駄菓子菓子
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「うちの店を毎度ご贔屓させて頂いてる御礼ですわ。」
甘い菓子なのでオニーサンの口にあうか分かりまへんが…と、帰り際に飲み屋の店主が柔らかい表情をしながら、小さな袋に包んだ可愛い色の粒々としたキラキラ光る砂糖菓子をポンと渡してくれば、それを受け取る原田は素直に「どうも」と放ち、ペコッと軽く頭を下げ御礼を伝えた。
「またのお越しをー」
門限もある為、共に来ていた永倉と平助と共に屯所へと帰ろうと暖簾をくぐり抜けながら、原田は己の掌の上の袋の中の金平糖を睨みながら「…菓子、貰ってもなー…」と小さく呟いて仕舞う。
太陽の光でキラキラ…と主張する可愛らしい御菓子に、原田はつい苦笑いを落としながら、どちらかと言えば自分は菓子より酒か飯の方が…と口で嘆いて仕舞うのだったが、無料で且つ好意で貰った物であるからには文句は言えない。
「へー、金平糖かー!…左之さんが食べるとこなんて想像もつかねーや!」
原田は、ニヘヘッと悪戯に微笑みながら口を開く平助の頭をワシャッと鷲掴み撫でながら、「まぁ、総司や千鶴にやりゃあいいか?」と小さく笑いながら自己解決すれば、平助の位置とはまた逆の横から「いやいやまてまて」とツッコミが入ったのだった。
「なんだ?新八…まさか、お前が食べたいなんて言うんじゃねえよな?」
原田がギョッとした表情で永倉を見れば、隣に居た平助も「ええっ、新八っあんが金平糖!?…最強に似合わない組み合わせ!」と放ち、ゲラゲラと笑いが興るのであった。
「なっ…!?失礼な奴だな!!」
俺は菓子より酒の方がいーんだよ!と、町が静まり睡眠の支度をする夜の帰り道に、大声を放ちムキになりながら否定する永倉に、二人は「馬鹿!今何時だと思ってんだ!」と慌てて永倉の口を塞いだ。
「…ふががっ、むがが!!」
言葉を発せず妙な呻きが未だ漏れる様子を見れば、永倉は微酔い状態だと察する事が出来、「ったく…!しょうがねぇな!」と原田が漏らせば、平助と共にサッサッと足取りを早め、屯所に戻る事にした。
「だからよー?総司や千鶴ちゃんにも菓子やっても良いけどよー?…分けてやんねえと拗ねる奴が他にいるんじゃねえか?」
ハッハッハ!と微酔い良い気持ちになっている永倉の言葉に、原田は「はあ?金平糖だぞ?」と渋い顔をしながら不思議に思えば、平助は「金平糖…他に好きな奴いたかなー?」と疑問を承ける。
はて…男だらけの新選組に、たかが金平糖を分けず拗ねる野郎なんて…金平糖が好物だと主張する沖田以外他に、誰か居ただろうか?
「新八、あと誰にやりゃいいんだ?」
無論、酒や飯なら話は違うが…と永倉に言葉の意図を問えば、永倉はコクッ…コクッ…と睡魔に襲われようとしている状況に、原田と平助はギョッと焦り、「マジ!?此処で!?」と嘆き足を急がせる。
屯所までの道のりは残念な事にまだまだ残っており、金平糖の件は酔っている永倉の言葉との理由も含まれたのもあり、一気に二人の脳内から消え去れば、この状況をどう逃れ屯所に帰るかが重要で、瞬時に脳内を占める件となるのであった。
「冗談じゃねーっての!新八っあんの巨体引きずるなんて拷問だってー!!」
平助だって微酔いに近い状態であった為に、素面の時に比べれば力は余り出ずにおり、原田は「くっそ…!気張れ!平助!」と己と彼を励ませば、足取りを更に早めながら「新八の野郎…!」と抱える者を睨めば、気楽にスピスピ眠り転けそうになる永倉は、今宵の平和を告げるのであった。チュン、チュンーー
「…ん…」
雀の目覚まし時計で清々しい朝を迎えれば、悪夢であって欲しい昨晩から解放されていたと改めて安心しながら目覚めた原田は、未だ眠気眼でうつろうつろする己の視界を手で擦った。
(…ったく、とんだ災難だったな…)
