蛍雪
n a m e
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
スッ、と引き流れる様に肉と肉の間に鋭利な草が切り裂き1秒後には指先には痛覚と血液がジワリジワリ、とやってくる。泥塗れの指先を伝い地面にポタポタ…ッと泣き堕ちる一滴の行方を他人事の様にジッ…と見つめては、味わい慣れている茶色と赤に酷く吐き気を覚え仕方無くパクリ、と己の口内に赤を隠した。
別に痛いわけでは無い、簡潔に言えば汚いからだ。痛覚比べをするのであれば身体中に残る折檻された痕の方が痛いが正直、もう如何なっても良い。要するに自身は既に生きる目的も目標も皆無なのだから、其の儘、この場で息絶えたとしても構わない。悲しむ人も居なければ、寧ろ死ぬ事で喜ばれるのでは無いのかとさえも思い始めていた。
そんな事を考えては、内弟子とは名ばかり、ほぼ使用人の如く日々こなす雑用の1つである草毟りの為に、姿勢を低く地面にしゃがみ込む沖田の頭上から聞き慣れた鬱陶しい声が聞こえては思考を遮った。ーーあぁ、煩わしい。またかと溜息を零し無言で声の主を容赦無く強く睨み付ける。
この人も何度言えば理解するんだろう?放っておいてくれれば良いのに。
「…最近、近藤さんはお前の事ばかり気にして挙げ句の果てには俺に仲良くしてやってくれ、だって。冗談だろ?八つ当たりくらいさせろ」
「ーーハイ?迷惑なんだよ。特にアンタ!僕は頼んでも無いのに…毎度毎度…ッ…!?」
「お前も黙ってイイコにやられてんなよな、」
目線を決して合わせる事無く沖田に話し掛けてきた人物の正体は、沖田と年齢が近い子供で且つ自身の居る道場の人物であり、沖田の様子を何だかんだ気に掛ける数少ない者であった。(彼曰く八つ当たりらしい)
沖田が反論している途中でもお構い無しに沖田の腕を無理矢理とり、口では儼たる事を発言するのだが、手では優しく薬等を使い沖田への手当てを施していくのだ。
「ーーッうるさい!!大体、僕は姉上にも捨てられた挙句こんな場所に追いやられ、その上、毎日雑用ばかりで真面に稽古や剣術を教えてくれる人は少なくて中には折檻する人も居るじゃないか!」
「助けを乞うの?」
「は?違……!」
全てを見透かし暴く様な両目の色が異なる紅月は、沖田が少しでも気を緩めばおそらく心酔する程、実は心地良い、なんて複雑なる感情が混濁し理性を失うそうになる程、物凄く悔しい。
この人と目線を交えては成らない。何故なら必ずや惹き込まれ堕ち行き着く先は屈服しか道筋が見えないから。
「お前、勘違いしてない?いつまで餌貰えるまで座ってイイコして皿咥えてマテしてるつもり?此処は鍛錬を極める道場。瀕死状態であるなら、其れを巧みに利用しその目で周囲の連中の全てを見極め、盗み、生きる術を磨き上げ、自身で餌狩って文句ある奴は全員黙らせろ。で、この場が嫌ならさっさと出て行け。近藤さんの優しさに只々、爪立てて甘えるな」
正直この一言でガツン、と強く頭を殴られる表現の如く然し乍ら自身にとっては強い励みになる衝撃に醒めたのが反面、生気が宿りて腸が煮えくりかえる感を覚えては、此の儘、只では死ねない、必ずやこの紅月に自身を認めさせてやる、と決意しては生きる目標がポン、と簡単に産まれた、と同時に「世の中に意味の無い事など決して無く、両親が亡くなってしまったのも姉の決断で自身がこの場所に来たのも、何か意味がある」と沖田に面した近藤の言葉の意味を丁寧に理解しようと人生を一歩前進する。
「…甘える為に爪立てるのでは無く、稽古で何度も地に滑り落ちた剣を握り拾う為に爪を立てな。土(茶)に染み込む血(赤)は戦場で正鵠を射る」
只々、隅で座って色々と求めるだけの子猫で居てはいけない。
目の前の紅月の様に(認めたくは無いが)強き力を持たなくては成らない。
「僕はもっと強くなりたいです」
新雪の上に垂らした血液を翡翠の蛍の灯で点せば、混ぜ合わさった立派な幹が立つ
ーーー
ーー
ー
「甘い、戦場では誰も待ってくれねぇよ、総司」
「…ッは…ぜぇっ…は…!大刀を損じれば小刀を抜き、小刀を損じれば鞘で、鞘を損じれば素手でも戦います!なまえさん、まだまだ…っ!」
周斎が提案した試合形式の稽古まで残り後数日、沖田はなまえに協力を得て其の日に向け懸命に自身を磨いていった。
