コ ー プ ス・リ バ イ バ ー
n a m e
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ーーっ、ヒック…ぐずっ……!」
「大丈夫…?こんな事言いたくないけど、もう次行こうよ次!泣いてても仕方ないって!」
「そうそう!確かに及川くん以上に良い男なんて中々居ないだろうけどサ…」
「ーー煩いっ!…許せない…こうなったのも全部っ、あの女の所為よ…っ」
「…あの女?え、まさかみょうじさん?いやいや関係ないじゃん、あの子が及川くんを奪ったわけでもあるまいし。え?うわぁ…まさか…もしかして最近、みょうじさんの脚に絆創膏貼ってあるの実はアンタの所為だったりする…?前までは絆創膏なんて無かったのに最近あれ?おかしいなって思ってたんだよね…いやムカつくけど脚めっちゃ綺麗だからさー、あの肌には絆創膏目立つじゃん?男子は直ぐ胸に目が行くんだろうけどー」
「なによ…!一方的にフラれた私の方が心が痛いわよ…っ、あの女なんか足引っ掛けてちょっと転んでるだけじゃない…!」
「ーーちょっと待ってよ。誰にもバレない様にわざとみょうじさんを転がせてるわけ…?ーーこれ以上はやめな。流石にマジで無いわ」
◇◇◇
「ーーあ、高伸くん!こんにちは。部活帰り?」
「!(コクリ)なまえちゃんは…?」
「私は買い物してたの…ぁっ…ちょっと待ってね?すぐに鞄にしまっちゃうね」
なまえは、精神的に少しだけ不安定だった。然しながら自身でも理由はきちんと理解している。スマホの生理周期アプリを見ればそろそろ女の子の日であった為、やっぱり…と沈む。なまえは女の子の日は重い方だった。薬品を飲んで抑えたりしているのだが、それでも憂鬱でもある。そして痛み止めの薬品や生理用品のストックも残り少なくなって居た為、ドラッグストアで買い物を終えて扉を出た瞬間に青根と会ったわけだ。
「(…色付き袋に入れて貰ったから何だか悟られそうで急いで隠したけど…良かった…バレてないみたい。はじめちゃんは口に出さないけど何となく察してくれて気遣いが温かいしお母さんみたいな人だから平気なんだけどな…高伸くんに生理の事は悟られたくないな…。あれ…?でもそしたら徹くんは…?ひぅっ…何だか別の意味で恥ずかしいかも…!?)」
先日の岩泉や及川の誕生日会の時には見事に生理を交わしたので万全な体調で迎えられる事が出来、そこは大いに感謝ではある。なんたって彼らの誕生日は毎年気合いを入れて必ずたくさんの料理やケーキを作り、精一杯の真心を込めて贈っていた。なまえにとっては1年の中で特に大切な日であるのだから。そして勿論、今年も大満足のいく誕生日会になったのだ。なまえにとって岩泉や及川は特別な人であるのは間違い無い。
ーーそして共に、及川や岩泉、青根に対しての感情に対してもふと考えてみる。なまえの周囲に居る親しい異性に対して不思議と個々に抱く思いが微妙に異なる様な感覚に襲われた。何故だろう?皆、良くしてくれるしなまえも好意的である。でも人により好意の種類が異なる気がするーー?あれ…?何で…?変なの…。
1人でぽぽぽ、となまえの頬が赤く染まった。
「……?」
「あ、ううん。なんでもない!良かったら途中まで一緒に帰ろう…?」
「(頷)ーーアッチで待ち合わせしてる。なまえちゃんも行こう」
「うん…?(誰とかな?)あっ、そしたら…あのね、これ半分こして一緒に食べながら待たない?」
「ーー!」
