コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「ヨロシクオネガイシマース」
「(うっ…!オーラ半端ねぇ…!落ち着け相手は同い年だ…!)ーー今日は色々と勉強させて貰います」
◇◇◇
「(ヒェ~…及川マジ怖えぇ)」
「なんだ花巻さっきからソワソワして気持ち悪ィなーーそいやぁ、前にお前が言ってたなまえが世話になってる一年坊主は何処の何奴だ?」
「御心配ドウモ。見ぬが仏、聞かぬが花よ…岩泉サン。その話題はトラウマだからやめてちょ。因みにあの時、俺を見捨てたお前への恨みはいつ晴らすべきか」
花巻の返しにより岩泉の頭に疑問符があがる最中、両校の監督同士そして及川と茂庭が握手をして挨拶を行っていた。本日、青葉城西の体育館では伊達工業との練習試合を行う日程になっていたのだ。
「おいおい二口、お前今日朝からずーっと顔怖えなぁ?スマイルスマイル!中々巡ってこねぇあの青葉城西と練習試合だぞ?もっと喜べよ!」
「いや俺にも色々と事情が「ヤッホー☆フタクチくん。今日はヨロシクねー?」…ゲッ(いつの間に名前も知られてやがる…)」
「っは!?オマエ及川クンと知り合いだったの…?何でもっと早く言わねぇんだよ!」
鎌先から更に頭をくしゃくしゃくしゃ、と少々乱暴に撫で回された二口は、横からひょいと登場した及川に低音ボイスで挨拶する。そんな二口の複雑なる心内は、うわぁ…出たよ徹クン、なんてつい誰かの口癖である呼び方の真似をして仕舞えば、パチリ、と視線が合った及川から華やかな笑顔を向けられるのだ。
「ーー今や伊達工のエースなんだってね?大出世だねー。ホント、あの時も謙遜せず自分は伊達工の要、そしてWSだって事も早く教えてくれれば良かったのにー☆見た目によらず照れ屋さんなんだからー!」
「(クソッ、怯むな…!)あー…だって、あん時の及川さんに触れたら火傷しそうだったし何よりスゲー面倒くさそうだったじゃないですか」
「ーー火傷ねぇ。まぁ、もう過ぎた事だしそんな気張らないで良いからね執拗く言い続けてやるけど。ウーン、でも…そうだなー?そんな可愛い後輩のフタクチくんが、今日の試合で俺をガッカリさせる動きをする様なら…その御愛用のムカつく香りのするシャンプーとエナメルバッグに大切そうに着けてる綺麗なキーホルダー…今日限りで辞めてもらおうかな?あと次いでにそのスポーツタオルもかな、なんてね」
「ーーッ!?」
広くアンテナを張り巡らせる及川の洞察力に対して二口は非常に気味が悪いと瞬時に思い、つい無意識に揺れる瞳でガラリと雰囲気を変える及川を睨み付ける。ーー成程、キーワードを読み解けば対する牽制か。
「ーーあの清楚可憐で繊細なお花はね、俺が今までずっと大切にしてきたんだよ。すっごく綺麗でしょ?」
「…何が言いたいんだよ」
「君にとっては観賞する事で十分満足してる筈なんだからサ、君が必要以上に愛でる必要も無い。況してや育てようなんて間違っても思わないでね?ーーヘタに手を出せば指に棘が刺さって火傷じゃ済まないかもねー。だから気をつけてね」
「ーー…確かに、あの花は香りを嗅ぐだけで惑わされて俺が勘違いしそうになって腹立つ時も正直しょっちゅうあります。それに貴方と俺では関わってきた今迄の年月の差があって、だからその点についてはどう足掻いたって仕方ない事は解ってる。…悔しいけど、現段階で何事も貴方の方が勝り優れていて俺に勝ち目がないのも解ってる。ーーそれでも関係ない!死んでも俺は諦めたくない」
「(宣戦布告かよクソガキ…!)ーー思ってた以上に厄介だね」
及川二口双方の間に挟まれた鎌先は、何に対して争って居るのか全く理解は出来ないが、只事では無い雰囲気を全身にモロに受けては思考停止しピキピキピキピキ…と凍りつく。正直、俺らには全く構わないが他校の先輩に生言うのは勘弁しろください二口くん…と、心の中で泣くしか無かった。及川クン、マジで怖えぇ…
ーーー
ーー
ー
(堅ちゃん、いつもありがとう。あの…味はどうでしたか?本当はバレンタイン当日に渡したかったけど、今日は堅ちゃんはたくさんチョコ貰えるだろうから日程的に合わなくて先に渡す事になったけど…逆に良かったのかも…?)