僅かにギシッ…と鳴る肩を回し馴らしてやれば、部屋の外から二人の足音がタンタン…と聞こえ、原田の部屋の入り口の襖を叩く音が響けば「おー、入れ」と原田は合図を放ち、訪問者は「失礼します」とタン…と襖を開けた。
「おはようございます。原田さん」
ニコッと可愛らしい笑顔で呼びに起こしてくれた千鶴に、原田は挨拶をすれば、続けて素直に「わりぃな、今から起きて準備するよ」と声を掛けると、千鶴の後ろに居たであろうもう一人の人物…沖田は、「左之さんが寝坊助なんて珍しいですね?平助はもうとっくに起きて、朝食待ちですよ。」と放ちながら、クスクスと笑うのであった。
「…あのな?あの元気発砲玉と一緒にすんじゃねーよ。」
ちったあ労れ、と悪戯に笑う沖田に渋い表情をしながら原田が返せば、その和やかなやり取りを見た千鶴がクスッと笑えば、原田は「あー、そういや…」と思い出したかのように、枕元に転がっていた金平糖の袋を手に取った。
「はいはい…左之さんとっくにオッサンだった事、僕、すっかり忘れてました。」
いけないいけない、と更に悪戯に笑った沖田を見た原田は、「お前らにお土産…」と言い掛けた言葉を遮り、口角をヒクッとあげながら「あーそうかよ?せっかく総司と千鶴にお土産があったのに…千鶴、お前だけにやるよ。」と言い、千鶴に両手貸してと放ち、千鶴は原田に従い両手を出せば、原田は昨晩、店主から貰った金平糖を千鶴の手にポンと置いたのだった。
「千鶴、いつもありがとな?」
ニコッと微笑む原田は千鶴の頭を撫でながら放てば、千鶴は「えっ?わぁ…金平糖ですね!」とキラキラした表情で喜んでいれば、その場に居た沖田は「ちょっ…ちょっと待ってください!」と慌てふためき、原田に謝るのであった。
「僕の好物だって知ってるくせに…」
まったく…意地悪なんだから、と放つ沖田に、てめぇに言われたくねぇんだよ!と軽くコツンと小突く原田は、すぐさま千鶴に「悪いな?総司にも分けてやってくれ」と零せば、千鶴は「はいっ」と笑顔で頷いた。
「千鶴ちゃん、朝ご飯食べ終わったら二人で食べようか?」
金平糖少ししかないし、食後の御菓子で良いんじゃない?…と、千鶴に珍しく笑顔を見せた沖田に、千鶴は「そうですね。この量であれば食後にピッタリですね」と嬉しそうに返すのであった。
「左之さん、早く準備してくださいよ。…僕、さっさとご飯食べて、金平糖食べたいんだから。」
千鶴ちゃんも、落としたり誰かに金平糖見つかんないようにしてよね、と言い残し、一人さっさと原田の部屋を後にする沖田を眺め、その場に残った千鶴と原田が柔らかく笑う様子を見れば、昨晩、永倉に言われた件は見事に忘れ去られている事を証明し、そして同じ頃、永倉の部屋ではーー
「…おら、新八。さっさと起きやがれ、」
「んが」
原田の部屋には千鶴と沖田、永倉の部屋にはなまえが…との流れの様で、しかし未だなまえは永倉を起こす事は出来ずにおり、苦労をしていた。
声を掛けても頬をぺちぺち叩いても軽くつねってみても、全く動じない永倉に少々苛立ったなまえは、むすっ、とした表情をし「…むー、」と唸りながら策を考えた後、ぽんっ、と掌と拳をあわせニヤリと笑い、何を思い付いたかと思えば、大の字で眠りこけている永倉の上半身に跨がり、なまえは「…んしょ、」と声を漏らしながら、全体重を一瞬に思い切り永倉の腹へと掛けたのだった。
「ふんっ、」
「…ぐ、ぐふっ…!」
あえて掛ける重さに、さすがの永倉も苦しさから何事かと目を醒ませば、目の前には己に跨がるなまえの姿が無論あり、「んなっ…!なまえちゃん!? 」と、思わず赤面して仕舞えば「よー、やっと起きたな、」と怒りを含む笑顔でなまえは歯を見せながらニヤリと笑うのであった。
「あれ…?なまえちゃんが起こしに来てくれたの…?」
「ああ、全然起きねーから、このまま息の根とめてやろーかと、」
「あははー!…すみませんでした。」
なまえの見せる怒りの笑みに、永倉はゾゾ…と恐怖を覚え、すっかり眠気の飛んだある意味目覚めの良い朝に、二日酔いの存在を抹殺させるしか無く、目の前の人物に忠誠を誓った。
