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倉庫(説明必読)

いつか書くと言っていた村上鋼くん長編
設定どころか大まかな話(主に会話)もだらだら書きだめてたのでとてつもなく長い。
でも本当にいつか書こうとは思っているので、そっちで読みたい人は読まないことをおすすめします。
ていうかレイジさん夢主ちゃんもだったけど私19歳組とやたら絡ませたがるな...。


デフォルト名は葉月さん。苗字は元城戸。でも城戸司令とは全くの無関係でたまたま同じ苗字なだけ。でもみんな城戸さんと被りを避けるため葉月さんor葉月先輩呼び。迅、生駒には葉月ちゃん、弓場さんには葉月って呼ばれてる(他意はない。)荒船さんも葉月呼び。
荒船さんと同期の学年一個上。入隊時はシューターでアステロイド選択。ポイント貯まる前にスナイパーに転向。だけど色々かじるのが好きでスコーピオンとハウンドも使える。5000ポイント弱くらい。弧月も一応やってみたけど荒船さんに「センスない」と言われるレベル。
自分が強くなるより周りに強くなって欲しいと思っているので、色んなアドバイスとか練習の付き合いとかやってみるにつれなんだか器用貧乏に。だけど本人的には勝つことにはあまりこだわらないから平気って顔してた。でも、本当は負けるのが怖いだけ。負けたくないからやる前から言い訳してる。
でも、根っこが優しいのでみんなに慕われる。荒船からは実はライクじゃない方の好きを向けられているし本人も気づいてる。でも、葉月自身は荒船は同期であり友達。それ以上じゃない。
荒船さんの紹介で鋼くんに出会った。サイドエフェクトで目に見えて成長する鋼くんに、最初はすごいなって単純に目を奪われた。荒船と一緒になんだかんだ鋼くんに構うようになった。実力はすぐに抜かれたけど、それでも自分を慕ってくれて、相談とかも色々してくれる鋼くんと仲良くなって戦闘員には同世代の女子が少ないので、なんやかんや18歳男子組のくくりでつるむように。
荒船がスナイパー転向するって話を本人に聞いて驚く。けど、「そうなんだ。荒船くんはそうやって強くなるんだね。」って何も聞かない優しさ。しかもちゃんと手伝う。周りが鋼のせいだって言っている中で、実際どうなんだろ?と思ってたところに来馬先輩が荒船の所へ訪ねて来てるところに遭遇。何の話?実は...ってことのあらまし聞いて私もメッセージいいですか?と別撮りしてもらう。『私も村上くんにすぐ抜かれちゃって悔しかったけど、でも、村上くんが強くなるのを見てるのは純粋に嬉しかったよ。仲間が強くなってくれるのは、私にとってすごく嬉しいことだから。その強さで近界民に私以上に悔しい思いさせてくれたらもっと嬉しいんだけどな。期待してるね。』
同日、母親が再婚相手を連れてくる。新しい父親になると言われたその人はボーダーを毛嫌いしていて今すぐボーダーを辞めろと言われてしまう。夫が居なくなった寂しさと不安を埋めたい母親に説得されるが、嫌だと突っぱねる。しかし結局翌日葉月が学校に行っている間に保護者の書類を取り消し、葉月をボーダーから辞めさせる手続きを進められてしまう。
『私はまだ、子供なんだ...。無力なんだ...。』
結局偶然(?)最後に会った迅にみんなに伝えて欲しいと頼み、誰にも会わずに突然ボーダーを辞めることに。
ボーダー推薦で入った大学だったが、ボーダーでなくなったので学部を変わることに。無事受かったけど、でも、ボーダーのメンツに会うのが辛くて、ボーダーやめさせられたことが悔しくて大学生活続かなくてプチ引きこもり。親と再び衝突。家出。...今ならボーダー戻れるのでは?でも今更戻って1からやり直すの?そんなこと出来る?
