鬼の目にも涙
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「……。」
京の星も眠る静寂、今宵の在る一室は、異様な雰囲気を放っている様。
正真正銘、ホンモノを司る鬼の眼の前に、ホンモノになると誓った其の鬼は、絶対的な威厳を纏、威嚇するかの様に優勢を握っていた。
致し方ない、せめてその部屋の隅に置いてある、火の点りに縋られせては呉れないか。
(…っ、)
なまえはつい、滅多にしないであろう喉でこくん、と唾を飲み込んで仕舞い、蛇に睨まれた蛙とやらをこの身で味わっていた。
相手は人間の分際で、とは言わないが…おそらくなまえを、今の状況の様に怯ませる事が可能である人間は土方しか居ないのでは無かろうか。
(…ちっ…、)
舌打ちの打刻、1対1の法則ー…
嫌になる程、静かすぎる冷たい空気。
そして、先程からの土方の真剣な威圧に、なまえは何かを察し始め、無意識に足をずりずり…と壁際に逃げるように背中をつける。
「…俺、あんたになんかした?」
己の無意識な情けなさに多少苦笑いを浮かべ、わざわざ呼び出して、なんだべ一体…なんて零せば、やはり彼の性格はこんな時でも直球でしかなく、変化を紛らわす事は不可能だと証明させた。
「……。」
土方の表情が、眉間が、ぴくっ…と動いた直後、少し呆れたように吐く小さな溜息を合図に、己の着物の胸元をゴソゴソと探る。
「…おめぇ、今夜は総て吐くまで逃がさねぇからな。」
覚悟しろよ、と、この1対1の空間で第一声を、土方はやっと放ったと思えば、その第一声が何とも恐怖な言の葉で、なまえは流石に表情をムッと歪めたのだった。
「…あ、?」
一体、なんなんだ、と少し感情を込めて言い返せば、土方が先程、胸元から探り出した物を、空気を斬るような音を奏ながら、壁際に寄りかかるなまえの端正な顔を目掛けて、投げつけた。
ー…ヒュッ…!
己の顔目掛けて投げつけられた物を、パシッ、と左手で華麗に掴んだなまえは、己の掌に収まる小さな物を不思議そうな表情をしながら見れば、其れはー…
「ん、包…、粉、?」
なまえは、小さな紙に包まれた中身を確認しようと、少しだけ指に力を込めれば、その包み紙はキシッ…と指先から逃げるような、粉のような感触を覚えた。
此の粉を包んだ人物は、相当な想いを込めたのだろう。
紙は、目当ての人物の手に渡るまで、粉を微塵たりとも零す事を許さない、と言う様に厳重、尚且つ丁寧に包まれていた。
包んだ人物が、どのような想いだったのかは、流石になまえにだって解るわけは無いのだが、その念の様な物は、何故か伝わってきたのだった。
さて、此の粉と、俺と、
何の関係が在るって言いやがる?
「なまえ…その粉に覚えは?」
「知らねーな、あんだよ、」
「…薬、だと言ったら?」
土方の鋭い紫は、なまえの紅い月を意図も簡単に刀を突き刺すかのように棘を向ければ、機転が利くなまえの心臓は、嫌な音を一つ、ゴトン…と奏でた。
しかし何故、薬?
