このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

倉庫(説明必読)

倉庫の番人になりつつあるレイジさん夢(笑)
かなり重い設定にしてるので角野のリアルメンタルがやられるとやたらと筆が進むのです。割と原作沿いなのでいつか日の目を見せたい。


「あれ、柚槻さん?」

『栞、どうしたの?』

柚槻はいつものように作業に没頭し時間を忘れ部屋に篭って仕事をしていた。最近はランク戦も始まっていることから、天候条件や建物の構造などをいかにトリオンを節約しながら再現するかの研究をしていたのである。そうしてそれらの作業がひと段落し、空腹の限界を感じたためふらふらとダイニングにやってきた彼女を見つけた宇佐美が不思議そうな声をあげる。

「いや、いないと思ってたから。」

『?自分、出かける予定あるって言ったっけ?』

「そうじゃないけど。けど、…うん、そうかー。」

1人だけ苦い顔でぶつぶつと何かを呟く宇佐美に柚槻は首を傾げながらキョロキョロと室内を見回した。そして再び宇佐美に顔を向けて訪ねる。

『栞、レイジ知らない?確か今日の夜は任務ないって言ってた気がするんだけど、気のせいだったかな…』

柚槻の問いに宇佐美はさらに独り言を呟く。呟く、というよりはもはや小さく唸っている。その姿に柚槻は眉を顰めて彼女に呼びかけた。

『栞…?自分、変なこと言った?』

「いや…。」

『じゃあ何?どしたの??』

「うーん、なんて言ったらいいんだろう…。」

宇佐美の終わらない1人問答を見ていた柚槻だったがやがて彼女の腹が空腹を訴えて鳴きだし、難しい顔をした宇佐美を尻目に彼女はキッチンの冷蔵庫の扉を開けた。

「柚槻さん、怒らず聞いてね?」

木崎が普段なら作って置いておいてくれる残り物もなく、仕方なく余った食材で何か作れるものはないか考え始めた柚槻に、宇佐美がようやくまともに口を開いて話し始める。

『怒るようなことなら、話さなくていいよ。』

「いや、でも!柚槻さんも知る権利あると思うの。というか、知っておくべきというか。」

ズバリ言ってのける柚槻は、メニューを考えるのが面倒になり、冷蔵庫の扉を閉じると代わりに冷凍庫を開ける。そこから取り出したのは鍋で温めるだけで食べられるタイプの冷凍ラーメンだった。

『保証はできない、けど。何?』

「…今、レイジさん、ご飯食べに行ってる。」

『怒る要素なくない?確かに私お腹空いてるけど。また、風間さんたちと?』

「ううん。」

『じゃあ迅?まさかのとりまる?』

「違うよ。」

『じゃあ誰?』

宇佐美は一瞬言葉に詰まると、それでも絞り出すように木崎と共に食事をしているであろう人物の名を口にする。それを聞いた柚槻は何も答えず、ただ取り出したラーメンを火にかけて始めた。

「柚槻、さん?」

『...』

鍋から視界を外さずに無言のままの柚槻。宇佐美はその顔からも雰囲気からも全く感情が読めない。

「なんか、ごめん。」

『別に。栞悪くないよ。レイジも、千佳も、誰も。』

「柚槻さん。」

『...そういえば自分、レイジと外でご飯、食べたことないや。』

彼女はそう言うとそれ以上宇佐美が何を話しかけても何も返さなくなった。ただ黙々とラーメンを作り、器に移す。さらにそれを盆に乗せると廊下に出て歩き出す。思わず彼女を反射的に呼んだ宇佐美に『帰るなら気をつけて』と声をかけると再び部屋へと消えていくのだった。


「今日はありがとうございます。ご馳走様でした。」

千佳とともにラーメン屋を後にしたレイジは彼女を自宅まで送り届けに来ていた。弟子ではあるものの歳は離れており、しかし妹のようとも言えない彼女に丁寧に礼をされることにどことなく照れくささのようなものを感じ、ああ、と適当な返事をする。

「そういえばレイジさんは、柚槻さんともよくご飯行くんですか? 」

「...。」

「レイジさん?」

玉狛へ戻るため踵を返そうとした瞬間、千佳からの思わぬ問いかけにレイジは固まった。彼女と外食に出かけた記憶は全くなかったのである。そればかりか今までは彼女とそう言った時間を持とうとしたことすら無かったことに気がついた。ただ、共に訓練し、時折彼女の仕事に付き合うことあっても恋人らしいことはあまりしてこなかった。強いて言うなら部屋でなんでもない時間を過ごすことや人の多い場所を嫌う柚槻を何度かドライブに誘ったことがある程度だった。