「ふふっ、今日暑かったでしょ?だからお外のベンチに座って食べようかな、って思って買ったの。ーーあのっ、おじ様には内緒にしてね…?おじ様から私の母に伝わって知られたら叱られちゃうっ…」
「ふっ」
「あっ、子供っぽいって思ってるでしょ?高伸くんと私の秘密だからね…?」
「(キュゥン…)ありがとう…」
なまえは、先程購入したチューブ型氷菓をパキッと半分に分けて青根に1本渡し、2人仲良くほのぼのとアイスを食べながら待つ事にした。2人の間にはほわほわお花ムードが舞うのだ。
ーーー
ーー
ー
「あっははは!二口御自慢の髪の毛からのふんわり良い香りが見事台無しだねー。制汗剤臭いわ!」
「ッはー!?あんなにハードな試合したんだから当たり前だろ。あちー…早くシャワー浴びてぇ…」
伊達工マネージャーの滑津と二口は共に帰っており、先に行った青根と合流する為、待ち合わせ場所へと向かっていく。
「そういえば、青城のみょうじさんとはあれからどうなったの?」
「………」
「(うっわめっちゃわかりやす…!)小さくてお人形さん…天使…!兎に角この間会ったきりだけど、もぉ凄く可愛かったなぁー…!私がもし連絡先を知っているなら毎日執拗く連絡しちゃうかも…!お近付きになりたいもん…!」
「(俺は必ず毎日メッセージなり電話なりしてますけど)……ハッ」
「(コイツ今心の中で絶対マウントとってやがる…!)」
二口となまえの関係も徐々に変化が見え始めており、メッセージや電話、時間が合えば数時間でも極力、頻繁に2人で会うようになった。それは高校生らしくショッピングだったりお茶したり互いに気になった映画に行ったり、そしてなまえに対してバレーボールの基本的な知識や指導、ストレッチや体力作りに(ムラムラしながら自分との戦いも含む)付き合ったり…と、以前の二口なら有り得ない行動ではあったのだが、なまえと会う為なら別に苦では無かったし何より自身もとても楽しかった。きっと今までなまえの様な女の子と接する機会なんて皆無であってとても新鮮なんだ、と思う。俺に直々に教わるなんて貴重なんだぞ、なまえには感謝して貰いたい、と照れ隠しながら頬を染めて本人に伝えた事だってある。その時に笑っていたなまえの顔はキラキラしていてとても綺麗だった。
「あ、噂をすれば目の前から青葉城西…の及川さん…!?」
滑津が慌てながら「凄い…!ホンモノだ…!」と目をキラキラさせながら二口に話し掛けるのだが、二口は先日のなまえとの電話の会話を思い出し「青葉城西にいる親密な幼なじみ×2(男)」のキーワードが頭に巡り何故だか心中穏やかでは無く、青葉城西のバレー部と聞けばつい自身の目が鋭くなって仕舞う。そして互いの距離が短くなるにつれ、向こうからも同じ性質の強い殺気に似た鋭さを痛い程感じた。
「……あれ?君たち伊達工のバレー部?」
「あ!はいっ!ハジメマシテ!私達まだ1年生でしてっ…青葉城西の及川さんと会話出来るなんて…恐れ多いですっ…!」
「(ピクリ)へー1年生なんだ。マネちゃん可愛いねー!頑張ってね☆」
「あああありがとうございます…!(ワァオめちゃくちゃ華やか~)」
「ーーで、そっちの君は?因みにポジション、今スグ教えてくれる?」
「…先輩、なんスか急に「さっさと聞かれた事に答えろ」んなっ…!?(コイツ…!)」
滑津との対応とは全く異なって、二口に対する及川の対応は、敵対心や不快感に似た感情が混じり合う雰囲気を醸し出しながら至近距離に近付いて来たので、二口はついザッ、と1歩下がった。
ーークッソ…!此処で怯みたくない…!
