運命の基軸を握る男
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「貴様、誰に物を言っているのか!
何だ、その口の利き方は!」
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皆様、お待ちかねの夕飯の時間。
特に永倉がはしゃぎ、恒例のおかず奪い合いを始まったと思えば、外から怒鳴り声が聞こえた。
「今の、芹沢さんの声だったよな?」
原田の問い掛けに、皆が返す答えは一緒、声をひそめながら囁き合う。
近藤は腰を浮かせ、危急の事態かもしれないので、様子をみてくるから、皆に此処は頼んだぞと出て行った。
幹部達も、野次馬根性を隠しつつ、様子を見についていく。
「ほら、なまえも来いよ。」
そう言葉を投げかけ、大人しく漬け物をポリポリ食べてたなまえの腕を原田が軽く掴む。
「…なんで?近藤さんに、此処は頼んだぞって、言われたし。
皆付いてるんだから、俺が行かなくても、へーき。」
口をむぐむぐしながらまた漬け物を摘もうとする。
「此処に誰も残ってねーぞ!
ごちゃごちゃ言ってねーで、行くんだよ!」
なんと強引なんだろうか。
胡座をかいて座ってたなまえの両腕の下から腰に手をあて、ぐいっと持ち上げそのまま外にでていく。
「……なっ、」
なまえは驚いたが、わかったと諦め、さっさと降ろせと原田に伝えるように自分の腰にある原田の手をぱちぱちと叩く。
「はいはい、黙ろうな。
ふっ、なまえは軽いな?
あのよ、腰なんか細すぎたろ。」
原田の言葉と、いやらしく触る手つきにゾワワワっとする。
「…っ、左之!」
「ほーら、暴れると落ちるぞ。」
駄目だ、放してくれる気配はない。と なまえは諦め、そのまま原田に掴まれブラブラすることにした。
(触り方きもちわりーけど、楽ちん…)
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「貴様っーー!」
なまえを抱えた原田が外についた時には、芹沢が、手にした鉄扇を振り上げた時だった。
土方の頭めがけて打ち下ろす。
「…おー、」
ぶつかる…!と思って目を閉じた一行だったが、なまえの声で、目をうっすらあける。
どうやらなまえは、瞬間まで眺めてたようだった。
土方の漆黒の髪は、僅かに風になびくが、彼は微動だにしなかった。
まるで月明かりの下の、狂い咲きの桜のようだが、彼の持つ綺麗の裏の鋭い瞳で、芹沢を睨みつける。
その後に続くやり取りを間近で見ていた井吹は、土方に感じた第一印象を噛み締め、立ちすくむ。
ここで初めて顔を合わせる井吹に対し、土方に誰だお前はと聞かれても、うまく答えられず、かわりに近藤が答える始末。
結局、芹沢に礼を言うのは明日…ということになった。
「…まったく、どうしてこんなことになっちまったんだか…」
ため息をつきながら、前川邸から出て行く井吹。
どうやら彼は、芹沢にお礼を言うため向かったようだが…。
渋い、困った顔をしながら出てきた。
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実は昨晩、遅くまで三人衆に酒につきあわされた井吹となまえ。
床でそのまま寝てしまった為に、身体の痛みで起きたなまえは、一番初めに井吹がいないことに気づく。
「……?」
取りあえず、顔を洗ってから井吹を探すことにした。
後で、部屋の片付けするから、待っててねと寝てる三人に目で語りながら、むぎっ、と三人の身体を踏み進む。
「むぐ…ぐぅ…」
彼らはまだまだ夢の中。
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顔を洗い終えたなまえは、井吹を探し始めた。
(そういえば、芹沢さんにお礼しなきゃとか言ってた。)
ぽんっ、と井吹の当初の目的を思い出したなまえは、前川邸に向かった。
「…んあ、」
なまえの勘はあたったようだ。
探してた井吹と、隣に土方がいた。
何故2人が一緒なんだろうと疑問に思ったが、取りあえず話しかけてみる。
「…龍、土方さん。」
ビクッと肩をゆらし、井吹が此方を振り返る。なまえと確認したあと、少し顔が赤く染まった。