一体、誰が、何故、土方が、
そして、俺が、此の、現罪【イマ】ー…
「総司と一戦交えた、例の金髪のツリ眼のあの男ー…この間の件の去り際に、その薬を俺に渡して、おめぇに飲ませろ、だとよ。」
さぁ…言い訳するなら、逃げるなら、やってみやがれ。
ほら、かかってこいよー…そう叫びそうな紫の一太刀に、眩暈に陥りそうになりながら、紅い月は沈み込む。
「覚悟しやがれ、なまえ…!」
(…ちーちゃん…)
ひくっ、と苦笑い、
よりによって此の御方セレクトなんて、彼は良い趣味してやがる。「…なまえ、もう逃げられねぇぜ。」
土方の鋭い眼は、正直、なまえも怯む時があった。
さて、この現罪【イマ】から、どうやって逃げようか、なんて頭をフル回転させる為に黙っていたら、ガンっ!と叩きつけられる音と体に痛みを覚えた。
「…っ…!」
土方は、なまえの髪の毛を鷲掴み、壁に叩きつけるように追い詰め、鋭い紫を更に抉るように突き刺し、「拷問は、俺の得意分野だぜ?吐くまでいたぶってやろうか?」なんて、切羽詰まったように言葉でも抉られる。
「土方さん…、」
髪をつかむ手はわずかに震え、汗を額に浮かべて、孤立を覚え泣きそうな紫に…なまえは其れを、何とも言えない難しい感情に襲われ、そして抱き締めたくなる衝動に駆られた。
勘弁してくれーー俺の所為で、あんたをそんな眼にしたくない。
「…あんたらしくねー…」
髪を捕まれ土方の顔へと無理やり向かされてるなまえは、自然と上目使いになりながら、悪戯に歯を魅せ笑う様な表情をすれば、土方をグッ…と抱きしめた。
「…なまえ…?」
「…あーもー、降参。
全部吐くから、受け止めやがれ、」
俺が吐いたブツ、全部飲むまで寝かせねーよ…?なんて悪戯に言えば、先程の空気と、土方の紫から孤立は退き、いつもの「馬鹿やろう。」を鼓膜に優しく響かせる事が出来た。
いつものなまえの知る土方の小言は、温かくて心地良い。
「なまえ…頼むから、隠し事はやめてくれ。」
珍しく、切羽詰まった土方が見れたんだ。
深い、不快、内緒話ー…
何ビートで刻んで逝きましょうか?
おっと、その前に条件が在るー…。
「その代わり…絶対、誰にも言わないで、」
なまえは、紅と金の彩を染め上げ、芯を貫き通し語れば、土方は、珍しく何も問い掛けもせず静かに頷いた。
粉々に割れたビー玉を、素足で踏みながら擦り潰す。
血液と一緒に、体内に巡るダスト。
そんなイメージを何故か頭に浮かべながら、なまえは、土方の腕の中で、一から順に言葉を吐いていった。
普段は動かない彼の唇が、普段は説明をする事もない口が、始まりの大蛇の猛毒酒から…と一つ一つ、吐いては又吐いてを繰り返し、そんな彼の決意を真剣に責任を持ちながら、土方は、生地獄を味わうような辛くて跪きたくなるような現実を、受け止めていったのだったー…。
ーーー
「最終確認。
皆に、特に近藤さんには絶対に…、」
土方は、彼との今すぐにでも約束を破り近藤に報告をし、なまえを脱退させ療養させたかったのが本音だが、捨てられた子犬の様な眼で必死に縋りながら土方に語るなまえを見れば、土方は、近藤に対する計り知れないなまえの気持ちが痛いほど辛かった。
「俺の生命のリミット、
最期まで近藤さんと、あんたらの為に…」
自分の身体は、自分が一番解ってるから、と続け、己の左胸の壊れ架けた爆弾に手を賭けながら語り尽くせば、何も言えなくなった土方から急に腕を捕まれ、抱きしめられた。
「っ…馬鹿やろう…!!」
「おー、」
「おめぇは…その生き方で…後悔しねぇのか…?」
なまえを胸にしまい込みながら震える土方が静かになまえに問いかければ、なまえは己の頬にポタポタ…と降り堕ちる雫を拾いながら、「俺の生きる場所は此処しかねーんだから、散るのも此処しかねーよ、」と投げ掛けた。
「鬼の眼にも涙、なーんちゃって?
…あったけ、」
「…安心しろ。
おめぇは、毒になんざ殺させやしねぇ…!!…毒に奪われるくらいならいっそ…俺の手で斬り殺してやるよ…!」
「んぐ、」
気休めでもない、嘘じゃない。
武士として、新選組としてー…
なまえの最期は、どうかこの俺がー…!