「…あ、ゴメーン☆怖がらないで?実はサ、俺の大切な子がお宅の1年生、WSの子に随分とお世話になってるって耳に入っちゃったから…一応、その子に挨拶したいなって思ってね。安心してよーキミじゃ無いなら大人しく帰してあげるからさー。…で?さっさと教えてよ」
「ーー!?」
「ーー及川?何やってんだよ。行くぞ」
「…あらま、命拾いしたねー1年生クン?」
二口は及川から数秒間の間、鋭いナイフに似た張り詰めた空気を喉元に突きつけられるが、タイミング良く及川に話し掛けて来た人物によって遮られる事になった。確かこの人もWSだったよな、と警戒音と苛立ちでガンガン鳴り響く脳を抱えながらも、青葉城西の双方を強く睨む。
「ん?伊達工か?ーーまさか及川、他校にちょっかい出してねェだろうな?」
「やだなー人聞き悪い。…ちょっとお話してただけだよ」
「ーーあの件があるからって、伊達工に見境無く喧嘩売るのはヤメロよ?」
「……ハイハーイ」
「あわわっ!ハジメマシテ!あのっ…私達1年生で…!2年の岩泉さんですよね!?及川さんとの息ぴったりなコンビネーションにいつも感動しています…!」
「ははっ、サンキューな。コイツとは腐れ縁だから」
「岩ちゃん、そこは親密な幼なじみって言ってよね」
「気色悪ィ事言ってんなよ。そこの1年坊主もーー!?ふふっ、威勢がいいじゃねぇか。そう睨むな睨むな」
「コレハコレハ…狂犬ちゃんと相似かな?ーー何?何処の学校も1年生は揃いに揃って生意気なのばっかりってワケ?」
「ーーはっ!?二口あんた先輩になんて失礼な対応とってんのよ…っ!すみませんこの子ったらウチの先輩達にも本当に生意気で…!失礼しました!」
あまりにも失礼な二口の態度に滑津はいたたまれなくなり、二口の首根っこ掴んでは及川と岩泉に挨拶してその場から早急に離れた。
「ーーチッ」
滑津が隣で怒りまくってるのにも目をくれず、二口は脳内でバラけたパズルのピースをカチリ、カチリと当て嵌めて、あるひとつの可能性を見出して仕舞いーーそれは心底、自身にとって気に食わない出来事でもあった。
「ーーちょっと、さっきから無視して私の話聞いてんの!?」
「あーーーハイハイ聞いてるよ煩ェな!」
「何ですって!?さっきの雰囲気、何があったか知らないけどアンタの生意気な態度の所為で、私ら伊達工1年生まで青葉城西の先輩達に目付けられたらどうしてくれんのよ!この馬鹿っ!」
「痛"…!?滑津テメェッーー加減しろよこのっ…!」
「口の悪さや目付きの悪さ、性格の悪さを直せ!」
「~~ッ、だったらテメェももっと女らしくしろ、ばーか!」
「きゃぁぁっ!アンタ乙女の髪の毛になんてこと…!?ーーあ!青根!と…ひゃっ!?あわわっ、みょうじさんっ…!なんで!」
「ーー!?」
青根との待ち合わせ場所まであと僅か。その場で滑津の怒りが爆発して二口の頬を思い切り引っ張り、二口も負けずに滑津の前髪をグシャグシャッと撫で回す。「は、恥ずかしい所を見られちゃった…!全部アンタの所為だ…!」と手で顔を隠す滑津の口から思い掛け無い名前が出てーー…二口は直ぐに青根となまえの傍に駆け寄っていく。
「(ーーあれ…?)」
傍から見れば物凄く仲良い2人の関わりを青根となまえはバッチリと確認しており、なまえはそんな情景を目の当たりにして、チクン…と胸が痛くなった。
そんななまえを見た青根は、しゅん…としている様に見えて心配し気遣いなる言葉を掛けるが、ふるふる…と顔を横に小さく振る。が然し…頬を染めて切なげな表情は変わらない。