「もしかして今日のこと、柚槻さんは知らないんですか?」

「ん?ああ、また部屋に篭って仕事みたいだったからな。声はかけてない。」

黙って思考を巡らしていたレイジに再び千佳が声をかけると彼はようやく目の前の千佳に意識を戻した。しかし彼の答えに千佳は目を丸くする。

「私、怒られませんか?」

「どういうことだ??」

「だって、柚槻さんからレイジさん取ったみたいじゃないですか。てっきり柚槻さん、知ってるんだと思ってました。」

早く帰ってあげてください。そう言って千佳はレイジにもう一度お礼を言うとサッと家の中へと入っていった。取り残されたレイジはようやく帰路につきながら、千佳の言葉の意味を考えていた。レイジは千佳に対して後輩であり、弟子であるという以外の感情を持ち合わせてはいない。それははっきり言えることだった。しかし、だからといって彼女と2人で食事に行くことは、“周り”の目にどう映るのか。そこまでは全くもって考えていなかった。日常的なことや戦闘面では様々なことを考慮できるレイジだが、こと恋愛面に置いては不器用であることを自覚しているもののここまでとは思っていなかった。自分の未熟さを恥じ、今日千佳を食事に誘う前にもそうしたように彼は己の額をその拳で小突いた。と、その時、ポケットに入れていたスマホが震える。

“ごめんね、柚槻さん怒らせちゃったかも。でも私は、今回柚槻さんの味方するから。”

それは宇佐美からのメッセージで。宇佐美によって千佳と二人で食事に出たことが柚槻に伝わったのだとわかった。スマホをしまいながら大きく息を吐くと、レイジは歩くスピードを早めるのだった。

「はぁ。」

しかしそれから数十分後、レイジは己の考えの甘さを人知れず嘆いていた。玉狛支部へと戻ってきたレイジは柚槻の部屋を尋ねるものの、入室を拒否される。どうしたものかと彼女に電話をかけてみたが、応答はなかった。宇佐美は既に帰宅しており誰もいないダイニングのソファで盛大に溜息をつき天を仰ぐレイジ。県外のスカウトに行っているゆりに助けを求めることも一瞬考えはしたが、なんと相談していいかも分からない。というよりまず、こちらからゆりに連絡する度胸をレイジは持ち合わせていなかった。

「どうしたもんか。」

「何が?」

「...迅。」

独り言に返事があると思っていなかった彼は僅かに目を見開き、声のした方に顔を向けるとそこにはいつ現れたのか迅の姿があった。その顔はいつもと同じだが、レイジには全てを見透かされたように感じ、彼はもう一度ため息をつくとソファに沈めていた身を起こし、別にと雑な返事をする。

「他人の恋愛に口出しするとろくな事ないんだよね。」

おもむろに口を開いた迅の言葉にレイジは顔を顰める。しかし特に何も言い返すことなく無理矢理体を動かしキッチンへと足を運んだ。明日の朝食の下ごしらえのためである。

「でも、仲間が悩んでるのを見過ごすのも気分良くないんだよねぇ。」

「...何が言いたい?」

「レイジさんは何が聞きたい?」

迅の言葉に動きを止めるレイジ。自分の中にその答えがないことに気づいたのである。自分がどうしたいのか、どうすればいいのか。黙り込むレイジに迅は苦笑を漏らし「じゃ、一個だけ」と彼に助言を与えた。

「でもこれはあくまで、柚槻さんと話すきっかけを作るだけだからね。その後はレイジさん次第。どんな結果になっても、俺のせいにしないでよ?」

相談料は今度飯でも奢ってよ、そう言ってヒラヒラと手を振りながら部屋に戻っていく迅を見送ったレイジは、またひとつ息を吐きながらキッチンでの作業に戻るのだった。



『とりまる、あの、頼みがあるんだけど。』

「珍しいっすね。柚槻さんが俺に電話かけてくるとか。」

一方その頃柚槻はレイジではなく、とりまること烏丸と電話で話していた。

「それで?なんですか頼みって。」

『あ...えと、どこか、ご飯食べに連れてって欲しいんだ。』

「は?」

あまりに意外な柚槻の発言に、烏丸は思わず固まった。突然の彼女の頼みに、そうなった経緯も彼女の意図も何も想像ができず、とりあえず思ったことを口にする。

「なんで俺なんすか?レイジさんに連れてってもらえばいいじゃないっすか。」

『今は...レイジは嫌なの。』

「喧嘩でもしたんですか?」

『喧嘩...。』

言葉の続かない柚槻に烏丸はさらに首を傾げた。柚槻の声色から、喧嘩をしたという訳ではなさそうだしそもそも2人が喧嘩をする理由に心当たりがない。けれどならば人の多い場所を好まない柚槻が自分になぜ食事に連れて行くよう頼んできたのかが全く理解できない。

