世に名を馳せる誠、猫が操る二人羽織
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ーーギィィィィィィンーー!!
金属と金属が重圧を思いきり掛け、火花がチリチリッと散ったように見えるほどの一撃、世界が一瞬だけこの為だけに強制停止したような、一枚の画が完成する。
「…貴様…!」
風間がギリギリ…ッと歯噛みし、不愉快に鬼を面を填め、冷酷に見下した。
「…会合はとっくに終わっており、我々の務めも既に終わりのはずですが…。」
既に気を失っている沖田の持っていた刀で、風間の一撃から彼を庇い、そう風間に語りかけながら仲裁に入る一人の男は、風間の刀を強い腕力を使い、ギィィン!と押し返すのだった。
「…っ…天霧…!」
不愉快な表情で睨む風間に、天霧は溜め息をつき「貴方が取り乱すなんて珍しいですね。さすが、伝説の妖鬼…」と呟きながら、床に沈むなまえに手を翳し、様態を看る。
「…は…、ぁ…っ…」
こぷっ、と僅かながら残り血を吐くも、風間のお陰で先程よりも様態が落ち着いてるなまえの体を触ったり、心臓を聞いたりしながら診察をしていると、上から珍しく震える声が降ってきたのだった。
「…なまえが…猛毒の何かを…口にしたようだ…!」
悔しくて、辛くて、己の拳をギリッと握り締める風間を目線だけで眺めた天霧は、ふとした情報を、ふと脳に巡らせ風間に放った。
「…この状態からすれば恐らく彼は、対鬼一族に使用する猛毒粉を吸っています…。」
私も詳しくは解らないが、その粉は、人間が何十年も前から極秘で研究しており、その資料が何処かしらに存在していたと聞いたことがある。
しかし完成している例はなく不完全な筈、誰かしらが、何かのルートで資料を探し当て、手探り状態で研究しながらでも未完成だが造りあげたのではないか、と天霧が推測し物を言えば、その話を始めて耳にする風間は、怒りの紅蓮を燃やし、冷酷な炎を灯す。
「…おのれ…人間が…っ…!!」
完璧に、新選組の戦略によってなまえが罠に嵌まった、と思う風間は、又しても沖田に刀を向けるが、天霧により阻止されてしまう。
何故だ、と睨みつければ、天霧は「新選組が、彼を殺すつもりでいたと決めつけるのは早い」と放ち、とにかく今は撤退するべきだ、と風間を無理矢理、腕力で強引に外へ連れ出した。
「…離せ…!なまえが…!」
納得がいかず暴れる風間に、天霧は「今、我々に出来ることは…彼の為に解毒薬を造る事では無いですか…!?」と声を荒げると風間は、ハッとした表情をし、ギリッ…と歯噛みする。
(…あの進行状態だと…恐らく、命は…)
諦めた風間を連れ出す天霧は、己の唇をぐっ…と噛み、自らの言葉で、やっと言いくるめた風間に気が付かれないように、逃れられぬ現実に対し、悔しさに震えるのだった。
ーーそして、長い長い夜が明けた。
実際の討ち入りは、一刻くらいの時間で終えられていたが、新選組にとっては本当に長い一夜だった。
池田屋にいた尊皇攘夷過激派の浪士は、二十数名だと言われており、新選組は七名の浪士を討ち取り、四名の浪士に手傷を負わせている。
これは後に解った事だが、会津藩や京都所司代の協力のもと、最終的には二十三名を捕縛することに成功しており、彼らの逃亡を助けようとした池田屋の主も、改めて捕縛される事となったようだ。
数に勝る相手への懐へ突入したことを思えば、新選組は目覚ましい成果を収めている。
しかし、新選組の被害も、浅いものでは済まされなかった。
なまえは血塗れになりながら気絶しており、沖田は胸部に一撃を受け気絶、平助は額を切られ流血、永倉も左手を負傷し、裏庭で戦った隊士の一人は戦死し、他にも二人の隊士が命に関わるような怪我をしてしまい、助かる見込みは無いに等しい。
この【池田屋事件】の活躍により、新選組は広く名を馳せ、京の平和は、これで守られたかのように見えたが…この事件をきっかけに更に大きな事件が動き始めていた。
ーーー
そして、新選組には一つ大きな疑問が残った。
それは、なまえが血塗れで気絶していた件ーー…
(…あー、もー、)
皆の治療も一段落終え、沖田も平助も揃え、広間に幹部一同…千鶴も含め集まる現在、なまえは四方八方塞がれ、部屋中に重たい空気を纏い、質問を投げかけられていた。
「…なまえ、いい加減吐きやがれ!」
土方が鋭い眼差しで、なまえの金と紅を屈折する事なく射抜く。
恐らくそれが出来るのは、土方だけであろう…。