結局一般職員としてボーダーに就職することに。いきなり本部からじゃしんどいのでは?という配慮もあり、鈴鳴支部に配属に。鋼くんと再開。最初はなんだかお互いギクシャク。でも普通に挨拶ぐらいできるようになってこの支部で俺の事苗字で呼ぶ人いないんで...って名前で呼んで貰えるようになった頃、親にボーダーに再就職したことがバレた。鋼が話して欲しいと頼み、ボーダーを辞めるまでのあらましを聞くことになる。「なんで言ってくれなかったんですか。少しくらい頼ってくれてもいいじゃないですか。仲間って言ってくれたの嘘ですか。」『ありがとう、鋼くんは優しいね。でも鋼くんの人生は鋼くんのために生きて。私は人に人生決められるのが、つらいことを知ったから。』あくまで話をしただけというスタンスだった。しかし連日の親からの電話、時折仕事場にも家にも訪ねてくるようになり、ストレスでいよいよ葉月ちゃんがおかしくなる。『もうさ、鋼くんと結婚しちゃおっか。そしたら鋼くんの籍に入れてもらえてさ、あの人たちからも開放されるよね?!』って零したら「俺まだ学生ですけど、年齢的には大丈夫なんで俺でいいなら。」って鋼くんが返すから、そこで葉月ちゃん正気に戻って。
『甘えてごめんね。私が鋼くんの人生は鋼くんのために生きてって言ったのにね。鋼くんの優しさに漬け込んで、最低だね。ほんとごめん。』「甘えることの、何が悪いんですか?確かに甘えてばっかりじゃダメかもしれません。でも、俺は葉月さんがそんな人じゃないこと位は知ってます。」『甘えてばっかだよ!というか、諦めてばっかり...。親にやめさせられてもすぐ家出ればボーダーに戻れた。でも、そうしなかった。言い訳した。ボーダー戻る時も!また戦闘員として戻ることも出来た。でも、また1からってことに怖気付いた。前勝てた人に負けるのが怖かった。ブランクのせいだって分かってても。負けるの、やだ。だから逃げてばっかり。やる前から、保険かけて、諦めた素振り見せて。 そんな自分が嫌なのに、挙げ句の果てに鋼くんを逃げ道に使おうとした。ホント、最低な人間だよ...。』
弱ってる葉月を見てどうにか自分が守ってあげたいと思うと同時に、どうすればいいかわからない鋼くん。結局鈴鳴にしばらく泊めてあげることに。眠れていなかった葉月がゆっくりできるようにと部屋を貸してあげる鋼くん。その鋼くんに部屋を貸してあげる来馬先輩。ついでにざっくり話も聞いてあげる。

「鋼はどうしたいの?」
「俺はあの人を守りたいです。何としても。あの人に笑ってて欲しいです。」
そんな折、イレギュラーゲートの事件が発生。元隊員だけあって、荷物取りに行こうとした途中にゲート開く。鈴鳴...ではなく荒船隊が近くにいて助けてもらう。「お前、葉月か!?」「荒船くん!?」ってな再開。連絡先聞き出した荒船。本部に報告行って帰りに電話。鈴鳴第一の職員してること知ってて『なんで知ってるの?』「鋼に聞いた。けど、なんで鈴鳴なんだ?」と詰め寄る。『あんまり本部の人と会いたくなかったから。』「じゃあもう会っちまった俺はいいよな?」ってな感じから今までの話を簡単に。翌日任務前に顔出した荒船。「終わったあと、話し良いか?」で、告白する。
でも『荒船くんは話しやすくて、考え方も似てて一緒にいて楽だけど、そういう好きではないな。ごめんなさい。』「今から好きになってくれればいい。」『...ごめんね。』
告白されたことによって、少し居心地悪くなったけど、それを差し引いてもボーダーにいたいって願いが強くなる。と、同時に鋼にとんでもないことを言った自覚をして、鋼くんに謝りたいことがあるのってな感じで支部の事務所のほうで話す。
『あの時はどうかしてた。ごめんね。私色々考えて、今度こそ逃げないことにしたよ。どんなに辛くてもどんなに迷惑かけて苦しくなったとしても、ボーダーから辞めてくれって言われるまで、辞めずにここで頑張る。』「...葉月さん、昨日荒船と話してましたよね。」『...?』「何、話してたんですか?」突然の鋼の脈絡のない話に戸惑いながらも『実は告白されたの』と素直に答える。「葉月さん、結局誰でもいいんですね。今度は荒船に甘えるんですね。」鋼の冷たい言葉に驚く葉月。『違う、そんなの違うよ。だって私、告白断ったもん。』「なんで断ったんですか、あいつも俺と同い歳です。どっちでもいいんでしょう?」『なんでそんな事言うの!?私は、鋼くんだから言ったんだよ!』「...!」ってな感じで予定外の告白タイム。『ボーダー入ってすぐから、どんどん強くなる鋼くんに初めはただすごいなって思った。それに驕らず努力を怠らない鋼くんは素敵だなって思った。でも、荒船くんとの一件を知って繊細な子なんだなと思った。それと同時に、強い子なんだとも。痛みを知ってそれでも強くなろうとしてる人は、本当に強いって私は思うから。そのあとボーダー辞めて鈴鳴に出戻ってきて、鋼くんがアタッカーNO.4だって聞いて、本当に強い子だったんだって、あの時からまた強くなったんだって純粋に嬉しかった。それと同時に鈴鳴のみんなを思ってる姿見て、優しくてかっこいいなって思った。それからみんなで笑ってる姿みて、こんな顔するんだ、可愛いなって思ったの。気がついたら、鋼くんを目で追ってるの。鋼くんをもっと知りたいって思う。いつの間にか、私、鋼くんのこと、好きになってたの。』まさか告白されるとは思わず面食らう鋼。『ごめんね、こんなこと急に言われて鋼くんも迷惑だよね。せっかく謝るために時間貰ったのに、謝ること増えちゃった。ほんとごめん。』『振ってくれていいよ。』と困ったように笑う葉月。それを見て冷めた怒りがまた沸く鋼。
