コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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「ーーで、オンナは?」
「決着つけた。今後は二度と無いよう身命を賭す」
「当たり前だ馬鹿野郎!元はと言えばテメェがふらふらふらふらしてっからこういう事になるんだろうがこのボケが!!」
「ーーごめん…!」
「これは俺からの判決だ。死なねェ程度に加減してやるからさっさと歯ァ食いしばれ」
日もすっかり落ちて満月が顔を出した夜。ある住宅街の一角で、バチッ、と一発、何とも鈍い音が響き渡るのだ。
ーーー
ーー
ー
「なまえちゃん、今日はうちに来てくれたのね!嬉しいわぁ…!とっても可愛い!もう離したくない♡」
「あのっ…おば様、急にお世話になる事になっちゃって、本当にごめんなさい…!あのこれ(手土産)良かったら御家族皆で食べてください…!」
「もー、気を遣わないで良いのに!それになまえちゃんも家族よ~!ねぇねぇ卒業したら岩泉家に嫁入りしない?一生(私が)大切にするから♡」
あの後、二手に分かれ音や光の速さの如く女子更衣室へと全速力で駆け付けた岩泉に救出され怪我を処置されたなまえは、今夜は急遽、岩泉家にお泊まりする事になった。岩泉より岩泉の母からベッタリされ思う存分に可愛がれて、なまえのお風呂上がりには保湿クリームを身体に確り塗り(首元の痕は以前ヘアアイロンで火傷したと誤魔化した)その首の痕や傷付いた足には傷が残らない様に丁寧にケアを施し、滑らかで艶のある髪の毛を丁寧に乾かし保湿オイルを馴染ませたり、最後には可愛い部屋着を着せてやったりと、兎に角、寝る前まで愛娘の様に手厚くしていて、そんな様子を傍で見ている岩泉はもう母に何を言っても無駄であると諦め、寝る寸前まで解放する事無かったなまえを自分の手元に置けたのは、結局、おやすみなさい、の頭を撫でベッドに入った僅かな時間だけであったのだ。
「はじめちゃん…さっきはどうして徹くんと会わせてくれなかったの…?」
「彼奴も頭冷やさなきゃ駄目な時もあんの。それに今は見れる顔じゃねェぞ。ーー兎に角、さっさと寝ろ」
「?うんっ…おやすみなさい…少しだけぎゅっ、てしちゃだめ?」
「……駄目」
「~~私が寝たら離してくれていいからっ…ちゃんと言う通りにすぐ寝るからっ…お願い、はじめちゃん…」
「……あ"ーもうっ!わかったからはよ寝ろ!」
岩泉は先程、根幹である物事の背景を全て無視し自身の手に握っていた下着の温もりと感触、更衣室で救出したなまえの姿だけがぽぽぽっ、とつい脳裏で思い出して仕舞えば、そんな感情に強く葛藤し、なまえが傷付いたこんな時にクソがァ、と自身を強く自制を掛け欲の息の根を止める。ーーいやいやまぁ、お忘れかと存じますが岩泉くんも所謂、オトシゴロであり健全なる男子高校生なワケです。こうして添い寝してるってだけでも普通なら突っ込みどころ満載な筈なのに、色々と距離感がおかしい幼なじみ共の所為で彼も完璧に道を誤ってる気がする。自身でも此の儘、流されては駄目だ、とは頭では理解してる筈なのだが、なまえに対してだけは途轍も無く激的に甘いので、この透き通った甘い瞳で見られれば大抵は逆らえない。困った事ではあるが結局、岩泉が折れた結果となり、少しだけな、となまえの小さな身体を抱き締め頭を撫でてやり、さっさと今すぐ寝かせる最短ルートを選んだ。
