うちの息子
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「新八、大袈裟…。」
ーーーーー
あの揚屋での騒ぎを土方と近藤に任せて急いで帰ってから直ぐ、残りの者はなまえを囲んで
の手当てが始まった。
手当ての担当をしたのは、珍しく涙目になりながら、消毒液と包帯を抱えた永倉だった。
「おら、なまえちゃん!顔貸してみろ!」
永倉は余程慌ててるのか、なまえの顔を自分に向かせるために触れた手には、知らず知らず力が入ってしまう。
周りの者は、なまえの白い肌にべっとりと染み浮かぶ赤が、余計に鮮明に映り、余りにも痛々しく見えて顔を歪ませた。
そして普段、己が血を流すことなど決してしないなまえが、今こうして目の前に居る。
かなり衝撃が深かったのは皆同じの様ーー…。
そんな重たい空気の中、当の本人は悩んでいた。
(…実は平気だったりして、)
ぼたぼた流れた血のおかげで痛々しく見えるが、鬼の力のお陰様で傷口は塞がりつつあった。
しかし、焦りと衝撃と悲しみで、全く余裕がない者達には、気づかれていないようで。
(…むー、まずい。)
このままいけば、血を拭われてバレるのは時間の問題。
そこで考えたなまえは、ぽんっ、と一つの策を思い浮かべ、なまえは、こそっと連結鍵に手をやり、カチッ…と弄ると、瓶の部分が少しぼやっと光った瞬間、
ー…ブッ…ッ!
塞がり掛けてた傷から、血液がまた僅かに溢れ出し、ぽたぽた…っ、と泣いた。
それを見た永倉は、今でも泣きそうな顔をして「ほら、なまえちゃん。
かなり沁みると思うが、我慢してくれよ…!」と嘆いた。
(…よし、)
なまえは、連結鍵で自分の鬼と妖の血液のバランスを少し弄り治癒力の高い鬼の血を下げ、妖の血の気の多さを活かし、その分、多く絞り上げ出した。
端からみれば荒業を、全く…この男は…。
永倉は、なまえの頬の血を拭い、急いで傷口の処置を施す。
「おっと…眩暈が…」
誤魔化すなまえに(思いきり棒読みだが、本人は至って本気)永倉は一旦手を引っ込ませ周りの者も驚き慌てる。
「なっ…頼むよ、 なまえちゃん。大人しくしてくれ…!」
永倉がそう言うと、渋々ながら原田が、なまえを押さえつける。
傷口の深さは、芹沢にやられた時の印象が強く、周りの者は皆、パックリいったと思ってるのと、なまえの完璧(?)な演技の為、塞ぎつつあるとまでは気が付かなかった。
「新八!はやくしろ!」
新八は、丁寧かつ急ぎながら、処置を施した。
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という一連の流れがあり、今このような状況にいる。
「包帯の消費量すまん、」
なまえは、永倉に大袈裟だと一言いいつつ顔は綻んでいた。
ギチッ…と音がなるくらい、なまえの片目を包帯で覆ってある今は、紅だけが輝いてる。
「いーんだよ、それくらいで!」
先ほどの泣きそうな顔は、どうやら落ち着き、無事に施して安心した顔をする永倉。
「なまえ!目は、傷ついてねぇよな?大丈夫だよな!?」
平助は、なまえの顔近くまで自分の顔を近づけ、問いただした。
「ん、へーき。」
なまえは、いつもの表情で、平助の頭をぽんぽんっ、と撫でた。
その様子を見て、者達も安心した。
目の事もそうだが、あの恐ろしい なまえはもういない、という意味も含めてー…。
平助は、頭を撫でられながら、ぎゅうっとなまえを抱きしめた。