(スゲー美味かったよ。来年は、あーんして食わせろ。…たくさんのチョコねぇ…さぁ、どうだろうな?)
はて?恥ずかしい、って怒ってなかったっけ?とぽやん、としながら二口とのメッセージアプリを開いて連絡していたなまえも、バレンタイン当日なる世の乙女達が張り切る日を迎えた。
「~~はぅぁっ!?なまえさん…ッありがとうございますぅぅっ一生大切にします…!」
「気持ちは分かるが矢巾それはダメよ…なまえちゃん、チョコありがとうね♡」
丁寧に作った沢山のチョコレートを抱えて学校に到着し、先ずはいつもお世話になっている男子バレー部の皆と友チョコを女の子達に配る。朝一番に合流した岩泉には、いつもの感謝の気持ちを込めて、先にまた他の人とは別途で異なる手作りのチョコを渡していた。
「サンキューな」と照れくさそうに、キラキラ笑い嬉しそうにする岩泉の顏を見れば、なまえもいつもありがとう、と言葉を放ちながら、だいすきな幼なじみの温もりを感じていた。
あとなまえの手提げの中にはもう一つ、二口に渡したのと同じ様な精一杯の気持ちを込めて作った特別な感情の特別なチョコが入っていて…
「きゃーっ♡及川先輩!」
「及川さーん♡私の気持ちですっ!」
「頑張って作りました!受け取ってくださいっ…♡」
「あーあ、やってらやってら」
「スゲー…今年も及川に近づけねぇ…」
「これは圧巻」
2年目のバレンタイン。今年も朝から気合いを入れてチョコも自身も最大限に準備してラッピングもメイクも可愛くしてきた女の子達が及川の周りに大殺到し周囲は大変な事になっていた。何度も告白して何度も断られても諦めない女の子達の気合いは凄まじい。だって今現在も及川の彼女の枠は空いている。ならばその座を掴む為にはバレンタインは絶好のチャンスであるのだから…!
そんな渦中に居るなまえは、休み時間もお昼休みも部活が始まる移動時間も及川にチョコを渡せずに居た。何だかんだで本日の部活も学校も終わり、これが渡せる最後のチャンス如く及川の周りには未だ女の子の行列が出来ていた。なまえは着替えも帰る支度も終えて、鞄とチョコを持って、結局、他の女の子の気合いに圧倒されて及川に話し掛けるタイミングも掴めず、その場に立ち竦み、しゅん…とするだけだった。
ーー去年なら、そう。去年なら、及川から時間を見計らって傍に来てくれてキチンと渡せたのだが、及川との関係に変化が起こった最近は特に自身が及川に相当に甘えていた、と云う現実、及川が段々と手の届かない存在になっていく、と云う強い不安や寂しさに襲われて、押し潰されそうになっては涙が頬を伝うのだ。
「いつも徹くんの優しさに甘えてばっかりだもんね…」
及川からなまえの傍に来てくれて、それでなまえがいつも言葉を伝える流れであったと云う相当な甘えで居た自身が本当に情けない。ーーチョコ1個、御礼ひとつ、気持ちひとつ言えないなんて、其んな事が合って良い筈が無い。
◇◇◇
「及川先輩!今日は私が渡したチョコが最後ですよね?先輩にとって忘れられないチョコですよね!?」
「うん、そうだね。ありがとうね」
「きゃーっ!嬉しいです♡それではまた♡」
「ーーはー…終わった…帰ーーあ、更衣室に忘れ物した…メンドクセーもういいや部室じゃ無くてソッチで支度しよ…」
周りを見渡せばもう自分以外誰も居ない。ウンウン、男バレの子達は本当に素直で可愛い。ーーうぅっ…薄情者っ…!この山のようなチョコをさてどう運ぶべか、あ、猛(甥っ子)通じて車で迎え来て貰える様に頼んだれ、と考えながら男子更衣室に足を運んだ。