「…しかしなまえちゃん…すげーイイ格好…」
己を跨がるなまえを見上げ、舐めるように視線を厭らしく突き刺してやれば、そんな永倉になまえは、思いっ切り不機嫌に眉間に皺を寄せ、又しても無言で体重を永倉へと思い切り掛けれると、永倉は「ぐえっ!ギブ!なまえちゃん、ギブ! 」と苦しそうに悶えるのであった。
「…俺に跨がれて、このまま逝くべ?」
なまえが永倉の首に手を掛け耳元で囁けば、永倉は「…まあ本望だけど…そりゃあ愛しあってる時が良い…ぐふっ…!」と、こんな状況であれ懲りずに言い返す永倉になまえは、小さく「どあほ。…ったく、口じゃかなわねーなー、」と呟き、永倉から体を離したと同時に丁度良いタイミングで腹がぎゅる~と鳴ると、「…余計な体力つかっちまったじゃねーか、」と苦笑いを落としながら「新八、腹へった早くー、」と続け、急かすのであった。
「へいへい!…あ、そいやなまえちゃんよー?後で左之んとこ行ってみな。」
「んぐ?…あんで?」
永倉が寝間着から着替える際に特に部屋から出ず、寧ろ先程まで永倉が寝ていた布団を綺麗に畳んで閉まってやるなまえを見て、永倉は御礼を言いながら「まあまあ、いつも良い子にしてるなまえちゃんに褒美があると思うぜー?」と濁しながらニコニコ笑い、待たせたなとなまえの頭を撫でて広間に向かう永倉に、なまえはきょとん、とする事しか出来なかった。
ーーー
「左之ー、ちょーだい?」
朝食も遅れながらも無事に終え、先程の永倉の言葉に従い原田の部屋に行ったなまえは、特に説明とかも全く入れず直球で原田へと放てば(まあ、なまえ自身も意味を理解せず行動しているからではなかろうか)案の定、原田も不思議そうに「なんだなまえ?いきなりどうしたんだ?」と、大きな疑問を投げかけるのであった。
「んー、新八がよ?朝飯終わったら左之んとこ行けば、俺になんかくれるって言うからよー、」
だから来た、とサラッと言うなまえに、原田は未だ彼の放つ言葉を理解出来ずにおり、このままでは埒があかないと永倉の元へと二人で向かう事となった。
「はい、これは千鶴ちゃんの分ね。…ほんと少ししかないんだね」
「ふふっ!ありがとうございます。…お値段もはる金平糖な気がします…美味しそう!」
原田さんに感謝して、と二人で甘い金平糖を食べ尽くせば、やはり別格であったのだろうか?沖田の機嫌は物凄く良くなり、暫く千鶴と楽しく会話していた。
「…あっ!僕とした事が…こんな美味しい金平糖、なまえさんに分けるの忘れてた…!」
金平糖の魅力に沖田は既に殻の袋を睨み、珍しく呻きながら頭を抱えれば、千鶴も千鶴でハッとした表情をし、口の中の最後の金平糖をこくんっ、と飲み込んで仕舞うと「あああっ…!しまったあ…!」と、どうしようどうしようとあたふたする事しか出来なかった。
ーー
「おい、新八ー!開けるぞ!」
原田は、永倉の許可を得る前にタン!と襖を開けると、室内に居た永倉はギョッとし目の前に現れた原田となまえに驚き、「なんだ?仲良く二人揃っちまってよ!」と投げれば、原田はその倍以上に強い言葉で「なんだ?はこっちの台詞だ!」と投下する。
「新八、おめぇ!なまえに何吹き込みやがった?」
原田が困った口調で永倉に問えば、永倉は数秒間考えた後に「…ああ!」と思い出したかの様に放つと、「何言ってんだよ、左之!昨晩のアレだよ!」と豪快に笑い原田の背を叩きながら答えたのだった。
「アレ!?なんの事だ?」
「はあ?金平糖の事だよ!」
俺、ちゃんとツッコミ入れたよなー?と永倉が苦笑いしながら問えば、原田は昨晩の事を思い出したと同時に、段々と顔色を悪くしていくのだった。
「…そっか…、」
