硝煙鎮痛罪
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油小路の変から、未だ1ヶ月も経たない今この頃ー…
容赦なく、氷矢が突き刺さるかの様に襲ってくる死圧に、新選組は修復不可能を宣告される。
此の大きな事件の御陰で、予想以上に怪我を負った隊士の数、無惨にも亡くなった隊士、極秘任務だった故、伊東一派との間者の勤めを終え新選組に戻って来た、一般隊士からの斎藤の扱い。
そして、平助の死ー…
組織的にも理的にも外れ欠けの螺旋の不安感に、視界も視力も伏せたく成って行く。
暖顔色を欠落させて終った新選組。
月には大蜘蛛が覆い被さり、頑丈な糸を張り巡らせれば、虚無感で這いつくばせ遮光させたーー
「ったくよー…近藤さんや土方さんもよ…あんな液体の研究、いつまで続けてやがるんだ…!」
永倉と原田の怒りに満ちた寝酒が毎晩続く様に成れば、何かしら不満やらを零す様が目立つ様に成ってくる。
「…新八、お口にチャック、」
最近愚痴多いぜ、な?と物凄く哀しそうな表情をしながら返すなまえに、永倉はハッと我に返り口を閉じれば、頭を強く抱えた。
哀しくも逆らえない運命の揺り籠で眠る新選組は、個々の気持ちも厭に粉々になって逝く無様を描く中、朝廷が政治を行う、武士の時代が始まる前の姿に還る【王政復古の大号令】が下されるのを、黙って傍観するしか出来なかった。
幕府、将軍職の廃止に伴い、京都守護職、京都所司代まで無くなって仕舞い…新選組の信じてきたものが大きく音を立て崩れ始めようとしていたのであった。
ーーー
「…これ、土方さんから、」
月も眠るある日の深夜に、隊士達のほとぼりが冷めるまでと、屯所から離れている斎藤に文を届ける命を受けたなまえは、少々気まずさを残しながら斎藤の目の前に立っていた。
『なまえ、悪ィんだがーー深夜、この文を斎藤に届けてくれねェか?
昼間だと人の目もあるからよ…』
土方の頼み事が頭の中でリフレインしながら、なまえはむぐぐ…という表情をして仕舞えば、斎藤は「…夜中にすまなかったな…」と静かに文を握る。
斎藤の掌でクシャッ…と小さく鳴く紙は、斎藤となまえの意識に比例して、痛い痛いと軋んでは汗を含んだ。
「…つーか、俺でごめんな、」
気まずい雰囲気から逃げたい様を描き、視線を空へと仰ぎながら小さく放つなまえは、この文の伝達役を自分から志願したのでは無く、土方からの命だと説明を入れるのであった。
「…一、体調悪くしてねーで良かった、」
こうして様子見れて嬉しい、なんて苦笑いを落としながら続けるなまえに、今まで沈黙していた斎藤はやっと口を開き、彼の名を愛しそうに真っ直ぐと呼ぶ。
「…なまえ…、少し良いか?」
冷静な表情を保つ事が多い斎藤の筈だったのだが、今は瞳が揺らぎ泣き出しそうな表情を映せば、なまえの心音は大きく跳ね上がり、宵さえも深く眠りについた刻に、更かす彼らは二人の空間を抱き寄せた。
「…決して弱音は吐かぬ様、無論、此からも生きていきたい…」
強き太陽に勝る平助の輝きの様に…と繋げながら斎藤は、いつの間にかなまえとの距離を縮めて、そして彼の胸にコツン…と額を落とせば、口が勝手に言葉を放つ様を描きポロポロと零していった。`
「…時代や世の中が移り変わる中、人の思想、誠も変わってきて仕舞うのは致し方ないとは理解している…。
だが俺は…どうか最期まで…信念や誠を貫き、武士として死にたいと願う…」
斎藤の言霊を鼓膜に響かせながら視界を瞑るなまえは、彼の発には声を返さず、ただただ黙って胸の中の彼自身の身を預かっていた。
「ーー…変わらないものこそ、俺は信じる。」
