今宵の梟月谷
n a m e
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(#梟谷が独占!)
(#赤葦くんの顔パターン気になる…!)
(#白福さんは体調不良)
(#性的、直接的表現⚠︎(弱))
(#♡や♪記号使用⚠︎)
ピピピッ……
先程から同じ行動を繰り返してはもう6度目になる。今度こそお願いします、と強く祈り計り終えた手元の体温計の数字を見ては「やっぱり駄目か…」との落胆と「認めたくない」「予定を断りたくない」と強く思いながら、じわじわじわっ…と自身の瞳から湧き出た水の膜の張りが溢れそうな程、複雑なる気持ちが強くなった。
「…ッ…どうしよう…」
僅かに震える手でスマホを握り闇路監督へ電話する前に、先ず先に各部員宛に文章での連絡を入れようと「おはよう!急に申し訳ないんだけど微熱があって参加難し」まで画面に打ち込みながら、本日の様な大切な日に限って体調管理が出来ない自分が悔しくて悲しい感情に蝕まれる。
実は昨晩から少し熱っぽかった。でも病は気から!と自身を鼓舞し早く床に入り、直ぐに眠ればこの程度な微熱ならば朝には下がるだろう、と縋る想いで過ごし然して現在に至る。
「……大丈夫。風邪の諸症状も無いしこれくらいの微熱なら…っ!」
結果、本日どうしても部活に参加したいと云う気持ちが何事にも勝り先程入力したスマホの連絡画面を全て消し、もしもの時に飲む為の常備薬を鞄に忍ばせて学園への支度の準備を再開した。
白福は熱に耐性が無かった。積極的に行動したりして身体に負担を掛けて無理をすると、微熱から高熱に変化させるには容易い体質であった為、普段であれば体育は見学したり部活は丸々休んだりしては、程度によるが場合により学園欠席も視野に入れていた。
では、普段と異なり少々強引な対応をしては此処まで頑なになる彼女の本日の大切な理由とはーー?
▷▶▷
「この間のお前らとの約束通り猫又先生の目ェ盗んでみょうじくん奪って来たから練習頑張れよー?」
「…今日1日梟谷に嫁入りしたみょうじ なまえデス。因みにこんな可愛い嫁が鬼嫁に化けるかはお前らの扱い次第なので宜しくね」
「ヘイヘイヘイなまえちゃん!待ってたぜ!…嫁ならおっぱい揉んで良い?」
「…よし、光太郎。後で校舎裏に来い。めちゃくちゃ可愛がってやる」
「すまん…なまえ、それどっちの意味?木兎と腐っても木兎を締め上げてもどっちに転んでも俺は恐怖で泣くぞ…」
「(ふふっ!なまえさんを梟谷の嫁にやっと迎え入れる事が出来た…!計画通り)」
「赤葦、顔怖いよ…顔…」
「~~まったくもう!ほんとウチの子らは…!」
闇路監督の声と共になまえの悪戯な微笑みが体育館に響渡れば、梟谷の皆は様々な返しでなまえを歓迎していた。其してこれが白福がどうしても休みたくなかった大切な理由でもある。
何せ梟谷がなまえを独占できるなんて、そんな機会は中々無いのだからーー
「雪っぺ!これも宜しく!」
「これとこれも良い?」
「雀田さん!ドリンクおなしゃす!」
「なまえー!頼む!」
無論、なまえを独占しているその分、普段より気分も練習に対しても熱量や気迫がある本日は目まぐるしく、当のなまえも普段の役割以上にスコアやボール出し等、出来ることは自ら練習に協力していた。
「はぁ…ッ…はぁ…」
練習が始まって2時間たった辺りだろうか?