俺も金平糖、食べたかった…と落ち込んだなまえの表情を見て、なまえに全ての事情を話し謝った原田は、再度「ごめんな?」と、謝りながらなまえの頭をぽんぽんと撫でれば「…別に、たかが御菓子で拗ねたりしねーよ!」となまえは放ちつつ明らかに頬を膨らませ、子供扱いすんな、と続けて拗ねる場面を見せれば、なまえの意外な一面を見る事が出来た様で、こういう時に見せる子供の様な素振りは、やはり愛おしく見えて仕舞うのであった。
「つーか、新八もあんときなまえだってハッキリ言やぁ、こんな事には…!」
「なっ…!?そりゃねーぜ!」
己に火の粉が散ってきた永倉は、慌てながら「なまえちゃんとは名指しで言ってなかったかもしれねーけど、酔ってた俺なりにちゃんと言ったぞ!」と原田に返せば、気まずそうに頭をポリポリ…と掻きながら苦い表情をし何も言い返せなくなってしまった原田は、あの金平糖をなまえにあげられなかった無念と、それよりも愛しの姫の好物を把握できなかった己の不甲斐なさにも正直、かなり落ち込んでいた。
「いーって、大福が一番好き、」
良く解らないフォローを入れるなまえに、とりあえずホッ…と安心した原田と永倉は、なまえを思い切り抱きしめ「なんなら今から大福食べにでも行くか?」と提案をするのであった。
「なまえちゃん、折角なんだ!いこうぜ?」
「…苺大福たべる、」
頬をぽっ、と苺色に染めたなまえが答えれば(勿論、大好物の大福にトキメク)原田と永倉は、その可愛らしい彼にキュンと胸を討たれ「可愛いなあ!」と叫び、我らが姫を抱えて早速迎えば、男三人で甘味屋へと足を運び、「おばちゃーん!」と元気に呼びつけては、苺大福を三個注文する。
「うおっ…!普段行かねぇから緊張するなー!」
堅苦しそうに茶を啜る永倉を見た原田は、「ぶふっ…!新八にはホント似合わねー場所…!」と笑いながら返せば、永倉は赤面しながら「うっさい!」と返す。
そんな二人を止めず、今か今かと苺大福の登場を大人しく待つなまえの前に、店のおばちゃんが「お待ちー」と持ってきてくれれば、なまえの機嫌は最大限に良くなり、「おばちゃん、ありがと、」と、歯を見せながら御礼を言った。
目の前に華奢な薄桃色の宝石がプルンと輝けば、なまえはつい、こくんっと喉を馴らし自然と頬を緩ませて仕舞うと、もう我慢出来ないとでも言う様子で「おらー、二人とも食おうぜ?」と紅月をキラキラ輝かせれば、言い合いをしていた原田と永倉には、苺大福を食べたいと伝えてくるなまえの様子が、まさに子犬がキュゥン…と鳴きながら耳を垂らす愛くるしい状況に見え、又しても胸をズキュン!と討ち鼻の下を伸ばすのであった。
「…うーめー…!」
いただきます、の言葉と共に手をパチンと合わせ感謝しつつ宝石を貪り、至福を感じながらトロン…とした表情を浮かべるなまえを眺める永倉と原田は、心が物凄く癒され、なまえの此の甘い表情が己にとって極上の御菓子だと思って仕舞うのであった。
「口に粉ついてる。」
くいっ、となまえの口の端についた苺大福の粉を己の親指で拭ってやり、その指を己の口でペロッと舐めあげながら原田がキザに言えば、なまえはニッ、と微笑みながら改めて御馳走して貰った御礼を伝えると、横から「でも、きっかけは俺の一言だよな!?」と必死にアピールをしてくる永倉にも、なまえは笑いながら御礼を言うのであった。
「俺にとって、ほんと大福って宝石だな、」
幸せなもん運んでくれる、と幸せそうな表情で物語るなまえに、永倉も原田も眩しい笑顔を向け、同時になまえの頭を撫でた。
「俺の宝石は、なまえの喜ぶ顔だぜ?」
「なまえちゃん、いつまでも俺の傍で良い顔してろよな!」
そんな二人からの口説き文句につい頬を緩ませて仕舞うなまえの最高の幸せな時間の今同じ頃、どうしても罪悪感に浸って仕舞った沖田と千鶴は、急いでなまえの分の金平糖を買い出しに二人で街へと走ったそうな…。
「待っててくださいね、なまえさん!
あれと同じくらい美味しい金平糖、買ってきますから!」
「勿論です!参りましょう、沖田さん!」
駄菓子菓子
(金平糖の金貨)(宝石の代償)
ーーー
歯は磨きましょうね!