あんたの眼球の輝きもー…と静かに放ち、己の指でなまえの濁る紅月をなぞる様な素振りを行った斎藤は、やっと其処でスッ…となまえから身を離した。
「あんたの【毒】ーー
…あんたの口から聞くまでは。」
核心を射抜く蒼は、濁り酒に飲まれる紅月を見限り、奏法の傷を抱えながら消えて雲。
「…はじめー、」
ザッ、ザッ…と音を立てながら背を向け去ってゆく途中の斎藤を、先程から黙っていたなまえが名を呼べば、斎藤はスッ…と静かに足を止めた。
「…体に気をつけろよ、」
にっ、と微笑む様な表情で斎藤に言葉を掛けたなまえは、其れだけを放った後に己も斎藤に背を向け、屯所へと足を進めば、人や鬼には見えぬ一太刀が、斎藤となまえの間に鋭く灯ったのだった。
「…っ、あんたにとって…俺は…!」
ーーー
屯所までの帰り道、毎度の吐血衝動に従うべくーー
「…ッ…がはっ…!!」
ゴプッ、ビシャッ、とその場に血を撒き散らし、左胸を手で抑えながらなまえは、ヒュー…ヒュー…とか細い呼吸と共に、先程の斎藤の言葉を脳内で再生した。
夜風が齎す小宴、碧への硝煙
「変わらないものこそ、か…、」
口の端から流れる己の涙を手の甲でグッ…と拭えば、ヌルッと赤黒く輝く制限が嘲笑いながらなまえを哀しく汚す。
【毒】に蝕まれる彼は、慰めてくれるわけもない空に汚れた手を伸ばせば、甲を這う血虫を鋭く睨むなまえの様子を、物陰から黙って見ていた斎藤は、衝撃的なシーンを目の当たりにし、放心状態に陥っていた。
「…はぁっ…っ…く…!!」
呼吸をする為に無我夢中で酸素を求めるが、己の声を漏らす事は確実に許されない。
いくら【毒】に蝕まれ苦しみ、吐血している愛しい者を見たとしても…啖呵を切った男の条件。
「…はぁっ…ッ…!」
呼吸も個救も乱れたまま迎えた慶応三年末ーー
倒幕の気運が高まる中、徳川幕府は大政奉還により政権を朝廷に返上するのであった。
硝煙鎮痛罪
(碧の弾雨)(毒罪)
ーーー
這う血虫に同情を乞うか?
同調する嗚咽
いい加減、見苦しい
容赦なく、氷矢が突き刺さるかの様に襲ってくる死圧に、新選組は修復不可能を宣告される。
此の大きな事件の御陰で、予想以上に怪我を負った隊士の数、無惨にも亡くなった隊士、極秘任務だった故、伊東一派との間者の勤めを終え新選組に戻って来た、一般隊士からの斎藤の扱い。
そして、平助の死ー…
組織的にも理的にも外れ欠けの螺旋の不安感に、視界も視力も伏せたく成って行く。
暖顔色を欠落させて終った新選組。
月には大蜘蛛が覆い被さり、頑丈な糸を張り巡らせれば、虚無感で這いつくばせ遮光させたーー
「ったくよー…近藤さんや土方さんもよ…あんな液体の研究、いつまで続けてやがるんだ…!」
永倉と原田の怒りに満ちた寝酒が毎晩続く様に成れば、何かしら不満やらを零す様が目立つ様に成ってくる。
「…新八、お口にチャック、」
最近愚痴多いぜ、な?と物凄く哀しそうな表情をしながら返すなまえに、永倉はハッと我に返り口を閉じれば、頭を強く抱えた。
哀しくも逆らえない運命の揺り籠で眠る新選組は、個々の気持ちも厭に粉々になって逝く無様を描く中、朝廷が政治を行う、武士の時代が始まる前の姿に還る【王政復古の大号令】が下されるのを、黙って傍観するしか出来なかった。
幕府、将軍職の廃止に伴い、京都守護職、京都所司代まで無くなって仕舞い…新選組の信じてきたものが大きく音を立て崩れ始めようとしていたのであった。
ーーー
「…これ、土方さんから、」
月も眠るある日の深夜に、隊士達のほとぼりが冷めるまでと、屯所から離れている斎藤に文を届ける命を受けたなまえは、少々気まずさを残しながら斎藤の目の前に立っていた。
『なまえ、悪ィんだがーー深夜、この文を斎藤に届けてくれねェか?
