「…真夜…」

復讐は終わった。なのに君は、まだ目覚めてくれない

「真夜…」

早く目覚めて。君に話したいことがたくさんあるんだ

「真夜」

潤に聞いたんだ。君が昔、どうやって、どう思って過ごしていたのか

彼に聞いたんだ。君のこと。君が毎日、どう思って過ごしているか

だから…だから…

「真夜」


早く、目覚めて




「……」

「！真夜！！」

「…き…雲、識…」

「真夜…良かった」

「雲識…私…私…」

「真夜、落ち着いて。大丈夫だから」

「私…苦しい。彼等が…かれ、らが…っ」




泣き出す真夜を優しく抱きしめ、背中を擦る。大人しく僕に体を預けてくれたことに今更ながら僕は安堵する

彼女は、僕に警戒心を抱いてない

落ち着き始めた頃合いをみて体を離そうとしたら真夜がそれを許してくれなくて驚いた

でもすぐにまた抱きしめたら、ありがとう、と呟いた

「ねぇ、雲識…」

「何、真夜」


「私…‘私’を捨てる」


「…柳屋真夜を捨てるってこと？」

「そう。私、零崎真織として生きる」

「……そんなこと、して平気なの？」

「分からない…でももう、彼女が…真織が居ないなら」

「…！？」

真織が…居ない？

「…どういうことなの、それ」

「わ、私に言われても分かんないよ…いきなり

『もう貴女に私は必要ないから』

って言って…それっきり、音沙汰がないの」

「………」

「…多分。雲識が自分の代わりを…そして自分以上に役立てるって思ったから…自分の役割は終わったって、感じたんだと思うんだ…」

そんなこと、ないのにね

そう言う真夜…‘真織’は、とても悲しそうだった

「…でも…私もいい加減、現実を見て…しっかりと生きていきたいって思ってたから、ちょうど良いかなとは思っていたの。…こんな形になっちゃったのは残念だけど、私、…彼女が居たら、ずっと頼りっぱなしになっちゃうだろうから…」

「真夜…」

「真織」

「…真織…君、これからどうするつもりなの？」

「うーん…実はまだ考えてないの」

「だろうね」

君、そういうのは考えてなさそうだしと言うと、何それと笑いながら言い返される

「そのまんまの意味だよ」

額に軽くキスをすると、途端静かになり、顔を赤く染める。その様子に愛しさが込み上げてしっかりと抱きしめなおすとおずおずとだが抱き返してきた

「真織…君とずっと一緒に居たい。僕も君とどこかに行って良いかい？」

「…貴方が、後悔しないと言うのなら」

「するわけないよ、君が居るんだから」

「……っ…ありがとう、雲識」

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