「(なまえからのチョコは無かったか…ダヨネー…)」
及川は、パサっ、とシャツを脱いで自身を独占するなまえをまた想い、はぁ、と一つ溜息をつく。ーー最近の自身の行動により、なまえの傷付いた顏を何度も見てやっぱり胸は痛むし(恋愛面に於いて)勘の鋭い友人からも指摘されて誤魔化す事だってあった。ーーでも、及川にもある考えがある。今迄なんかは、なまえとの関係は絶対に変えては成らないとの根幹があって表面的には親密なる幼なじみを徹底的に演じてきた。寂しさや隙間を埋め(最低だけど)性欲処理であるカノジョと、自身にとっては生命線やアキレス腱である大切にしたいなまえに対しての立ち位置や振る舞い、思考も先手もやり方も根本的には間違って居なかった筈だと思っていた。然しながら、好い加減、カノジョに対しての茶番に終止符を打つ事にした自身の選択により生じたこの間の一件で、元々あった其の発端や思考が既に間違えだったと気が付いた。ーーならば自身は一体、如何したら良いのだろうか。バレーボールをしたい。なまえを一生護りたい。将来の事やなまえの事を考えれば考える程、ズキリ、と頭が痛くなる。何方かを選ぶのでは無くて本音は何方も、ホシイモノは全て手に入れたいーーこれは理屈じゃない、故に冷静になんかなれない。葛藤が産まれる。そして脅威の出現により持ち合わす余裕にもヒビが入る。そうなると味方で居ると誓ったなまえをもっと別の意味で傷付けて泣かせて仕舞うかもしれないーー…伊達工業との練習試合のあの日、宣戦布告する二口の顔が脳に焼き付き離れずに居り、腸が煮えくり返る程に鬱陶しい。クソが!と気付けばつい一人だと思い込んで居たのもあって、結構な声量で放って居た。
「~~っ、徹くんっ…なまえです…あのっ…大丈夫…?」
実は、及川の事をずっと待っていて、男子更衣室の前でどうしようどうしようと狼狽えながら待機していたなまえは(不審者の如く怪しまれたく無いので及川以外もう誰も残って居ないのを何度も確認済)ビクッ、と華奢な肩を跳ねさせ、ついコンコンッ、とドアをノックして及川に声を掛ければ、更衣室からは返答無しであり数秒たった後ガチャ、と扉が開き、姿を見せた及川と目がパチリ、とあったなまえは、未だ及川の上半身が裸だった事に驚き、かぁぁっ、と顔を赤くさせた。
「ご、ごごごめんなさい…!」
くるりと後ろを向いた瞬間、グイッ、と手を引かれて更衣室に引き摺り込まれたなまえは、及川と更衣室に2人きりになり頬を染めて彼を見上げる。及川から「ーー何でまだ残ってたの?」と静かに問われれば、なまえは少し傷付いた切ない表情をして、バレンタインのチョコが入った袋をきゅっ、と胸に抱えては日頃の感謝とゆっくりと自分の気持ちを伝えていく。更衣室は暖房が心地よく効いていて、廊下で伝えるよりかは寒さで手が震えないので、なまえにとって多少なりとも心強い。後、一つ、及川に伝えたい事が如何してもある中で、今は緊張して手が震えるだけなのだから。
「あのねっ…徹くんと私の関係は昔も今も変わらないんだよね…?だからっ…」
「ーーは?」
及川の低い声に、ひゅっ、と喉が鳴る。
"「おいで、なまえ。俺とお前は昔も今も変わらないよーー誰にも文句言われる筋合い無い」"
あんな優しい表情で言ってくれた言葉を忘れて仕舞う程、及川に嫌われてしまったのだろうか…?と考えれば凄く悲しくなり涙が溢れそうななまえだったが、此処でまた自身の気持ちを伝えなかったら後悔してしまう、せめて自分の気持ちだけは素直にきちんと伝えたい!と意を決したなまえは、抱き締めていたチョコを鞄と共に椅子に起き、次に及川の腕をきゅっ、と掴む。
