紅月光の愛、封印の鈴音
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「お疲れさまどす!」
此処は何時も、華やかな色が鮮やかに舞い散る別格の建物。
そしてある日の、ある暖かい陽気の日。
忙しい合間な僅かな休憩時間の始まり、ある人気を誇る島原の一室で、おなご同士の会議はキャッキャッ!と高らかな話し声を奏でていた。
「新選組の沖田さん、素敵どすなぁ…」
ある舞妓が頬を染めながら放てば、同意の声がキャッキャッ!と更に大きく響き、お年頃な女の口は止まぬのを知らずに、会話は新選組の話題へとなっていったのだった。
新選組といえば、町人からは嫌われている彼らの筈だが、幹部連中に成れば…やはりどうしても美形が多いからだろうか、女性達の色恋の話の話題の人になってしまうのだろう。
(…新選組…)
濃い緑が掛かった色の質の良い髪を持ち、又、花弁のような唇、 可愛くくりくりしている目を持つ未だ幼さを覗かせる可愛らしい舞妓…小鈴は、ギュッ…と胸の前で拳を握り、周りの舞妓達の表情とは逆に、彼女だけは複雑な表情を浮かべた。
さて彼女は一体、新選組と何かあったのだろうか?
「私は、斎藤さん、とか…」
ぽっ、と頬を染めながらある舞妓が放てば、ねー!と同意の声を返すまた別の舞妓が、ふいっ、とまた別の舞妓に話しかけた。
「なぁ!小鈴は誰が素敵だと思う?」
新選組の話になった辺りから、口数が少なくなり俯いていた舞妓…小鈴は、いきなり自分に話題を振られ、ハッとした表情をし「そんな!…うちは…」と、何処か哀しげな表情をしながら、しかしどうしても頬をピンクに染めて仕舞った。
「やっぱり小鈴も…みょうじさん狙いだったりしてなぁ?」
小鈴の受け答えを聞かず、その舞妓が高らかな声をあげ、ダントツに一番人気、新選組のなまえの名が出れば、一斉にその場の舞妓のハートはなまえ一色に大きく深く染まるのであった。
「うち、前に彼のお相手した時に、見事に惚れてもうたわ…」
彼に大福は絶対やわ、と自慢げに放つ舞妓に、他の舞妓は羨ましいと大きく騒がしい声をあげる。
そう、彼は沖田や斎藤やらミーハーな人気とは違い、女心を完璧に鷲掴む完璧なる人気を誇っているのだ。
(なまえさんの事…なんも知らんくせに…)
なまえの事を、推測であーだこーだ、キャッキャッ!と黄色い声が飛び交い、盛り上がっている舞妓達を端から眺めてる子鈴は、嫉妬を含む複雑な気持ちを抱きながら、黙って話を聞いていた。
どうやら小鈴は、なまえに対して、特別な感情でもあるようで。
(今でも、こんなにこんなに愛おしい…)
そんな小鈴の髪では、可愛いお花の簪が、昼は太陽の光、夜は月光を浴びて、何とも綺麗にキラキラと輝いて咲いている。
「…っ、ぐしっ!」
同じ頃、新選組屯所内ー…
親愛なる近藤の部屋に遊びに来ているなまえは、部屋に響く大きなくしゃみをした。
「…なんだ、なまえ?風邪か?」
近藤がどれどれ、と彼の額に手をやり熱を計ってやれば、なまえは、ぐすっ、と鼻を啜りながら「んー…?」と、うなり声をあげ、眉間に皺を寄せる。
「…噂、されてたりしてー?」
熱は無いみたいだな、と近藤に微笑みかけながらなまえの頭をぽんぽん、と撫でてやれば、なまえは悪戯に笑ってみせた。
「はっはっは!人気者は辛いな?」
「…ありえねー、ろくな事じゃねーって、」
少し風に当て冷ました茶は、なまえの舌に流すのに心地よい温度に成りーー…
こくっ、と静かに喉仏を揺らす。
親愛なる彼の側で飲む茶は、彼にとって至福の一つであった。
まぁ、近藤以外なら誰に何て言われててもどーでもいい、なんて言いたげに茶に癒されたなまえは、のへーっとした表情をすれば、フフッ、と微笑む近藤は彼の隣に座り、彼のとは逆の熱い茶を啜りながら、「そういえば…」と、問いかけた。