「もう一回聞きますけど、なんで俺なんですか?」

『…レイジとは嫌で、迅はたぶん、連れてってくれないから。でも、女の子じゃダメなんだ。』

「迅さんはなんとなくわかるとして、なんで宇佐美先輩や小南先輩じゃダメなんすか?」

少ししつこすぎるとも思ったが、努めて冷静に尋ね続けると、柚槻はようやく今日宇佐美から聞いたレイジの行動について話し始めた。それを聞いて烏丸は苦い顔をする。

「話はだいたい分かりました。けど、俺と2人で食事に行くってことは、レイジさんに同じことやり返すってことですよ?柚槻さんが何を思ってるか知りませんけど、それでいいんですか?」

『よくは、ない。』

「なら、」

『でも、レイジが私とおんなじ気持ちになるとは限らない。レイジは、なんとも思わないかもしれない。』

柚槻が色々と思い悩んでいることが、電話越しの声からも十分に伝わって烏丸は言おうとした言葉をぐっと飲み込んだ。代わりにふとあることを思いつき、別のことを話す。

「分かりました。ちょっと時間早めになりますけど、明日学校終わったら迎えに行くんで、出れる準備しといてください。」

『え…、いいの?』

「その代わり、俺が行き先決めます。」

『も、もちろん、文句ない。お金もこっちが出すよ。』

「決まりですね。じゃ、また明日。」

そう言って通話を終えた烏丸はやれやれと言った様子でため息をついた。一方柚槻も色々と考えた結果の行動だったにも関らず、それが決まると気分は晴れるどころか、さらにモヤモヤが増すばかりで今日何度目かわからない無意識のため息をつくのだった。


そして翌日。

「はい、着きました。」

『ここ、とりまるのバイト先?』

宣言通り下校後、柚槻を迎えに現れた烏丸は行先も告げず彼女を連れ出した。そして、たどり着いた先は柚槻の言う通り彼がバイトをしているイタリアンの店で。

「じゃあ俺はバイトなんで裏から入ります。あとはお好きにどうぞ。」

『...え?』

「飯に連れていけとは言われましたけど、一緒に飯食えとは言われてないんで。」

『なっ!?』

そう言ってスタスタと店の裏の方に去っていく烏丸を柚槻は呆気に取られて見ているしかなかった。やがて彼の姿が見えなくなってからも、彼女はそこから動き出せなくて。

『...迅、呼ぶしかないかな。』

「柚槻っ。」

少ししてようやく彼女はそう呟きながらスマホを取りだした。そして、どうすれば良いのか分からないままなんとなく画面を操作していた矢先、彼女を呼ぶ声がして思わず振り返る。

『な、んで。』

そこに立っていたのは、自分の恋人である男。しかし彼がどうして今ここにいるのか、柚槻には全く理解できない。

「柚槻!待て!!」

『やだ!』

柚槻は何故だか泣き出したい気分になって、気がつくとその場から逃げ出していた。

「くそっ。」

逃げる柚槻を追いかけながら、レイジはと言えば悪態をつきながらイライラを募らせていた。それは柚槻に対してでもありながら、相も変わらずこれからどうしたいのか、どうすればいいのかわからない自分に対してでもあった。それでも今は彼女を捕まえなければ、それしか考えられなかった。

『っ!』

「柚槻!!」

単純な足の速さで言えば元々鍛えている2人の差はさほどなかった。けれど男女の差はやはり埋められず、さらに持久力で言えばレイジの方が柚槻よりもかなり優れており、2人の距離は徐々に近づいていく。その事に焦った柚槻が車道に飛び出そうとした所でようやくレイジが彼女を捉え、その腕を引いた。

『レ、イジ、』

「お前!また死ぬ気だったのか!?」

『!ち、ちがっ』

「なら、なんでだ!」

『う、うるさい!ホントは自分の...私の事なんてどうでもいいくせに!』

「!?」

腕掴まれたままそう叫んだ柚槻は、一拍遅れてハッとする。思わず上げた視線の先には目を見開きこちらをのぞき込むレイジの顔があった。その表情はみるみる険しくなり、柚槻が危機感を覚え掴まれている腕を振りほどこうとした瞬間、視界の端に彼の腕が振り上げられたのが見えた。

『っ。』

「レイジさんストップ!」

「...。」

現れたのは迅だった。レイジと柚槻は2人で声のした方を見る。柚槻の頬には涙が伝い、レイジの顔は青ざめていた。我に返ったレイジの手からするりと柚槻の腕が離れる。

「俺は、何を...」

「ホントだよ。急いで様子見に来てよかった。」

とりあえずこっちね、と迅に促されるまま3人で道の端に寄りながら、レイジと柚槻はようやくそこで自分たちが多くはないものの通行人の視線を集めていることに気がついた。

『自分、帰る...』

「そうしたい気持ちはわかるけど、俺としては本部に行ってほしい。」

『…なんで?』

「宇佐美があっちにいるはずなんだよね。話聞いてもらってきなよ。」

様子を伺い、気遣いながら迅がそう言葉をかけると、柚槻は黙り込んでしまう。視線をあちこちに彷徨わせ、どうするべきか迷っているようだった。そんな彼女の様子に口を開いたレイジ。