「ーーっ…私は…っ、何も言われないで何も分からない儘、徹くんに避けられたくないのっ…本当は…今までの様に触れて欲しいけど…ぐすっ…せめて理由をっ…ひっ…く…いつも何でも本当の事言ってくれてたのに…今回は何で何も言ってくれないの?嫌ならーーッ、!?」
「ーーだいすき、や、触る、の意味がオマエと俺じゃ全く違うからだよ」
溢れそうな涙を堪えながら抱いていた気持ちを及川に伝えてる途中、なまえの身体がふわり、と宙に浮かび及川に身体が支えられ、とんっ、と壁に身体を強く押し付けられて櫓立ちに近い体位の体勢になる。宙に浮かぶなまえの身体は軽いので簡単に支えられてるが、両太腿は大きく開きスカートは捲り上がり、なまえの大切な部分とショーツ越しに及川の身体が密着していて、なまえはぴくぴく、と震えながら及川の顔を見た瞬間、深く唇を重ね合わされる。
「…んっ...!?んんっ…ふ…!」
華奢な身体は固定されて仕舞い全く動けず口内に舌を侵入され絡ませられ、ちゅく、ちゅく、と水音を立てられ桜桃の様な口の端からは飲みきれなかった2人の混じりあった唾液をツゥっ…と零す。抗う術を全く知らないなまえは、ふにゃり、とし目を瞑るだけしか出来なかった。
「…はァ…っ、は…勘違いするなよ…!俺の核心なんてオマエに言った事なんか一度もない…!」
なまえは、ぽやぽやとする頭と涙で揺れる視界の中で、トロォ…と互いの舌先を繋ぐ糸を眺めては、お腹の奥のきゅん、きゅぅっ…とする感覚を味わって仕舞い、ふるふるふる…っと小さく身震いする。
そんななまえに対して興奮し息を荒くさせ眺める及川は、密着する女の子の大切な場所をズリュ、とわざと身体で擦った後、ぴくん、と跳ねたなまえの片足を床に付けさせ片足をグイッと持ち上げ固定して、可愛いショーツのクロッチの部分を中指で横にずらした。
「ねぇ、翔陽は今年チョコ幾つもらった?」
「エッ!いや…女子バレー部の皆さんから義理チョコ1個だけ…」
「いいなー!俺なんか0だよ。…俺らももうすぐ卒業じゃん?翔陽は好きな女の子に告白したりしないの?てか…まずは好きな人居る?」
「ーーウン、居る」
「わっ!?顔真っ赤だぞ…!まさかそんな一面もあったんだなぁ…ならさ、そんなに好きなら告白してみたら?卒業式間近に告白もロマンチックだぞ!」
「…いや、その人はこの場所には居ない。とにかく先ずは俺がもっとバレーの腕を磨いたら絶対にまた会える気がする…!」
「…ん?そうなの…?因みに、その人はどんな人?」
「…一目惚れだった。あの女性は、見た目も心も凄く綺麗で…穢れなき純白の天使みたいな人だよ」
「(うっ…!オーラ半端ねぇ…!落ち着け相手は同い年だ…!)ーー今日は色々と勉強させて貰います」
◇◇◇
「(ヒェ~…及川マジ怖えぇ)」
「なんだ花巻さっきからソワソワして気持ち悪ィなーーそいやぁ、前にお前が言ってたなまえが世話になってる一年坊主は何処の何奴だ?」
「御心配ドウモ。見ぬが仏、聞かぬが花よ…岩泉サン。その話題はトラウマだからやめてちょ。因みにあの時、俺を見捨てたお前への恨みはいつ晴らすべきか」
花巻の返しにより岩泉の頭に疑問符があがる最中、両校の監督同士そして及川と茂庭が握手をして挨拶を行っていた。本日、青葉城西の体育館では伊達工業との練習試合を行う日程になっていたのだ。