「なんで葉月さん、そんな勝手に色々決めるんですか。俺だって結婚しようかなんて言われて誰にでも即答出来る訳じゃないです。ましてや俺でよければなんて、葉月さん以外に言えないです。」『え...。』ジリジリと距離を詰める鋼。「なんで断られるの待ってるんですか。なんで俺が断ると思ったんですか。勝手に1人で頑張るなんて言わないでください。俺はあなたに笑っていてほしいです。あなたを守らせてください。」『鋼くん...。』壁ドン。「あと、1つ訂正してください。俺、可愛くなんてないですから。」そう言った鋼の顔は確かに色香を纏った男のものだった。
「で、どうしますか?ホントに結婚しますか?」『えっ!?いや、あの...まずは、お付き合から、で、どうでしょう...。』さっきまで笑っていた、葉月は顔を真っ赤にさせて狼狽える。そんな彼女に近づけた顔を離すと今まで壁を押していた手で、葉月の手を取る。「じゃあ、改めて言わせてください、俺、葉月さんが好きです。俺と付き合ってください。」『...はい。』晴れて恋人にー。
結局その日はそろそろ家に帰ると言った葉月を、送りますと、鋼くんが送ることに。鍵を取りに居住スペースの方に戻った鋼とばったり遭遇した来馬先輩。「よかったね、鋼。しっかり守るんだよ。」「もちろんです。」
葉月を家まで送る道中。もちろんおててつないで。『ねえ鋼くん?』「なんですか?」『鋼くんは、いつから、その、私の事...』「最初から、です。」『えっ。』「荒船に初めて紹介された時から、優しくて、可愛くて、綺麗だなって思ってました。でもあの日、動画くれた日が、俺の中での特別です。欲しい言葉、くれたんで。あと、葉月さんの気持ち、知れたから。」『私の気持ち?』「葉月さんも悔しいって思うんだって思いました。葉月さん、勝っても負けても笑ってたから。笑ってる顔は好きだったけど、でもなんか違和感があって。あの日ちゃんと葉月さんが悔しいって思えてるって知ってなんか俺だけが、葉月さんの本心知れてる気がして嬉しくなりました。あと、期待してるって言われて、葉月さんに期待されるの、嬉しかった。」照れながら笑う鋼くんの顔にさらに顔が赤くなる葉月。徐々に足が止まる。『...ごめんね。』「え?」『勝手に、辞めちゃって。』うつむく葉月。離れる手。葉月の前に立った鋼。鋼の手が葉月の頬に伸びてきて、そっと葉月の顔をあげさせる。『!』そしてデコちゅー。前髪越しの触れるだけな感じで。「次はないんで。」『え...?』「次は俺が、どんな手を使ってでも引き止めます。つなぎ止めてみせます。俺が絶対葉月さん守るんで。」また手繋いで歩き出す。鋼くんの顔は耳まで真っ赤。
そうこうしてるうちに家に着く。「図々しいですけど上がっていきたいです。」『いや!あの!...片付け苦手なの。また今度呼ぶね。』「意外です。でも、今度、楽しみにしてます。」そんな感じで別れー、次の日からラッド騒動。鋼くんも駆除へ葉月ちゃんも窓口の仕事忙しい。で、3日くらいすれ違い。

普通のデート挟む。

で、大規模侵攻勃発。『いってらっしゃい。』と来馬隊にむけて。『必ず帰ってきてね。』「はい。もちろんです。」鋼くんの手を握って送り出す。この頃には鈴鳴メンバーはお付き合いしてるの知ってる感じ(太一はここで初めて知る?)。支部にもシェルターがある(ことにする)ので、葉月はそちらに避難誘導しつつ自分も避難。警戒ライン超えたりするし、一応職員なので戦況もぼんやりは分かって、とにかく鋼くん心配。結局ハイレイン達が撤退して残党刈りには参加せず本部に戻ってきた鋼くん(明らかにダメージ食らってたし)が連絡してくるけど、シェルターでてんやわんやの葉月ちゃんは返事できず。いてもたってもいられなくなって鋼くん鈴鳴に帰ろうとする。「もう緊急脱出(ベイルアウト)寸前じゃないですか!」「そうだよ、無理して帰って鋼が危険な目にあったら、葉月ちゃん悲しむよ。」「でも...!」ってなところで鋼の携帯がなる。相手は葉月...ではなく迅。「遅れて参戦した弓場隊に鈴鳴寄ってもらった。葉月ちゃん、無事だって。」ということで無事解決ー。
近界民の残敵も片付いて町が落ち着いて、ボーダーの特別警戒も解除されて鈴鳴支部のメンバー帰還。葉月ちゃんは後処理もあって忙しく仕事してる。慌ただしく働いて休憩に下がってきた所に鋼くんお出迎え。「ただいま。」『...おかえり!鋼くん、みんな!』太一が空気読まずみんなでご飯&お喋りー。そろそろ休憩終わるって時に来馬先輩が太一連れて上手いこと外出。今ちゃんもしっかり空気読んで部屋に引っ込む。2人っきりになった鋼くんと葉月ちゃん。