「ちょっ…!」
周りの者達は、驚きと不満の声をだすが、平助の真剣な雰囲気に、見守るしかなくてー…。
平助?と、なまえが平助の頭を撫でながら不思議そうに聞き返すと、なまえの胸元あたりに埋めた顔をあげ、上目使いでなまえに語った。
「なまえっ…、
オレさ… オレ…なまえの目…大好きだからなっ!」
そう言い放つと、平助は真っ赤になりながら、また顔を埋めてしまう。
なまえは、きょとんとした後、頬をピンクに染めて、思いきり優しい表情をした。
ふわっ、と優しい雰囲気を肌全身で感じながら、へへっと顔を染めて平助はまた、なまえをもっと強く抱きしめて、胸元に埋めた。
「へへ、なまえ大好きだ! 」
そんな平助の幸せな時間は、音をたてベリベリっ…と剥がれてしまった。
「ちょっと、いつまでも 僕のなまえさんに抱きつくの、やめてくれる?」
我慢の限界と言うように、沖田は 平助の肩をつかみ、なまえと平助を引き剥がした。
幸せな時間を邪魔された平助は、
「いつ、総司のになったんだよ!」不満たっぷりに文句を言い、沖田の発言は聞き捨てならん、とそれに交わる他の者達はギャーギャーと言い合いになる。
ただ、ある一人を除いて…。
(…ん、今日も平和、)
変な納得をして身軽になったなまえは、うんうんと眺めてた。
その瞬間を狙うかのようにすかさず彼に触れるチャンスを狙う原田。
「……っ、!?」
急に、ぐいっと後ろから肩を引き寄せるられたなまえは、視界が未だ馴れてない事も有り跳ね上がる。
「…何だ、」
一瞬、何をされてるか解らずなまえは身構え、それを見た原田は、くすっと笑いながら、後ろからなまえの耳元に「痛くねぇか…?」と囁いた。
なまえは耳元で話され、左之…?と零し、びくっと肩を震わせながら、もう痛くねーから離せ と、原田を見上げた。
「…聞こえてるか?」
離してくれない原田を不思議に思ったなまえは、原田の腕を軽く叩くと、それが合図となり、原田はなまえの腰に手を置き其の儘脇腹をツツッ…と撫でれば、なまえの反応を眺め彼をからかった。
「…!?」
ゾワッとするなまえを見て、原田は上機嫌に成れば、逆の手でなまえの顎を背後から掴んだ。
「なまえ…消毒するときゃ、俺んとこ来いよ?」
そう囁くと原田は自分の舌を、べろっと厭らしく出し、なまえの目に巻いてある包帯に舌を這わせた。
「…っ…!いい加減に…!」
なまえは反応した後、真っ赤な顔で原田を睨めば、どんっと振り払い逃げていった。
「あーあ…ちと揶揄い過ぎたか?」
原田は自分から逃げていくなまえを見て、フフッと呟きながら名残惜しそうにしつつ、プンスカ怒るなまえの背中を眺めていた。
あの騒ぎから、数日ほど経った頃ーー…
「隊の名前と、それぞれの役職を決めておいた。
目を通しておいてくれねえか」
芹沢の肩もみをしていた井吹を余所に、新見が「まったく、井吹君は本当に使えない」などと愚痴愚痴言われて、気分悪くなってウンザリし始めた頃…近藤、土方、山南が部屋に訪ねてきた。
軽い内容としては、局長は、芹沢、新見、近藤の三人ということ。
「…隊の名前は、浪士組か。どうも締まらんな」
芹沢がぼやくと、隊名についてはもう少し話し合ってから正式名称を決めることにしましょう、と山南から補足が入る。
その言葉を聞きながら芹沢は、役職の名前が書いてある内容を目で準々に追っていくと、ある場所で目線が一定し、眉間に皺が強く寄る。
「勘定…みょうじ…だと…?