「おいおい二口、お前今日朝からずーっと顔怖えなぁ?スマイルスマイル!中々巡ってこねぇあの青葉城西と練習試合だぞ?もっと喜べよ!」
「いや俺にも色々と事情が「ヤッホー☆フタクチくん。今日はヨロシクねー?」…ゲッ(いつの間に名前も知られてやがる…)」
「っは!?オマエ及川クンと知り合いだったの…?何でもっと早く言わねぇんだよ!」
鎌先から更に頭をくしゃくしゃくしゃ、と少々乱暴に撫で回された二口は、横からひょいと登場した及川に低音ボイスで挨拶する。そんな二口の複雑なる心内は、うわぁ…出たよ徹クン、なんてつい誰かの口癖である呼び方の真似をして仕舞えば、パチリ、と視線が合った及川から華やかな笑顔を向けられるのだ。
「ーー今や伊達工のエースなんだってね?大出世だねー。ホント、あの時も謙遜せず自分は伊達工の要、そしてWSだって事も早く教えてくれれば良かったのにー☆見た目によらず照れ屋さんなんだからー!」
「(クソッ、怯むな…!)あー…だって、あん時の及川さんに触れたら火傷しそうだったし何よりスゲー面倒くさそうだったじゃないですか」
「ーー火傷ねぇ。まぁ、もう過ぎた事だしそんな気張らないで良いからね執拗く言い続けてやるけど。ウーン、でも…そうだなー?そんな可愛い後輩のフタクチくんが、今日の試合で俺をガッカリさせる動きをする様なら…その御愛用のムカつく香りのするシャンプーとエナメルバッグに大切そうに着けてる綺麗なキーホルダー…今日限りで辞めてもらおうかな?あと次いでにそのスポーツタオルもかな、なんてね」
「ーーッ!?」
広くアンテナを張り巡らせる及川の洞察力に対して二口は非常に気味が悪いと瞬時に思い、つい無意識に揺れる瞳でガラリと雰囲気を変える及川を睨み付ける。ーー成程、キーワードを読み解けば対する牽制か。
「ーーあの清楚可憐で繊細なお花はね、俺が今までずっと大切にしてきたんだよ。すっごく綺麗でしょ?」
「…何が言いたいんだよ」
「君にとっては観賞する事で十分満足してる筈なんだからサ、君が必要以上に愛でる必要も無い。況してや育てようなんて間違っても思わないでね?ーーヘタに手を出せば指に棘が刺さって火傷じゃ済まないかもねー。だから気をつけてね」
「ーー…確かに、あの花は香りを嗅ぐだけで惑わされて俺が勘違いしそうになって腹立つ時も正直しょっちゅうあります。それに貴方と俺では関わってきた今迄の年月の差があって、だからその点についてはどう足掻いたって仕方ない事は解ってる。…悔しいけど、現段階で何事も貴方の方が勝り優れていて俺に勝ち目がないのも解ってる。ーーそれでも関係ない!死んでも俺は諦めたくない」
「(宣戦布告かよクソガキ…!)ーー思ってた以上に厄介だね」
及川二口双方の間に挟まれた鎌先は、何に対して争って居るのか全く理解は出来ないが、只事では無い雰囲気を全身にモロに受けては思考停止しピキピキピキピキ…と凍りつく。正直、俺らには全く構わないが他校の先輩に生言うのは勘弁しろください二口くん…と、心の中で泣くしか無かった。及川クン、マジで怖えぇ…
ーーー
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(堅ちゃん、いつもありがとう。あの…味はどうでしたか?本当はバレンタイン当日に渡したかったけど、今日は堅ちゃんはたくさんチョコ貰えるだろうから日程的に合わなくて先に渡す事になったけど…逆に良かったのかも…?)