他の皆は心配で仕方ない表情をし、千鶴は目に溢れんばかりの涙を溜め、なまえの顔をじっ…と見るが、ただ沖田1人は難しい顔をしたまま俯いていた。
「だから、気がついたら血塗れで気絶して…「なまえ、ふざけた事言うんじゃない!!」
なまえが視線を泳がせながら言葉を放てば、彼の言葉を遮る近藤の怒声が広間に響き渡った。
「最近のお前は、顔色が悪く体調が悪そうだっただろう…関係があるのか?」
珍しい近藤の一面に、皆は驚き、唾を飲み込み悲しい声をあげるが、なまえと沖田だけは…切ない表情をして顔を俯けたのだった。
「…っ、ちげーよ、」
親愛なる人に真剣な鋭い表情で言われて仕舞い、歯噛みしながら言葉を探すなまえは「…近藤さん…っ、俺…」と震え、平常心では居れなくなるのだった。
この人だけには、嘘を嘘で塗り固める事は、本来であれば許されない。
(なまえさん…!やっぱり体調が…そんな…!)
千鶴は、あの晩の不自然な彼を思い出し、涙を流しながらなまえに声を掛けようとした瞬間ーー
「…っ、沖田…さん…?」
身をのりだしなまえに言葉を放とうとする千鶴の肩を掴み、沖田が真剣な表情をして皆に放つのであった。
翡翠が鋭く輝けば、皆は不思議そうな声をあげ彼の名を呼んだ。
その中で、なまえは真実を沖田の口から放たれるであろうと察し、観念して両手を静かに顔の横にあげひらひら~と降り「…降参、」ばってん、と静かに呟いた後、ふっ…と苦笑いし、沖田の言葉を静かに待った。
「なまえさんはーー…」
沖田の形の良い唇から、言の葉が舞い散るのを、誰も逃す事なく必死で拾い集める。
それだけなまえは、新選組にとって不可欠なのであるー…
「なまえさんは…僕を庇って、浪士に斬られちゃったんだ…。」
僕が余所見なんてしてたから、と哀しそうな眼で皆に状況を伝えていくと、皆は驚いたような顔をし、何だと…?と聞き直す。
(…総…司…?)
なまえは、信じられない表情で沖田を見れば、沖田はなまえの眼を見て黙って頷くと「なまえさんは…ほら…」と呟き、すぐさま千鶴をチラッと見ながら紡ぐと、皆は理解を示し「…!っ…そうか…」と納得せざる終えない。
(なまえさんは…もしかしたら私と同じ体質なのかも…。
だからあの時、私が包丁で指を切ってすぐ治った事も…気味悪がらなかったのかな…)
斬られた、というなら何故傷痕が残ってないのか、と考えた千鶴だが、先日の事柄が頭の中で結び付き、自分なりに解釈をすると、何も聞き直さず黙っていた。
黙っている千鶴を見て、少し安心した皆は「…頼むから、無理しないでくれ」等の言葉達をなまえに投げかけ、斎藤は居ても立ってもいられず、黙ったままなまえにぎゅっ…!と抱きつき、意地でも離すもんか、となまえの胸に埋まった。
「…はじ…め…、」
なまえの胸に顔を埋めたまま表情を見せない斎藤は、ぎゅぅぅ…!と無言で抱きしめ、なまえの着物を握る手は静かに震えており、なまえは「ごめんな、」と感情を込め、何時ものように頭をぽんぽん、と撫でたのだった。
「…っ、土方さん…」
腕の中に斎藤を納めているままのなまえの頭を、土方は片腕で抱え込み、己の胸にギュッ…と納めると、少し震えた声で「てめえは何時も何時も…心配ばっかかけやがって」と漏らせば、周りの幹部達も一斉になまえに抱きつき、「馬鹿!」だの「心配かけんな!」などの声があがり、彼らにしか創る事が出来ない、雰囲気が広がった。
「総司も、平助もだ!」
原田が叫べば、二人にも熱い包容がされ、あはは、と笑い声も広がる。
千鶴はボロボロと涙を流しながら、その雰囲気を味わい、ほっとする反面、お客様の自分は決して味わう事の出来ない雰囲気に、羨ましさを覚えて仕舞うのだった。
静寂な宵は、京の気温までは冷やせはしないが、刻を暗く冷やすことは可能であり、生物を静物に誘うように語りーー…
「…総司。」
色々と落ち着き、沖田の部屋へと訪ねたなまえは、既に敷いてある布団の近くに静かに座り、沖田と向き合った。
沖田は既に布団の上に座り込み、沖田を支える白い布団は、小さな灯火に浮かび上がり厭らしく存在感を主張する。
「ん?なまえさん、どーしたの?」
今夜は一緒の布団に寝ようね、と甘える声でなまえに擦り寄れば、なまえは沖田の顎をクイッ…と指で掬い、顔を近くに寄せ静かに囁き問いかける。
「…お前、何企んでやがる、」
何でさっき、俺を庇った、と彼独特な妖艶を灯しながら翡翠を見下せば、沖田は其れに僅かに欲情して仕舞い、すぐ側にある愛しい頬を、己の両手で静かにそっと触れた。
「…それとも、バラしてほしかったの…?
