涸 沢 之 蛇 / 白( 鳥 )刃 踏 む
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(#ほんの少しの嫉み)
(#八つ当たり)
(#社会勉強)
(#これは夢小説です!⚠︎)
素質がある、努力した、といっても必ずしも成功、勝利する訳では無い。
其の現実は、痛い程身に染みて理解しているからこそ自身が出来る事を着実に積み重ねて過ごしてきたつもりではいる。
今は只、尊敬する先輩にボールをあげる事が出来る立ち位置を掴んだ現実に嬉しく思っている。反面、離して失うなんてなるものか、との焦りも生じるわけだ。
ーーだからその為には、周囲とは異なる条件で入学した自分は更に別の努力を怠らない様にしなければならないのだから。
店内に入る為にバサッ、と傘を降ろし一時的に畳むと雫がポタポタ…と手にも纏わりついて鬱陶しさに苛立ち、つい舌打ちをしながらザァザァ、と一日中降り続く雨を窓越しに軽く睨んだ。
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
「あ、はい」
店員から声を掛けられ店内へと促されれば、珈琲と軽食を頼んで、先程、本屋へ立ち寄った際に新しく購入した参考書を開き勉強に励む。
此処のカフェは好きだった。人気店なのでいつも人で溢れかえって居るのだが、今日は雨のお陰なのか…それとも何かの前触れか、店内は比較的空いていた。取り敢えず、先程の雨に対する行為に謝罪した方が良いのか?
ーーー
ーー
15分程過ぎた頃、高級黒スーツのビジネスマンと超有名校の制服を着た男が入店して来て、俺が今座る一番端奥側にある死角テーブル席の向かいのテーブル席へと座れば、何故かササッと身を潜めてしまい、あれ?何故、俺が見つからないようにコソコソしなきゃならないの?と心内で強い舌打ちをする。
ーー制服を着た男は見覚えがある。勿論、向こうはきっと俺の事なんて興味も無ければ知らないんだろうけど。何故なら彼…みょうじさんは、各バレー大会での医療サポートスタッフをしていて現地で見掛けるし、聞けばあの誰もが知るみょうじの人間らしいし。其れにバレーもしていないのにも拘わらず鷲匠監督の周りをチョロチョロするのを許されて、牛島さんにも手出ししようとしているから何なんだコイツ?とは思う。でも、あの鷲匠監督からお気に召される異例人間だから、詳しくは知らないけど完璧すぎて人間の皮を被った妖怪なんじゃねぇの?かとも思う。兎に角、この人は薄気味悪い。
別に盗み聞きするつもりは無いが、店内のBGMも落ち着いている曲のセレクトな為、どうしても後ろ席(こっそり座る位置を変えた現在、パーテーションと椅子の背もたれ越しに、俺とみょうじさんが背合わせしている状態)の会話が耳に入ってしまう…。思えばあの学校の人間ってどんな人間なのだろう?今、俺がこうして必死に解いてる問題集なんて朝飯前なんだろうな。やっぱり悪いけど腹立つ。軽く苛立ちながら手元のシャーペンを走らせては、勿論止める気も無いので勉強も捗らせた。
「ーー坊ちゃ「なまえ、ね」大変失礼しました…なまえ様「なまえ、ね」いえ、それは流石に…ご了承願います。…お食事は此方で本当に宜しかったのですか?今からでもいつもの御用達の場所を…」
「結構です。」
お待たせしました、の声と共に、女子ウケしそうなきらきらふわふわ生クリームたっぷりのパンケーキがコトッ、とテーブルに置かれれば、とても意外ではあったが、みょうじさんはケーキを運んできた店員に「有難う御座います。」なんて丁寧に御礼を言ってるもんだから、きちんとしている事は何となく見て取れた…なーんだ、ボンクラボンボンだったらウケるのに。何なんだよ、あの女性店員のぽぉっ、とした顔は。それと先程、注文時にパンケーキ頼んでたからメニューでどんなもんか確認してみたけど、この人こんなん食うわけ…?うっぷ…
ーーー
ーー
ー
「ーーでは、この症例からなまえ様の見解等含む、先方が希望するこの全ての事項に対する報告書を一週間以内に具体的且つ簡潔に纏めておいて下さい。お忙しいとは存じますが、必ず」
「…もし貴方が、パンケーキもきゅもきゅ食ってる時に世に云うセンシティブな写真添付資料を渡されたらどう?」
「ーー私なら先ずそのような大量の生クリームを食す時点で確実に吐き気を催すでしょうが…コホン。なまえ様なら日常茶飯事で御座いましょう?」
「…これでも御行儀を気にしてるんだけど。食事は感謝しながら丁寧に頂かないとね?」
「何を仰いますか。何事にも時と場合は御座いますし、目の前の人命を天秤に掛ければ言わずもがな、でしょう?では万が一、未来の医療を担うなまえ様に対して苦情等と言う不届き者が居るのならばーー」
「おりょ、おっかないねぇ」
おいおい、こんな場所で物騒な話か…?と内心焦りつつも何処か楽しみがら聞き耳を立て問題集を解いてる。何となくであり且つ自身の見解にはなるが、みょうじさんトコの系列か関連か何かの病院関係の書類の話らしい。ーー医療サポートスタッフといい、将来、医師にでもなるつもりなのだろうか?