(スゲー美味かったよ。来年は、あーんして食わせろ。…たくさんのチョコねぇ…さぁ、どうだろうな?)
はて?恥ずかしい、って怒ってなかったっけ?とぽやん、としながら二口とのメッセージアプリを開いて連絡していたなまえも、バレンタイン当日なる世の乙女達が張り切る日を迎えた。
「~~はぅぁっ!?なまえさん…ッありがとうございますぅぅっ一生大切にします…!」
「気持ちは分かるが矢巾それはダメよ…なまえちゃん、チョコありがとうね♡」
丁寧に作った沢山のチョコレートを抱えて学校に到着し、先ずはいつもお世話になっている男子バレー部の皆と友チョコを女の子達に配る。朝一番に合流した岩泉には、いつもの感謝の気持ちを込めて、先にまた他の人とは別途で異なる手作りのチョコを渡していた。
「サンキューな」と照れくさそうに、キラキラ笑い嬉しそうにする岩泉の顏を見れば、なまえもいつもありがとう、と言葉を放ちながら、だいすきな幼なじみの温もりを感じていた。
あとなまえの手提げの中にはもう一つ、二口に渡したのと同じ様な精一杯の気持ちを込めて作った特別な感情の特別なチョコが入っていて…
「きゃーっ♡及川先輩!」
「及川さーん♡私の気持ちですっ!」
「頑張って作りました!受け取ってくださいっ…♡」
「あーあ、やってらやってら」
「スゲー…今年も及川に近づけねぇ…」
「これは圧巻」
2年目のバレンタイン。今年も朝から気合いを入れてチョコも自身も最大限に準備してラッピングもメイクも可愛くしてきた女の子達が及川の周りに大殺到し周囲は大変な事になっていた。何度も告白して何度も断られても諦めない女の子達の気合いは凄まじい。だって今現在も及川の彼女の枠は空いている。ならばその座を掴む為にはバレンタインは絶好のチャンスであるのだから…!
そんな渦中に居るなまえは、休み時間もお昼休みも部活が始まる移動時間も及川にチョコを渡せずに居た。何だかんだで本日の部活も学校も終わり、これが渡せる最後のチャンス如く及川の周りには未だ女の子の行列が出来ていた。なまえは着替えも帰る支度も終えて、鞄とチョコを持って、結局、他の女の子の気合いに圧倒されて及川に話し掛けるタイミングも掴めず、その場に立ち竦み、しゅん…とするだけだった。
ーー去年なら、そう。去年なら、及川から時間を見計らって傍に来てくれてキチンと渡せたのだが、及川との関係に変化が起こった最近は特に自身が及川に相当に甘えていた、と云う現実、及川が段々と手の届かない存在になっていく、と云う強い不安や寂しさに襲われて、押し潰されそうになっては涙が頬を伝うのだ。
「いつも徹くんの優しさに甘えてばっかりだもんね…」
及川からなまえの傍に来てくれて、それでなまえがいつも言葉を伝える流れであったと云う相当な甘えで居た自身が本当に情けない。ーーチョコ1個、御礼ひとつ、気持ちひとつ言えないなんて、其んな事が合って良い筈が無い。
◇◇◇
「及川先輩!今日は私が渡したチョコが最後ですよね?先輩にとって忘れられないチョコですよね!?」
「うん、そうだね。ありがとうね」
「きゃーっ!嬉しいです♡それではまた♡」
「ーーはー…終わった…帰ーーあ、更衣室に忘れ物した…メンドクセーもういいや部室じゃ無くてソッチで支度しよ…」