「ーーなまえ、来てたのかよ。言ってくれればーー…ッ」
次に傍に駆け寄った二口から声を掛けられて、なまえは無意識にキュッ…と二口のお腹辺りのシャツを小さく掴みながら頬を染め、切なげな表情を向け自然と上目遣いになり見つめた。
「んンっ…!?」
なまえから見上げられては初めて魅せられた彼女の魅力的な表情に、二口はドクンッ、と心臓の強い高鳴りが鳴り響き、彼女の甘く潤う瞳に一瞬呼吸の仕方を忘れては言葉を完璧に失う。
「ーーなまえちゃん?」
青根の声にハッと我に返ったなまえは、パッ、と二口から手を離しては直ぐに2人に謝る。続いてやってきた滑津にもふわり、と彼女特有の甘く柔らかい雰囲気できちんと挨拶するも、なまえは「あの…私、そろそろ…」とその場から離れる事にした。
「ーー!?」
「ちょっ…何っ…なまえ、待て…!」
「そんな!せっかく会えたのにもう…!?ーーまたアンタがみょうじさんに失礼な事やらかしたんじゃ無いでしょうね!?」
「~~テメェはさっきから何なんだ!」
違うよ、と胸の前で両手の掌を小さく翳す仕草をするなまえだったが、私の事は気にしないでね?今日はありがとう、と言いながら、ぺこり、ときちんと挨拶しては、3人の前から今度こそ離れていって仕舞う。
「なまえと今まで何してたんだよ青根!」
「…なまえちゃんと俺の秘密…」
「(ブチッ)ンなもん俺の前で許されるわけねぇだろ?無効だよ!」
「…一緒にアイス食べてただけ」
「ーーなまえ追っかけるから先帰っといて」
ワタワタと心配する青根にとても残念がる滑津とその場で別れ、先程のなまえの表情に何かあったのかと心配し混濁な感情に襲われた二口は、急いでなまえを追っていった。
「あらら~!すっかり彼女にお熱ですなぁ、二口くんは♪」
「ーーー……」
「大丈夫…?こんな事言いたくないけど、もう次行こうよ次!泣いてても仕方ないって!」
「そうそう!確かに及川くん以上に良い男なんて中々居ないだろうけどサ…」
「ーー煩いっ!…許せない…こうなったのも全部っ、あの女の所為よ…っ」
「…あの女?え、まさかみょうじさん?いやいや関係ないじゃん、あの子が及川くんを奪ったわけでもあるまいし。え?うわぁ…まさか…もしかして最近、みょうじさんの脚に絆創膏貼ってあるの実はアンタの所為だったりする…?前までは絆創膏なんて無かったのに最近あれ?おかしいなって思ってたんだよね…いやムカつくけど脚めっちゃ綺麗だからさー、あの肌には絆創膏目立つじゃん?男子は直ぐ胸に目が行くんだろうけどー」
「なによ…!一方的にフラれた私の方が心が痛いわよ…っ、あの女なんか足引っ掛けてちょっと転んでるだけじゃない…!」
「ーーちょっと待ってよ。誰にもバレない様にわざとみょうじさんを転がせてるわけ…?ーーこれ以上はやめな。流石にマジで無いわ」
◇◇◇
「ーーあ、高伸くん!こんにちは。部活帰り?」
「!(コクリ)なまえちゃんは…?」
「私は買い物してたの…ぁっ…ちょっと待ってね?すぐに鞄にしまっちゃうね」
なまえは、精神的に少しだけ不安定だった。然しながら自身でも理由はきちんと理解している。スマホの生理周期アプリを見ればそろそろ女の子の日であった為、やっぱり…と沈む。なまえは女の子の日は重い方だった。薬品を飲んで抑えたりしているのだが、それでも憂鬱でもある。そして痛み止めの薬品や生理用品のストックも残り少なくなって居た為、ドラッグストアで買い物を終えて扉を出た瞬間に青根と会ったわけだ。