『なんか、気使わせちゃったかな...?』「もっと早くてもよかったんですけどね。」って鋼くんが葉月ちゃん抱きしめる。『こ、鋼くん?』「心配しました。連絡つかないから。」『ご、ごめん。でも、私も心配したよ、すっごく。不安でたまらなかった。』「それは...すみません。」『こういう場に身を置いてる以上、お互い心配なのは仕方ないね。』「でも俺は、絶対葉月さん守るんで。俺だけ、死んだりしません。」『じゃあ、私も鋼くんずっと待ってるよ。ね?』顔を上げた葉月ちゃんに我慢できなくなって、鋼くんがチュッてする。さすがに驚く葉月ちゃん。離れようとするけど、鋼くんがホールドして逃がさない。『鋼くん、そろそろ仕事行かなきゃ。』「...離したくないです。」『私もやだよ。せっかくやっと鋼くんと会えたのに。でも、行かなきゃ。』渋々離れた鋼。「なんで葉月さんは平気なんですか。」『平気じゃないよ。でも、年上ぶってもいいでしょ?』目をぱちぱちさせる鋼。内心可愛いって笑う葉月ちゃん。『仕事終わったらまたゆっくり話そ?』「じゃあ、待ってます。」『ふふ。早速逆になっちゃったね。』そう言って手を振り仕事に戻る葉月。座り込む鋼。「ガキだな、俺...。」葉月ちゃんへの愛が溢れて苦しい鋼くん。

数日後。論功行賞にて鋼くんの二級戦功が授与される。鈴鳴支部全体がほんのりお祝いムード。みんなでご飯食べてちょっとしたパーティが行われる。(来馬先輩持ち)お開き後、鋼が葉月を送っていく道中。『いやー、でも鋼くんホントすごいね!』顔をキラキラさせて一日そればっかの葉月。彼女のいつもと違う顔に鋼くんも自然と表情が緩む。「葉月さん、可愛すぎです。」『なっ!何言ってんの!?』「そんなに喜んでくれるなら、頑張った甲斐ありました。」『そ、そりゃ嬉しいよ!あ、そうだ!なんかプレゼントしてあげる。ご褒美、何がいい?』「ご褒美ですか?」『あんまり高いのは無理だけど、好きな物言っていいよ。』「じゃあ、葉月さん家に行きたいです。」『ふぇ?!』「また今度って、言ってたんで。」『...そんなんでいいの?』からかい半分、本気半分だったのであっさり了承されて驚く鋼。「ホントにいいんですか?」『また今度って言ったのは私だし、別に片付けだって全くできないわけじゃないもん。でも、いきなり今日とか言われても無理だから、鋼くんの空いてる日教えて。こっちで予定調整するよ。』サラリと答える葉月に悪戯心が湧いた鋼。「葉月さんも欲しい、って言ったらどうします?」さすがに言ってて恥ずかしくなった鋼くんは葉月ちゃんの顔見れない。でも、自分の気持ちを偽りたくないので訂正もしない。立ち止まって繋いでた手を振り払って鋼くんの前に立つ葉月ちゃん。『鋼くん。』「...。」『本気で言ってる?』「...。」『こっち向いて。』ゆっくり葉月の方を向こうとした鋼に飛んでくるデコピン。「いっ!?」『年上からかうからだよ?』「す、すみません。」と、謝りながら改めて葉月を見るとまさかの顔真っ赤。でも、その表情は真剣そのもの。『私ね、鋼くんの気持ちは嬉しいよ?でも、お互いまだ未成年。しかも鋼くんに至ってはまだ高校生。まあ、早い子たちは色々済ませてるんだろうけど、私は責任取れないことはしたくない。子どもには、許されないことがある。どれだけ辛くても、大人にならないと叶わないことがある。』葉月の過去を知っているからこそ、彼女の言葉の重みを実感する。『もし鋼くんが少しでもそういうつもりで、うちに来たいって言うなら、この話はなし。プレゼントは別に私が勝手に考えるから、それで許して。』『でも、私の気持ち、分かってくれるなら、ちゃんと自分の気持ち整理して、我慢して、それでもいいなら、改めて招待するよ。』今日はここまででいいから、ってそれだけ言って逃げるように帰っていく葉月ちゃん。追いかけられない鋼くん。鈴鳴に帰ってきて様子がおかしいことに気づいた来馬先輩が鋼の部屋に尋ねてくる。実は...ってポツポツ話す鋼に「鋼は男だね...。」と苦笑を漏らす来馬先輩。「じゃあ、来馬先輩はなんですか。」って投げやりに答える鋼くん。「いや、ごめんね。ぼくも鋼の気持ち、分からなくはないよ。でも、うーん、上手く言えないけどさ、鋼は男で、葉月ちゃんは女の子で、でもそれ以前にお互い一人の人でしょ?人同士が一緒にいるって色々我慢することとか、許さないといけないことって結構あると思うんだ。」ふと、太一の顔が浮かぶ鋼。それを察したのかさらに苦笑する来馬先輩。「鋼は葉月ちゃんが好きなんでしょ?葉月ちゃんと、これからもずっと一緒にいたい?」「それは、もちろん。」「じゃあ、鋼が人として、どうするべきかを考えてみたらいいんじゃないかな。」もう来馬先輩は男じゃない(笑)「ありがとうございます。」覚悟した...というか心を決めた鋼くん。そのまま電話することに。「遅くにすみません。」『ううん、大丈夫だよ。どうしたの?』「さっきの答え、早く伝えたくて。」『...うん。』「俺、これから先もずっと、葉月さんの隣にいていいですか?」『えっ?』「何があっても、葉月さんの隣にいたいです。