なまえは及川のアキレス腱、生命線、だの最近は特に一部に収まらず学校内に広まり声がチラホラ聞こえて来るのだが、正直、其れは及川だけでは無くて岩泉だってそうなのかもしれない。
「すぅ、すぅ…」
なまえも色々あって疲れたのだろう。宣言通りトロトロ…として直ぐに寝息をたてて眠りについた。気付けば、小さな細い指が自身のゴツゴツした指をきゅぅと握っていた為「…俺とは全然違うよな」なんてポツリと零しては、こっそり唇をちょん、と細い指に押し当てた。ーーああ、小さい頃から今もずっと可愛い。いつかこの小さな可愛い手は、自分以外の誰かのモンになっちまうんだろうな…なんて思考しながら1本ずつそっと外しては、岩泉はなまえから離れ別の布団に入り感情を押し殺し無理やり寝るのだ。ああもう、岩泉の苦労は常に計り知れない。
◇◇◇
「徹くんっ…!おはよう…あのね昨日はっ…!」
なまえは早めに起き一旦自宅に帰り朝の仕度を全てし終え、後に再度合流した岩泉と共に及川の家の前で彼が出て来るのを待ち出てくれば直ぐに話しかけた。一通り岩泉から事情は聞いていたので、なまえは先ずは昨日の事を一言謝らなくてはならないと決めていた。
及川の片方の頬には湿布が貼ってあって且つその理由に至っては何も知らないので、なまえはびくっ、と肩を跳ねさせ心配する声掛けをするがその返答は無く、寧ろ及川は直ぐになまえに誠心誠意に謝るのだ。
「ーー俺、今まで何も知らなくてごめんっ…!なまえの足の傷痕にはちゃんと気付いてたのにクラブチームでの練習で無茶したのかと勝手に勘違いしてっ…蓋を開けたらアノ子が犯人だったなんて…ッ」
「ーーどうして徹くんが謝るの?」
「事の発端は俺だったから…クソっ…!いざという時になまえを護ってやれないなんて如何かしてる…ずっと痛かったよね…なまえ、ごめん…」
「…ううん、謝らないで?もう、あの人は私に近づかないって約束してくれたんだよね?」
「うん…!それに俺も今迄以上になまえに対して気をつけるから…!」
及川はなまえに自身の気持ちを確り伝え、例のカノジョの件にもカタをつけて、結果としてはなまえも幸い軽い傷で済んだので傍から見たら一件落着に見えたのだが、然しながら何故だかその日から及川はなまえに対する対応が今迄と少し変化が見えて来て、なまえでもその違和感に気付き始める程にあった。
「ありゃま徹チャン!アンタ更にイケメンになったわね…!」
「マッキー、良く分かってんじゃーん(ブイブイ)」
「然しまぁ、頬を怪我なんか珍しいな…なまえちゃんは及川が何やらかしたか理由知ってる?」
松川が松川自身の頬に自身の拳を充てる真似の仕草をなまえに見せながら問えば、なまえはしゅん…としながら、小さく顔を横にふるふる、と振る。
なまえなりに及川は隠し事をせず何かあれば自分にも気持ちを伝えてくれる、と云う自負があった。自身は特にそうであるが、及川だってそうなのかと、ずっと思っていた…まさか実は異なっていてそんな風に思ってたのは自分だけだったのかな?と思考し更に落ち込むのだ。それ以外にも例えば、なまえがいつもの様に及川の傍に駆け寄り腕をキュッ、と掴もうとすればうまく避けられて隣を歩く時も一定の距離感があったり、部屋で2人きりになる事も前より何だか減って何だかよそよそしく感じていた。…無論そうなれば、以前ならあんなに遠慮なくベタベタベタベタ触ってきてた及川だったが、今現在は、なまえに触れる事も全く無くなってしまったのだ。岩泉に相談すれば「今のこの距離感が当たり前なんだよ」とキッパリと言われ、しょぼん…と肩を落としながらも納得するしか無いのだろうが、やはり徐々に日が経つにつれてなまえの心はとても強い寂しさに襲われていくのだ。