白福の体調に段々と変化が訪れては自身でも理解出来る程に身体が熱くボーッとし目の前がボヤけ霞んで見え始めており、部活に参加したからにはきちんと仕事を遣り遂げる、と偽り隠し自身に気遣う事無く働き無茶をし続けた事が今の体調に繋がっていく。
実は先程の休憩時間の際になまえに話し掛けられ、僅かな変化を察知していたのであろう体調に関する気遣いを貰った。その時は未だ大した事無かったので「平気だよ?」と微笑みはぐらかしたのだが、上手く誤魔化していたつもりでも彼には何だかんだ御見通しであったのだろう。此の儘では、自身がなまえに対して抱いている気持ちも見透かされそうで、体調も不安定にあった所為もあるのか急に何だか不安になり、その場の忙しさも理由にして彼から直ぐに離れた。折角、なまえと話せる機会が産まれたのに…。
パッ、と離れる瞬間になまえから腕を捕まれては離れるのを一旦制止され「…水分補給は確りね。後、無理はしないでね?」となまえから手渡されたスポーツドリンクをギュッ…と胸に大切に抱き締めては、休憩時間に静かになまえを想うのだ。
「ーーちょっと良い?失礼します」
「なまえくん…?…んっ…!」
溜息と共にとうとう見兼ねたなまえが、白福に声を掛けて傍に駆け寄り、額、次に頬、首筋へと体温を調べる様に手の甲をあてれば、白福はつい身体がぴくん、と反応して仕舞い、なまえの手の流れの感触に敏感になりながら真っ赤に頬を染めらせる。
なまえの指先が自身の髪先に触れるだけでも体が熱くなる程、彼が好きで仕方ないのに。そんなに次から次へと触れられたら恥ずかしくてクラクラしそう…あれ…?何だか本当にクラクラしてきた…?
「何で言わないの?」
「…ほぇ…?」
「此の儘、俺を騙せると思った?」
なまえは普段とは異なる鋭い雰囲気で白福に視線を混じり合わせた後、闇路と木兎、雀田に機転の利く対応・説明した後、白福をお姫様の如く横抱きにして、体育館を出ていき保健室へと向かって行く。
「雪絵ちゃん、おいで」
「きゃっ……!」
白福は小さく短い驚いた声を出し、なまえのシャツをキュッ…と遠慮がちに握り身体を出来るだけ縮こませながら、なまえとの思いがけない密着に様々な要因が重なって心臓が飛び出そうである。
自身の脇腹や太腿に触れるなまえの大きな手と頼りたくなる逞しい腕が愛おしく、つい自身が女性として彼の腕に抱かれて愛される想像までもして仕舞えば、幸せで身体の中心がキュゥ…ッとなりながらも反面、もしなまえから愛されるたった1人の女の子がこの世に居るとするならば、その女の子が心底羨ましく胸が張り裂けそうな思いにも襲われた。
「なまえって女の子に甘いよなー。雪っぺに対して特にべた甘くない?」
「俺から見れば、なまえさんは木兎さんに対しても十分甘いと思います。それになまえさんも木兎さんに甘えていますよね。素直に羨ましいですけど」
「だから赤葦、顔怖いよ…顔。さっきから怖いパターンが違うけど後何種類あるの?」
「…でもさ、今さっき白福さんの体調の具合を心配してた時のなまえだって結構顔怖かったけど一体何故?」
「なまえは黙ってれば少女漫画に出てくるイケメン若頭だもんなー!まぁでも流石にあのなまえが雪っぺに怒ったりしないでしょ?ねー!かおりん?」
「…さぁ。どうでしょう?みょうじくんは女の子に優しいからね。でも、今回は雪絵もみょうじくんに叱られたら良いんじゃない?」
「?」
「あの…ごめんなさい」
「……謝る相手は俺じゃない。先ずは雪絵ちゃん自身の身体、次に梟谷の皆にどうぞ」
「…あのっ…なまえくん、怒ってる…?」
「…体調悪いのに黙ってるなんて此処に俺が居る意味はあるの?」
「そんな…!違っ…!」
「ーー雪絵ちゃんの体調の変化に気付いていたのに結果としては確りと見てやれて無かった事に対して自分自身にムカついてるのもある」
白福は、なまえの発する言葉の一つ一つに強く反応していくと同時に本格的にボーッ…と熱が籠り強く意識が朦朧としてきて、愛おしい彼に横抱きにされ安心した事もあり不安定な意識の中で、なまえに向けてポツリ…ポツリ…と言葉を落としていった。
「ーー私ね、なまえくんに会いたかったの…私が私自身の体調を無視してでも…どうしても貴方との時間を過ごしたかった…」