昼間だと人の目もあるからよ…』
土方の頼み事が頭の中でリフレインしながら、なまえはむぐぐ…という表情をして仕舞えば、斎藤は「…夜中にすまなかったな…」と静かに文を握る。
斎藤の掌でクシャッ…と小さく鳴く紙は、斎藤となまえの意識に比例して、痛い痛いと軋んでは汗を含んだ。
「…つーか、俺でごめんな、」
気まずい雰囲気から逃げたい様を描き、視線を空へと仰ぎながら小さく放つなまえは、この文の伝達役を自分から志願したのでは無く、土方からの命だと説明を入れるのであった。
「…一、体調悪くしてねーで良かった、」
こうして様子見れて嬉しい、なんて苦笑いを落としながら続けるなまえに、今まで沈黙していた斎藤はやっと口を開き、彼の名を愛しそうに真っ直ぐと呼ぶ。
「…なまえ…、少し良いか?」
冷静な表情を保つ事が多い斎藤の筈だったのだが、今は瞳が揺らぎ泣き出しそうな表情を映せば、なまえの心音は大きく跳ね上がり、宵さえも深く眠りについた刻に、更かす彼らは二人の空間を抱き寄せた。
「…決して弱音は吐かぬ様、無論、此からも生きていきたい…」
強き太陽に勝る平助の輝きの様に…と繋げながら斎藤は、いつの間にかなまえとの距離を縮めて、そして彼の胸にコツン…と額を落とせば、口が勝手に言葉を放つ様を描きポロポロと零していった。`
「…時代や世の中が移り変わる中、人の思想、誠も変わってきて仕舞うのは致し方ないとは理解している…。
だが俺は…どうか最期まで…信念や誠を貫き、武士として死にたいと願う…」
斎藤の言霊を鼓膜に響かせながら視界を瞑るなまえは、彼の発には声を返さず、ただただ黙って胸の中の彼自身の身を預かっていた。
「ーー…変わらないものこそ、俺は信じる。」
あんたの眼球の輝きもー…と静かに放ち、己の指でなまえの濁る紅月をなぞる様な素振りを行った斎藤は、やっと其処でスッ…となまえから身を離した。
「あんたの【毒】ーー
…あんたの口から聞くまでは。」
核心を射抜く蒼は、濁り酒に飲まれる紅月を見限り、奏法の傷を抱えながら消えて雲。
「…はじめー、」
ザッ、ザッ…と音を立てながら背を向け去ってゆく途中の斎藤を、先程から黙っていたなまえが名を呼べば、斎藤はスッ…と静かに足を止めた。
「…体に気をつけろよ、」
にっ、と微笑む様な表情で斎藤に言葉を掛けたなまえは、其れだけを放った後に己も斎藤に背を向け、屯所へと足を進めば、人や鬼には見えぬ一太刀が、斎藤となまえの間に鋭く灯ったのだった。
「…っ、あんたにとって…俺は…!」
ーーー
屯所までの帰り道、毎度の吐血衝動に従うべくーー
「…ッ…がはっ…!!」
ゴプッ、ビシャッ、とその場に血を撒き散らし、左胸を手で抑えながらなまえは、ヒュー…ヒュー…とか細い呼吸と共に、先程の斎藤の言葉を脳内で再生した。
夜風が齎す小宴、碧への硝煙
「変わらないものこそ、か…、」
口の端から流れる己の涙を手の甲でグッ…と拭えば、ヌルッと赤黒く輝く制限が嘲笑いながらなまえを哀しく汚す。
【毒】に蝕まれる彼は、慰めてくれるわけもない空に汚れた手を伸ばせば、甲を這う血虫を鋭く睨むなまえの様子を、物陰から黙って見ていた斎藤は、衝撃的なシーンを目の当たりにし、放心状態に陥っていた。
「…はぁっ…っ…く…!!」
呼吸をする為に無我夢中で酸素を求めるが、己の声を漏らす事は確実に許されない。
いくら【毒】に蝕まれ苦しみ、吐血している愛しい者を見たとしても…啖呵を切った男の条件。
「…はぁっ…ッ…!」
呼吸も個救も乱れたまま迎えた慶応三年末ーー
倒幕の気運が高まる中、徳川幕府は大政奉還により政権を朝廷に返上するのであった。
硝煙鎮痛罪
(碧の弾雨)(毒罪)
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這う血虫に同情を乞うか?
同調する嗚咽
いい加減、見苦しい