あなたの隣で、あなたを守りたい。葉月さんがずっと笑ってるとこ、見ていたいです。」『鋼、くん...?』「ずっと傍にいれるなら、いつかその時が来ますよね?それが分かってれば、待てます。」『っ!』「俺、まだガキだから、考えは足りないかもしれないけど、そのくらいは出来ます。葉月さん、悲しませたい訳じゃないんで。だから、」「葉月さん家、やっぱり行ってもいいですか...?」結局その場で予定決めて、葉月が夕飯作ってあげることに。『リクエストある?料理得意なわけじゃないけど...。』「なんでもいいです。」『それ、いちばん困るんだけどなー。』「じゃあ、ご飯が美味しいおかずで。洋食より和食派です。」『待って、男の子が食べそうな、和食で、ご飯に合うものって揚げ物しか浮かばないんだけど...』「ほんと、なんでもいいですよ。」『ん、わかった。頑張るから、後から文句言うのなしだからね。』「言いません。」そんな和やかな会話をして、その日は終了。
数日後、葉月の家にやってきた鋼。手土産は今ちゃんアドバイスにて焼き菓子。嬉しそうな葉月ちゃん。そんな葉月ちゃんは私服にエプロンなので、普段見ない姿に鋼くん照れる。『何?何かあった?』「その...私服もエプロンも可愛いですね。」『あ、ありがと。』葉月ちゃんももちろん照れる。話題を変えて、本日のメニューについて。「すごい楽しみです。」『期待されると緊張するなぁ。とりあえず、あと焼くだけだから待っててね。』そういって最後の仕上げにとりかかる葉月ちゃん。それを後ろから眺める鋼くんは幸せを噛み締める。出来上がったのは豚肉の生姜焼き、白和え、かぼちゃのサラダ、味噌汁とほぼ和食づくし。『嫌いなもの、ない?』「大丈夫です。けど、揚げ物って言ってませんでした?」『ごめん、やっぱりそっちがよかった?』「いや、そういうわけじゃなくて。」『...揚げ物より、もっとちゃんと、手の込んだもの作りたくて。』「ありがとうございます。」葉月ちゃん抱きしめたい衝動に駆られるけど、今は我慢の鋼くん。普通に美味しいご飯をのんびり食べて、デザートはプリンを作ってみた葉月ちゃん。食後にデザートも食べて片付け俺がやりますの申し出に、今日は鋼くん、お客様だからって断る、葉月ちゃん。そんで片付けはじめるけど後ろから抱きしめちゃう、鋼くん。でも、すぐに離す。「招待してくれて嬉しかったから。ご飯も美味しかったし。でも、あんまりやると怒られそうなんで」っていたずらっ子の顔。『そういうことする子にはやっぱり手伝ってもらいます!お皿拭いて!』怒って照れ隠しな葉月ちゃん。
一緒にお片付け、おしゃべりしていい時間。『もうこんな時間!鋼くん明日は?』「昼から防衛任務です。」『じゃ、そろそろ帰った方がいいね。』ってことでお別れ。でも、その前に玄関まで来たところで、葉月ちゃんが鋼くん呼び止める。振り返った鋼くんに抱きつく葉月ちゃん。固まる鋼くん。『...やられっぱなしだったから。』直ぐに離れる葉月ちゃんめっちゃ照れて顔真っ赤。「...明日からまた、頑張れそうです。」はにかんで帰っていく鋼くんだった。

ランク戦始まる。
鈴鳴の4人がちょくちょく本部に通うように。鋼は元々ソロランク戦にも通う方だったので、ますます鈴鳴には人の気配がなくなる。任務がない日は夜には帰ってくるけど、その頃には葉月が帰宅する頃であまり話す時間もない。送ります、って言ってくれる鋼くんに甘えたり、疲れてるだろうから今日はいいよって断ったりで距離が掴めない。再びすれ違いが増えて会えない日々。流石に葉月ちゃんの方が寂しくなってくる。「やっぱり、戦闘員復帰しようかな...。」そんな折、大規模侵攻からしばらく止まってた葉月の実家からの説得がまた始まる。今度は三門市を出ようとまで言われる。絶対嫌だと突っぱねる葉月。強行手段が取れない分、段々脅しめいてくる説得。再び様子のおかしくなっていく葉月ちゃんとそれに気づけない鋼くん。だけど、迅さんからの「葉月ちゃん元気?」にしばらく会えてないことに気づく。改めて時間とって電話したら、なんだか歯切れが悪くてある朝葉月ちゃんが出勤の時間に家出ると家の前に鋼くん待ってる。ようやくやつれて元気の無い葉月ちゃんに気づいた鋼くん。「もしかして、また?」「...うん。」今度はすぐに事情が飲み込めた鋼くん。でも、ここまで気づけなかった自分に腹が立つ。「また、俺の部屋泊まってください。」「でも、」「遠慮なんかしなくていいです。俺に、守らせてください。」「...遅い、よ。」泣き出す葉月ちゃん。寂しかったと、すぐに気づいて欲しかったと、駄々をこねる。「俺の事、殴ってください。」「...へっ。」「自分でもムカつきます。葉月さんのこと、無駄に待たせて、こんなになるまで気づけなくて。だから、」「目、瞑って。」自分で言ったとはいえ、流石に怖くなったが恐る恐る目を閉じる鋼。そしてペちっと軽い音を立てて両頬に葉月の手が触れる感覚。でもそれは全然痛みを与えるものではなくて、何事かと目を開きかけた瞬間、ゴチっと今度は痛みを与える音。葉月が自分の額を鋼の額にぶつけた音だった。痛みに耐えながらも額を離さない葉月。「両成敗、ってことで。...ごめんね。ワガママ言って。」「もっと、言ってください。」「ありがとう。」とりあえず葉月は仕事に、鋼は学校に向かいながら今夜からまた鈴鳴にしばらく泊めてもらうことなど話し合う。
