鳴かぬ蛍が身を焦がす
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(……クッ、そ)
心臓の鼓動がどく、どく、と煩い。
酒は苦手だ。然し全く飲めないわけでは無いので今の現状は酒の所為では無い。
手前に並べられた色鮮やかな御膳に飾りの如く添えられた上質な酒は、付き合いで致し方無く舌で舐め取り込んだ程度。
仕事や私的問わず島原に来る事は多々あり、と成れば必然と花魁や芸妓、舞妓、等の女性と接する機会は勿論多いにある。
にも拘わらず、ある一人の女性に対しーー
彼女の凛とした姿勢、意志の強そうな黒い瞳、何より自身の左心房に自然と流れてはピリピリと甘い刺激が染み込む蝶の舞に、自身の感知全てが瞬時に魅了された。
「あぁ、この絢爛の裏には彼女の血の滲む努力があるんだな、」と漠然と抱き、其れでいて誰よりも綺麗で何より愛でたいと素直に思う。
此処まで理解すれば認めるしか無いのだが、鼓動の正体は決して嫌悪感では無く寧ろ愛好、なのだ。
兎に角、自身の初めての感情に戸惑いと疑問に打ち負かされたくは無いので平然を保つ為にも深く息を吐き整える。
「…ふーっ…」
一旦、落ち着くとでも言うべきか?
先ずは状況が有り得ない。原理に基づく考え方をすれば店と客の関係。次いでに言えば一言も会話さえ交えた事も無く何より彼女は色事の駆け引きでは無く磨き上げた芸を売る立場である。
最近、立て続けに色々と在り自身で気付かぬうちに精神的に疲れているのかも?と前髪をグッとかきあげれば、なまえの持つ紅月は熱を保ちながら煌びやかに輝いた。
彼女の年齢は見た限りではおそらく自分よりも歳下、とはいえ目立つ大差は無いのであろう。
貴男が考える年齢は此の勝負の舞台上では全く関係ないですから、とでも強く証明する様に、目の前で、ひらり、ひらりと華麗に舞う麗しい蝶に魅了されては不意に突かれた恥ずかしさで我に返り目線を逸らすも、気付けば重ねては又、深く魅入り再度釘付けになっていた。
ある女性、蝶ーー、彼女は小鈴と云うらしい。
部屋に入り三つ指ついた際に言っていたのを覚えている。
正直、今宵は急に無理矢理連れて来られ現状の発端であった芹沢に対しても若干苛立ってたのに、其の発端の芹沢の口から、豪華な飯の前な事や然も拍子が悪く自身が好物且つ可愛らしい一口大福を食べてる時に、血やら人殺しやら挙げ句の果てにはみょうじに至っては人だけでは足りないとか何とか如何にも面倒くさそうな話題でも絡まれて、鬱陶しい且つ極めて面倒なのも有り相手せず無視しては、一刻も早く温かい風呂に浸かり歯磨いて布団でぬくぬくと寝たい、さっさと直ちに今直ぐ終われ、散れ、解散しろ、と何度も何度も心で唸っていた。
然しながら小鈴の登場から世界が一変し彼女の舞や芸に魅入っている時間の間だけは、芹沢の事など全く気に成らず寧ろ先程の苛立ち等も既に消え、延いては心置きなく今を楽しみたいのが本音に変わる。
(……この煩い心臓の音はまさか性欲?俺が先に発情する時もあるって事…?要するに、あのお嬢さんに言い寄られれば遠慮無くイタダキマスして食い残す事無く堪能できる。据え膳食わぬは男の恥なわけで、俺の場合は必ず言質を取るし…なら如何に上手く計略するか…っ、と、いやいや待て待て、俺は一体何考えてんの、どあほ)