明星もそろそろ起きだそうとする今日という黎明に、土方の涙は、暫く降り続くーー…
鬼の目にも涙
(涙石の裏に映る、鼓動制限)
ーーー
最期の、おねだり、
「殺してあげる」
京の星も眠る静寂、今宵の在る一室は、異様な雰囲気を放っている様。
正真正銘、ホンモノを司る鬼の眼の前に、ホンモノになると誓った其の鬼は、絶対的な威厳を纏、威嚇するかの様に優勢を握っていた。
致し方ない、せめてその部屋の隅に置いてある、火の点りに縋られせては呉れないか。
(…っ、)
なまえはつい、滅多にしないであろう喉でこくん、と唾を飲み込んで仕舞い、蛇に睨まれた蛙とやらをこの身で味わっていた。
相手は人間の分際で、とは言わないが…おそらくなまえを、今の状況の様に怯ませる事が可能である人間は土方しか居ないのでは無かろうか。
(…ちっ…、)
舌打ちの打刻、1対1の法則ー…
嫌になる程、静かすぎる冷たい空気。
そして、先程からの土方の真剣な威圧に、なまえは何かを察し始め、無意識に足をずりずり…と壁際に逃げるように背中をつける。
「…俺、あんたになんかした?」
己の無意識な情けなさに多少苦笑いを浮かべ、わざわざ呼び出して、なんだべ一体…なんて零せば、やはり彼の性格はこんな時でも直球でしかなく、変化を紛らわす事は不可能だと証明させた。
「……。」
土方の表情が、眉間が、ぴくっ…と動いた直後、少し呆れたように吐く小さな溜息を合図に、己の着物の胸元をゴソゴソと探る。
「…おめぇ、今夜は総て吐くまで逃がさねぇからな。」
覚悟しろよ、と、この1対1の空間で第一声を、土方はやっと放ったと思えば、その第一声が何とも恐怖な言の葉で、なまえは流石に表情をムッと歪めたのだった。
「…あ、?」
一体、なんなんだ、と少し感情を込めて言い返せば、土方が先程、胸元から探り出した物を、空気を斬るような音を奏ながら、壁際に寄りかかるなまえの端正な顔を目掛けて、投げつけた。
ー…ヒュッ…!
己の顔目掛けて投げつけられた物を、パシッ、と左手で華麗に掴んだなまえは、己の掌に収まる小さな物を不思議そうな表情をしながら見れば、其れはー…
「ん、包…、粉、?」
なまえは、小さな紙に包まれた中身を確認しようと、少しだけ指に力を込めれば、その包み紙はキシッ…と指先から逃げるような、粉のような感触を覚えた。
此の粉を包んだ人物は、相当な想いを込めたのだろう。
紙は、目当ての人物の手に渡るまで、粉を微塵たりとも零す事を許さない、と言う様に厳重、尚且つ丁寧に包まれていた。
包んだ人物が、どのような想いだったのかは、流石になまえにだって解るわけは無いのだが、その念の様な物は、何故か伝わってきたのだった。
さて、此の粉と、俺と、
何の関係が在るって言いやがる?
「なまえ…その粉に覚えは?」
「知らねーな、あんだよ、」
「…薬、だと言ったら?」
土方の鋭い紫は、なまえの紅い月を意図も簡単に刀を突き刺すかのように棘を向ければ、機転が利くなまえの心臓は、嫌な音を一つ、ゴトン…と奏でた。
しかし何故、薬?