これは一体、どういう事だ!」
芹沢は、静かに唸り、目の前の者に問いただす。
「見ての通りだ。…いくら後ろ盾がついたからといって、この先何があるかわからねえ。
金の動きは重要になるうえ、頭の切れる信頼のある者に、浪士組の今後を任せようと思う。」
土方は、当然だろ?という顔で言い放つ。
人選も絶対に間違って無い。そう言いたげな土方に、芹沢は一言言い返そうと思った直後、土方が書類をもう一枚差し出した。
「それから!隊をまとめる為の決まりなんかも作ってみた。目を通しておいてくれ。」
ー…
「右の条々に背く者は、切腹申付べく候なり、ですって!?」
何々…と、一つ一つの決まりを読み上げ終わった後、新見は抗議の声を放ち、金切り声を上げながら、手にした書類を畳の上へ投げ捨てる。
その様を眺めてた芹沢は、先ほどよりもっと眉間に皺を寄せ、歯を食いしばり、睨みつけ、またしても問いただす。
「…フッ、そんなにみょうじ が可愛いか?拾ってきただけ拾ってきて、躾もまともに出来ん貴様等の代わりに、俺がしてやったまでのことー…!島原での事が、そんなに気に食わないか?」
近藤の目の色が一瞬、殺意を含む色に変わったが、ぐっ…と目を瞑り、黙って聞いていた。
それを煽るかのように、随分、私情が入った決まりだなと嫌味を放ち嘲笑う芹沢に対し、土方は、落ち着き払った様子で答えた。
「…今後集まってくる隊士は、身分も生まれ育った環境も、てんでバラバラの連中ばかりだ。」
鳥合の衆をまとめるには、厳しい決まりで締め付けるしかない、という土方の答えに、新見は言い返すが、芹沢は、ふてぶてしく余裕を込め応じる。
「幹部でも切腹か?」そう芹沢が土方に投げかけると、もちろんだ、例外はない。とキッパリ言い放った。
ー…
井吹は、そのやりとりの様子を見て、自分の身が不安になった。
(俺は、無理矢理こき使われてるだけなのに…。)
そんな事を考えてたら、近藤は立ち上がり「では、話は以上です。」と言い、三人で最後に深々と一礼した後、部屋を出て行こうとしたが…
そのまま席を立ち、襖にピタリと手をかけたまま動かなくなった近藤は、ギッ…とした視線を放ち、真剣な表情でもう一度、此方を振り向いた。
「なまえは…!
なまえは、俺の大事な息子のような者です。
決して二度と…あの様な事は、おやめください。 」
そう言い放ち、今度こそ部屋を出て行ってしまったー…。
井吹は近藤の真剣な想いに動けなくなり、そして確信した。
なまえは、近藤に拾われて、恩返しするために此処にいる。
拾った経緯は、わからないけど…誰にも触れられ無いモノが、2人の間にはあるんだー…。
きっとなまえが、自分の鍵の笛を聞かせた、俺以外のもう一人の人もおそらく…近藤さんだろう。
井吹は、少し羨ましいと感じ、ずくんー…と胸が締め付けられたと同時に、新見さんが、隣で愚痴愚痴文句を言ってるのが聞こえる。
芹沢は構うことはない。従わせる力がなければ何もできんだろうとボヤく。
ーー…
2人の声が、井吹を現実に戻し、またしても井吹は、自分の身を考える事になったのだ。
翌日。
井吹は平助に誘われ、八木邸で夕食をとっていた。
芹沢や新見は、平間を連れ島原へ出かけてしまう。
よくもまあ、毎日毎日飽きずに同じ場所に出かけるよな、なんて井吹は思っていた。
ーーー
ようやく会津藩という後ろ盾が見つかったおかげか、今夜の夕食はいつもより豪華に見え、皆は、パアア…と表情が明るくなる。
「おおおっ!感動するぜ…おかずが増えてる…!」
やはりこの方…永倉が一番最初に声を出して喜びを表現した。
其れを見て、やっぱり想像通りだ、と言いたげな顔をした後、柔らかい雰囲気でなまえはこう言った。
「…俺も台所事情、握るから。
毎日豪華とか、ありえねー、」
にっ、と歯を輝かせ、一体どこから取り出したのか…そろばんをじゃらららっと指で鳴らした。
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「んなっ、なまえちゃあーんっ!そんな硬いこと言わないで~!」
なんて甘えたな声で、永倉がなまえに言い、抱き付こうとしたが、なまえは素早く交わし、永倉の頬を右手でぐにーっと摘み口を開かせ、自分の左手で持ってた箸で、お浸しを永倉の口に運んだ。
「…むぐ、む…?