「(…色付き袋に入れて貰ったから何だか悟られそうで急いで隠したけど…良かった…バレてないみたい。はじめちゃんは口に出さないけど何となく察してくれて気遣いが温かいしお母さんみたいな人だから平気なんだけどな…高伸くんに生理の事は悟られたくないな…。あれ…?でもそしたら徹くんは…?ひぅっ…何だか別の意味で恥ずかしいかも…!?)」
先日の岩泉や及川の誕生日会の時には見事に生理を交わしたので万全な体調で迎えられる事が出来、そこは大いに感謝ではある。なんたって彼らの誕生日は毎年気合いを入れて必ずたくさんの料理やケーキを作り、精一杯の真心を込めて贈っていた。なまえにとっては1年の中で特に大切な日であるのだから。そして勿論、今年も大満足のいく誕生日会になったのだ。なまえにとって岩泉や及川は特別な人であるのは間違い無い。
ーーそして共に、及川や岩泉、青根に対しての感情に対してもふと考えてみる。なまえの周囲に居る親しい異性に対して不思議と個々に抱く思いが微妙に異なる様な感覚に襲われた。何故だろう?皆、良くしてくれるしなまえも好意的である。でも人により好意の種類が異なる気がするーー?あれ…?何で…?変なの…。
1人でぽぽぽ、となまえの頬が赤く染まった。
「……?」
「あ、ううん。なんでもない!良かったら途中まで一緒に帰ろう…?」
「(頷)ーーアッチで待ち合わせしてる。なまえちゃんも行こう」
「うん…?(誰とかな?)あっ、そしたら…あのね、これ半分こして一緒に食べながら待たない?」
「ーー!」
「ふふっ、今日暑かったでしょ?だからお外のベンチに座って食べようかな、って思って買ったの。ーーあのっ、おじ様には内緒にしてね…?おじ様から私の母に伝わって知られたら叱られちゃうっ…」
「ふっ」
「あっ、子供っぽいって思ってるでしょ?高伸くんと私の秘密だからね…?」
「(キュゥン…)ありがとう…」
なまえは、先程購入したチューブ型氷菓をパキッと半分に分けて青根に1本渡し、2人仲良くほのぼのとアイスを食べながら待つ事にした。2人の間にはほわほわお花ムードが舞うのだ。
ーーー
ーー
ー
「あっははは!二口御自慢の髪の毛からのふんわり良い香りが見事台無しだねー。制汗剤臭いわ!」
「ッはー!?あんなにハードな試合したんだから当たり前だろ。あちー…早くシャワー浴びてぇ…」
伊達工マネージャーの滑津と二口は共に帰っており、先に行った青根と合流する為、待ち合わせ場所へと向かっていく。
「そういえば、青城のみょうじさんとはあれからどうなったの?」
「………」
「(うっわめっちゃわかりやす…!)小さくてお人形さん…天使…!兎に角この間会ったきりだけど、もぉ凄く可愛かったなぁー…!私がもし連絡先を知っているなら毎日執拗く連絡しちゃうかも…!お近付きになりたいもん…!」
「(俺は必ず毎日メッセージなり電話なりしてますけど)……ハッ」
「(コイツ今心の中で絶対マウントとってやがる…!)」
二口となまえの関係も徐々に変化が見え始めており、メッセージや電話、時間が合えば数時間でも極力、頻繁に2人で会うようになった。それは高校生らしくショッピングだったりお茶したり互いに気になった映画に行ったり、そしてなまえに対してバレーボールの基本的な知識や指導、ストレッチや体力作りに(ムラムラしながら自分との戦いも含む)付き合ったり…と、以前の二口なら有り得ない行動ではあったのだが、なまえと会う為なら別に苦では無かったし何より自身もとても楽しかった。きっと今までなまえの様な女の子と接する機会なんて皆無であってとても新鮮なんだ、と思う。俺に直々に教わるなんて貴重なんだぞ、なまえには感謝して貰いたい、と照れ隠しながら頬を染めて本人に伝えた事だってある。その時に笑っていたなまえの顔はキラキラしていてとても綺麗だった。