「 なまえか、おまえにしては朝早いじゃねーか?」
「ん、そのまま床で寝ちゃったから身体痛くて起きた。
んで、龍が見当たらないから探しに…」
土方は馴れているのだろう…口数少ない彼の説明を、自分の中で解釈し、答える。
「もしかしてあいつら、また飲んでやがったのか。」
「うん、俺と龍は、酌係り。
ね、此処で何してんの?」
井吹は、なまえからの自分に対する呼び方に照れながら、先程、芹沢に言われたことについて説明した。
「これから、芹沢さんの下で働くことになったって…本当なのか?そいつは」
「嘘だったら、もっとまともな作り話をするさ。」
土方の驚きの声に、井吹はまた一つ、ため息をつきながら答える。
それでいいのか?と答う土方に、命を救われたのには変わりない、恩をきせられっぱなしは気に入らないと、仕方はないが、恩返しをしてから此処を出て行く、そう答えたのだった。
「…恩返し、」
なまえが、その言葉をオウム返しする。
彼の、金と紅が、グッと力強く引き締まったようにも見えた。
土方は、そんな彼をみて、ふっと柔らかい顔をしたと思いきや、京にきた理由は?と井吹に問い、とくにないと答えに、「まぁ…」と、自分達を重なりあわせるような言葉と、悲しい顔を井吹に当てた。
「とにかく、出来る限り早く此処から出て行くんだな。」
話の途中に土方は、近藤に用事があるから来てくれないかと呼ばれ、奥に消えていきながら放つ。
「わかってるさ、俺だってこんなとこ居たくない…」
ギリっ、と井吹が地面を睨みながら、呟く。
その様子を見た なまえは、ふっ…と口を緩ませながら、ぼそっと言う。
「ほんと、あの人は優しい…」
井吹は、はっと驚いた顔で隣にいた なまえを見上げる。
本人は、すっ、と遠い目をしてとっくに奥に消えていった土方の背中を見ていたのだった。
そういえば、昨晩、(三馬鹿トリオが)飲み散らかして、汚くなった部屋の片付けのことをすっかり忘れてたなまえは、急いで部屋に向かう。
(やべ、時間結構たってんなー)
もうこのくらいの時間ならさすがに奴らも起きてるだろうと少し急いで歩いてたら、庭で井上と会う。
軽く挨拶し、急いでるからまたな、ごめん、と一言断りその場を後にする。
「 なまえ君、そんな急いで転ぶんじゃないよ。」
いつもの優しい笑顔をむけてくれる井上に、心が、ほかほかする。
「あっ、 なまえー! 」
やはり、起きてたか。
苦笑いで奴らの声のもとに行く。
「…わり。部屋の片付けしよーとして、戻ってきたんだけど…」
平助に、きょとん、とした顔で見られる。
「なまえちゃんは、少ししか飲んでねーし、俺らが飲み散らかしたんだから気にすんなよ! 」
と、永倉に頭をわしわし撫でられる。
なまえの髪は、触り心地いーなーとにやにやされながら。
「…ん、」
撫でるのは好きだけど、撫でられるはあんまり好きじゃない なまえは、普段なら逃げるところだが、部屋を片付けてもらったところだし、仕方ないと諦め、少し、しかめっつらになりながら黙って撫でられていた。
「…お、 なまえちゃん!今日は大人しくしちゃってどうした?
俺に、甘えたくなっちゃったのかな~? 」
新八が、にへら~っと鼻の下を伸ばす。
…正直、このニマーッとした顔気持ち悪い。
「なに言ってんだよ、新八っあん!」
平助が、永倉の腕を掴もうとする。
「ほら、そのへんにしとけって新八。なまえの眉間に皺よってるぜ? 」
原田がクツクツ笑う。
目は、笑ってないが…
だが、原田の実はありがたい助言が少し遅かったのだろう、
「…新八、まだ酔ってんの?
…ちょーしにのんな?」
むぎぎっと強く、永倉のほっぺをつねる。
「あででで…っ」
ぎぶ、ぎぶ、と言葉ではいうが、なまえが可愛くて仕方ないのか…まだ口がにやけてる永倉。
今日も、仲良くて微笑ましく、眩しいようだ。
この光景を見て、あははっと大声で笑いながら、いつまでも、こうしていられたらなと思う平助だった。
運命の基軸を握る男
(千鶴の知らない、新選組の歴史が始まる。)
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龍之介はきっと、大事な意味をもって、此処へやってきました。
さて、 なまえ君には、どういった運命を刺すのでしょうか?