なぁ、なまえちゃん?食わせてくれるのは凄い嬉しいんだけどさ、 このお浸し一体何だ?
ほうれん草…じゃねぇよな…雑草か?」
それを見て、溜め息をついた原田は、「何、馬鹿なこと言ってんだよ」と零し、そのあとに嫌味を続けた。
「いくらお前が、毎日毎日遠慮もせずにお代わりばっかりしてるからって、夕食に雑草出すはずねえだろうが」
いや、だけどよ…と続ける永倉に、なまえは意地悪く、だけど何処かふてくされた様に零した。
「…あっそ、じゃあ新八は、俺がお前の口に雑草突っ込んだ、って言いてーんだべな、」
ふいっ、と永倉から視線を外し、身体も押し返したなまえに、永倉は焦りながら弁解する。
それを見て、にこやかに井上が答えてくれた。
「それは、壬生菜というらしいよ。味わって食べなさい。」
「ってことは、野菜なのか!
雑草とかじゃなくて!」
なんだよ、心配して損しちまったじゃねぇかと笑いながら、なまえの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「…んだよ、はなせ、」
むくれてるなまえは、ぺいっと永倉の腕をどける。
「なまえちゃーん?
そんな事言わねえで、もっかい食べさせて?」
あーん、と鼻の下をのばしながら口をひらいてくる永倉に、なまえは、むくれつつ…永倉の壬生菜を、口元まで持って行った。
「なっ、さっきからずるいー…!」と平助が止めようとした時…。
「…あめーよ、新八、」
緩みきった顔をし、口が開きっぱなしの永倉の口元まで運んだ壬生菜は、そのまま口へ入らず、ひょいっとなまえの口の中へ入った。
「なっ…あんまりだ!
なまえちゃんの意地悪!」
むぐむぐ…と口を動かし「ん、んまい」などと言い、だってお前さっき俺の食ったもん、と続けるなまえに、周りは笑った。
その様子をみて、間接的に接吻してる事に気づいた平助は、むっとして永倉に一言言ってやった。
「ま、新八っつぁんなら、附子のお浸し食ってもピンピンしてるだろうから心配する必要ねえけどな!」
何言ってんだよ、こんだけ繊細な味覚を持ってる俺をつかまえて…!なんて言いながら悔しがる永倉を原田は続いて、からかう。
やはり、なまえに食べさせて貰った御代は高かったようだ。
後に、井吹は永倉のふとした言葉で、近藤が元百姓というのを知り、平助から近藤の事を知るのだった。
平助が、近藤の説明をしてるとき、なまえの表情が軟らかく、優しいものになる。
なまえは本当に、近藤が好きなんだなー…と解る。
ーー…
話の流れで、給金や食費の話題になり… 。
ただ活動費のみ、その都度、請求するのは可笑しい。
給金は置いておき、食費などはどうするんだとの不満があがり、「会津藩の方々には、我々の身柄を預かって頂いてる以上、無理を言うわけにはいかない。」と近藤は零した。
土方は、自分の実家にまで送金を頼んでまでやりくりしてる現実に、皆は暗い顔になってしまった。
先ほどの、なまえの言葉も思い出しながらー…。
しん…とした空気の中、じゃららら…と音が響く。
だから、一体それは何処から出てくるんだ。
「だから、俺が頭使う。
どーにか、やりくりしてってやんよ…」
に、と歯を出して、なまえは言った。
その言葉に癒されたのか、空気はガラッとかわり、永倉は、井吹や他の者まで巻き込んでの、おかずの取り合い戦争までと変化してしまった。
「あいよ。りゅーう、
俺の、あーん」
食が細いなまえは、巻きこまれた井吹に、自分のおかずを差し出すと、食べさせるように口元へ差し出した。
照れながら、あーんと食べようとする井吹は、百年早い!などと邪魔されて、他の者の口へ…。
結局、井吹は…お代わりもできず踏んだり蹴ったり。
見事に今日も、おひつはすっからかんになってしまったとさ。
うちの息子
(只の、自己満)
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とにかく、書きたかったものをぶち込んでみた。
ああ…っ…石は投げないで!