「あ、噂をすれば目の前から青葉城西…の及川さん…!?」
滑津が慌てながら「凄い…!ホンモノだ…!」と目をキラキラさせながら二口に話し掛けるのだが、二口は先日のなまえとの電話の会話を思い出し「青葉城西にいる親密な幼なじみ×2(男)」のキーワードが頭に巡り何故だか心中穏やかでは無く、青葉城西のバレー部と聞けばつい自身の目が鋭くなって仕舞う。そして互いの距離が短くなるにつれ、向こうからも同じ性質の強い殺気に似た鋭さを痛い程感じた。
「……あれ?君たち伊達工のバレー部?」
「あ!はいっ!ハジメマシテ!私達まだ1年生でしてっ…青葉城西の及川さんと会話出来るなんて…恐れ多いですっ…!」
「(ピクリ)へー1年生なんだ。マネちゃん可愛いねー!頑張ってね☆」
「あああありがとうございます…!(ワァオめちゃくちゃ華やか~)」
「ーーで、そっちの君は?因みにポジション、今スグ教えてくれる?」
「…先輩、なんスか急に「さっさと聞かれた事に答えろ」んなっ…!?(コイツ…!)」
滑津との対応とは全く異なって、二口に対する及川の対応は、敵対心や不快感に似た感情が混じり合う雰囲気を醸し出しながら至近距離に近付いて来たので、二口はついザッ、と1歩下がった。
ーークッソ…!此処で怯みたくない…!
「…あ、ゴメーン☆怖がらないで?実はサ、俺の大切な子がお宅の1年生、WSの子に随分とお世話になってるって耳に入っちゃったから…一応、その子に挨拶したいなって思ってね。安心してよーキミじゃ無いなら大人しく帰してあげるからさー。…で?さっさと教えてよ」
「ーー!?」
「ーー及川?何やってんだよ。行くぞ」
「…あらま、命拾いしたねー1年生クン?」
二口は及川から数秒間の間、鋭いナイフに似た張り詰めた空気を喉元に突きつけられるが、タイミング良く及川に話し掛けて来た人物によって遮られる事になった。確かこの人もWSだったよな、と警戒音と苛立ちでガンガン鳴り響く脳を抱えながらも、青葉城西の双方を強く睨む。
「ん?伊達工か?ーーまさか及川、他校にちょっかい出してねェだろうな?」
「やだなー人聞き悪い。…ちょっとお話してただけだよ」
「ーーあの件があるからって、伊達工に見境無く喧嘩売るのはヤメロよ?」
「……ハイハーイ」
「あわわっ!ハジメマシテ!あのっ…私達1年生で…!2年の岩泉さんですよね!?及川さんとの息ぴったりなコンビネーションにいつも感動しています…!」
「ははっ、サンキューな。コイツとは腐れ縁だから」
「岩ちゃん、そこは親密な幼なじみって言ってよね」
「気色悪ィ事言ってんなよ。そこの1年坊主もーー!?ふふっ、威勢がいいじゃねぇか。そう睨むな睨むな」
「コレハコレハ…狂犬ちゃんと相似かな?ーー何?何処の学校も1年生は揃いに揃って生意気なのばっかりってワケ?」
「ーーはっ!?二口あんた先輩になんて失礼な対応とってんのよ…っ!すみませんこの子ったらウチの先輩達にも本当に生意気で…!失礼しました!」
あまりにも失礼な二口の態度に滑津はいたたまれなくなり、二口の首根っこ掴んでは及川と岩泉に挨拶してその場から早急に離れた。
