しい時にごめんなさい。以前、お願いしたストレッチや柔軟を取り入れてから膝の調子はどうかな?」
「ウン!言う通りちゃんと続けてるしお陰様で調子バッチリ☆なまえはイイコだねー!ありがとうね」
「ううん。なら良かった…あのね、足を護る為にも引き続き宜しくお願いします」
「ーーそんなに心配?」
こくん、と頷き切ない表情をするなまえを見ながら、このストレッチや柔軟に至る経緯になったなまえの言葉をふと思い出せば優しさに浸り純粋に心がジィン…と染み渡る。
"「うんっ!一緒に居る…徹くんと一緒に居たい。ちゃんと消毒して…あっ、あとね、一緒に見てもらいたいストレッチや柔軟があるの。詳しくは後でまた言うね?」"
「生涯、大切にするから…これから先の誕生日もずっと俺と一緒に過ごしてね」
「うん?」
「あはは、急にゴメン。これからはなまえとずっと一緒だから嬉しいなって」
「?今迄もずっと一緒だったよ…?」
「ウンウン。只管待ち焦がれたなまえが青城マネちゃんになって、これからは朝から晩までずっと一緒なんだからそれって俺らもう夫婦「その理屈が罷り通るなら俺もそうだよな?及川」ーーンん"ッ!?(ヒュン)」
「なまえ、ほれ、コッチ来て旦那にボール出して嫁の役目を果たせ」
「うわぁ…(引)なまえちゃんさー、あんな束縛激しそうな重たい旦那共さっさと捨てて、俺と愛の逃避行しない?コッチにもボール頼むー」
「あ、はいっ」
「ちょっ…岩ちゃんもまっつんも急に何なの!?」
「なまえを唆しててムカついた」
「青城主将の心を折るんだよ」
「ちょっーー唆してなんか無いしそれホンっトやめてよね!あの鉄壁クソ生意気な顔と白鳥沢ゲスブロッカーの顔が脳裏を占めるから!」
真剣の中で時に交わされる3年生のクスッと笑って癒される関わり合いに、他部員曰くこれこそ青城の仲良しの秘訣!やら青城男バレのこのギャップが堪らなく好き!等と和やかに日々、見守って居り、なまえが正式に入って彼らの関わり合いも更に面白そうだ。
「でもさ、みょうじさんマジで可愛すぎるよなぁ…言って仕舞えば、猛者い男まみれの森に迷い込んだ小さな垂れ耳ぽやぽや子うさぎちゃん、って感じ?今迄は嫌でも他校のマネが可愛い!とか散々聞いたり見たりしてきたけど、みょうじさん入ったからウチに勝るトコ無くなったんじゃないかな?どーだ、ふふん!」
「おいおい、お前が威張ってどうする」
後に練習試合や遠征が行われれば必然的になまえの事は即広まり、他校諸処から青葉城西から愛でられる可愛い垂れ耳子うさぎちゃん、と大きく騒がれ、隙あらばあちこちから声を掛けられる事になる。女の子からモテる及川をも抱えて更になまえの出現により、青葉城西は忙しく色々な意味で気が休まらないのだ。
ーーー
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「あのォ、私まだ入学したばっかりで分からないので教えて欲しいんですけどぉ、何で3年生でマネになったんですかぁ?まさか男目当て?」
「ヤダー、及川先輩狙いですか?いやいや系統違いすぎるでしょー!」
「そんなぽやぽやな見た目じゃ、部活の足引っ張りません?」
「みょうじ先輩、めちゃくちゃ可愛いんだから言ってくれれば俺達がたっぷり可愛がるのに♡」
「何人でシます?あんな野郎ばっかりに囲まれたいんだからそう思ってるんですよね?可愛いなぁ~!」
「は?キモ。アンタ黙ってなよ」
部活を終えて女子バレー部の部室を一緒に使わせて貰い着替えが済んだなまえが廊下へ出ると、1年生だと云う男女数人が悪態をつく為に話し掛けて来た。その間にタイミング良く及川と岩泉がなまえを迎えに部室の近くの廊下まで歩いて来ていて、何だか騒がしい話声が近付くにつれ段々と嫌な予感がし、なまえに対する綺麗では無い言葉の数々を確実に耳に入れた瞬間、岩泉及川双方ブチブチブチ…!と怒髪天を衝き同時に一歩を踏み出すが、なまえの放った言葉によりその場にギッ、と思い切り踏み止まる。
「青葉城西の皆が全国に行く為なら出来る事は何だって支える覚悟を持ってマネージャーになったの!私は誰に何て言われても構わないっ…!」
◇◇◇
「はぁーーー(溜息)…まあ、そりゃそうだよな。俺が及川サンの立場ならそうする。…言っとくけど、幾らお前の事が可愛くても伊達工の情報は割らねぇからな?自分で調べな」
「そんな事しないよ!わ、私だって皆の事は絶対に喋らないもん…!」
「ーー(有る程度は青城データ揃えてるわ。それは向こうもだろうけど)…まぁ、いざとなりゃなまえの身体に聞いてみよっかな。なんたってあの及川サンが態々俺に喧嘩売ってくる程、血眼になる女だもんな?そうなりゃ情報もたっぷり詰まってそうだし小さな奥を深く突けばイロイロ出てくんだろ?(夢中なのは俺にも言える事なんだろうけどーーやべ、自分で言って勃った...)」
「!?~~なんでそんな意地悪言うの…?」
「ーー今ので分かれよ。そんくらい俺だってお前の何もかもを繋ぎ止めたいくらい必死なワケ」
「堅ちゃん…っ、今迄の様に会えなくて寂しいのは私もだよ…!時間合う時は絶対に遊ぼうね!」
「~~ったく、言ってもわかんねぇなら直接身体に教えてやるから泊まりに来い。子うさぎ一匹、責任持って世話してやる」
「わぁっ…うんうんっ…泊まりにいきたいっ…!一緒に夜更かしして御話したり映画鑑賞したりこっそり真夜中アイスやお菓子食べたりしたいっ…!ふふっ、2人でイケないコトしてドキドキだね…!あのね、抱き枕ぬいぐるみのあの子は私に貸してくれる…?」
「~~ッあーーメンドクセェー!貸してやるから好きなだけぬいぐるみと抱っこして寝てろ!」
なまえは電話越しで二口にも青葉城西のマネージャーになった事を伝えた。及川に嫉妬から苛立ちモヤモヤする複雑な心境を隠し切れない二口は、ついなまえに対して直球に気持ちを伝えるが、彼女節で見事に切り返されて二口は項垂れ額に手をやるのだ。だからと言って死んでも負けるつもりは無いですけどー。因みに言質取ったから絶対に泊まり来いよ?