「ふと思ったんだが…なまえは、好きな娘はいないのか?」
「!?…んな、」
のへっとした表情から一変、ぶふっ、と茶を吹き出しそうになったなまえは、いきなり何なんだ、と涙目になり近藤を見返せば、近藤は「2人きりなんだ、いいじゃないか。」と優しい微笑みを返した。
「…はー、新選組の頭が…」
しゃーねーなー、と首をかく素振りを見せるなまえを無視し、近藤は何故か少年の様に目を光らせ「まあまあ、なまえと一度で良いから、こういう話をしてみたかったんだ。」と、話を急かす。
今日は、とても天気が良い。
ぽかぽか暖かい日だまりに包まれれば、戦で生きる男達だって、稀の休息に相応しいと選びたくなる一呼吸ーー…
「…好きな、女、」
近藤から見たなまえは、一瞬、物凄く切ないような…なんとも言い難い表情をし、何だか遠く儚く何かを眺めるように、暫く沈黙を奏でる。
ーーー
(「うちは…貴男をお慕い申し上げております…っ!」 )
( 「私…貴男さえよければ…っ…舞妓を捨…」 )
ーーー
「…なまえ?」
なまえの沈黙に少し耐え難くなっていた近藤は、不思議そうな表情をしながらなまえに話しかければ、ハッと我に返り、わり…と静かに言葉を落とした後、また一つ、ぽろっと零す。
「あのさ、近藤さん…。
好きな女を、生涯賭けて護るのが男、だよな?」
始めて見る様ななまえを、近藤は少し困惑気味に、しかし力強く頷けば、なまえの紅い月は、掌の中の緑茶と共に、小さく揺れるのであった。
「…あのまま、小さな手をかっさらって…
あいつの為に生きてたら、」
封印しようと決めている小さな小さな欠片を、親愛なる彼に問われた所為か、つい零して仕舞ったなまえは、何時もの彼らしくなかった。
「…俺は、」
彼が放つあいつとは、彼を此処まで乱す程の唯一の、女ーー?
「…なまえ…?」
「…なーんてな?
俺が生涯を賭けて護るのは…あんただけ、」
紅と金に染まる瞳をしながら「近藤さんが俺の存在理由。…女に構ってる暇ねーよ、」と言葉を放つなまえに、近藤は不意をつかれ思わず胸をドキッー…と、鳴らした。
「全く、お前は~!」
ーー…
照れながら茶を啜る近藤の隣でなまえは、静かに縁側に目をやりながら外を眺め、又しても切ない表情を贈り、一つ深く息を吸い、ふぅっ…と吐き出した。
“さよなら”と共に、星空へ捨てた筈の想いー…
計算式で理論を馳せる機械じゃない、己の血と共に心臓を馳せる甘い感情を持つ自分自身に、なまえは苦虫を噛み潰す。
何故この時ばかり、人間のような感情を抱いて仕舞うのか。
普段の様に、化物でいれば良いだろう?
(…俺の心臓の裏で、)
なまえは、左胸の前で拳を造り、淡い想い出と共にギュッ…と包んで閉じ込め、押し込めば
ーーー
「そういえば、いつも小鈴がしてる簪、宝物なん?」
時間を忘れて話し込んで仕舞っていた舞妓達は、休息もそろそろ終いと気がつきバタバタと用意し始める中ーー…
ある舞妓に「その簪、絶対に肌身離さず大切にしてるけど」なんて話しかけられた子鈴は、少し驚きながら、しかし己の持つ意志の強い瞳を更に強く輝かせ、大きく頷く。
「へぇ、この簪は…うちの命どす。」
少女が語る命を問い掛けた舞妓は、簪に何を言うかと驚く表情をしたが、小鈴の一切迷いのない、誇りを掲げる瞳に頷く事しか出来ず、簪に目をやる。
(小鈴の、譲れない想い…)
小鈴は、この簪を、誰から貰った若しくは自分で購入した等の経緯など、一切何も教えては呉れなかったが、舞妓は次の瞬間、簪が唄う占いを、ふわぁっ…と読み取る不思議な感覚に陥った。
この簪はーー
小鈴と誰かを結ぶ、紅い愛【イト】
簪の華が導く、紅月光の静かな鈴の標。
(っ…小鈴…!)