「昨日、俺に宇佐美からメールが来た。お前の味方をする、と。」

『味方…。』

「今、俺といたくはないんだろう?」

「ちょ、レイジさん、」

『…わかった。』

そういうと彼女はレイジと迅に背をむけゆっくりと歩き出す。それを黙って見つめるレイジに迅はため息をつきながら宇佐美にメッセージを送った。柚槻の姿が見えなくなると、急にレイジがその場に崩れ落ちる。

「え。」

「…お前、任務は?」

突然のことに驚いた迅に、格好にそぐわない台詞を吐いたレイジに迅は何度か瞬きして、苦笑を漏らす。

「ちょっと早めに上がらせてもらって急いで駆けつけたの。」

「そうか。」

「今から相談料払ってくれる?」

「…焼肉でいいか。」

「いーよ。プラスぼんち揚げいち…いや二箱ね。」

飄々と言ってのける迅に盛大なため息を吐いたレイジは、解決したらなと呟くように言いながらふらふらと立ち上がると、目的地に向けて歩き始めるのだった。




『栞。』

「あ、柚槻さん!」

迅から連絡をもらっていた宇佐美はあらかじめ柚槻とラウンジで落ち合おうとメールを送っていた。それに柚槻が気づいたのは彼女が本部に足を踏み入れた後だったが、なんとかギリギリすれ違いになることもなく、2人は合流できた。

「飲み物買って、玉狛第二の作戦室いこう。私もうちょっと仕事残ってて。」

『ん。』

「…柚槻さん、大丈夫?」

話しながら自動販売機へと足を向けた柚槻に宇佐美が尋ねる。彼女の目が少し赤いことに気づいたからだった。

『ごめん。』

「…え?」

『迷惑、かけて。』

「そんなこと言わないでよ!元はと言えば柚槻さん何にも悪くないのに。」

『でも、』

「あれ、オレの見間違い??レアキャラおる気ぃするんやけど。」

『…生駒。』

飲み物を選んでいた2人が耳にした関西弁を発した主は生駒達人だった。柚槻と年は違うものの同級生と言える関係の彼は顔には全く現れないものの、どこか楽しそうに柚槻に近づいてくる。

「ホンマに柚槻ちゃんや!どないしてん?」

『生駒、変わんないね。』

「何ゆうてん。めっちゃ強なったで、オレ。」

「…そういうとこが、変わんない。」

あと、ちゃんづけも。そう言った柚槻に驚いたのは隣で2人を見ていた宇佐美の方だった。男の人には特に女の子らしく扱われることに戸惑いを見せる柚槻を、確かに生駒は平然と“柚槻ちゃん”と呼び、柚槻もそれを苦笑しながらも受け入れているように見えるからだった。

「生駒さん、柚槻さんのことずっとそう呼んでるんですか?」

「あ!せやった。あかんかったな。柚槻…ちゃん。さん?」

『…ふっ。いいよ、もう。』

柚槻が吹き出し、それに対し生駒は全力でごめんって!と謝っている。しかし宇佐美はどういうことかさっぱりわからず首を傾げるばかりだが、柚槻が笑っている姿に少しホッとしていた。

『ごめん、生駒。自分もう行かなきゃ。また今度、こっちきた時声かけるよ。』

「ホンマやな?男に二言ないで?」

『自分男じゃないよ。それは生駒がよーく知ってるでしょ。』

「ホンマごめんって。」

じゃ、と柚槻は軽く手を上げて宇佐美に玉狛第二の作戦室までの案内を頼むとふっとため息を吐いた。しかしそれは重苦しいものではなく、呆れているようなそれでいて楽しんでいるようなもので。

『生駒と話すと、ほんと調子狂う。』

「生駒さんと仲良いの?」

『仲良いっていうか…生駒とは高三の時クラス一緒だったの。迅に間に入ってもらって話せるようになったんだけど、』

女扱いが苦手なためちゃん付けはやめてほしいと生駒に頼んだものの、女の子を呼び捨てにはできん!と何度言っても呼び方が直せない生駒に対し、結局柚槻が折れた話を聞いて宇佐美はようやく先ほどの会話に納得がいった。

「あ、着いたよ。」

そんな話をしながら、宇佐美が指し示した部屋は玉狛第二の作戦室。本部には先日の大規模侵攻の時に出入りしていたものの、その頃にはまだ正式に玉狛第二は結成されていなかったこともあり、柚槻がこの部屋を訪ねるのは初めてである。

