コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
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3年目にして初めての大会ーー念願だった市民体育館には、エアーサロンパスの匂いと天使の羽がふわり、と舞い、慈悲深き天使が舞い降りた。
◇◇◇
「……ぅ"ぅ"ぅっ…!」
「あの…顔色が凄く悪いしお腹摩ってるけど…体調悪いの?一緒に医務室行こうか…?」
「!?(美女…というより舞い降りた天使…ッ!…え、俺…やっとの思いでコートに立てる日が来て…エアーサロンパスの匂い嗅いで感動したまま死ぬの…?天国から御迎えが来たの…?)あああの……っ…ごめんなさい…今は…っ、盛大に吐きそうですっ…」
「え?うんっ…わかった!我慢出来なかったら、はいっ!ここに戻していいよ」
雪ヶ丘中学校、日向翔陽ーー現在、自身にとって念願であった初のバレーボール大会会場、市民体育館の待合広場のある一角にて、女子バレー部3年のあの有名な美女なる先輩を遥かに凌駕する美女…いや寧ろ天使様の小さな手で広げられた、ビニール手提げ袋の中に盛大にゲ●を吐き出しています(チーン)ーー神様は俺が嫌いなのでしょうか…?
日向がゴボゴボッ、と胃の中のモノを全て吐き出し終えれば、彼女の華奢で透明感溢れる柔らかな手が蹲る背中を優しく摩りながらゆっくりと落ち着かせてくれて、且つ共に甘い温もりと真心と心地良さが強く伝わった。ーー勿論、自己都合による錯覚かもしれないが、この天使様に触れれば心も身体も回復し普段より元気になる気がした。極端な話、抱き締めたら自身の為になりそうだ。然しながら、周りから好奇心による視線と嫌に響くヒソヒソコソコソと言われてるのは嘔吐し終えた日向だって重々に理解しているのだから素面で居る彼女なんてもっと理解し且つ羞恥心にあろうーー
寧ろ彼女にとってはハジメマシテ故に見知らぬ中学生、彼女の姿見から応援かなんかで来た一般の観客の人であろうに…本当に本当に本当にごめんなさい、と静かに呟き嘆き謝罪する。
「はい、どうぞ。お口の中気持ち悪いだろうからミネラルウォーターでお口濯いでね。あとは…嘔吐してもお腹を下した時も、少しずつで良いからスポドリを飲んで欲しいの。ーーこれ…まだ空けてないから2本とも良かったら…」
「ッ…ありがとうございます…っ!あの…本当にごめんなさい…!俺だけならまだしも貴女にも恥ずかしい思いさせてしまって…その…何てお詫びしたらいいか…!俺、今から試合なんですけど凄く緊張しちゃって…それで…ッ」
「?迷惑なんかじゃないよ。でも体調大丈夫?試合は出れそうなの?」
「!?ーーはいっ…どうしても出たいです。お陰様で気持ち悪いのは全部治りました…!お腹は…一応、トイレには行っておきます…」
嘔吐物は全て袋の中に収まり手際良く綺麗に纏めては袋を何重にし「これは私が処理しておくから安心してね」と漏れないように彼女の別の手荷物に入れていて、日向は申し訳なさと自責の念、不甲斐なさ…今まで味わった事の無い淡い感情がぐちゃぐちゃに混じり合い、ジワァ…と涙が強く滲む。こんなにも心も見た目も全てが綺麗な人がこの世に存在するの?やはり目の前のこの女性は天使様なのでは無いだろうかーー?
「ーー…ぐすっ…この御恩は一生忘れません。もし貴女が困った時は、俺が必ず飛んで行きます…!雪ヶ丘中学校、日向翔陽です。よろしくお願いします…っ…」
「ふふっ、心強いなぁ…ありがとう。では、お言葉に甘えちゃおうかな?その時は一番に飛んで来てね。青葉城西高校のみょうじなまえです」
失礼ながら彼女とやっときちんと向き合えた時、こんな自分でも視線が下には成るわ、彼女の小さくて華奢な身体…あ、でも物凄く魅力的な豊満な胸は納得というか凄い…(じゃない!助けて貰った人に対して失礼だろばかか俺!)彼女は、まさかの高校生だった。青葉城西…青葉城西…なまえさん…よし、覚えたぞ!絶対に忘れたりするもんか…!