甘い菓子なのでオニーサンの口にあうか分かりまへんが…と、帰り際に飲み屋の店主が柔らかい表情をしながら、小さな袋に包んだ可愛い色の粒々としたキラキラ光る砂糖菓子をポンと渡してくれば、それを受け取る原田は素直に「どうも」と放ち、ペコッと軽く頭を下げ御礼を伝えた。
「またのお越しをー」
門限もある為、共に来ていた永倉と平助と共に屯所へと帰ろうと暖簾をくぐり抜けながら、原田は己の掌の上の袋の中の金平糖を睨みながら「…菓子、貰ってもなー…」と小さく呟いて仕舞う。
太陽の光でキラキラ…と主張する可愛らしい御菓子に、原田はつい苦笑いを落としながら、どちらかと言えば自分は菓子より酒か飯の方が…と口で嘆いて仕舞うのだったが、無料で且つ好意で貰った物であるからには文句は言えない。
「へー、金平糖かー!…左之さんが食べるとこなんて想像もつかねーや!」
原田は、ニヘヘッと悪戯に微笑みながら口を開く平助の頭をワシャッと鷲掴み撫でながら、「まぁ、総司や千鶴にやりゃあいいか?」と小さく笑いながら自己解決すれば、平助の位置とはまた逆の横から「いやいやまてまて」とツッコミが入ったのだった。
「なんだ?新八…まさか、お前が食べたいなんて言うんじゃねえよな?」
原田がギョッとした表情で永倉を見れば、隣に居た平助も「ええっ、新八っあんが金平糖!?…最強に似合わない組み合わせ!」と放ち、ゲラゲラと笑いが興るのであった。
「なっ…!?失礼な奴だな!!」
俺は菓子より酒の方がいーんだよ!と、町が静まり睡眠の支度をする夜の帰り道に、大声を放ちムキになりながら否定する永倉に、二人は「馬鹿!今何時だと思ってんだ!」と慌てて永倉の口を塞いだ。
「…ふががっ、むがが!!」
言葉を発せず妙な呻きが未だ漏れる様子を見れば、永倉は微酔い状態だと察する事が出来、「ったく…!しょうがねぇな!」と原田が漏らせば、平助と共にサッサッと足取りを早め、屯所に戻る事にした。
「だからよー?総司や千鶴ちゃんにも菓子やっても良いけどよー?…分けてやんねえと拗ねる奴が他にいるんじゃねえか?」
ハッハッハ!と微酔い良い気持ちになっている永倉の言葉に、原田は「はあ?金平糖だぞ?」と渋い顔をしながら不思議に思えば、平助は「金平糖…他に好きな奴いたかなー?」と疑問を承ける。
はて…男だらけの新選組に、たかが金平糖を分けず拗ねる野郎なんて…金平糖が好物だと主張する沖田以外他に、誰か居ただろうか?
「新八、あと誰にやりゃいいんだ?」
無論、酒や飯なら話は違うが…と永倉に言葉の意図を問えば、永倉はコクッ…コクッ…と睡魔に襲われようとしている状況に、原田と平助はギョッと焦り、「マジ!?此処で!?」と嘆き足を急がせる。
屯所までの道のりは残念な事にまだまだ残っており、金平糖の件は酔っている永倉の言葉との理由も含まれたのもあり、一気に二人の脳内から消え去れば、この状況をどう逃れ屯所に帰るかが重要で、瞬時に脳内を占める件となるのであった。
「冗談じゃねーっての!新八っあんの巨体引きずるなんて拷問だってー!!」
平助だって微酔いに近い状態であった為に、素面の時に比べれば力は余り出ずにおり、原田は「くっそ…!気張れ!平助!」と己と彼を励ませば、足取りを更に早めながら「新八の野郎…!」と抱える者を睨めば、気楽にスピスピ眠り転けそうになる永倉は、今宵の平和を告げるのであった。チュン、チュンーー
「…ん…」
雀の目覚まし時計で清々しい朝を迎えれば、悪夢であって欲しい昨晩から解放されていたと改めて安心しながら目覚めた原田は、未だ眠気眼でうつろうつろする己の視界を手で擦った。
(…ったく、とんだ災難だったな…)
僅かにギシッ…と鳴る肩を回し馴らしてやれば、部屋の外から二人の足音がタンタン…と聞こえ、原田の部屋の入り口の襖を叩く音が響けば「おー、入れ」と原田は合図を放ち、訪問者は「失礼します」とタン…と襖を開けた。
