あなたと暮らす朝が来るまで
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【第十一話】手のひらに残るぬくもり
湖からの帰り道、二人はほとんど言葉を交わさなかった。
それでも、繋いだ手から伝わる温もりだけで、心が落ち着いていた。
家の前まで送ってくれた義勇さんと、門の前で向かい合う。
まだ手はつながれたままだった。
別れ際、2人はただ見つめ合う。
離れたくない気持ちが胸の奥にあふれてくる。
二人の間を、ひんやりした風がそっと通り抜ける。
それでも手のひらの温もりが、体の奥までじんと広がっていた。
「……」
義勇さんが、ゆっくりと私の方へ一歩近づいた。
鼓動が速くなり、息を呑む。
もう片方の手が、わたしの肩にそっと触れた
ーーそのとき。
「義勇さん!みささん!」
遠くから炭治郎の声が響いた瞬間、二人同時に肩がびくりと揺れた。
張りつめていた空気が一気にほどけ、時間が動き出したように感じた。
義勇さんは、ほんのわずかに目を伏せてから、ゆっくりと手を離した。
義勇さんは手を離す前、指先でそっと私の手を確かめるように触れた。
その一瞬が、余計に離れ難さを募らせた。
振り向くと、炭治郎がこちらに駆けてくるのが見えた。
「二人一緒だったんですね!」
炭治郎が明るく言うと、義勇さんは短く頷いた。
「……義勇さんが、家まで送ってくれたんです」
そう伝えると、炭治郎はにこっと笑う。
「そっか、よかった。安心しました」
「ありがとう。炭治郎くん、またね」
息を整えてから、ゆっくり義勇さんの方を向き、もう一度義勇さんを見つめた。
「……義勇さん、また…」
義勇さんはわずかに頷き、静かに答えた。
「……ああ」
わたしはまだ離れがたい気持ちを胸に、家に入った。
炭治郎と義勇さんが並んで歩き出していく。
二人の背中が遠ざかるのをじっと見送っていると、義勇さんがふいに足を止め、振り返った。
視線がほんの一瞬、私に留まる。
言葉はないのに、それが名残惜しさを伝えてくるようで、切なさが胸に広がった。
義勇さんはすぐに前を向き、歩き出していく。
その背中が見えなくなるまで、じっと立ち尽くした。
戸をそっと閉めると、家に静けさが戻る。
けれど、手のひらのあたたかさだけはまだ消えずに残っていた。
胸に手を当てると、鼓動だけが静かに響いていた。
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