「なまえさんっ…本当にありがとうございました…!ーー今度は別の形で、出来たら俺を見直す様な場面をお見せできる機会にまたお会いできる事を祈っています…」
「うん、行ってらっしゃい。涙を拭いて上を向いて…あ、でも水分は取るんだよ?約束ね」
「翔ちゃん、どうしたの!?トイレ行ったんじゃないの?」と後ろから声がして促される寸前まで、ティッシュで優しく目尻をぽんぽん、としてくれたなまえ特有の甘い雰囲気と柔らかな笑顔で見送られる。胸の中がどくん、どくん、ってする。ーー何だろうこの気持ち、顔が熱い…!何だかまた別の自分と…ハジメマシテ、一歩大人になった自分と出会った瞬間だった。
"神様から嫌われているんだ"と嘆いていた日向にとって本日、実は、自身の生涯や人生にとって大きな運命を握る、かけがえの無い人物2人と出会う事になる日であるのだ。日向は返事を確りと返しなまえと別れて、急いでトイレに向かう。
ーーー
ーー
ー
「ーーなまえさん!今日態々来てくれてたんスか…?」
「急にごめんなさい。飛雄くん達…北川第一の試合を見れるのは時期的にも今日が最後かも、って思って来ちゃったの…迷惑だった?」
「いえ!迷惑なんて有り得ないです…あの、今日の俺ドウデシタカ…」
「飛雄くんはやっぱり凄いね。ーーでも何だか試合中そして今も、とても苦しそうで…でもね、その中でもかけがえの無い一筋の光を見た、とも思えたよ。…ごめんなさい、何だか纏まりが無いよね。なんて言ったら良いのか分からないんだけど…」
言葉を慎重に選ぶなまえの瞳につい影山はヒュッ、と息が細くなる。真っ白な紙に夕暮れの冷たく澄む橙の水彩絵の具を垂らして、なまえと影山を穏和に醸し出し描いた。
そう云えば中学の頃は、なまえに懐いて部活の休憩時間等や学校の昼休み時間等には良く後ろにぴょこぴょこ着いて行っていた。そうなれば必然的に部活の先輩からもなまえの友人達からも嫌な顔をされたりもしたっけ…と振り返る。まずは彼女と共に居ればあの及川とも関わり易い、後はーー…一与さんに向けたかった気持ちの寂しさを埋める為、手軽に一番優しそうなこの人でいいや、なんて勝手に重ねる、という身勝手な不純な動機が第一の発端ではあったが、関われば関わる程に彼女の後ろにぴょこぴょこ着いていく理由は段々と変わってきた。自身が気付いた際にはもう既に不純な動機なんかじゃなく純粋な気持ちだった。
彼女と居るとその時だけは心に光が差し込んで、また、包み込まれる様に、寂しさが拭われる様に、物凄く安心した。然しながら虚しくもそれは1年しか続かない。其れは、どうにもならない年齢差があったから。
例えば、洞察力に長けてる、と云われる目標でありいつか超えたいと常に抱く先輩であり師匠の様である及川は、無論、自身にとって敵になれば脅威であり侮れないのだが、その及川の生命線であろう(影山的にはそう見える)彼女だって或る意味怖い。傍に居れば、例え及川や岩泉の前であろうと、無性に甘えたくなって細い腕に縋りたくなって、故にあの瞳から覗かれれば全てを見透かされる気がして心内を隠し通せなくなる気がした。
「ーーッ、あの…!なまえさんには…なまえさんだけには言っておかなくちゃいけない事があって…あ、でも他の人には言わないでください…!」
「うん…」
「俺は青葉城西には行きません」
影山は夕日に負けないくらいに透き通るなまえを逃がしたくなくて、彼女の細い腕をキュッ…と掴みながら言う。細いなぁ、折れちゃいそうだから慎重に扱わなくては、なんて自身の頭でも直ぐに理解出来る事。要は、冷静で居ろーー…但し、これはきっと自分なりの足掻きであって故に自身の選んだ選択に唯一、後悔があるとしたなら、なまえの傍に居られないと云う意思表明でもあるのだ。只、足掻いても良いから冷静で居ろ。この女性はあの及川岩泉ーー…及川徹の生命線である事を肝に銘じるべきだ。
「いつから考えていたの…?」
「その…なまえさんが卒業されてから暫くして…スンマセン…そうなるとあんなに世話になったなまえさんに顔向けできなくなってきて…中々言えませんでした…」
「…私、飛雄くんに嫌われたかと思って…ずっと寂しかった…」
「!?違っーー!違いますッ!寧ろ、好ーーッッ……(プシュー)」
「ふふっ、良かった…安心した!実は今日ね、来るの怖かったんだけど…勇気出してよかった…」
「……ッス」
「ーーそっかぁ…!あのね…飛雄くんのその選択は、きっといつの日かバレーボール界に重要な意味を成す思う。それは青葉城西では絶対に叶わない。ーー飛雄くんはもっと素敵な笑顔になれるんだよ」
透き通る姿見、輪郭、身体の線、艶やかな髪の毛一本一本に夕日がキラキラと彼女を飾り立て、影山の瞳いっぱいに支配すれば、細い腕を掴んでいた自身の手は、気付いた時には既に彼女の身体を掻き抱いて居た。
◇◇◇
「……ぅ"ぅ"ぅっ…!」
「あの…顔色が凄く悪いしお腹摩ってるけど…体調悪いの?一緒に医務室行こうか…?」
「!?(美女…というより舞い降りた天使…ッ!…え、俺…やっとの思いでコートに立てる日が来て…エアーサロンパスの匂い嗅いで感動したまま死ぬの…?天国から御迎えが来たの…?)あああの……っ…ごめんなさい…今は…っ、盛大に吐きそうですっ…」
「え?うんっ…わかった!我慢出来なかったら、はいっ!ここに戻していいよ」
雪ヶ丘中学校、日向翔陽ーー現在、自身にとって念願であった初のバレーボール大会会場、市民体育館の待合広場のある一角にて、女子バレー部3年のあの有名な美女なる先輩を遥かに凌駕する美女…いや寧ろ天使様の小さな手で広げられた、ビニール手提げ袋の中に盛大にゲ●を吐き出しています(チーン)ーー神様は俺が嫌いなのでしょうか…?