そして夜。「今回はお部屋借りることにしたから急いで帰らなくて大丈夫だよー。ランク戦頑張って!みんなのご飯作って待ってるね。」今回は急遽ってことでもなかったので葉月ちゃんはちゃんと部屋用意してもらって、鋼くん内心しょんぼり。でもって玉狛第2にも負けてさらにしょんぼり。ただ、ご飯につられてちょっと嬉しくなるのはご愛嬌(笑)来馬隊が鈴鳴に帰還。葉月ちゃんの肉じゃがが振る舞われる。元戦闘員だしってことで反省会にも同席する形になる葉月ちゃん。(原作ちょっと外れる)
「鋼と合流できないとどうしてもキツいよね。」
「鋼さんはうちのエースですからね!」
「うーん、でも強いからこそマークされやすいのよね。」
「ホントならそこで、鋼くんが引き付けて来馬さんや太一くんが点取れるのがベストだよね。」
葉月の発言にみんな驚く。どうしても鋼くんが点を取ることが当たり前になっている鈴鳴。
「今日の試合も聞いた限りでは鋼くんが敵のエースと対決してたんだよね?そのエースを抑えてる相手を来馬さんや太一くんで落とすってのは難しかった感じですか?」
来「那須さんじゃなくて、三雲くんや雨取さんを先に狙ってれば、ってこと?」
今「でもそれじゃ、那須さんと正面から当たることになっちゃうよ?」
別「そもそも那須さんがうち狙いでしたし...」
「那須さんと共闘の形も視野に入れる感じには確かになるかもですけど...。相手の隊の誰かが落ちればエースも動揺するかもだし、それで鋼くんが勝てたかもしれない。那須さんと正面からあたるのは、三雲くんを落としたあと鋼くんが来るまでバックワームで身を隠せば少しはマシかも。那須隊のスナイパーとか残ってれば厄介だけど、今回はそれもなかったんですよね?」
「それは空閑に取られたんですけどね...」
鋼くん複雑そうな顔。
別「でも多分、那須さんと正面から当たったら、トマホークとかもっと防ぎようなかったですよ。」
「うーん、鈴鳴のコンセプトを尊重するなら...そう、ですね。」
来「つまりぼくがもっと攻め手に回れば何か策があるってこと?」
「それもひとつの可能性ですね。鋼くんや太一くんが守りに専念して来馬さんの間合いで。逆に来馬さんがどっしり守り手になるってのもひとつかと。今回に限っていえば、ですけど。」
村「来馬先輩が?」
「だって、那須さんの間合いの外から攻撃しないとしんどいですよね。ならその役目は太一くんだよね?」
別「でも、今回は暴風雨で視界超悪かったですよ?」
「あ、そっか。そうだったねぇ...。那須さんの射程がどの程度かにもよるけど...、うーん。」
鈴鳴の面々よりも頭を悩ませる葉月に今ちゃんが笑い出す。それにつられて鋼くんと来馬先輩も。きょとんとする葉月ちゃん(と、太一)。
「なんか、葉月さんが負けたみたい。」
「え。」
「俺ら以上に俺らのこと考えてくれてますね。」
「葉月ちゃんも仲間みたいで頼もしいけど。」
「す、すみません、出しゃばってしまって...。」
そんなこんなで反省会終了。それぞれが部屋に戻る中、ちょっといいかな、って鋼くん呼び止める葉月ちゃん。「ここじゃなくて、俺の部屋、行きませんか。」「えっ...!」「ちゃんと、この間のことは覚えてます。何もしません。ただ、ゆっくり2人で話せたらって。」前にも使わせてもらったけど、改めて鋼くんの部屋に二人きりなのでドキドキな葉月ちゃん。でも意外と鋼くんの方は心が決まってて、あんまり下心湧いてない。「それで、何かありました?」「あ、うん。聞いて欲しい話、2つあって。」「2つ?」「1つはね、さっき反省会参加させてもらって改めて思ったんだけど、私、もう1回戦闘員に復帰したいなって。」「えっ。」「鋼くんは、反対?」「いや、そんなことないです。でも、急にどうして...」「笑わない?」「そんな酷い理由なんですか?」「うん、割と...」「聞いても、いいですか?」「鋼くんと、もっと、一緒にいたくて。」「!」「鋼くんたち、ランク戦始まると鈴鳴に居ないこと多いし、私も戦闘員なら本部に自由に出入りできるし、ランク戦も見に行けるし...。」「ちょっと、待ってください。」葉月の言葉をさえぎり、顔を手で覆いながら顔を逸らす鋼。「やっぱり、おかしいよね...。」「いや、そうじゃ、ない。...かわいすぎて。」「えっ!?」部屋に入った時は平気そうな顔してた鋼くんの顔がみるみる真っ赤になっていく。それが写って葉月ちゃんの顔も赤くなる。お互いしばらく黙って微妙な空気になる。少しして深呼吸して落ち着いた鋼くんが口を開く。「でも、正直な話、それだけが理由なら心配です。」「...。」「ボーダーにいる以上、こないだの大規模侵攻みたいに危険は付き物です。でも、戦闘員となるとその可能性はもっと高くなる。だから俺は、葉月さんの気持ちはすごく嬉しいですけど、そういう理由なら反対です。俺がもっとちゃんと時間作ればいいだけなんで。」