一体、誰が、何故、土方が、
そして、俺が、此の、現罪【イマ】ー…
「総司と一戦交えた、例の金髪のツリ眼のあの男ー…この間の件の去り際に、その薬を俺に渡して、おめぇに飲ませろ、だとよ。」
さぁ…言い訳するなら、逃げるなら、やってみやがれ。
ほら、かかってこいよー…そう叫びそうな紫の一太刀に、眩暈に陥りそうになりながら、紅い月は沈み込む。
「覚悟しやがれ、なまえ…!」
(…ちーちゃん…)
ひくっ、と苦笑い、
よりによって此の御方セレクトなんて、彼は良い趣味してやがる。「…なまえ、もう逃げられねぇぜ。」
土方の鋭い眼は、正直、なまえも怯む時があった。
さて、この現罪【イマ】から、どうやって逃げようか、なんて頭をフル回転させる為に黙っていたら、ガンっ!と叩きつけられる音と体に痛みを覚えた。
「…っ…!」
土方は、なまえの髪の毛を鷲掴み、壁に叩きつけるように追い詰め、鋭い紫を更に抉るように突き刺し、「拷問は、俺の得意分野だぜ?吐くまでいたぶってやろうか?」なんて、切羽詰まったように言葉でも抉られる。
「土方さん…、」
髪をつかむ手はわずかに震え、汗を額に浮かべて、孤立を覚え泣きそうな紫に…なまえは其れを、何とも言えない難しい感情に襲われ、そして抱き締めたくなる衝動に駆られた。
勘弁してくれーー俺の所為で、あんたをそんな眼にしたくない。
「…あんたらしくねー…」
髪を捕まれ土方の顔へと無理やり向かされてるなまえは、自然と上目使いになりながら、悪戯に歯を魅せ笑う様な表情をすれば、土方をグッ…と抱きしめた。
「…なまえ…?」
「…あーもー、降参。
全部吐くから、受け止めやがれ、」
俺が吐いたブツ、全部飲むまで寝かせねーよ…?なんて悪戯に言えば、先程の空気と、土方の紫から孤立は退き、いつもの「馬鹿やろう。」を鼓膜に優しく響かせる事が出来た。
いつものなまえの知る土方の小言は、温かくて心地良い。
「なまえ…頼むから、隠し事はやめてくれ。」
珍しく、切羽詰まった土方が見れたんだ。
深い、不快、内緒話ー…
何ビートで刻んで逝きましょうか?
おっと、その前に条件が在るー…。
「その代わり…絶対、誰にも言わないで、」
なまえは、紅と金の彩を染め上げ、芯を貫き通し語れば、土方は、珍しく何も問い掛けもせず静かに頷いた。
粉々に割れたビー玉を、素足で踏みながら擦り潰す。
血液と一緒に、体内に巡るダスト。
そんなイメージを何故か頭に浮かべながら、なまえは、土方の腕の中で、一から順に言葉を吐いていった。
普段は動かない彼の唇が、普段は説明をする事もない口が、始まりの大蛇の猛毒酒から…と一つ一つ、吐いては又吐いてを繰り返し、そんな彼の決意を真剣に責任を持ちながら、土方は、生地獄を味わうような辛くて跪きたくなるような現実を、受け止めていったのだったー…。
ーーー
「最終確認。
皆に、特に近藤さんには絶対に…、」
土方は、彼との今すぐにでも約束を破り近藤に報告をし、なまえを脱退させ療養させたかったのが本音だが、捨てられた子犬の様な眼で必死に縋りながら土方に語るなまえを見れば、土方は、近藤に対する計り知れないなまえの気持ちが痛いほど辛かった。
「俺の生命のリミット、
最期まで近藤さんと、あんたらの為に…」
自分の身体は、自分が一番解ってるから、と続け、己の左胸の壊れ架けた爆弾に手を賭けながら語り尽くせば、何も言えなくなった土方から急に腕を捕まれ、抱きしめられた。
「っ…馬鹿やろう…!!」
「おー、」
「おめぇは…その生き方で…後悔しねぇのか…?」
なまえを胸にしまい込みながら震える土方が静かになまえに問いかければ、なまえは己の頬にポタポタ…と降り堕ちる雫を拾いながら、「俺の生きる場所は此処しかねーんだから、散るのも此処しかねーよ、」と投げ掛けた。
「鬼の眼にも涙、なーんちゃって?
…あったけ、」
「…安心しろ。
おめぇは、毒になんざ殺させやしねぇ…!!…毒に奪われるくらいならいっそ…俺の手で斬り殺してやるよ…!」
「んぐ、」
気休めでもない、嘘じゃない。
武士として、新選組としてー…
なまえの最期は、どうかこの俺がー…!
明星もそろそろ起きだそうとする今日という黎明に、土方の涙は、暫く降り続くーー…
鬼の目にも涙
(涙石の裏に映る、鼓動制限)
ーーー
最期の、おねだり、
「殺してあげる」