日向がゴボゴボッ、と胃の中のモノを全て吐き出し終えれば、彼女の華奢で透明感溢れる柔らかな手が蹲る背中を優しく摩りながらゆっくりと落ち着かせてくれて、且つ共に甘い温もりと真心と心地良さが強く伝わった。ーー勿論、自己都合による錯覚かもしれないが、この天使様に触れれば心も身体も回復し普段より元気になる気がした。極端な話、抱き締めたら自身の為になりそうだ。然しながら、周りから好奇心による視線と嫌に響くヒソヒソコソコソと言われてるのは嘔吐し終えた日向だって重々に理解しているのだから素面で居る彼女なんてもっと理解し且つ羞恥心にあろうーー
寧ろ彼女にとってはハジメマシテ故に見知らぬ中学生、彼女の姿見から応援かなんかで来た一般の観客の人であろうに…本当に本当に本当にごめんなさい、と静かに呟き嘆き謝罪する。
「はい、どうぞ。お口の中気持ち悪いだろうからミネラルウォーターでお口濯いでね。あとは…嘔吐してもお腹を下した時も、少しずつで良いからスポドリを飲んで欲しいの。ーーこれ…まだ空けてないから2本とも良かったら…」
「ッ…ありがとうございます…っ!あの…本当にごめんなさい…!俺だけならまだしも貴女にも恥ずかしい思いさせてしまって…その…何てお詫びしたらいいか…!俺、今から試合なんですけど凄く緊張しちゃって…それで…ッ」
「?迷惑なんかじゃないよ。でも体調大丈夫?試合は出れそうなの?」
「!?ーーはいっ…どうしても出たいです。お陰様で気持ち悪いのは全部治りました…!お腹は…一応、トイレには行っておきます…」
嘔吐物は全て袋の中に収まり手際良く綺麗に纏めては袋を何重にし「これは私が処理しておくから安心してね」と漏れないように彼女の別の手荷物に入れていて、日向は申し訳なさと自責の念、不甲斐なさ…今まで味わった事の無い淡い感情がぐちゃぐちゃに混じり合い、ジワァ…と涙が強く滲む。こんなにも心も見た目も全てが綺麗な人がこの世に存在するの?やはり目の前のこの女性は天使様なのでは無いだろうかーー?
「ーー…ぐすっ…この御恩は一生忘れません。もし貴女が困った時は、俺が必ず飛んで行きます…!雪ヶ丘中学校、日向翔陽です。よろしくお願いします…っ…」
「ふふっ、心強いなぁ…ありがとう。では、お言葉に甘えちゃおうかな?その時は一番に飛んで来てね。青葉城西高校のみょうじなまえです」
失礼ながら彼女とやっときちんと向き合えた時、こんな自分でも視線が下には成るわ、彼女の小さくて華奢な身体…あ、でも物凄く魅力的な豊満な胸は納得というか凄い…(じゃない!助けて貰った人に対して失礼だろばかか俺!)彼女は、まさかの高校生だった。青葉城西…青葉城西…なまえさん…よし、覚えたぞ!絶対に忘れたりするもんか…!