女には全く困ってない。寧ろ飽き足りて偏食気味、面倒で鬱陶しい時もある。
例えば先程、なまえに一口大福を食べさせていた舞妓は見事に典型的である。
なまえの気分が一致し、又、その気に成り口説いては色事の流れに持って行けば、其の舞妓は一瞬にして丸め込まれぐずぐずに蕩けてなまえの腕に堕ちるだろう。
但し、彼は常に弁え決して浅はかでは無い。
なまえは黙っていても(既に持つ良い意味での人たらしは常に発動)彼方から勝手に寄って来ては群がりオネダリされるので、鬼や妖、イキモノとしての性欲求、精子を吐き出し処理する為に便乗した後、相手に対して一分の隙もなく上手く立ち回るが、なまえ自身が惚れた腫れたなど到底無い。
勿論、なまえは人間では無いから人間が冒される所謂ビョーキには成らないが、その気に成れば人間にも孕ませる事は出来るので、行為の際は避妊(企業秘密)に抜かりない。
(…もう考えるのやめた、)
なまえは決して口には出せない邪な男の本音と身勝手な優位に思考し思い重ねてみるが、然し直ぐに異様に感じた。
小鈴に抱いた感情は言葉に表すのは難しいが例えばもっと清廉潔白や純粋、純白に近い何かで、身体を重ね繋がる時は相手の心も同時に相手の身体や気遣い、真心を大切に、なんて至ってらしくない事も考えた挙句、瞬でも彼女に対して邪な感情を抱き重ねた事に只々、申し訳なく感じて仕舞うのだった。
(〜〜ッ、いちいち可愛いな!何なんだあのお嬢さんは…)
やめた、との言葉と裏腹に心臓の鼓動は未だ鳴り止まず、目でもつい追ってしまう。
なまえがこの初めて味わう気持ちの正体に気がつくまで、もう少し先に成るのだ。
「…お前、ちこうよれ!なぁに、俺が存分に可愛がってやろう。」
「ーーッ!?ひゃぁっ!」
酒に酔い上機嫌な芹沢が言葉を発し小鈴の腕を強引に掴み無理矢理自身の身体に引き寄せ側に座らせたのを見れば、なまえは警戒と威嚇、雰囲気を鋭く変え、芹沢の行動に備えた。
鳴かぬ蛍が身を焦がす
ーーー
なまえ君、推測ですが軽く一人百面相してるよね?
心臓の鼓動がどく、どく、と煩い。
酒は苦手だ。然し全く飲めないわけでは無いので今の現状は酒の所為では無い。
手前に並べられた色鮮やかな御膳に飾りの如く添えられた上質な酒は、付き合いで致し方無く舌で舐め取り込んだ程度。
仕事や私的問わず島原に来る事は多々あり、と成れば必然と花魁や芸妓、舞妓、等の女性と接する機会は勿論多いにある。
にも拘わらず、ある一人の女性に対しーー
彼女の凛とした姿勢、意志の強そうな黒い瞳、何より自身の左心房に自然と流れてはピリピリと甘い刺激が染み込む蝶の舞に、自身の感知全てが瞬時に魅了された。
「あぁ、この絢爛の裏には彼女の血の滲む努力があるんだな、」と漠然と抱き、其れでいて誰よりも綺麗で何より愛でたいと素直に思う。
此処まで理解すれば認めるしか無いのだが、鼓動の正体は決して嫌悪感では無く寧ろ愛好、なのだ。
兎に角、自身の初めての感情に戸惑いと疑問に打ち負かされたくは無いので平然を保つ為にも深く息を吐き整える。
「…ふーっ…」
一旦、落ち着くとでも言うべきか?