つい先日までは、其の儘、死んでも構わないとさえ願っていた10満たない幼子は、人生の中でなまえと出会い、徐々に現在なる翡翠が放つ支配色の輝きが形成され後に見事に完成し、後世には「沖田は猛者の剣、斎藤は無敵の剣」と評されるのだ。
蛍雪
ーーー
雪(紙)+血液(赤)+蛍(翡翠)=茶(桜樹木の幹)
別に痛いわけでは無い、簡潔に言えば汚いからだ。痛覚比べをするのであれば身体中に残る折檻された痕の方が痛いが正直、もう如何なっても良い。要するに自身は既に生きる目的も目標も皆無なのだから、其の儘、この場で息絶えたとしても構わない。悲しむ人も居なければ、寧ろ死ぬ事で喜ばれるのでは無いのかとさえも思い始めていた。
そんな事を考えては、内弟子とは名ばかり、ほぼ使用人の如く日々こなす雑用の1つである草毟りの為に、姿勢を低く地面にしゃがみ込む沖田の頭上から聞き慣れた鬱陶しい声が聞こえては思考を遮った。ーーあぁ、煩わしい。またかと溜息を零し無言で声の主を容赦無く強く睨み付ける。
この人も何度言えば理解するんだろう?放っておいてくれれば良いのに。
「…最近、近藤さんはお前の事ばかり気にして挙げ句の果てには俺に仲良くしてやってくれ、だって。冗談だろ?八つ当たりくらいさせろ」
「ーーハイ?迷惑なんだよ。特にアンタ!僕は頼んでも無いのに…毎度毎度…ッ…!?」
「お前も黙ってイイコにやられてんなよな、」
目線を決して合わせる事無く沖田に話し掛けてきた人物の正体は、沖田と年齢が近い子供で且つ自身の居る道場の人物であり、沖田の様子を何だかんだ気に掛ける数少ない者であった。(彼曰く八つ当たりらしい)
沖田が反論している途中でもお構い無しに沖田の腕を無理矢理とり、口では儼たる事を発言するのだが、手では優しく薬等を使い沖田への手当てを施していくのだ。
「ーーッうるさい!!大体、僕は姉上にも捨てられた挙句こんな場所に追いやられ、その上、毎日雑用ばかりで真面に稽古や剣術を教えてくれる人は少なくて中には折檻する人も居るじゃないか!」
「助けを乞うの?」
「は?違……!」
全てを見透かし暴く様な両目の色が異なる紅月は、沖田が少しでも気を緩めばおそらく心酔する程、実は心地良い、なんて複雑なる感情が混濁し理性を失うそうになる程、物凄く悔しい。
この人と目線を交えては成らない。何故なら必ずや惹き込まれ堕ち行き着く先は屈服しか道筋が見えないから。
「お前、勘違いしてない?いつまで餌貰えるまで座ってイイコして皿咥えてマテしてるつもり?此処は鍛錬を極める道場。瀕死状態であるなら、其れを巧みに利用しその目で周囲の連中の全てを見極め、盗み、生きる術を磨き上げ、自身で餌狩って文句ある奴は全員黙らせろ。で、この場が嫌ならさっさと出て行け。近藤さんの優しさに只々、爪立てて甘えるな」
正直この一言でガツン、と強く頭を殴られる表現の如く然し乍ら自身にとっては強い励みになる衝撃に醒めたのが反面、生気が宿りて腸が煮えくりかえる感を覚えては、此の儘、只では死ねない、必ずやこの紅月に自身を認めさせてやる、と決意しては生きる目標がポン、と簡単に産まれた、と同時に「世の中に意味の無い事など決して無く、両親が亡くなってしまったのも姉の決断で自身がこの場所に来たのも、何か意味がある」と沖田に面した近藤の言葉の意味を丁寧に理解しようと人生を一歩前進する。
「…甘える為に爪立てるのでは無く、稽古で何度も地に滑り落ちた剣を握り拾う為に爪を立てな。土(茶)に染み込む血(赤)は戦場で正鵠を射る」
只々、隅で座って色々と求めるだけの子猫で居てはいけない。
目の前の紅月の様に(認めたくは無いが)強き力を持たなくては成らない。
「僕はもっと強くなりたいです」
新雪の上に垂らした血液を翡翠の蛍の灯で点せば、混ぜ合わさった立派な幹が立つ
ーーー
ーー
ー
「甘い、戦場では誰も待ってくれねぇよ、総司」
「…ッは…ぜぇっ…は…!大刀を損じれば小刀を抜き、小刀を損じれば鞘で、鞘を損じれば素手でも戦います!なまえさん、まだまだ…っ!」
周斎が提案した試合形式の稽古まで残り後数日、沖田はなまえに協力を得て其の日に向け懸命に自身を磨いていった。
つい先日までは、其の儘、死んでも構わないとさえ願っていた10満たない幼子は、人生の中でなまえと出会い、徐々に現在なる翡翠が放つ支配色の輝きが形成され後に見事に完成し、後世には「沖田は猛者の剣、斎藤は無敵の剣」と評されるのだ。
蛍雪
ーーー
雪(紙)+血液(赤)+蛍(翡翠)=茶(桜樹木の幹)
1/1ページ