こんな似非スマイルなイケメン医者なんてマジで胡散臭ぇ…なんて、今の黒スーツの秘書だかなんかに言ったら俺、どうなるんだろう?
気付けば問題集を解く手が止まっていて其のシャーペンを持つ手の甲でふふっ、とつい口が緩まるのを隠した。
そんな最中、黒スーツの男の電話が鳴りわざわざみょうじさんに許可を得てから通話、仕事関係の急用との事で席を立ち去っていった。
あぁ、そうか。今の俺の気持ちの正体が何だかわかった。俺はこの妖怪の尻尾、若しくは産み出した元凶である組織の…要は何らかの弱味を少しでも掴めばーー
「ーーみょうじって実は物騒なのかも、あわよくばイイネタ引き摺り出して揺さぶり掛けれるかな、なんて思った?白布賢二郎クン」
「~~!?」
「残念だけど潔白です」
パーテーションをトントン、と指で軽く叩き、俺の方を振り向き覗くみょうじさんの顔に、流石の俺もヒュッ…と息を飲み込んだ。…この人、最初から俺が居る事に気付いてやがった…!
「…みょうじさん…俺の事、ご存知だったんデスネ…てっきり眼中に無いのかと思ってました」
「俺の事なんだと思ってるの?」
「其の儘の意味です。興味無い者は虫螻同然に扱うのかと」
「ーー此処のカレーライス美味しいんだよね。折角だし一緒に食べない?」
「!?今食ってるソレはどうするんすか…」
「ふふっ、勿論ぜーんぶ美味しくイタダクよ?」
一瞬にしてピキピキ…ッ、と背筋が凍った。
彼特有の犬歯を魅せながら艶やかなる艶笑なんて、きっとオンナなら…いや、きっと俺も若しかしたら堕ちてはとうに斃ってる。
ーー然しながら今の意味合いは異なる。俺は今、確実に喧嘩を売る相手を間違えたのだ。
(#八つ当たり)
(#社会勉強)
(#これは夢小説です!⚠︎)
素質がある、努力した、といっても必ずしも成功、勝利する訳では無い。
其の現実は、痛い程身に染みて理解しているからこそ自身が出来る事を着実に積み重ねて過ごしてきたつもりではいる。
今は只、尊敬する先輩にボールをあげる事が出来る立ち位置を掴んだ現実に嬉しく思っている。反面、離して失うなんてなるものか、との焦りも生じるわけだ。
ーーだからその為には、周囲とは異なる条件で入学した自分は更に別の努力を怠らない様にしなければならないのだから。
店内に入る為にバサッ、と傘を降ろし一時的に畳むと雫がポタポタ…と手にも纏わりついて鬱陶しさに苛立ち、つい舌打ちをしながらザァザァ、と一日中降り続く雨を窓越しに軽く睨んだ。
「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」
「あ、はい」
店員から声を掛けられ店内へと促されれば、珈琲と軽食を頼んで、先程、本屋へ立ち寄った際に新しく購入した参考書を開き勉強に励む。
此処のカフェは好きだった。人気店なのでいつも人で溢れかえって居るのだが、今日は雨のお陰なのか…それとも何かの前触れか、店内は比較的空いていた。取り敢えず、先程の雨に対する行為に謝罪した方が良いのか?