「なまえさんっ…本当にありがとうございました…!ーー今度は別の形で、出来たら俺を見直す様な場面をお見せできる機会にまたお会いできる事を祈っています…」
「うん、行ってらっしゃい。涙を拭いて上を向いて…あ、でも水分は取るんだよ?約束ね」
「翔ちゃん、どうしたの!?トイレ行ったんじゃないの?」と後ろから声がして促される寸前まで、ティッシュで優しく目尻をぽんぽん、としてくれたなまえ特有の甘い雰囲気と柔らかな笑顔で見送られる。胸の中がどくん、どくん、ってする。ーー何だろうこの気持ち、顔が熱い…!何だかまた別の自分と…ハジメマシテ、一歩大人になった自分と出会った瞬間だった。
"神様から嫌われているんだ"と嘆いていた日向にとって本日、実は、自身の生涯や人生にとって大きな運命を握る、かけがえの無い人物2人と出会う事になる日であるのだ。日向は返事を確りと返しなまえと別れて、急いでトイレに向かう。
ーーー
ーー
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「ーーなまえさん!今日態々来てくれてたんスか…?」
「急にごめんなさい。飛雄くん達…北川第一の試合を見れるのは時期的にも今日が最後かも、って思って来ちゃったの…迷惑だった?」
「いえ!迷惑なんて有り得ないです…あの、今日の俺ドウデシタカ…」
「飛雄くんはやっぱり凄いね。ーーでも何だか試合中そして今も、とても苦しそうで…でもね、その中でもかけがえの無い一筋の光を見た、とも思えたよ。…ごめんなさい、何だか纏まりが無いよね。なんて言ったら良いのか分からないんだけど…」
言葉を慎重に選ぶなまえの瞳につい影山はヒュッ、と息が細くなる。真っ白な紙に夕暮れの冷たく澄む橙の水彩絵の具を垂らして、なまえと影山を穏和に醸し出し描いた。
そう云えば中学の頃は、なまえに懐いて部活の休憩時間等や学校の昼休み時間等には良く後ろにぴょこぴょこ着いて行っていた。そうなれば必然的に部活の先輩からもなまえの友人達からも嫌な顔をされたりもしたっけ…と振り返る。まずは彼女と共に居ればあの及川とも関わり易い、後はーー…一与さんに向けたかった気持ちの寂しさを埋める為、手軽に一番優しそうなこの人でいいや、なんて勝手に重ねる、という身勝手な不純な動機が第一の発端ではあったが、関われば関わる程に彼女の後ろにぴょこぴょこ着いていく理由は段々と変わってきた。自身が気付いた際にはもう既に不純な動機なんかじゃなく純粋な気持ちだった。
彼女と居るとその時だけは心に光が差し込んで、また、包み込まれる様に、寂しさが拭われる様に、物凄く安心した。然しながら虚しくもそれは1年しか続かない。其れは、どうにもならない年齢差があったから。
例えば、洞察力に長けてる、と云われる目標でありいつか超えたいと常に抱く先輩であり師匠の様である及川は、無論、自身にとって敵になれば脅威であり侮れないのだが、その及川の生命線であろう(影山的にはそう見える)彼女だって或る意味怖い。傍に居れば、例え及川や岩泉の前であろうと、無性に甘えたくなって細い腕に縋りたくなって、故にあの瞳から覗かれれば全てを見透かされる気がして心内を隠し通せなくなる気がした。
「ーーッ、あの…!なまえさんには…なまえさんだけには言っておかなくちゃいけない事があって…あ、でも他の人には言わないでください…!」
「うん…」
「俺は青葉城西には行きません」
影山は夕日に負けないくらいに透き通るなまえを逃がしたくなくて、彼女の細い腕をキュッ…と掴みながら言う。細いなぁ、折れちゃいそうだから慎重に扱わなくては、なんて自身の頭でも直ぐに理解出来る事。要は、冷静で居ろーー…但し、これはきっと自分なりの足掻きであって故に自身の選んだ選択に唯一、後悔があるとしたなら、なまえの傍に居られないと云う意思表明でもあるのだ。只、足掻いても良いから冷静で居ろ。この女性はあの及川岩泉ーー…及川徹の生命線である事を肝に銘じるべきだ。
「いつから考えていたの…?」
「その…なまえさんが卒業されてから暫くして…スンマセン…そうなるとあんなに世話になったなまえさんに顔向けできなくなってきて…中々言えませんでした…」
「…私、飛雄くんに嫌われたかと思って…ずっと寂しかった…」
「!?違っーー!違いますッ!寧ろ、好ーーッッ……(プシュー)」
「ふふっ、良かった…安心した!実は今日ね、来るの怖かったんだけど…勇気出してよかった…」
「……ッス」
「ーーそっかぁ…!あのね…飛雄くんのその選択は、きっといつの日かバレーボール界に重要な意味を成す思う。それは青葉城西では絶対に叶わない。ーー飛雄くんはもっと素敵な笑顔になれるんだよ」
透き通る姿見、輪郭、身体の線、艶やかな髪の毛一本一本に夕日がキラキラと彼女を飾り立て、影山の瞳いっぱいに支配すれば、細い腕を掴んでいた自身の手は、気付いた時には既に彼女の身体を掻き抱いて居た。