「...うん。そう、だね。」再び沈黙。今度は葉月が深呼吸して話し出す。「確かにね、それだけだとあまりに不真面目で不謹慎だと思う。でも、その気持ちも嘘じゃないことを知ってもらった上で、別の理由もちゃんとあるよ。私はボーダーでの仕事が、色々あるのを知ってる。今の仕事もボーダーを支えるのに大事だってわかる。でも、大規模侵攻でただ、待つだけだったのが、祈るだけだったのが、すごくもどかしくて、すごく、苦しかった。私があの時違う選択をしてたら、もっと違う未来が、例えば鋼くんと、並んで戦うことが、出来たのかなって。鋼くんみたいに強くはなれないかもしれないけど、誰かの助けにもっとなれたのかなって。両親にボーダー辞めろって迫られる度、あの日、1度やめた日の事思い出して、後悔して、嫌になるの。なら、今からでも、やり直せないかなって。」「葉月さん...。」「待ってるって言ったのに、また、ワガママ言ってるね。ごめん。」少し泣きそうな顔をしながら話す葉月の手に自分の手を重ねる鋼くん。「葉月さん。」「...なぁに?」「前に、俺に言ったこと、覚えてます?」「?」「俺の人生は、俺のために生きてって。」「あ...うん。」「葉月さんも、葉月さんの人生は自分で決めていいんですよ。」「!」予想外の言葉に驚いて目を見開く葉月。「正直、まだ心から賛成できません。俺が葉月さん守りたいって気持ちもあるし、なにより葉月さん優しいから、また勝っても負けても笑うんだろうなって思うと。それに、この間の大規模侵攻、敵が同士討ちして死んだって話があります。敵でも味方でも、目の前で人が死んで、葉月さん正気でいられますか。」「そ、そんなの、その時になってみないとわかんないよ。鋼くんだって、そうでしょ。」「まあ、そうですね。でも俺はそういう所に葉月さんにいて欲しくない。ただ、決めるのは俺じゃない。」「鋼くん...。」重ねた手をぎゅっと握りながら真っ直ぐに想いを伝えてくる鋼の目をじっと見つめ返す葉月。「...私、鋼くんが思ってるほど、優しくないよ。」重なった手に視線を移しながら、葉月は続ける。「先に、2つ目の話、するね。...私、戦闘員になるの、お母さんにはちゃんと分かって欲しいんだ。」「えっ。」「別に応援して欲しいわけじゃない。理解してくれと言うつもりもないよ。あと、正直父親はどうでもいいの。あの人を父親と思ったことは1度もないから。」少し嫌悪感を含んだ表情をする葉月。見たことの無いその顔に少し驚く鋼。「半年一緒に住んだし、書類上今は父親って肩書き、苗字もあの人のだけど、でも、親だとは思えない。もしこっちに何か無理矢理手出ししてくるなら、警察だってボーダーだってなんだって使って逆に追い返してやるくらいには思ってるの。既にまあ、色々されてるけど。」「そう、ですか。」「ほら、優しくないでしょ?」自嘲気味に笑う葉月をどう見ていいか分からない鋼。でも、鋼の中で葉月が優しいことは変わらなくて、逆に葉月にここまで言わせる存在に少し腹を立てる。「だけど、ね。」寂しそうな表情に戻りながら葉月が続ける。「お母さんは、私にとって、どこまでもお母さんなんだ。私を産んでくれて、育ててくれて、例えボーダーを無理矢理に辞めさせたのがお母さんだったとしても、それでも。」「葉月さんは、やっぱり優しいです。」ポロリと鋼は口から零れるようにそういった。「そんなこと、」「葉月さんがボーダー辞めたの、お母さんのためなんじゃないですか。」「ち、違うよ!あれはもうどうしようもなくて、」「じゃあ、戻ってきた時、戦闘員にならなかったのは?お母さんのこと、思ったんじゃないですか。」「それも、前話した通り、私が怖気付いたからで、」「本当に?」「...考えなかった、って言ったら嘘になる。でも、それはあくまでちょっと思ったってだけで、そんな言い訳、」「立派な理由じゃないですか。葉月さんのこと、もっと好きになります。」「!?」唐突な鋼くんの甘い言葉に固まる葉月。鋼くんはそっと葉月さんを抱き寄せ、続ける。「だから、もう一度言います。葉月さんの人生、葉月さんが決めてください。葉月さんは、どうしたいですか?」「私、は...戦闘員に、復帰したい。でも、鈴鳴の今の仕事も急には投げ出したくないから出来れば兼業が理想。それを、お母さんにちゃんと自分で言いたい。無理だとは思うけど、本当は理解して欲しい。それで...」「まだ、何かあるんですか?」最後言い淀む葉月を鋼が促す。「その時、お母さんに話す時、出来れば鋼くんに隣にいて欲しい。」「...俺に?」鋼くんの服をつかみながら縋るように葉月が言う。さすがに驚く鋼。「俺で、いいの?」「ん、鋼くんがそばに居てくれたら、私きっと頑張れる気がするの。気持ち、最後まで曲げずに居られると思うから...。」「わかった。」1歩踏み出そうとする葉月に頷いた鋼。思わず葉月が顔を上げると額に、瞼に、頬に、最後に唇に、キスが降ってくる。「大好きな葉月さんの、葉月のためなら、俺は何でもする。」「な、まえ。」「いや?」「嫌じゃ、ないけど...なんか、ドキドキする。」顔を隠すように鋼くんの胸に顔を埋める葉月ちゃん。それをぎゅっと抱きしめながら鋼くんが話す。「俺、葉月、さんのお願い聞くから。俺も、お願いしていい、ですか?呼び捨てで呼びたい。あと、敬語もなくて、いい?」「...2人の時だけなら。」「!ありがと、葉月。」