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ーー
15分程過ぎた頃、高級黒スーツのビジネスマンと超有名校の制服を着た男が入店して来て、俺が今座る一番端奥側にある死角テーブル席の向かいのテーブル席へと座れば、何故かササッと身を潜めてしまい、あれ?何故、俺が見つからないようにコソコソしなきゃならないの?と心内で強い舌打ちをする。
ーー制服を着た男は見覚えがある。勿論、向こうはきっと俺の事なんて興味も無ければ知らないんだろうけど。何故なら彼…みょうじさんは、各バレー大会での医療サポートスタッフをしていて現地で見掛けるし、聞けばあの誰もが知るみょうじの人間らしいし。其れにバレーもしていないのにも拘わらず鷲匠監督の周りをチョロチョロするのを許されて、牛島さんにも手出ししようとしているから何なんだコイツ?とは思う。でも、あの鷲匠監督からお気に召される異例人間だから、詳しくは知らないけど完璧すぎて人間の皮を被った妖怪なんじゃねぇの?かとも思う。兎に角、この人は薄気味悪い。
別に盗み聞きするつもりは無いが、店内のBGMも落ち着いている曲のセレクトな為、どうしても後ろ席(こっそり座る位置を変えた現在、パーテーションと椅子の背もたれ越しに、俺とみょうじさんが背合わせしている状態)の会話が耳に入ってしまう…。思えばあの学校の人間ってどんな人間なのだろう?今、俺がこうして必死に解いてる問題集なんて朝飯前なんだろうな。やっぱり悪いけど腹立つ。軽く苛立ちながら手元のシャーペンを走らせては、勿論止める気も無いので勉強も捗らせた。
「ーー坊ちゃ「なまえ、ね」大変失礼しました…なまえ様「なまえ、ね」いえ、それは流石に…ご了承願います。…お食事は此方で本当に宜しかったのですか?今からでもいつもの御用達の場所を…」
「結構です。」
お待たせしました、の声と共に、女子ウケしそうなきらきらふわふわ生クリームたっぷりのパンケーキがコトッ、とテーブルに置かれれば、とても意外ではあったが、みょうじさんはケーキを運んできた店員に「有難う御座います。」なんて丁寧に御礼を言ってるもんだから、きちんとしている事は何となく見て取れた…なーんだ、ボンクラボンボンだったらウケるのに。何なんだよ、あの女性店員のぽぉっ、とした顔は。それと先程、注文時にパンケーキ頼んでたからメニューでどんなもんか確認してみたけど、この人こんなん食うわけ…?うっぷ…
ーーー
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「ーーでは、この症例からなまえ様の見解等含む、先方が希望するこの全ての事項に対する報告書を一週間以内に具体的且つ簡潔に纏めておいて下さい。お忙しいとは存じますが、必ず」
「…もし貴方が、パンケーキもきゅもきゅ食ってる時に世に云うセンシティブな写真添付資料を渡されたらどう?」
「ーー私なら先ずそのような大量の生クリームを食す時点で確実に吐き気を催すでしょうが…コホン。なまえ様なら日常茶飯事で御座いましょう?」
「…これでも御行儀を気にしてるんだけど。食事は感謝しながら丁寧に頂かないとね?」
「何を仰いますか。何事にも時と場合は御座いますし、目の前の人命を天秤に掛ければ言わずもがな、でしょう?では万が一、未来の医療を担うなまえ様に対して苦情等と言う不届き者が居るのならばーー」
「おりょ、おっかないねぇ」
おいおい、こんな場所で物騒な話か…?と内心焦りつつも何処か楽しみがら聞き耳を立て問題集を解いてる。何となくであり且つ自身の見解にはなるが、みょうじさんトコの系列か関連か何かの病院関係の書類の話らしい。ーー医療サポートスタッフといい、将来、医師にでもなるつもりなのだろうか?
こんな似非スマイルなイケメン医者なんてマジで胡散臭ぇ…なんて、今の黒スーツの秘書だかなんかに言ったら俺、どうなるんだろう?
気付けば問題集を解く手が止まっていて其のシャーペンを持つ手の甲でふふっ、とつい口が緩まるのを隠した。
そんな最中、黒スーツの男の電話が鳴りわざわざみょうじさんに許可を得てから通話、仕事関係の急用との事で席を立ち去っていった。
あぁ、そうか。今の俺の気持ちの正体が何だかわかった。俺はこの妖怪の尻尾、若しくは産み出した元凶である組織の…要は何らかの弱味を少しでも掴めばーー
「ーーみょうじって実は物騒なのかも、あわよくばイイネタ引き摺り出して揺さぶり掛けれるかな、なんて思った?白布賢二郎クン」
「~~!?」
「残念だけど潔白です」
パーテーションをトントン、と指で軽く叩き、俺の方を振り向き覗くみょうじさんの顔に、流石の俺もヒュッ…と息を飲み込んだ。…この人、最初から俺が居る事に気付いてやがった…!
「…みょうじさん…俺の事、ご存知だったんデスネ…てっきり眼中に無いのかと思ってました」
「俺の事なんだと思ってるの?」
「其の儘の意味です。興味無い者は虫螻同然に扱うのかと」
「ーー此処のカレーライス美味しいんだよね。折角だし一緒に食べない?」
「!?今食ってるソレはどうするんすか…」
「ふふっ、勿論ぜーんぶ美味しくイタダクよ?」
一瞬にしてピキピキ…ッ、と背筋が凍った。
彼特有の犬歯を魅せながら艶やかなる艶笑なんて、きっとオンナなら…いや、きっと俺も若しかしたら堕ちてはとうに斃ってる。
ーー然しながら今の意味合いは異なる。俺は今、確実に喧嘩を売る相手を間違えたのだ。