あなたと暮らす朝が来るまで
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【第一話】凍える朝のすれ違い
朝の空気は刺すように冷たく、吐く息が白く広がった。
村の外れは霜が降り、畦道の草は白く凍りついている。
足を踏み出すたびに霜がぱきぱきと音を立て、静かな朝に響いた。
薪が少なくなってきたので、散歩も兼ねて朝早く外に出ていた。
この時間は人通りもなく、遠くから鶏の鳴き声と家畜の声がかすかに届く。
ひとりで暮らしているせいか、誰かと会うことはほとんどない。
だからこそ、この静けさに胸がそっと締めつけられる。
その時だった。
前方の畦道に人影が見えた。
朝日を背に、黒い隊服が風に揺れている。
日輪刀を背負った青年――見知らぬ人だ。思わず足が止まる。
距離が縮まるにつれ、朝日が彼の顔を静かに照らし出す。
切れ長の青い瞳がちらりとこちらをかすめた。
すれ違う直前、私も彼も少しだけ歩みをゆるめた。
霜の冷たさが足元からじわりと伝わり、冷たい風が頬を撫でる。
その時、2人は目が合った。ほんの一瞬――けれど、なぜか長く感じた。
声をかけようとしたけれど、言葉は喉に引っかかった。
彼は何も言わず、視線を外して歩き出す。
けれど、その瞳にほんの一瞬、驚きと何かを見つけたような光が宿ったのを見た気がした。
柔らかな朝の光に背中が溶けていくように、ゆっくり遠ざかっていく。
その姿が畦道の向こうに消えるまで、私は立ち尽くしていた。
胸の奥で鼓動だけが、静かに響いている。
家に戻ってもその余韻は消えず、薪を割る手が何度か止まった。
――どうしてだろう。
理由は分からない。ただ、もう一度会えたらいいと思った。
一方、畦道を歩き去った義勇も、背後に残った気配に引かれるように一度だけ振り返った。
朝日を浴びる畦道の向こう、少女の姿はもう見えない。
ほんの一瞬の出会いなのに、胸の奥にかすかな熱が残っていた。
青い瞳に浮かぶのは、今見たばかりの少女の面影。
すぐに前を向き直り、そのわずかなざわめきを、心の奥に押し込めるように、深く息を吐く。
そして、何もなかったようにゆっくりと歩みを進めた。
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