先ずは状況が有り得ない。原理に基づく考え方をすれば店と客の関係。次いでに言えば一言も会話さえ交えた事も無く何より彼女は色事の駆け引きでは無く磨き上げた芸を売る立場である。
最近、立て続けに色々と在り自身で気付かぬうちに精神的に疲れているのかも?と前髪をグッとかきあげれば、なまえの持つ紅月は熱を保ちながら煌びやかに輝いた。
彼女の年齢は見た限りではおそらく自分よりも歳下、とはいえ目立つ大差は無いのであろう。
貴男が考える年齢は此の勝負の舞台上では全く関係ないですから、とでも強く証明する様に、目の前で、ひらり、ひらりと華麗に舞う麗しい蝶に魅了されては不意に突かれた恥ずかしさで我に返り目線を逸らすも、気付けば重ねては又、深く魅入り再度釘付けになっていた。
ある女性、蝶ーー、彼女は小鈴と云うらしい。
部屋に入り三つ指ついた際に言っていたのを覚えている。
正直、今宵は急に無理矢理連れて来られ現状の発端であった芹沢に対しても若干苛立ってたのに、其の発端の芹沢の口から、豪華な飯の前な事や然も拍子が悪く自身が好物且つ可愛らしい一口大福を食べてる時に、血やら人殺しやら挙げ句の果てにはみょうじに至っては人だけでは足りないとか何とか如何にも面倒くさそうな話題でも絡まれて、鬱陶しい且つ極めて面倒なのも有り相手せず無視しては、一刻も早く温かい風呂に浸かり歯磨いて布団でぬくぬくと寝たい、さっさと直ちに今直ぐ終われ、散れ、解散しろ、と何度も何度も心で唸っていた。
然しながら小鈴の登場から世界が一変し彼女の舞や芸に魅入っている時間の間だけは、芹沢の事など全く気に成らず寧ろ先程の苛立ち等も既に消え、延いては心置きなく今を楽しみたいのが本音に変わる。
(……この煩い心臓の音はまさか性欲?俺が先に発情する時もあるって事…?要するに、あのお嬢さんに言い寄られれば遠慮無くイタダキマスして食い残す事無く堪能できる。据え膳食わぬは男の恥なわけで、俺の場合は必ず言質を取るし…なら如何に上手く計略するか…っ、と、いやいや待て待て、俺は一体何考えてんの、どあほ)
女には全く困ってない。寧ろ飽き足りて偏食気味、面倒で鬱陶しい時もある。
例えば先程、なまえに一口大福を食べさせていた舞妓は見事に典型的である。
なまえの気分が一致し、又、その気に成り口説いては色事の流れに持って行けば、其の舞妓は一瞬にして丸め込まれぐずぐずに蕩けてなまえの腕に堕ちるだろう。
但し、彼は常に弁え決して浅はかでは無い。
なまえは黙っていても(既に持つ良い意味での人たらしは常に発動)彼方から勝手に寄って来ては群がりオネダリされるので、鬼や妖、イキモノとしての性欲求、精子を吐き出し処理する為に便乗した後、相手に対して一分の隙もなく上手く立ち回るが、なまえ自身が惚れた腫れたなど到底無い。
勿論、なまえは人間では無いから人間が冒される所謂ビョーキには成らないが、その気に成れば人間にも孕ませる事は出来るので、行為の際は避妊(企業秘密)に抜かりない。
(…もう考えるのやめた、)
なまえは決して口には出せない邪な男の本音と身勝手な優位に思考し思い重ねてみるが、然し直ぐに異様に感じた。
小鈴に抱いた感情は言葉に表すのは難しいが例えばもっと清廉潔白や純粋、純白に近い何かで、身体を重ね繋がる時は相手の心も同時に相手の身体や気遣い、真心を大切に、なんて至ってらしくない事も考えた挙句、瞬でも彼女に対して邪な感情を抱き重ねた事に只々、申し訳なく感じて仕舞うのだった。
(〜〜ッ、いちいち可愛いな!何なんだあのお嬢さんは…)
やめた、との言葉と裏腹に心臓の鼓動は未だ鳴り止まず、目でもつい追ってしまう。
なまえがこの初めて味わう気持ちの正体に気がつくまで、もう少し先に成るのだ。
「…お前、ちこうよれ!なぁに、俺が存分に可愛がってやろう。」
「ーーッ!?ひゃぁっ!」
酒に酔い上機嫌な芹沢が言葉を発し小鈴の腕を強引に掴み無理矢理自身の身体に引き寄せ側に座らせたのを見れば、なまえは警戒と威嚇、雰囲気を鋭く変え、芹沢の行動に備えた。
鳴かぬ蛍が身を焦がす
ーーー
なまえ君、推測ですが軽く一人百面相してるよね?
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