「おはようございます。原田さん」
ニコッと可愛らしい笑顔で呼びに起こしてくれた千鶴に、原田は挨拶をすれば、続けて素直に「わりぃな、今から起きて準備するよ」と声を掛けると、千鶴の後ろに居たであろうもう一人の人物…沖田は、「左之さんが寝坊助なんて珍しいですね?平助はもうとっくに起きて、朝食待ちですよ。」と放ちながら、クスクスと笑うのであった。
「…あのな?あの元気発砲玉と一緒にすんじゃねーよ。」
ちったあ労れ、と悪戯に笑う沖田に渋い表情をしながら原田が返せば、その和やかなやり取りを見た千鶴がクスッと笑えば、原田は「あー、そういや…」と思い出したかのように、枕元に転がっていた金平糖の袋を手に取った。
「はいはい…左之さんとっくにオッサンだった事、僕、すっかり忘れてました。」
いけないいけない、と更に悪戯に笑った沖田を見た原田は、「お前らにお土産…」と言い掛けた言葉を遮り、口角をヒクッとあげながら「あーそうかよ?せっかく総司と千鶴にお土産があったのに…千鶴、お前だけにやるよ。」と言い、千鶴に両手貸してと放ち、千鶴は原田に従い両手を出せば、原田は昨晩、店主から貰った金平糖を千鶴の手にポンと置いたのだった。
「千鶴、いつもありがとな?」
ニコッと微笑む原田は千鶴の頭を撫でながら放てば、千鶴は「えっ?わぁ…金平糖ですね!」とキラキラした表情で喜んでいれば、その場に居た沖田は「ちょっ…ちょっと待ってください!」と慌てふためき、原田に謝るのであった。
「僕の好物だって知ってるくせに…」
まったく…意地悪なんだから、と放つ沖田に、てめぇに言われたくねぇんだよ!と軽くコツンと小突く原田は、すぐさま千鶴に「悪いな?総司にも分けてやってくれ」と零せば、千鶴は「はいっ」と笑顔で頷いた。
「千鶴ちゃん、朝ご飯食べ終わったら二人で食べようか?」
金平糖少ししかないし、食後の御菓子で良いんじゃない?…と、千鶴に珍しく笑顔を見せた沖田に、千鶴は「そうですね。この量であれば食後にピッタリですね」と嬉しそうに返すのであった。
「左之さん、早く準備してくださいよ。…僕、さっさとご飯食べて、金平糖食べたいんだから。」
千鶴ちゃんも、落としたり誰かに金平糖見つかんないようにしてよね、と言い残し、一人さっさと原田の部屋を後にする沖田を眺め、その場に残った千鶴と原田が柔らかく笑う様子を見れば、昨晩、永倉に言われた件は見事に忘れ去られている事を証明し、そして同じ頃、永倉の部屋ではーー
「…おら、新八。さっさと起きやがれ、」
「んが」
原田の部屋には千鶴と沖田、永倉の部屋にはなまえが…との流れの様で、しかし未だなまえは永倉を起こす事は出来ずにおり、苦労をしていた。
声を掛けても頬をぺちぺち叩いても軽くつねってみても、全く動じない永倉に少々苛立ったなまえは、むすっ、とした表情をし「…むー、」と唸りながら策を考えた後、ぽんっ、と掌と拳をあわせニヤリと笑い、何を思い付いたかと思えば、大の字で眠りこけている永倉の上半身に跨がり、なまえは「…んしょ、」と声を漏らしながら、全体重を一瞬に思い切り永倉の腹へと掛けたのだった。
「ふんっ、」
「…ぐ、ぐふっ…!」
あえて掛ける重さに、さすがの永倉も苦しさから何事かと目を醒ませば、目の前には己に跨がるなまえの姿が無論あり、「んなっ…!なまえちゃん!? 」と、思わず赤面して仕舞えば「よー、やっと起きたな、」と怒りを含む笑顔でなまえは歯を見せながらニヤリと笑うのであった。
「あれ…?なまえちゃんが起こしに来てくれたの…?」
「ああ、全然起きねーから、このまま息の根とめてやろーかと、」
「あははー!…すみませんでした。」
なまえの見せる怒りの笑みに、永倉はゾゾ…と恐怖を覚え、すっかり眠気の飛んだある意味目覚めの良い朝に、二日酔いの存在を抹殺させるしか無く、目の前の人物に忠誠を誓った。