「あ。」

『お邪魔し』

「栞さん、お疲れ様、で、す…?」

宇佐美に続いて恐る恐る部屋に足を踏み入れた柚槻を出迎えたのは、千佳だった。スナイパーの合同訓練から、戻ってきていたのである。宇佐美はてっきり出穂たちと残ってくると思っておりまさかすでに部屋にいると想像していなかったようで。対して千佳もまさか柚槻がこの部屋に入ってくるとは思ってもいなかったようで、すっかり固まってしまっている。

「ご、ごめん!柚槻さん、私、」

『…ううん。たぶん、迅の仕業だよ。』

独り言のように呟きながら、千佳の前に立つ柚槻。レイジほどではないが千佳と比べればかなり高身長の柚槻を見上げながら、千佳ははっと何かに気づいたような顔をした。

「ごめんなさい!」

『千佳…?』

「私、昨日、レイジさんとっ」

勢いよく頭を下げた千佳に、柚槻はゆっくりと近づくとその頭をそっと撫でた。柚槻の意外な行動に声を上げたのは宇佐美で、千佳も驚いたのか途中で話すのをやめてしまう。

「柚槻さん?」

『千佳は、悪くない。』

「え?でも、」

『悪いのは、自分みたい。』

「そ、そんなことっ」

『今、千佳見て、色々わかった気がする。話、聞いてくれる?』

よければ千佳も、と言った柚槻の目には、うっすらと涙が溜まっていた。顔を上げた千佳は頷き、もともとそのつもりだった宇佐美は彼女をソファに座らせると、自分もその前に座るのだった。



「で?レイジさんはどう思ってるの?」

「どう、とは?」

焼肉屋にて、一通り注文を終え飲み物が手元に来たところで迅が話を切り出した。それに対し、珍しくアルコールのない飲み物を頼んだレイジがそれを一口飲みながら返す。

「うーん、とりあえず、今のままでいい?」

「そう思っていたら、今ここにはいないだろうな。」

「じゃあどうしたいの?」

「それが分からないから、今こうしてるんだが。」

レイジの目は空中をぼんやりと見つめていて、ボーダー唯一の完璧万能手(パーフェクトオールラウンダー)と呼ばれる面影はどこにも見当たらないほど、すっかり弱っていた。どうしたもんかと内心頭を抱えつつ、迅は遠慮なく頼んだ肉がテーブルに運ばれてくるとすぐにそれらを網の上に乗せる。

「正直、どうしてこうなってるかもよくわかってないんだが。」

「…レイジさん、それ本気で言ってる?」

レイジの呟くように発した言葉に迅は苦い顔をしてそう返した。

「いや、千佳とオレが飯を食いに行ったことがきっかけなのはわかっている。アイツがそれに怒ってるんだろうことも。だから俺はすぐに誤解を解こうと昨日帰ってすぐアイツの部屋に行ったんだが、」

「拗(こじ)れちゃったんだ。…なるほどね。」

ぽつり、ぽつりと話すレイジに迅は納得するように頷いた。1人で話を理解する迅に対し、何も話が見えてこないレイジは眉間に皺を寄せながら肉をひっくり返す。じゅうじゅうという音と立ち込める匂いが本来なら食欲をそそるはずなのに、今のレイジには目の前の肉に対する食欲がいつもより沸かなかった。

「昨日俺が、あそこに行くといいよってアドバイスしたじゃない?」

あそこ、とは烏丸のバイト先のことである。それに頷きながら静かに言葉の先を待つレイジ。

「その時どう頑張っても、レイジさんが柚槻さんを殴る未来は見えなかったんだよね。」

「…?なんの話だ。」

「だから俺があの時止めなくてもレイジさんは柚槻さんを殴ることはなかったと思う。多分、直前で思いとどまったと思うよ。」

「何が言いたい?」

焼けた肉を迅の前の皿に移しながら、レイジが尋ねる。いただきます、と楽しそうにそれらに箸を伸ばす迅は自分の前にもいくらか肉を取り分けているレイジに自分の考えをどう伝えるか思いを巡らす。

「それだけ、レイジさんが柚槻さんを想ってるってことが、向こうには伝わってないかもしれないって話。」

迅の言葉にレイジは呆気に取られたようにポカンとした顔をした。言葉の意味は理解できるのだが迅の言っている意味、その理由、全てが分からなかったのである。すっかり固まってしまったレイジに代わり空になった網に新しい肉を並べると、迅は再び己の前にある肉に箸を伸ばし白米と共に頬張りながら、レイジが動き出すのを待った。