なまえは、定期的に会ってるのに?と不思議な表情をしながらも、白福の容態を第一に保健室まで足を急がせ保健室に辿り着けば、彼女をベッドに座らせ、冷やすシートやら水やら彼女自身が万が一の時に飲む為に準備しておいた常備薬をポケットから見つけては詳細を確認し、様々な準備や施しなる完璧なる模範解答な対応を取っていく。
「薬飲める?コレ、飲むと楽になるよ」
「……んぅ…今は飲めな…」
「ーー口腔内崩壊錠ね。あーんして舌出して」
「…えっ…?でも…っ」
「黙って従いな」
白福は、ぐわんぐわんしてきた頭を必死に堪えながら、それ以上にもうなまえを怒らせたくない、という気持ちが強くその気持ちで意識を保っており、熱でポーッとし顔を赤く染めながらなまえの言う通り口をあけ赤い舌をちろり、と出せば、舌の上に薬を1錠乗せ、白福の舌と錠剤を自身の親指と人差し指でくっ、と掴んで挟んでは、粘膜に擦り付ける様に擦り合わせた。
「ッ、んえっ…!?…苦ッ…」
「イイコ。ゴックン、できるよな?」
「…ん、はふ…ッぷ…んぐっ」
にちっ、にちゅ…との水音が響く中、若干の薬のニガさとなまえからの愛撫で白福はビクッ、と肩を跳ね上がらせるが、やはり意識は朦朧とするのでなまえのされるが儘になり、素直に身体を全てを委ねれば、なまえは「そう…上手。雪絵ちゃんはお利口さんだね」と指を舌から離し唾液に混じる薬をこくりと嚥下させたのを確認した後、額に汗で張り付いた髪の毛を逃してやりながら白福の頭を優しく撫でた。
「おやすみ」
「…なまえくん…あのね、好き…大好き…」
「…よすよす。体調悪いときは人恋しいけど今はもう寝なさい」
「…も…苦しいよ…いつも困らせてごめんなさい…なまえく…ん…」
「………?」
なまえに頭を撫でられた白福は、ぎゅぅっ、となまえに抱き着きスリスリ…と甘える様に身体を擦り寄せるが、なまえは彼女を宥める様に背中をぽんぽんと優しく撫でてやりベッドに静かに寝かせては、彼女の額を準備していたシートで優しく冷やしてやれば、白福は安心しきったかの様にゆっくりと目を瞑り、スゥ…スゥ…とした呼吸に変わっていったのだった。
ーーー
ーー
ー
「ーー雪絵、大丈夫?」
後に、白福の目が覚め気がついた頃には既に部活も終了した夕方であり、白福自身の体調と云えば熱はもうすっかり下がって気分諸共とても楽になっていた。
マネージャー業から部員へのフォロー、何から何まで行い且つ部活や仲間の経過の説明をしてくれた雀田に改めて丁寧に御礼を言い「あの…」とモジモジ…と恥ずかしそうにしていれば、雀田は悟った様に柔らかく微笑む。
「ふふ、みょうじくんならまだ後片付けしてるよ!他の奴ら達も雪絵の様子見に行きたい!って心配してたけど騒がしくなるから私がお断りしといた。でも!みょうじくんには後で雪絵の荷物持ってきてくれるように頼んでおいたから雪絵は此処で待っててね♡」
「あ、ありがとう…!ねぇ、かおり…あのね、なまえくん、私の事何か言ってた…?」
「えー?…さては彼となんかあったのかな~?」
「えっと!何にも無いけどっ…!私、途中から意識朦朧としてて記憶が途切れ途切れであんまり覚えてないの…。だからなまえくんに変な事言ってたら嫌だなって思って…!」
周りからは"雪絵、モテるのに発展の無い今のままなんて勿体ないよ~!次いこ、次!"等の応援、興味本位、呆れ、お節介…似た様な言葉は幾度と無く言われ続けてる。自分でも頭では理解しているが心では何時も想うのはなまえの事だけだった。
そんな雀田は何もかも知り得ていてそれでも白福の儚い恋の応援をしてくれて、偶に白福自身では行動に移せない事を雀田が背中を押してくれたり、何より純粋に応援してくれる事がとても心強く嬉しかった。
「気になるならみょうじくんに直接聞いてみたら?私、どさくさに紛れて愛の告白なんてしちゃってないよねー?なんて♪その雪絵の豊満なおっぱいをみょうじくんの腕に当てて問い詰めれば、流石にあのみょうじくんだって直ぐに聞きたいこと全部吐くでしょ♡」
「えっ!?ちょっとやめてよぉ…!大体、そんな事あるわけないじゃんっ…!バレちゃ駄目なのに万が一もしそんな事なまえくんに言ってたら恥ずかしくて合わす顔が無いよ…もー!今言われた事全部考えただけでも無理無理!」
白福の荷物を持って保健室に向かうなまえと保健室を出た雀田とすれ違い、果たして白福と二人きりの淡く甘い放課後を過ごす事になるのか?神のみぞ知る、な保健室の扉をなまえがノックするまで残り後数分ーー
(#赤葦くんの顔パターン気になる…!)