周りを見渡せばもう自分以外誰も居ない。ウンウン、男バレの子達は本当に素直で可愛い。ーーうぅっ…薄情者っ…!この山のようなチョコをさてどう運ぶべか、あ、猛(甥っ子)通じて車で迎え来て貰える様に頼んだれ、と考えながら男子更衣室に足を運んだ。
「(なまえからのチョコは無かったか…ダヨネー…)」
及川は、パサっ、とシャツを脱いで自身を独占するなまえをまた想い、はぁ、と一つ溜息をつく。ーー最近の自身の行動により、なまえの傷付いた顏を何度も見てやっぱり胸は痛むし(恋愛面に於いて)勘の鋭い友人からも指摘されて誤魔化す事だってあった。ーーでも、及川にもある考えがある。今迄なんかは、なまえとの関係は絶対に変えては成らないとの根幹があって表面的には親密なる幼なじみを徹底的に演じてきた。寂しさや隙間を埋め(最低だけど)性欲処理であるカノジョと、自身にとっては生命線やアキレス腱である大切にしたいなまえに対しての立ち位置や振る舞い、思考も先手もやり方も根本的には間違って居なかった筈だと思っていた。然しながら、好い加減、カノジョに対しての茶番に終止符を打つ事にした自身の選択により生じたこの間の一件で、元々あった其の発端や思考が既に間違えだったと気が付いた。ーーならば自身は一体、如何したら良いのだろうか。バレーボールをしたい。なまえを一生護りたい。将来の事やなまえの事を考えれば考える程、ズキリ、と頭が痛くなる。何方かを選ぶのでは無くて本音は何方も、ホシイモノは全て手に入れたいーーこれは理屈じゃない、故に冷静になんかなれない。葛藤が産まれる。そして脅威の出現により持ち合わす余裕にもヒビが入る。そうなると味方で居ると誓ったなまえをもっと別の意味で傷付けて泣かせて仕舞うかもしれないーー…伊達工業との練習試合のあの日、宣戦布告する二口の顔が脳に焼き付き離れずに居り、腸が煮えくり返る程に鬱陶しい。クソが!と気付けばつい一人だと思い込んで居たのもあって、結構な声量で放って居た。
「~~っ、徹くんっ…なまえです…あのっ…大丈夫…?」
実は、及川の事をずっと待っていて、男子更衣室の前でどうしようどうしようと狼狽えながら待機していたなまえは(不審者の如く怪しまれたく無いので及川以外もう誰も残って居ないのを何度も確認済)ビクッ、と華奢な肩を跳ねさせ、ついコンコンッ、とドアをノックして及川に声を掛ければ、更衣室からは返答無しであり数秒たった後ガチャ、と扉が開き、姿を見せた及川と目がパチリ、とあったなまえは、未だ及川の上半身が裸だった事に驚き、かぁぁっ、と顔を赤くさせた。
「ご、ごごごめんなさい…!」
くるりと後ろを向いた瞬間、グイッ、と手を引かれて更衣室に引き摺り込まれたなまえは、及川と更衣室に2人きりになり頬を染めて彼を見上げる。及川から「ーー何でまだ残ってたの?」と静かに問われれば、なまえは少し傷付いた切ない表情をして、バレンタインのチョコが入った袋をきゅっ、と胸に抱えては日頃の感謝とゆっくりと自分の気持ちを伝えていく。更衣室は暖房が心地よく効いていて、廊下で伝えるよりかは寒さで手が震えないので、なまえにとって多少なりとも心強い。後、一つ、及川に伝えたい事が如何してもある中で、今は緊張して手が震えるだけなのだから。