嫌だね。貴方の秘密は…僕だけが知ってればいい…」
沖田の翡翠に独占支配の色が混ざり、誰にも教えない、僕がもっと強くなって貴方を守るから、と囁き、なまえの綺麗な唇を求め、己の唇をスッ…と寄せていく。
「…誓え、誰にも言うな、」
沖田が寄せる唇を、なまえは片手で抑えて塞げば、沖田は不機嫌に眉間に皺を寄せる。
「…反面、僕はなまえさんの弱みを握ってるって事だよ?」
「…ほお…、飼い主様に、爪立てんのか、」
己の口を塞ぐ手を掴み退かせ、上目使いで愛しの二色を覗く沖田に、わりー猫だな、躾すんべ、と囁きながらなまえは、沖田の頬をつまもうとした瞬間ー…
なまえの唇は、チュッ…と音をたてられ、温かく柔らかい感触を味わうのだった。
「…んなっ、」
最後に、舌でぺろっ、と唇を舐められたなまえは、いきなり何すんだ!と文句を言いながら、沖田の頬を、むぎゅっと強くつねる。
「…っ、ぃー…」
痛いなー、と自分の頬を擦る沖田は、表情は満足そうに緩んでおり、そして懲りずになまえの腕の中に埋まり「…なまえさんの馬鹿。」と続ける。
更には、浮気者、と拗ねながらなまえの胸に頭をぐりぐり擦る沖田を、ったく…と溜め息をつきながら頭を撫でてやりながら「あ?しらねーな、」となまえは返すのだった。
あいつ…絶対殺すから!と怒りの表情をしながら説明する沖田を眺め、なまえが「あー、ちーちゃん?」と返せば、更に沖田は不機嫌になり「何で、僕の知らない所で仲良くしてるの?なまえさんは、僕のなんだから…!」と力を込め思いきりなまえを抱きしめる。
猫の独占欲は、鬼にも負けず劣らず。
譲れないものは、譲れないのだ。
案の定、なまえから「…ぐえ、」と苦しそうな声があがり、このまま沖田に殺されるのでは、とか考えて居れば、その隙に沖田はなまえを布団に引っ張り込み、ぎゅぅっと抱きしめ独占し、そのまま眠りに就いたのだった。
(…ま、バレちまったのは吐血くれーだろ、多分)
己の胸に顔を埋め、すーすー寝息をたてる沖田を、よしよし…と撫でながら、なまえは己の体の事を考える。
(…千景に、御礼いわねーと、)
風間と言えば、彼が居なければ今頃どうなっていたか、もしかしたらそのまま御陀仏だったかも、なんて考え、南無南無…と唱えるなまえ。
気を失う前に見た例の口移しの場面は、ぶんぶん、と首を振り消し去るが、血を分けてくれた風間に感謝をしながら、また彼に逢うような気がする感覚を感じ、首元の刺青を指でなぞって、一つ欠伸をし、そのまま眠りに就いたー…
(くぁー…命って儚ねーな、)
世に名を馳せる誠、猫が操る二人羽織
(総司の意地悪)
ーーー
飲みました!
(薄桜鬼×はなの舞 コラボ第6弾)
飲んだ感想は、此の話の、
沖田で表現してみました。