「ねえ、レイジさん。」

「...なんだ。」

「レイジさんの言う“誤解”って何?」

しかし全く動く気配を見せないレイジに痺れを切らし、やはり迅の方がの話出してしまう。それでもようやく迅の問いかけに、レイジは己の考えをまとめ始めた。

「俺が千佳に気があると、あいつが勘違いしているんだと思っていた。だが、冷静に考えればあいつは、柚槻はそれほど馬鹿じゃないと思う。」

「うん、俺もそう思うよ。」

迅の優しい肯定に促され、さらにレイジは頭をひねる。自分の考えを、彼女への想いを、まずは丁寧に紐解いていく。

「だとすれば何に怒っている?あいつは昨日俺に“話すことはない”と言った。俺を部屋に入れることも話すことも拒絶した。それだけ怒ってるということ、だと思うが…」

そこまで考えて、レイジの頭に柚槻の放った別の言葉がよぎる。先ほど彼女が車道に飛び出しかけたのを助けた時、彼女が叫んだ言葉。

「レイジさんはさ、仮に今日柚槻さんが目的を果たしたらどうしてた?」

「目的?」

ようやく答えが見えてきそうなところで迅の声が、レイジを現実に引き戻す。ふと見ると迅の前にあった肉は無くなっており、目の前で焼けている肉は既に片面がいい色になって裏返されていた。

「そ。昨日あの後京介から連絡がきてさ。」

そう言って迅は烏丸から聞いた、彼に柚槻が連絡してきた内容と、元から烏丸がその願いをまともに聞き入れる気がなかった旨をレイジに明かした。その目的が果たされたら、というのはつまり烏丸と柚槻が2人きりで食事をしたら、ということであり。

「どうした、か。…いい気がしないのは確かだが。」

「ま、それが普通だよね。」

「だが、俺が先に千佳と2人で飯に行った手前、強くは言えなかっただろうな。」

「じゃあそうなってもよかった?相手が京介じゃなくて例えば俺とか、生駒っちとか弓場ちゃんとかだったら?」

迅の言葉の通り、柚槻が誰かと、それも異性と食事に行くところを想像するレイジ。柚槻の性格を考えるとあり得ないと一蹴してしまうこともできたが、それでも迅の列挙した者たちであれば絶対にないとは言えなくて。けれど想像すればするほど、モヤモヤとした感情が胸に渦巻く。

「ムカつくな、それは。」

「それは誰に対して?」

当然相手の男に対して、と答えようとしてレイジははたと気づく。自分の場合は確かにそうだが、柚槻が自分に対して現状とっている行動を考えると、それは答えではない気がしたのだ。もう一度改めて、今度は想像ではなく、実際に起きていることについて考える。自分の行動、それに対する柚槻の態度、柚槻の行動に対する自分の感情。

「柚槻は…」

「ん?」

「俺にどうしてほしかったんだろうな。」

そう言いながら項垂れるレイジに、迅はため息とも安堵ともとれるような息を吐く。目の前の肉は焦げかけていたが、今しがた確定した仲間たちの未来は悪くないものだったからであった。




「じゃあ柚槻さん、千佳ちゃんには怒ってないの?」

宇佐美の言葉に柚槻が頷く。
彼女の話はまとめるとこうだ。もともと自分は千佳に対して嫉妬しているんだと思っていた。しかし昨日レイジと扉越しに話した時、レイジに対して自分が思いの外イライラしてしまうことに気がついた。レイジに自分と同じようにヤキモチを焼いて欲しくて、烏丸に食事に連れていくよう頼んだが、レイジはなんとも思わないかもしれないと気づき、怖くなった。そして彼と顔を合わせ、仕返したり、彼の気持ちを疑ったりした自分がひどく醜く感じた。

『千佳が、レイジに対して仲間とか、師弟とか、それ以外の…それ以上の関係を望んでるなら、話は変わってくるけど。』

「え?それ以外って…」

千佳は不思議そうな顔をした後、少ししてようやく柚槻の言わんとしたことがわかったようで、はっとした表情をすると同時に勢いよく顔と手を横に振る。それを見て、困ったように眉を下げ、顔を手で覆った柚槻。

『ホント、情けない…。』

「何度も言うけどさ、柚槻さんが悪いわけじゃないんだから、そんなふうに言わなくていいと思うよ。」

『じゃあ、誰が悪い?』

「それはレイジさんが、」

『レイジが千佳とご飯行ったの、理由は詳しく知らないけどさ、なんかあるんでしょ?それでレイジを悪者にしたら、千佳も悪者になっちゃうよ。』

柚槻の言葉に、宇佐美は押し黙るしかなかった。しかし反対に今度は千佳が声を上げ、言葉を選ぶようにゆっくりと昨日レイジが話してくれたことを柚槻と宇佐美に説明し始める。それを静かに聞いていた柚槻は千佳の話が一息つくと今度は天を仰ぎ、ははっと乾いた笑いを漏らす。

『レイジらしい。けど、そっか。千佳もやっぱり、なんか色々あるんだね。』

「え?」

『レイジは励ますのとか、苦手だから。でも、千佳にそういう話をしたってことは、何か伝えたいことがあったんだと思う。千佳のために、自分にできること、探したんだと思うよ。』