(#白福さんは体調不良)
(#性的、直接的表現⚠︎(弱))
(#♡や♪記号使用⚠︎)
ピピピッ……
先程から同じ行動を繰り返してはもう6度目になる。今度こそお願いします、と強く祈り計り終えた手元の体温計の数字を見ては「やっぱり駄目か…」との落胆と「認めたくない」「予定を断りたくない」と強く思いながら、じわじわじわっ…と自身の瞳から湧き出た水の膜の張りが溢れそうな程、複雑なる気持ちが強くなった。
「…ッ…どうしよう…」
僅かに震える手でスマホを握り闇路監督へ電話する前に、先ず先に各部員宛に文章での連絡を入れようと「おはよう!急に申し訳ないんだけど微熱があって参加難し」まで画面に打ち込みながら、本日の様な大切な日に限って体調管理が出来ない自分が悔しくて悲しい感情に蝕まれる。
実は昨晩から少し熱っぽかった。でも病は気から!と自身を鼓舞し早く床に入り、直ぐに眠ればこの程度な微熱ならば朝には下がるだろう、と縋る想いで過ごし然して現在に至る。
「……大丈夫。風邪の諸症状も無いしこれくらいの微熱なら…っ!」
結果、本日どうしても部活に参加したいと云う気持ちが何事にも勝り先程入力したスマホの連絡画面を全て消し、もしもの時に飲む為の常備薬を鞄に忍ばせて学園への支度の準備を再開した。
白福は熱に耐性が無かった。積極的に行動したりして身体に負担を掛けて無理をすると、微熱から高熱に変化させるには容易い体質であった為、普段であれば体育は見学したり部活は丸々休んだりしては、程度によるが場合により学園欠席も視野に入れていた。
では、普段と異なり少々強引な対応をしては此処まで頑なになる彼女の本日の大切な理由とはーー?
▷▶▷
「この間のお前らとの約束通り猫又先生の目ェ盗んでみょうじくん奪って来たから練習頑張れよー?」
「…今日1日梟谷に嫁入りしたみょうじ なまえデス。因みにこんな可愛い嫁が鬼嫁に化けるかはお前らの扱い次第なので宜しくね」
「ヘイヘイヘイなまえちゃん!待ってたぜ!…嫁ならおっぱい揉んで良い?」
「…よし、光太郎。後で校舎裏に来い。めちゃくちゃ可愛がってやる」
「すまん…なまえ、それどっちの意味?木兎と腐っても木兎を締め上げてもどっちに転んでも俺は恐怖で泣くぞ…」
「(ふふっ!なまえさんを梟谷の嫁にやっと迎え入れる事が出来た…!計画通り)」
「赤葦、顔怖いよ…顔…」
「~~まったくもう!ほんとウチの子らは…!」
闇路監督の声と共になまえの悪戯な微笑みが体育館に響渡れば、梟谷の皆は様々な返しでなまえを歓迎していた。其してこれが白福がどうしても休みたくなかった大切な理由でもある。
何せ梟谷がなまえを独占できるなんて、そんな機会は中々無いのだからーー
「雪っぺ!これも宜しく!」
「これとこれも良い?」
「雀田さん!ドリンクおなしゃす!」
「なまえー!頼む!」
無論、なまえを独占しているその分、普段より気分も練習に対しても熱量や気迫がある本日は目まぐるしく、当のなまえも普段の役割以上にスコアやボール出し等、出来ることは自ら練習に協力していた。
「はぁ…ッ…はぁ…」
練習が始まって2時間たった辺りだろうか?