気がつけば、その場に立ち竦む舞妓の頬には、ぼろぼろと溢れ出した涙石。
「どうなさったんどすか!?」
急な展開に、小鈴の焦る声が響いた。
残念ながら、現況である簪が唄う占いの結果は、彼女と簪のみぞ知る。
紅月光の愛、封印の鈴音
(簪に索く赤華)(封姻)
ーーー
癒えない、愛
許されない、異図
此処は何時も、華やかな色が鮮やかに舞い散る別格の建物。
そしてある日の、ある暖かい陽気の日。
忙しい合間な僅かな休憩時間の始まり、ある人気を誇る島原の一室で、おなご同士の会議はキャッキャッ!と高らかな話し声を奏でていた。
「新選組の沖田さん、素敵どすなぁ…」
ある舞妓が頬を染めながら放てば、同意の声がキャッキャッ!と更に大きく響き、お年頃な女の口は止まぬのを知らずに、会話は新選組の話題へとなっていったのだった。
新選組といえば、町人からは嫌われている彼らの筈だが、幹部連中に成れば…やはりどうしても美形が多いからだろうか、女性達の色恋の話の話題の人になってしまうのだろう。
(…新選組…)
濃い緑が掛かった色の質の良い髪を持ち、又、花弁のような唇、 可愛くくりくりしている目を持つ未だ幼さを覗かせる可愛らしい舞妓…小鈴は、ギュッ…と胸の前で拳を握り、周りの舞妓達の表情とは逆に、彼女だけは複雑な表情を浮かべた。
さて彼女は一体、新選組と何かあったのだろうか?
「私は、斎藤さん、とか…」
ぽっ、と頬を染めながらある舞妓が放てば、ねー!と同意の声を返すまた別の舞妓が、ふいっ、とまた別の舞妓に話しかけた。
「なぁ!小鈴は誰が素敵だと思う?」
新選組の話になった辺りから、口数が少なくなり俯いていた舞妓…小鈴は、いきなり自分に話題を振られ、ハッとした表情をし「そんな!…うちは…」と、何処か哀しげな表情をしながら、しかしどうしても頬をピンクに染めて仕舞った。
「やっぱり小鈴も…みょうじさん狙いだったりしてなぁ?」
小鈴の受け答えを聞かず、その舞妓が高らかな声をあげ、ダントツに一番人気、新選組のなまえの名が出れば、一斉にその場の舞妓のハートはなまえ一色に大きく深く染まるのであった。
「うち、前に彼のお相手した時に、見事に惚れてもうたわ…」
彼に大福は絶対やわ、と自慢げに放つ舞妓に、他の舞妓は羨ましいと大きく騒がしい声をあげる。
そう、彼は沖田や斎藤やらミーハーな人気とは違い、女心を完璧に鷲掴む完璧なる人気を誇っているのだ。
(なまえさんの事…なんも知らんくせに…)
なまえの事を、推測であーだこーだ、キャッキャッ!と黄色い声が飛び交い、盛り上がっている舞妓達を端から眺めてる子鈴は、嫉妬を含む複雑な気持ちを抱きながら、黙って話を聞いていた。
どうやら小鈴は、なまえに対して、特別な感情でもあるようで。
(今でも、こんなにこんなに愛おしい…)
そんな小鈴の髪では、可愛いお花の簪が、昼は太陽の光、夜は月光を浴びて、何とも綺麗にキラキラと輝いて咲いている。
「…っ、ぐしっ!」
同じ頃、新選組屯所内ー…
親愛なる近藤の部屋に遊びに来ているなまえは、部屋に響く大きなくしゃみをした。
「…なんだ、なまえ?風邪か?」
近藤がどれどれ、と彼の額に手をやり熱を計ってやれば、なまえは、ぐすっ、と鼻を啜りながら「んー…?」と、うなり声をあげ、眉間に皺を寄せる。
「…噂、されてたりしてー?」
熱は無いみたいだな、と近藤に微笑みかけながらなまえの頭をぽんぽん、と撫でてやれば、なまえは悪戯に笑ってみせた。
「はっはっは!人気者は辛いな?」
「…ありえねー、ろくな事じゃねーって、」
少し風に当て冷ました茶は、なまえの舌に流すのに心地よい温度に成りーー…
こくっ、と静かに喉仏を揺らす。
親愛なる彼の側で飲む茶は、彼にとって至福の一つであった。
まぁ、近藤以外なら誰に何て言われててもどーでもいい、なんて言いたげに茶に癒されたなまえは、のへーっとした表情をすれば、フフッ、と微笑む近藤は彼の隣に座り、彼のとは逆の熱い茶を啜りながら、「そういえば…」と、問いかけた。