認められてるんだね、千佳は。そう言って、千佳に笑いかける柚槻の顔を見ていた宇佐美が、その違和感に気づいた。確かに千佳に対して柚槻は悪感情を抱いていないようだ。それでも、その表情には明らかに影があり、少し笑っているのに今にもまた泣き出しそうにも見えた。

「千佳ちゃんを悪者にするつもりはないけど、」

少しの沈黙の後、今まで黙っていた宇佐美が柚槻を見据えて口を開く。

「やっぱり、レイジさんが悪いと思う。」

「栞さん…?」

「千佳ちゃんはとっても大事な仲間だよ?柚槻さんにとっても、レイジさんにとっても、きっとそうだと思う。でも、レイジさんは一番に柚槻さんを大事にするべきだと思う。」

『栞、』

「柚槻さん、もっと怒っていいんだよ!レイジさんと柚槻さんは、そういう関係なんでしょ!!」

『栞、落ち着いて。』

興奮気味に話す宇佐美を柚槻が嗜める。オロオロとする千佳は慌てて宇佐美の前に置いてあった飲み物を差し出した。それを勢いよく煽り、自分が当事者かのように怒る宇佐美はキッと、柚槻を睨むように見つめた。

「柚槻さん!」

『な、なに。』

「柚槻さんは嫌がるかもしれないけど、柚槻さんだって女の子なんですよ!」

『へ?』

宇佐美のあまりに予想外の言葉に、柚槻は素っ頓狂な声を漏らし固まる。千佳も不思議そうな顔をして宇佐美を見上げていた。

「そういう嫉妬は悪くないと思う!」

『そういう嫉妬、って…』

「栞さん、どう言うことですか?」

勢いばかりの宇佐美の話にどうにもついていけない千佳がそう投げかけるが、当事者である柚槻もまた困惑しているようで。そんな2人の様子を見て宇佐美はさらにもどかしいと言わんばかいに眉間に皺を寄せ、ようやく核心を、柚槻の感情を的確に言い当てて見せたのだった。




「…ん?」

レイジがふっと目を開けると、そこは焼肉屋ではなく、自室ではないが見慣れた部屋だった。確か自分は迅と食事をしていたはずだと記憶を辿るが、なぜ自分がここにいるのか、どうやってこの部屋にやってきたのか全く思い出せない。

『やっと起きた。』

「柚槻…?」

声がした方を見やると、隣に座った柚槻がパソコン型の端末に向かって作業している見慣れた姿があった。そう、ここは彼女の部屋で、レイジはなぜか彼女のベッドの上に眠っていたのである。

「俺は…。」

『明日昼から防衛任務でしょ。朝の予定までは知らないけど。とりあえず、はい。』

柚槻が彼に差し出したのはペットボトルに入った水。それを受け取るために身を起こすと襲ってくる頭への痛み。

『自業自得だから、ホント。』

レイジが痛みに顔を歪めるのに対し、柚槻の反応はいつもより明らかに冷たい。呆れている、怒っている、そのどちらもであろうというのは彼の回らない頭でも容易に想像がついた。状況を飲み込もうと必死に記憶の糸を辿るがその作業はうまくいかない。それでも、記憶に残っている部分の情報をまとめ、彼は起こした身を引きずるように動かし彼女の隣に腰を下ろすと、痛む頭を下げた。

「すまない。」

『…なにが。』

「千佳と、2人で飯に行ったこと。」

『…。』

不機嫌そうなオーラを出す柚槻の目は、作業中の画面に向けられたままだった。湧き上がる負の感情にため息と文句の一つでも吐き出そうとした柚槻だったが、それに被せるようにレイジが言葉を続けた。

「それから、昨日お前に声をかけなかったこと。」

『!』

「お前を今まで、飯に連れて行ったことがないことも、だな。」

『...それ、だけ?』

柚槻の手が止まる。そしてその声は、先ほどまでと違っていた。レイジはそれに気づき下げていた頭をゆっくりとあげ彼女を見る。柚槻の視線は画面を見つめるままだったが、彼女は明らかにレイジの次の言葉を待っていて。

「…正直に言って、俺はこういうことに疎い。やっとお前をどれだけ傷つけたか、不快にさせたか理解したつもりだが、それでもまだ足りない、というのなら直接言ってほしい。」

『理解した、ってどういうこと。』

「俺が全面的に悪かった。例え千佳が弟子だったとしても、まず俺が考えるべきは柚槻、お前だった。頭ではわかっていたはずだが、行動が伴ってなかった。本当にすまないと思っている。」

レイジが言葉を吐き切ると、その場を支配する沈黙。それは少しして柚槻が閉じたパソコンのパタンという音で破られる。それと同時に顔をあげ振り返った柚槻とレイジの視線がようやく交わった。