白福の体調に段々と変化が訪れては自身でも理解出来る程に身体が熱くボーッとし目の前がボヤけ霞んで見え始めており、部活に参加したからにはきちんと仕事を遣り遂げる、と偽り隠し自身に気遣う事無く働き無茶をし続けた事が今の体調に繋がっていく。
実は先程の休憩時間の際になまえに話し掛けられ、僅かな変化を察知していたのであろう体調に関する気遣いを貰った。その時は未だ大した事無かったので「平気だよ?」と微笑みはぐらかしたのだが、上手く誤魔化していたつもりでも彼には何だかんだ御見通しであったのだろう。此の儘では、自身がなまえに対して抱いている気持ちも見透かされそうで、体調も不安定にあった所為もあるのか急に何だか不安になり、その場の忙しさも理由にして彼から直ぐに離れた。折角、なまえと話せる機会が産まれたのに…。
パッ、と離れる瞬間になまえから腕を捕まれては離れるのを一旦制止され「…水分補給は確りね。後、無理はしないでね?」となまえから手渡されたスポーツドリンクをギュッ…と胸に大切に抱き締めては、休憩時間に静かになまえを想うのだ。
「ーーちょっと良い?失礼します」
「なまえくん…?…んっ…!」
溜息と共にとうとう見兼ねたなまえが、白福に声を掛けて傍に駆け寄り、額、次に頬、首筋へと体温を調べる様に手の甲をあてれば、白福はつい身体がぴくん、と反応して仕舞い、なまえの手の流れの感触に敏感になりながら真っ赤に頬を染めらせる。
なまえの指先が自身の髪先に触れるだけでも体が熱くなる程、彼が好きで仕方ないのに。そんなに次から次へと触れられたら恥ずかしくてクラクラしそう…あれ…?何だか本当にクラクラしてきた…?
「何で言わないの?」
「…ほぇ…?」
「此の儘、俺を騙せると思った?」
なまえは普段とは異なる鋭い雰囲気で白福に視線を混じり合わせた後、闇路と木兎、雀田に機転の利く対応・説明した後、白福をお姫様の如く横抱きにして、体育館を出ていき保健室へと向かって行く。
「雪絵ちゃん、おいで」
「きゃっ……!」
白福は小さく短い驚いた声を出し、なまえのシャツをキュッ…と遠慮がちに握り身体を出来るだけ縮こませながら、なまえとの思いがけない密着に様々な要因が重なって心臓が飛び出そうである。
自身の脇腹や太腿に触れるなまえの大きな手と頼りたくなる逞しい腕が愛おしく、つい自身が女性として彼の腕に抱かれて愛される想像までもして仕舞えば、幸せで身体の中心がキュゥ…ッとなりながらも反面、もしなまえから愛されるたった1人の女の子がこの世に居るとするならば、その女の子が心底羨ましく胸が張り裂けそうな思いにも襲われた。
「なまえって女の子に甘いよなー。雪っぺに対して特にべた甘くない?」
「俺から見れば、なまえさんは木兎さんに対しても十分甘いと思います。それになまえさんも木兎さんに甘えていますよね。素直に羨ましいですけど」
「だから赤葦、顔怖いよ…顔。さっきから怖いパターンが違うけど後何種類あるの?」
「…でもさ、今さっき白福さんの体調の具合を心配してた時のなまえだって結構顔怖かったけど一体何故?」
「なまえは黙ってれば少女漫画に出てくるイケメン若頭だもんなー!まぁでも流石にあのなまえが雪っぺに怒ったりしないでしょ?ねー!かおりん?」
「…さぁ。どうでしょう?みょうじくんは女の子に優しいからね。でも、今回は雪絵もみょうじくんに叱られたら良いんじゃない?」
「?」
「あの…ごめんなさい」
「……謝る相手は俺じゃない。先ずは雪絵ちゃん自身の身体、次に梟谷の皆にどうぞ」
「…あのっ…なまえくん、怒ってる…?」
「…体調悪いのに黙ってるなんて此処に俺が居る意味はあるの?」
「そんな…!違っ…!」
「ーー雪絵ちゃんの体調の変化に気付いていたのに結果としては確りと見てやれて無かった事に対して自分自身にムカついてるのもある」
白福は、なまえの発する言葉の一つ一つに強く反応していくと同時に本格的にボーッ…と熱が籠り強く意識が朦朧としてきて、愛おしい彼に横抱きにされ安心した事もあり不安定な意識の中で、なまえに向けてポツリ…ポツリ…と言葉を落としていった。
「ーー私ね、なまえくんに会いたかったの…私が私自身の体調を無視してでも…どうしても貴方との時間を過ごしたかった…」