「…しかしなまえちゃん…すげーイイ格好…」
己を跨がるなまえを見上げ、舐めるように視線を厭らしく突き刺してやれば、そんな永倉になまえは、思いっ切り不機嫌に眉間に皺を寄せ、又しても無言で体重を永倉へと思い切り掛けれると、永倉は「ぐえっ!ギブ!なまえちゃん、ギブ! 」と苦しそうに悶えるのであった。
「…俺に跨がれて、このまま逝くべ?」
なまえが永倉の首に手を掛け耳元で囁けば、永倉は「…まあ本望だけど…そりゃあ愛しあってる時が良い…ぐふっ…!」と、こんな状況であれ懲りずに言い返す永倉になまえは、小さく「どあほ。…ったく、口じゃかなわねーなー、」と呟き、永倉から体を離したと同時に丁度良いタイミングで腹がぎゅる~と鳴ると、「…余計な体力つかっちまったじゃねーか、」と苦笑いを落としながら「新八、腹へった早くー、」と続け、急かすのであった。
「へいへい!…あ、そいやなまえちゃんよー?後で左之んとこ行ってみな。」
「んぐ?…あんで?」
永倉が寝間着から着替える際に特に部屋から出ず、寧ろ先程まで永倉が寝ていた布団を綺麗に畳んで閉まってやるなまえを見て、永倉は御礼を言いながら「まあまあ、いつも良い子にしてるなまえちゃんに褒美があると思うぜー?」と濁しながらニコニコ笑い、待たせたなとなまえの頭を撫でて広間に向かう永倉に、なまえはきょとん、とする事しか出来なかった。
ーーー
「左之ー、ちょーだい?」
朝食も遅れながらも無事に終え、先程の永倉の言葉に従い原田の部屋に行ったなまえは、特に説明とかも全く入れず直球で原田へと放てば(まあ、なまえ自身も意味を理解せず行動しているからではなかろうか)案の定、原田も不思議そうに「なんだなまえ?いきなりどうしたんだ?」と、大きな疑問を投げかけるのであった。
「んー、新八がよ?朝飯終わったら左之んとこ行けば、俺になんかくれるって言うからよー、」
だから来た、とサラッと言うなまえに、原田は未だ彼の放つ言葉を理解出来ずにおり、このままでは埒があかないと永倉の元へと二人で向かう事となった。
「はい、これは千鶴ちゃんの分ね。…ほんと少ししかないんだね」
「ふふっ!ありがとうございます。…お値段もはる金平糖な気がします…美味しそう!」
原田さんに感謝して、と二人で甘い金平糖を食べ尽くせば、やはり別格であったのだろうか?沖田の機嫌は物凄く良くなり、暫く千鶴と楽しく会話していた。
「…あっ!僕とした事が…こんな美味しい金平糖、なまえさんに分けるの忘れてた…!」
金平糖の魅力に沖田は既に殻の袋を睨み、珍しく呻きながら頭を抱えれば、千鶴も千鶴でハッとした表情をし、口の中の最後の金平糖をこくんっ、と飲み込んで仕舞うと「あああっ…!しまったあ…!」と、どうしようどうしようとあたふたする事しか出来なかった。
ーー
「おい、新八ー!開けるぞ!」
原田は、永倉の許可を得る前にタン!と襖を開けると、室内に居た永倉はギョッとし目の前に現れた原田となまえに驚き、「なんだ?仲良く二人揃っちまってよ!」と投げれば、原田はその倍以上に強い言葉で「なんだ?はこっちの台詞だ!」と投下する。
「新八、おめぇ!なまえに何吹き込みやがった?」
原田が困った口調で永倉に問えば、永倉は数秒間考えた後に「…ああ!」と思い出したかの様に放つと、「何言ってんだよ、左之!昨晩のアレだよ!」と豪快に笑い原田の背を叩きながら答えたのだった。
「アレ!?なんの事だ?」
「はあ?金平糖の事だよ!」
俺、ちゃんとツッコミ入れたよなー?と永倉が苦笑いしながら問えば、原田は昨晩の事を思い出したと同時に、段々と顔色を悪くしていくのだった。
「…そっか…、」
俺も金平糖、食べたかった…と落ち込んだなまえの表情を見て、なまえに全ての事情を話し謝った原田は、再度「ごめんな?」と、謝りながらなまえの頭をぽんぽんと撫でれば「…別に、たかが御菓子で拗ねたりしねーよ!」となまえは放ちつつ明らかに頬を膨らませ、子供扱いすんな、と続けて拗ねる場面を見せれば、なまえの意外な一面を見る事が出来た様で、こういう時に見せる子供の様な素振りは、やはり愛おしく見えて仕舞うのであった。