『ついでに今日のことも謝って。』

「今日…?」

合点のいかないといったレイジの様子に、眉を下げため息をつく柚槻。その表情は呆れたといった様子ではあったものの、意外なことに怒りを含んでいるようには見えず、レイジは困惑する。そんな彼を見て苦笑いを浮かべる柚槻が口を開く。

『レイジ、今日のことどこまで覚えてる?』

「迅と飯に行った、な。」

『それで?』

「…お前が、どうして怒っているのか、俺はどうすればいいか相談した。」

『らしいね。で、さっきのが結論でしょ?』

「ああ。」

『その後は?』

「…。」

レイジは押し黙るがその記憶がないわけではなかった。結局彼は自分の不甲斐なさに飲まなければやってられないとアルコールを頼んだのである。そしてそこからの記憶はない。と言うことは、状況から言ってそういうことである。

『明日…っていうかもう日付変わってるけど、迅にも謝らなきゃね。お互い迷惑かけたから。』

「迅、にも。」

『言っとくけど、自分がレイジ迎えに行ったよ。』

「!?」

レイジが目を見開く。そんな彼に柚槻はレイジが飲みすぎたと迅から連絡があったこと、迎えに行った時にはまだレイジは意識があったがまともに話はできず、迅からことの経緯を聞いたことを話す。

「…すまない、色々と。」

『ん。自分も今度、焼肉連れてってくれたら許す。』

「柚槻?」

おもむろにレイジの肩に寄りかかった柚槻。柚槻の方から近づいてくるのは随分と珍しいことでレイジは彼女の行動に驚きながらも、それを制することなどするはずもなく。むしろ彼としてはもっと恋人らしいことをしたいと普段から思っているわけで、けれど食事にすらまともに言ったこともないことは事実で。2人で紡いできた時間が恋仲と呼ぶにはどれほど歪で特殊であったかを思い知った。

『栞がね、』

「…​?」

『すっごい真剣に、必死に、恥ずかしいこと言うんだ。』

ぽつりぽつりと話す柚槻の言葉にペットボトルの水を煽りながら耳を傾けるレイジ。無言のまま話の先を促すと柚槻は意を決したようにさらに言葉を続けた。

『“柚槻さんは、もっとレイジさんに構って欲しかったんでしょ?”って。』

「ごほっ!」

口に含んだ水を危うく吹きこぼしそうになるのを堪えた結果むせるレイジに、眉間に皺を寄せ零さないでよ、と柚槻。彼の咳が治まり水の入ったボトルを脇にやるのを待って、柚槻が再び話し始める。

『情けなくて恥ずかしかったけど、でも、言い返せなかった。図星、だったんだと思う。』

「そう、か。」

『…​正直、他人との距離感が未だによく分からない。千佳たちが来て今まで何となくで良かった人との距離感が変わってきて、もっとよくわからなくなって。』

自分の思いが上手くまとめられず、言葉を探すように話す柚槻の話を聞きながらレイジがふと思い浮かべたのは昨日の別れ際、千佳の言った「柚槻さんからレイジさんを取ったみたいじゃないですか」という言葉。二人の関係を誰も壊そうとしている訳でもないのに当人にはそう見えるというのは、まるで下の子に親を取られまいと駄々をこねる子どものようで。けれどレイジと柚槻の関係は親子などではなく男女のそれ。嫉妬、ヤキモチ、そんな言葉で片づけてしまえばそれまで、とはいえ本人は意識的が無意識かに関わらず必死になってしまう一大事であって。
そしてそうなってしまうほど柚槻にとってレイジは特別な存在であった。

「柚槻。」

『…​何?』

「抱きしめて、いいか。」

そしてまた、レイジにとっても柚槻は大切で、特別な存在だ。ただ、彼の方が少し自分の気持ちにも他人の気持ちにも鈍感であったというだけで。それがわかった今、彼には行動しない理由がなかった。彼女に愛を示さない理由は。

『お酒臭い。』

「お前なぁ…​。」

『別に、離れろとは、言ってないけど。』

柚槻が拒否の言葉を発しなかったのを見てとったレイジは彼女を正面から抱きすくめ、そのつむじにキスを落とす。そういえば、最後にこうしたのはいつだっただろうかと、頭の片隅で思いながら。そんな彼に柚槻が放った言葉はあまりにムードとはかけ離れていて流石のレイジも難色を示す。だが、それが照れ隠しであることを彼女自身告げたため、彼は離しかけた腕でもう一度柚槻を、今度はピタリと彼女との隙間ができぬよう抱き寄せた。

「柚槻。」

『何?』

「好きだ。」

『…レイジ。』

「何だ。」

『私も、好き、だよ。』

言葉で伝えていなくとも伝わっていると互いに思っていた言葉。それを改めて音にしたことで、それが必要なことだったのだとお互いに理解する。周りの環境が変わっても、日常に変化があったとしても互いの関係が変わらない、変えたくないものであることを二人は改めて感じたのだった。
9/9ページ
スキ