なまえは、定期的に会ってるのに?と不思議な表情をしながらも、白福の容態を第一に保健室まで足を急がせ保健室に辿り着けば、彼女をベッドに座らせ、冷やすシートやら水やら彼女自身が万が一の時に飲む為に準備しておいた常備薬をポケットから見つけては詳細を確認し、様々な準備や施しなる完璧なる模範解答な対応を取っていく。
「薬飲める?コレ、飲むと楽になるよ」
「……んぅ…今は飲めな…」
「ーー口腔内崩壊錠ね。あーんして舌出して」
「…えっ…?でも…っ」
「黙って従いな」
白福は、ぐわんぐわんしてきた頭を必死に堪えながら、それ以上にもうなまえを怒らせたくない、という気持ちが強くその気持ちで意識を保っており、熱でポーッとし顔を赤く染めながらなまえの言う通り口をあけ赤い舌をちろり、と出せば、舌の上に薬を1錠乗せ、白福の舌と錠剤を自身の親指と人差し指でくっ、と掴んで挟んでは、粘膜に擦り付ける様に擦り合わせた。
「ッ、んえっ…!?…苦ッ…」
「イイコ。ゴックン、できるよな?」
「…ん、はふ…ッぷ…んぐっ」
にちっ、にちゅ…との水音が響く中、若干の薬のニガさとなまえからの愛撫で白福はビクッ、と肩を跳ね上がらせるが、やはり意識は朦朧とするのでなまえのされるが儘になり、素直に身体を全てを委ねれば、なまえは「そう…上手。雪絵ちゃんはお利口さんだね」と指を舌から離し唾液に混じる薬をこくりと嚥下させたのを確認した後、額に汗で張り付いた髪の毛を逃してやりながら白福の頭を優しく撫でた。
「おやすみ」
「…なまえくん…あのね、好き…大好き…」
「…よすよす。体調悪いときは人恋しいけど今はもう寝なさい」
「…も…苦しいよ…いつも困らせてごめんなさい…なまえく…ん…」
「………?」
なまえに頭を撫でられた白福は、ぎゅぅっ、となまえに抱き着きスリスリ…と甘える様に身体を擦り寄せるが、なまえは彼女を宥める様に背中をぽんぽんと優しく撫でてやりベッドに静かに寝かせては、彼女の額を準備していたシートで優しく冷やしてやれば、白福は安心しきったかの様にゆっくりと目を瞑り、スゥ…スゥ…とした呼吸に変わっていったのだった。
ーーー
ーー
ー
「ーー雪絵、大丈夫?」
後に、白福の目が覚め気がついた頃には既に部活も終了した夕方であり、白福自身の体調と云えば熱はもうすっかり下がって気分諸共とても楽になっていた。
マネージャー業から部員へのフォロー、何から何まで行い且つ部活や仲間の経過の説明をしてくれた雀田に改めて丁寧に御礼を言い「あの…」とモジモジ…と恥ずかしそうにしていれば、雀田は悟った様に柔らかく微笑む。
「ふふ、みょうじくんならまだ後片付けしてるよ!他の奴ら達も雪絵の様子見に行きたい!って心配してたけど騒がしくなるから私がお断りしといた。でも!みょうじくんには後で雪絵の荷物持ってきてくれるように頼んでおいたから雪絵は此処で待っててね♡」
「あ、ありがとう…!ねぇ、かおり…あのね、なまえくん、私の事何か言ってた…?」
「えー?…さては彼となんかあったのかな~?」
「えっと!何にも無いけどっ…!私、途中から意識朦朧としてて記憶が途切れ途切れであんまり覚えてないの…。だからなまえくんに変な事言ってたら嫌だなって思って…!」
周りからは"雪絵、モテるのに発展の無い今のままなんて勿体ないよ~!次いこ、次!"等の応援、興味本位、呆れ、お節介…似た様な言葉は幾度と無く言われ続けてる。自分でも頭では理解しているが心では何時も想うのはなまえの事だけだった。
そんな雀田は何もかも知り得ていてそれでも白福の儚い恋の応援をしてくれて、偶に白福自身では行動に移せない事を雀田が背中を押してくれたり、何より純粋に応援してくれる事がとても心強く嬉しかった。
「気になるならみょうじくんに直接聞いてみたら?私、どさくさに紛れて愛の告白なんてしちゃってないよねー?なんて♪その雪絵の豊満なおっぱいをみょうじくんの腕に当てて問い詰めれば、流石にあのみょうじくんだって直ぐに聞きたいこと全部吐くでしょ♡」
「えっ!?ちょっとやめてよぉ…!大体、そんな事あるわけないじゃんっ…!バレちゃ駄目なのに万が一もしそんな事なまえくんに言ってたら恥ずかしくて合わす顔が無いよ…もー!今言われた事全部考えただけでも無理無理!」
白福の荷物を持って保健室に向かうなまえと保健室を出た雀田とすれ違い、果たして白福と二人きりの淡く甘い放課後を過ごす事になるのか?神のみぞ知る、な保健室の扉をなまえがノックするまで残り後数分ーー