「あのねっ…徹くんと私の関係は昔も今も変わらないんだよね…?だからっ…」
「ーーは?」
及川の低い声に、ひゅっ、と喉が鳴る。
"「おいで、なまえ。俺とお前は昔も今も変わらないよーー誰にも文句言われる筋合い無い」"
あんな優しい表情で言ってくれた言葉を忘れて仕舞う程、及川に嫌われてしまったのだろうか…?と考えれば凄く悲しくなり涙が溢れそうななまえだったが、此処でまた自身の気持ちを伝えなかったら後悔してしまう、せめて自分の気持ちだけは素直にきちんと伝えたい!と意を決したなまえは、抱き締めていたチョコを鞄と共に椅子に起き、次に及川の腕をきゅっ、と掴む。
「ーーっ…私は…っ、何も言われないで何も分からない儘、徹くんに避けられたくないのっ…本当は…今までの様に触れて欲しいけど…ぐすっ…せめて理由をっ…ひっ…く…いつも何でも本当の事言ってくれてたのに…今回は何で何も言ってくれないの?嫌ならーーッ、!?」
「ーーだいすき、や、触る、の意味がオマエと俺じゃ全く違うからだよ」
溢れそうな涙を堪えながら抱いていた気持ちを及川に伝えてる途中、なまえの身体がふわり、と宙に浮かび及川に身体が支えられ、とんっ、と壁に身体を強く押し付けられて櫓立ちに近い体位の体勢になる。宙に浮かぶなまえの身体は軽いので簡単に支えられてるが、両太腿は大きく開きスカートは捲り上がり、なまえの大切な部分とショーツ越しに及川の身体が密着していて、なまえはぴくぴく、と震えながら及川の顔を見た瞬間、深く唇を重ね合わされる。
「…んっ...!?んんっ…ふ…!」
華奢な身体は固定されて仕舞い全く動けず口内に舌を侵入され絡ませられ、ちゅく、ちゅく、と水音を立てられ桜桃の様な口の端からは飲みきれなかった2人の混じりあった唾液をツゥっ…と零す。抗う術を全く知らないなまえは、ふにゃり、とし目を瞑るだけしか出来なかった。
「…はァ…っ、は…勘違いするなよ…!俺の核心なんてオマエに言った事なんか一度もない…!」
なまえは、ぽやぽやとする頭と涙で揺れる視界の中で、トロォ…と互いの舌先を繋ぐ糸を眺めては、お腹の奥のきゅん、きゅぅっ…とする感覚を味わって仕舞い、ふるふるふる…っと小さく身震いする。
そんななまえに対して興奮し息を荒くさせ眺める及川は、密着する女の子の大切な場所をズリュ、とわざと身体で擦った後、ぴくん、と跳ねたなまえの片足を床に付けさせ片足をグイッと持ち上げ固定して、可愛いショーツのクロッチの部分を中指で横にずらした。
「ねぇ、翔陽は今年チョコ幾つもらった?」
「エッ!いや…女子バレー部の皆さんから義理チョコ1個だけ…」
「いいなー!俺なんか0だよ。…俺らももうすぐ卒業じゃん?翔陽は好きな女の子に告白したりしないの?てか…まずは好きな人居る?」
「ーーウン、居る」
「わっ!?顔真っ赤だぞ…!まさかそんな一面もあったんだなぁ…ならさ、そんなに好きなら告白してみたら?卒業式間近に告白もロマンチックだぞ!」
「…いや、その人はこの場所には居ない。とにかく先ずは俺がもっとバレーの腕を磨いたら絶対にまた会える気がする…!」
「…ん?そうなの…?因みに、その人はどんな人?」
「…一目惚れだった。あの女性は、見た目も心も凄く綺麗で…穢れなき純白の天使みたいな人だよ」