「徹くん、あのね…」
「うん、どうしたの?」
「ううん…今日は部活のお手伝い行くね?」
「ありがとう。助かるよ!帰りは一緒に帰ろうね」
だからと言って及川がなまえに対して怒ってる訳では無さそうであり、通常通り会話だってするし「俺にとってなまえは大切だよ」とか「今日も可愛いね」等の言葉は変わらず言われ、帰宅時になればメッセージアプリで毎日の様に「寄り道して夜遅くなったら駄目だよ。早く帰りなさい」とか「今日はどこ行くの?フタクチくんとデートは絶対にダメだからね」とか言ってくる。其れなのに、及川との距離感が縮まらず違和感が生じている事は身が裂けそうな程に解るから、なまえは理由を考えても全く解決出来ずにとても辛かった。
◇◇◇
「あのね、堅ちゃんにお願いがあるの」
「ん」
「ーー私の事、ぎゅっ、てして?」
「んー、ん…?んン!?ちょっ…いや…どういう意味で言ってるわけ…?」
「……?」
「~~あーハイハイ、お前は俺を惑わす魔性のオンナだったよ今思い出したわーーチッ、ほらさっさと膝の上に跨がれ」
二口の部屋で勉強をしていたある日、なまえは如何しても自分の気持ちを知りたくて、二口にあるお願いをする。
不貞腐れながらも頬を染めてなまえの小さな身体をきゅぅ、と俺のモンだ、と言いた気に腕の中に閉じ込めて仕舞えば「ーー小せぇな…あーもー…悔しい…すげー可愛い…」と呟かれなまえはギュッ、と目を瞑った。あぁ…やっぱり身体がトク、トクと熱くなる。どうしよう…?
「…なまえ」
「はい…」
「ーー次またこんな事を俺に頼んで来た時には、問答無用でベッドに引き摺り込むからな」
「うん…一緒に寝るの…?」
「~~ッちげーよ!ベッドの上で俺に可愛く跨がるんだよ」
「?今も跨がってるけど…」
「(くっ…マジでヤんぞこの女…!)」
すりすり、となまえの頬を撫でる二口の指が気持ち良い。
なまえにとって及川や岩泉は大切な心の支えの人。其れは差など無い。でも彼女の中で及川と岩泉の異なる場面があるとするならば、其れは身体を密着したり寄せたり抱擁する意味合いが異なる。及川と抱擁する際の気持ちは、ホッ…として飼い主の胸にぐりぐり、と顔を擦らせて只管に甘える様な岩泉との抱擁とは全く異なり、寧ろ二口と抱擁する時の感情が非常に良く似ていた。胸がドキドキして身体が熱を持ったり、とても恥ずかしい話なのだが、お腹の奥がきゅん、きゅんっ、とする感じである。ーー如何してだろう?今迄はそんな事なかったのに、なまえ本人もとても不思議であった。この感情の正体は何かと聞かれれば未だ全く分からないのだが、只、今は確実に其れは確りと理解出来るのだ。
「堅ちゃん、だいすき…」
「ぅ"ぅっ…!こんにゃろう…っ(本音は今すぐ引き摺り込みてぇ…!)ーーふぅ…なまえ、どうした。なんかあった?」
「うん…あのね…!徹く…ッ」
「ーー待て」
「!?…ゃっ…なんで頬っぺた甘噛みして舐めるの…っ堅ちゃんはワンちゃんなの…?」
「あーーソウデスネ、じゃあそれで」
徹クンって言おうとしただろ?コッチが聞いといて悪いけどマジでアレの話は聞きたくねェわしかも今のタイミングで唇にしないだけでも感謝しろよ俺もちゃんとマテできる様になっただろ、なんて早口で言われ、二口が伝えたい意図は良く分からないがなまえの心臓は何故かまた、きゅぅぅ、とするので、黙って二口の腕の中に埋まり隠れる事にした。