「つーか、新八もあんときなまえだってハッキリ言やぁ、こんな事には…!」
「なっ…!?そりゃねーぜ!」
己に火の粉が散ってきた永倉は、慌てながら「なまえちゃんとは名指しで言ってなかったかもしれねーけど、酔ってた俺なりにちゃんと言ったぞ!」と原田に返せば、気まずそうに頭をポリポリ…と掻きながら苦い表情をし何も言い返せなくなってしまった原田は、あの金平糖をなまえにあげられなかった無念と、それよりも愛しの姫の好物を把握できなかった己の不甲斐なさにも正直、かなり落ち込んでいた。
「いーって、大福が一番好き、」
良く解らないフォローを入れるなまえに、とりあえずホッ…と安心した原田と永倉は、なまえを思い切り抱きしめ「なんなら今から大福食べにでも行くか?」と提案をするのであった。
「なまえちゃん、折角なんだ!いこうぜ?」
「…苺大福たべる、」
頬をぽっ、と苺色に染めたなまえが答えれば(勿論、大好物の大福にトキメク)原田と永倉は、その可愛らしい彼にキュンと胸を討たれ「可愛いなあ!」と叫び、我らが姫を抱えて早速迎えば、男三人で甘味屋へと足を運び、「おばちゃーん!」と元気に呼びつけては、苺大福を三個注文する。
「うおっ…!普段行かねぇから緊張するなー!」
堅苦しそうに茶を啜る永倉を見た原田は、「ぶふっ…!新八にはホント似合わねー場所…!」と笑いながら返せば、永倉は赤面しながら「うっさい!」と返す。
そんな二人を止めず、今か今かと苺大福の登場を大人しく待つなまえの前に、店のおばちゃんが「お待ちー」と持ってきてくれれば、なまえの機嫌は最大限に良くなり、「おばちゃん、ありがと、」と、歯を見せながら御礼を言った。
目の前に華奢な薄桃色の宝石がプルンと輝けば、なまえはつい、こくんっと喉を馴らし自然と頬を緩ませて仕舞うと、もう我慢出来ないとでも言う様子で「おらー、二人とも食おうぜ?」と紅月をキラキラ輝かせれば、言い合いをしていた原田と永倉には、苺大福を食べたいと伝えてくるなまえの様子が、まさに子犬がキュゥン…と鳴きながら耳を垂らす愛くるしい状況に見え、又しても胸をズキュン!と討ち鼻の下を伸ばすのであった。
「…うーめー…!」
いただきます、の言葉と共に手をパチンと合わせ感謝しつつ宝石を貪り、至福を感じながらトロン…とした表情を浮かべるなまえを眺める永倉と原田は、心が物凄く癒され、なまえの此の甘い表情が己にとって極上の御菓子だと思って仕舞うのであった。
「口に粉ついてる。」
くいっ、となまえの口の端についた苺大福の粉を己の親指で拭ってやり、その指を己の口でペロッと舐めあげながら原田がキザに言えば、なまえはニッ、と微笑みながら改めて御馳走して貰った御礼を伝えると、横から「でも、きっかけは俺の一言だよな!?」と必死にアピールをしてくる永倉にも、なまえは笑いながら御礼を言うのであった。
「俺にとって、ほんと大福って宝石だな、」
幸せなもん運んでくれる、と幸せそうな表情で物語るなまえに、永倉も原田も眩しい笑顔を向け、同時になまえの頭を撫でた。
「俺の宝石は、なまえの喜ぶ顔だぜ?」
「なまえちゃん、いつまでも俺の傍で良い顔してろよな!」
そんな二人からの口説き文句につい頬を緩ませて仕舞うなまえの最高の幸せな時間の今同じ頃、どうしても罪悪感に浸って仕舞った沖田と千鶴は、急いでなまえの分の金平糖を買い出しに二人で街へと走ったそうな…。
「待っててくださいね、なまえさん!
あれと同じくらい美味しい金平糖、買ってきますから!」
「勿論です!参りましょう、沖田さん!」
駄菓子菓子
(金平糖の金貨)(宝石の代償)
ーーー
歯は磨きましょうね!