「ふと思ったんだが…なまえは、好きな娘はいないのか?」
「!?…んな、」
のへっとした表情から一変、ぶふっ、と茶を吹き出しそうになったなまえは、いきなり何なんだ、と涙目になり近藤を見返せば、近藤は「2人きりなんだ、いいじゃないか。」と優しい微笑みを返した。
「…はー、新選組の頭が…」
しゃーねーなー、と首をかく素振りを見せるなまえを無視し、近藤は何故か少年の様に目を光らせ「まあまあ、なまえと一度で良いから、こういう話をしてみたかったんだ。」と、話を急かす。
今日は、とても天気が良い。
ぽかぽか暖かい日だまりに包まれれば、戦で生きる男達だって、稀の休息に相応しいと選びたくなる一呼吸ーー…
「…好きな、女、」
近藤から見たなまえは、一瞬、物凄く切ないような…なんとも言い難い表情をし、何だか遠く儚く何かを眺めるように、暫く沈黙を奏でる。
ーーー
(「うちは…貴男をお慕い申し上げております…っ!」 )
( 「私…貴男さえよければ…っ…舞妓を捨…」 )
ーーー
「…なまえ?」
なまえの沈黙に少し耐え難くなっていた近藤は、不思議そうな表情をしながらなまえに話しかければ、ハッと我に返り、わり…と静かに言葉を落とした後、また一つ、ぽろっと零す。
「あのさ、近藤さん…。
好きな女を、生涯賭けて護るのが男、だよな?」
始めて見る様ななまえを、近藤は少し困惑気味に、しかし力強く頷けば、なまえの紅い月は、掌の中の緑茶と共に、小さく揺れるのであった。
「…あのまま、小さな手をかっさらって…
あいつの為に生きてたら、」
封印しようと決めている小さな小さな欠片を、親愛なる彼に問われた所為か、つい零して仕舞ったなまえは、何時もの彼らしくなかった。
「…俺は、」
彼が放つあいつとは、彼を此処まで乱す程の唯一の、女ーー?
「…なまえ…?」
「…なーんてな?
俺が生涯を賭けて護るのは…あんただけ、」
紅と金に染まる瞳をしながら「近藤さんが俺の存在理由。…女に構ってる暇ねーよ、」と言葉を放つなまえに、近藤は不意をつかれ思わず胸をドキッー…と、鳴らした。
「全く、お前は~!」
ーー…
照れながら茶を啜る近藤の隣でなまえは、静かに縁側に目をやりながら外を眺め、又しても切ない表情を贈り、一つ深く息を吸い、ふぅっ…と吐き出した。
“さよなら”と共に、星空へ捨てた筈の想いー…
計算式で理論を馳せる機械じゃない、己の血と共に心臓を馳せる甘い感情を持つ自分自身に、なまえは苦虫を噛み潰す。
何故この時ばかり、人間のような感情を抱いて仕舞うのか。
普段の様に、化物でいれば良いだろう?
(…俺の心臓の裏で、)
なまえは、左胸の前で拳を造り、淡い想い出と共にギュッ…と包んで閉じ込め、押し込めば
ーーー
「そういえば、いつも小鈴がしてる簪、宝物なん?」
時間を忘れて話し込んで仕舞っていた舞妓達は、休息もそろそろ終いと気がつきバタバタと用意し始める中ーー…
ある舞妓に「その簪、絶対に肌身離さず大切にしてるけど」なんて話しかけられた子鈴は、少し驚きながら、しかし己の持つ意志の強い瞳を更に強く輝かせ、大きく頷く。
「へぇ、この簪は…うちの命どす。」
少女が語る命を問い掛けた舞妓は、簪に何を言うかと驚く表情をしたが、小鈴の一切迷いのない、誇りを掲げる瞳に頷く事しか出来ず、簪に目をやる。
(小鈴の、譲れない想い…)
小鈴は、この簪を、誰から貰った若しくは自分で購入した等の経緯など、一切何も教えては呉れなかったが、舞妓は次の瞬間、簪が唄う占いを、ふわぁっ…と読み取る不思議な感覚に陥った。
この簪はーー
小鈴と誰かを結ぶ、紅い愛【イト】
簪の華が導く、紅月光の静かな鈴の標。
(っ…小鈴…!)
気がつけば、その場に立ち竦む舞妓の頬には、ぼろぼろと溢れ出した涙石。
「どうなさったんどすか!?」
急な展開に、小鈴の焦る声が響いた。
残念ながら、現況である簪が唄う占いの結果は、彼女と簪のみぞ知る。
紅月光の愛、封印の鈴音
(簪に索く赤華)(封姻)
ーーー
癒えない、愛
許されない、異図