「決着つけた。今後は二度と無いよう身命を賭す」
「当たり前だ馬鹿野郎!元はと言えばテメェがふらふらふらふらしてっからこういう事になるんだろうがこのボケが!!」
「ーーごめん…!」
「これは俺からの判決だ。死なねェ程度に加減してやるからさっさと歯ァ食いしばれ」
日もすっかり落ちて満月が顔を出した夜。ある住宅街の一角で、バチッ、と一発、何とも鈍い音が響き渡るのだ。
ーーー
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「なまえちゃん、今日はうちに来てくれたのね!嬉しいわぁ…!とっても可愛い!もう離したくない♡」
「あのっ…おば様、急にお世話になる事になっちゃって、本当にごめんなさい…!あのこれ(手土産)良かったら御家族皆で食べてください…!」
「もー、気を遣わないで良いのに!それになまえちゃんも家族よ~!ねぇねぇ卒業したら岩泉家に嫁入りしない?一生(私が)大切にするから♡」
あの後、二手に分かれ音や光の速さの如く女子更衣室へと全速力で駆け付けた岩泉に救出され怪我を処置されたなまえは、今夜は急遽、岩泉家にお泊まりする事になった。岩泉より岩泉の母からベッタリされ思う存分に可愛がれて、なまえのお風呂上がりには保湿クリームを身体に確り塗り(首元の痕は以前ヘアアイロンで火傷したと誤魔化した)その首の痕や傷付いた足には傷が残らない様に丁寧にケアを施し、滑らかで艶のある髪の毛を丁寧に乾かし保湿オイルを馴染ませたり、最後には可愛い部屋着を着せてやったりと、兎に角、寝る前まで愛娘の様に手厚くしていて、そんな様子を傍で見ている岩泉はもう母に何を言っても無駄であると諦め、寝る寸前まで解放する事無かったなまえを自分の手元に置けたのは、結局、おやすみなさい、の頭を撫でベッドに入った僅かな時間だけであったのだ。
「はじめちゃん…さっきはどうして徹くんと会わせてくれなかったの…?」
「彼奴も頭冷やさなきゃ駄目な時もあんの。それに今は見れる顔じゃねェぞ。ーー兎に角、さっさと寝ろ」
「?うんっ…おやすみなさい…少しだけぎゅっ、てしちゃだめ?」
「……駄目」
「~~私が寝たら離してくれていいからっ…ちゃんと言う通りにすぐ寝るからっ…お願い、はじめちゃん…」
「……あ"ーもうっ!わかったからはよ寝ろ!」
岩泉は先程、根幹である物事の背景を全て無視し自身の手に握っていた下着の温もりと感触、更衣室で救出したなまえの姿だけがぽぽぽっ、とつい脳裏で思い出して仕舞えば、そんな感情に強く葛藤し、なまえが傷付いたこんな時にクソがァ、と自身を強く自制を掛け欲の息の根を止める。ーーいやいやまぁ、お忘れかと存じますが岩泉くんも所謂、オトシゴロであり健全なる男子高校生なワケです。こうして添い寝してるってだけでも普通なら突っ込みどころ満載な筈なのに、色々と距離感がおかしい幼なじみ共の所為で彼も完璧に道を誤ってる気がする。自身でも此の儘、流されては駄目だ、とは頭では理解してる筈なのだが、なまえに対してだけは途轍も無く激的に甘いので、この透き通った甘い瞳で見られれば大抵は逆らえない。困った事ではあるが結局、岩泉が折れた結果となり、少しだけな、となまえの小さな身体を抱き締め頭を撫でてやり、さっさと今すぐ寝かせる最短ルートを選んだ。