「ーーチッ」
滑津が隣で怒りまくってるのにも目をくれず、二口は脳内でバラけたパズルのピースをカチリ、カチリと当て嵌めて、あるひとつの可能性を見出して仕舞いーーそれは心底、自身にとって気に食わない出来事でもあった。
「ーーちょっと、さっきから無視して私の話聞いてんの!?」
「あーーーハイハイ聞いてるよ煩ェな!」
「何ですって!?さっきの雰囲気、何があったか知らないけどアンタの生意気な態度の所為で、私ら伊達工1年生まで青葉城西の先輩達に目付けられたらどうしてくれんのよ!この馬鹿っ!」
「痛"…!?滑津テメェッーー加減しろよこのっ…!」
「口の悪さや目付きの悪さ、性格の悪さを直せ!」
「~~ッ、だったらテメェももっと女らしくしろ、ばーか!」
「きゃぁぁっ!アンタ乙女の髪の毛になんてこと…!?ーーあ!青根!と…ひゃっ!?あわわっ、みょうじさんっ…!なんで!」
「ーー!?」
青根との待ち合わせ場所まであと僅か。その場で滑津の怒りが爆発して二口の頬を思い切り引っ張り、二口も負けずに滑津の前髪をグシャグシャッと撫で回す。「は、恥ずかしい所を見られちゃった…!全部アンタの所為だ…!」と手で顔を隠す滑津の口から思い掛け無い名前が出てーー…二口は直ぐに青根となまえの傍に駆け寄っていく。
「(ーーあれ…?)」
傍から見れば物凄く仲良い2人の関わりを青根となまえはバッチリと確認しており、なまえはそんな情景を目の当たりにして、チクン…と胸が痛くなった。
そんななまえを見た青根は、しゅん…としている様に見えて心配し気遣いなる言葉を掛けるが、ふるふる…と顔を横に小さく振る。が然し…頬を染めて切なげな表情は変わらない。
「ーーなまえ、来てたのかよ。言ってくれればーー…ッ」
次に傍に駆け寄った二口から声を掛けられて、なまえは無意識にキュッ…と二口のお腹辺りのシャツを小さく掴みながら頬を染め、切なげな表情を向け自然と上目遣いになり見つめた。
「んンっ…!?」
なまえから見上げられては初めて魅せられた彼女の魅力的な表情に、二口はドクンッ、と心臓の強い高鳴りが鳴り響き、彼女の甘く潤う瞳に一瞬呼吸の仕方を忘れては言葉を完璧に失う。
「ーーなまえちゃん?」
青根の声にハッと我に返ったなまえは、パッ、と二口から手を離しては直ぐに2人に謝る。続いてやってきた滑津にもふわり、と彼女特有の甘く柔らかい雰囲気できちんと挨拶するも、なまえは「あの…私、そろそろ…」とその場から離れる事にした。
「ーー!?」
「ちょっ…何っ…なまえ、待て…!」
「そんな!せっかく会えたのにもう…!?ーーまたアンタがみょうじさんに失礼な事やらかしたんじゃ無いでしょうね!?」
「~~テメェはさっきから何なんだ!」
違うよ、と胸の前で両手の掌を小さく翳す仕草をするなまえだったが、私の事は気にしないでね?今日はありがとう、と言いながら、ぺこり、ときちんと挨拶しては、3人の前から今度こそ離れていって仕舞う。
「なまえと今まで何してたんだよ青根!」
「…なまえちゃんと俺の秘密…」
「(ブチッ)ンなもん俺の前で許されるわけねぇだろ?無効だよ!」
「…一緒にアイス食べてただけ」
「ーーなまえ追っかけるから先帰っといて」
ワタワタと心配する青根にとても残念がる滑津とその場で別れ、先程のなまえの表情に何かあったのかと心配し混濁な感情に襲われた二口は、急いでなまえを追っていった。
「あらら~!すっかり彼女にお熱ですなぁ、二口くんは♪」
「ーーー……」