なまえは及川のアキレス腱、生命線、だの最近は特に一部に収まらず学校内に広まり声がチラホラ聞こえて来るのだが、正直、其れは及川だけでは無くて岩泉だってそうなのかもしれない。
「すぅ、すぅ…」
なまえも色々あって疲れたのだろう。宣言通りトロトロ…として直ぐに寝息をたてて眠りについた。気付けば、小さな細い指が自身のゴツゴツした指をきゅぅと握っていた為「…俺とは全然違うよな」なんてポツリと零しては、こっそり唇をちょん、と細い指に押し当てた。ーーああ、小さい頃から今もずっと可愛い。いつかこの小さな可愛い手は、自分以外の誰かのモンになっちまうんだろうな…なんて思考しながら1本ずつそっと外しては、岩泉はなまえから離れ別の布団に入り感情を押し殺し無理やり寝るのだ。ああもう、岩泉の苦労は常に計り知れない。
◇◇◇
「徹くんっ…!おはよう…あのね昨日はっ…!」
なまえは早めに起き一旦自宅に帰り朝の仕度を全てし終え、後に再度合流した岩泉と共に及川の家の前で彼が出て来るのを待ち出てくれば直ぐに話しかけた。一通り岩泉から事情は聞いていたので、なまえは先ずは昨日の事を一言謝らなくてはならないと決めていた。
及川の片方の頬には湿布が貼ってあって且つその理由に至っては何も知らないので、なまえはびくっ、と肩を跳ねさせ心配する声掛けをするがその返答は無く、寧ろ及川は直ぐになまえに誠心誠意に謝るのだ。
「ーー俺、今まで何も知らなくてごめんっ…!なまえの足の傷痕にはちゃんと気付いてたのにクラブチームでの練習で無茶したのかと勝手に勘違いしてっ…蓋を開けたらアノ子が犯人だったなんて…ッ」
「ーーどうして徹くんが謝るの?」
「事の発端は俺だったから…クソっ…!いざという時になまえを護ってやれないなんて如何かしてる…ずっと痛かったよね…なまえ、ごめん…」
「…ううん、謝らないで?もう、あの人は私に近づかないって約束してくれたんだよね?」
「うん…!それに俺も今迄以上になまえに対して気をつけるから…!」
及川はなまえに自身の気持ちを確り伝え、例のカノジョの件にもカタをつけて、結果としてはなまえも幸い軽い傷で済んだので傍から見たら一件落着に見えたのだが、然しながら何故だかその日から及川はなまえに対する対応が今迄と少し変化が見えて来て、なまえでもその違和感に気付き始める程にあった。
「ありゃま徹チャン!アンタ更にイケメンになったわね…!」
「マッキー、良く分かってんじゃーん(ブイブイ)」
「然しまぁ、頬を怪我なんか珍しいな…なまえちゃんは及川が何やらかしたか理由知ってる?」
松川が松川自身の頬に自身の拳を充てる真似の仕草をなまえに見せながら問えば、なまえはしゅん…としながら、小さく顔を横にふるふる、と振る。
なまえなりに及川は隠し事をせず何かあれば自分にも気持ちを伝えてくれる、と云う自負があった。自身は特にそうであるが、及川だってそうなのかと、ずっと思っていた…まさか実は異なっていてそんな風に思ってたのは自分だけだったのかな?と思考し更に落ち込むのだ。それ以外にも例えば、なまえがいつもの様に及川の傍に駆け寄り腕をキュッ、と掴もうとすればうまく避けられて隣を歩く時も一定の距離感があったり、部屋で2人きりになる事も前より何だか減って何だかよそよそしく感じていた。…無論そうなれば、以前ならあんなに遠慮なくベタベタベタベタ触ってきてた及川だったが、今現在は、なまえに触れる事も全く無くなってしまったのだ。岩泉に相談すれば「今のこの距離感が当たり前なんだよ」とキッパリと言われ、しょぼん…と肩を落としながらも納得するしか無いのだろうが、やはり徐々に日が経つにつれてなまえの心はとても強い寂しさに襲われていくのだ。
「徹くん、あのね…」
「うん、どうしたの?」
「ううん…今日は部活のお手伝い行くね?」
「ありがとう。助かるよ!帰りは一緒に帰ろうね」
だからと言って及川がなまえに対して怒ってる訳では無さそうであり、通常通り会話だってするし「俺にとってなまえは大切だよ」とか「今日も可愛いね」等の言葉は変わらず言われ、帰宅時になればメッセージアプリで毎日の様に「寄り道して夜遅くなったら駄目だよ。早く帰りなさい」とか「今日はどこ行くの?フタクチくんとデートは絶対にダメだからね」とか言ってくる。其れなのに、及川との距離感が縮まらず違和感が生じている事は身が裂けそうな程に解るから、なまえは理由を考えても全く解決出来ずにとても辛かった。
◇◇◇
「あのね、堅ちゃんにお願いがあるの」
「ん」
「ーー私の事、ぎゅっ、てして?」
「んー、ん…?んン!?ちょっ…いや…どういう意味で言ってるわけ…?」
「……?」
「~~あーハイハイ、お前は俺を惑わす魔性のオンナだったよ今思い出したわーーチッ、ほらさっさと膝の上に跨がれ」
二口の部屋で勉強をしていたある日、なまえは如何しても自分の気持ちを知りたくて、二口にあるお願いをする。
不貞腐れながらも頬を染めてなまえの小さな身体をきゅぅ、と俺のモンだ、と言いた気に腕の中に閉じ込めて仕舞えば「ーー小せぇな…あーもー…悔しい…すげー可愛い…」と呟かれなまえはギュッ、と目を瞑った。あぁ…やっぱり身体がトク、トクと熱くなる。どうしよう…?
「…なまえ」
「はい…」
「ーー次またこんな事を俺に頼んで来た時には、問答無用でベッドに引き摺り込むからな」
「うん…一緒に寝るの…?」
「~~ッちげーよ!ベッドの上で俺に可愛く跨がるんだよ」
「?今も跨がってるけど…」
「(くっ…マジでヤんぞこの女…!)」
すりすり、となまえの頬を撫でる二口の指が気持ち良い。
なまえにとって及川や岩泉は大切な心の支えの人。其れは差など無い。でも彼女の中で及川と岩泉の異なる場面があるとするならば、其れは身体を密着したり寄せたり抱擁する意味合いが異なる。及川と抱擁する際の気持ちは、ホッ…として飼い主の胸にぐりぐり、と顔を擦らせて只管に甘える様な岩泉との抱擁とは全く異なり、寧ろ二口と抱擁する時の感情が非常に良く似ていた。胸がドキドキして身体が熱を持ったり、とても恥ずかしい話なのだが、お腹の奥がきゅん、きゅんっ、とする感じである。ーー如何してだろう?今迄はそんな事なかったのに、なまえ本人もとても不思議であった。この感情の正体は何かと聞かれれば未だ全く分からないのだが、只、今は確実に其れは確りと理解出来るのだ。
「堅ちゃん、だいすき…」
「ぅ"ぅっ…!こんにゃろう…っ(本音は今すぐ引き摺り込みてぇ…!)ーーふぅ…なまえ、どうした。なんかあった?」
「うん…あのね…!徹く…ッ」
「ーー待て」
「!?…ゃっ…なんで頬っぺた甘噛みして舐めるの…っ堅ちゃんはワンちゃんなの…?」
「あーーソウデスネ、じゃあそれで」
徹クンって言おうとしただろ?コッチが聞いといて悪いけどマジでアレの話は聞きたくねェわしかも今のタイミングで唇にしないだけでも感謝しろよ俺もちゃんとマテできる様になっただろ、なんて早口で言われ、二口が伝えたい意図は良く分からないがなまえの心臓は何故かまた、きゅぅぅ、とするので、黙って二口の腕の中に埋まり隠れる事にした。