数日後の日曜日。葉月ちゃんちにて。母親との話し合いの場が設けられる。「うう、緊張する。」「大丈夫だよ。」ぎゅう、と葉月ちゃん抱きしめる鋼くん。「鋼くんも、緊張してる...?」「そりゃ、まあ。うっかり『娘さんを僕にください』って言いそうなくらいには。」「ちょっ!!」ガバッと体を離す葉月ちゃんの顔は真っ赤で、鋼くんの方はちょっと照れてるくらい。「冗談でも、やめて...!」「ごめんごめん。ちょっとは緊張ほぐれるかなって。」「むしろ、心臓に悪いよ!」「そう?半分は本気なんだけど。」「鋼くん!今は、」「わかってる。ちゃんとしたのはまた今度。でも、少しは緊張解けた?」そんなこんな話してたらインターホンが鳴る。葉月が開けるとそこにはお母さんの姿。「待ってた。来てくれて、ありがとう。」「うん。...あら?」少しギクシャクした空気だけど、入ってくるなり鋼くんの姿を見つけるお母さん。「先に紹介するね。村上鋼くん。今お付き合いしてるの。」「はじめまして、村上鋼です。」「...そう。いつから?」「今、3ヶ月くらいです。」「歳は?」「18です。この春卒業して、その後は三門大に進学決まってます。」「あら、葉月より歳下なのね。」「ちょ、ちょっとお母さん!お茶入れるから、とりあえず座って。」「...そうね。」複雑そうではあるけれど、鋼くんには割と好意的な雰囲気のお母さん。お茶が入るまでも鋼くんに質問していく。「村上くんも、ボーダーの人なの?」「お母さん!」「葉月さん、俺はいいですから。...そうです。葉月さんが今働いてる鈴鳴支部を拠点にしたチームで防衛隊員としてボーダーに所属してます。」「そう、なのね。」少し顔色が曇る葉月母。「お茶、入ったよ。」「ありがと。」部屋に沈黙が走る。それを破ったのは葉月母。「...それで、あなたの話って?」「あ、うん。...私、お母さんも知っての通り、今ボーダーで一般職員として働いてる。でも、近いうちに防衛隊員に、復帰しようって思ってるの。」「...それで?」「そ、それで...。」母親の温度のない声に言葉を詰まらせる葉月の手に鋼くんがそっと手を重ねる。「それで!お母さんにもちゃんとそのこと知ってほしくて、呼んだの。納得してくれないかもしれない、反対なのも分かってるけど、それでも!私は私の事、ちゃんとお母さんに知ってほしい、ので。」「そう。」緊張に震える葉月と、静かにお茶を飲む葉月母。鋼くんはじっと2人を眺めている。そして、ゆっくり葉月母が口を開く。「葉月は、お父さんのこと、好き?」「え、」「今の、じゃなくてね。」「...好きだよ。」葉月ちゃんのホントのお父さんは病気で亡くなった。単身赴任してたけど、たまたま戻ってきていた時に倒れた。葉月ちゃんが中学生くらいのこと。「あなた、死んだあの人にそういうところよく似てるわ。」「え?」「何かを決めるために、自分も他人も納得させてからじゃないと進めたくないとこ。大切な人のためになら、自分を犠牲にできること。」「...。」「だから怖いのよ。あなたもまた私の前からいなくなってしまいそうで。」「あ...、ごめん、なさい。」「それは、私のためにまた諦めてくれるってこと?」「いや、それは...」お母さん、大きなため息をひとつ。
「さて、じゃあお母さんの気持ちも話してあげるわ。あなたのお父さんが死んで、必死に生きてた。そしたら4年半前のことがあって、家を失って仕事を失って。あなたが生きてることだけが救いだった。またやっと、何とか生きていけるようになったころ、あなたがボーダーに入りたいって言い出した。たぶん、葉月は少しでも私の負担を軽くしたかったのよね?優しいあなただから、私を守らなくちゃって思ったんでしょう。」「...うん。」「あなたの気持ちもわかった。だからあの時は強くは反対しなかった。でも、葉月が家にいる時間が減って、それまで感じなかった寂しさが急激に襲ってきた。その寂しさを埋めてくれたのがあの人。あの人も4年半前にせっかく立ち上げたばかりの会社が無くなって、色々苦労してきたから。」「そう、なの。」今の父親のことを少し知って驚く葉月。「それでも、自分のしたいこと全部否定されたら、そりゃ葉月が反発するのも分かるわ。私もあの人に支えてもらってる手前、表面的にはあの人を優先させてしまってたし。」「表面的...。」「無理矢理ボーダーを辞めさせたことは、悪かったと思ってる。あなたの気持ちを無視して、私の寂しさとか、あの人のためとかを取ったから。でも、葉月が嫌いになったから、そうした訳じゃないのよ。」「それは...わかる、けど。」「応援は、正直できない。葉月がいなくなったら、っていう不安はどうしてもなくならない。でも、もう私はあなたを無理やり引き止めるのはやめるわ。その代わり、今の父親に対してどうするかも、あなたが決めてあなたがどうにかしなさい。私は手伝わないから。」一見冷たいように見える言葉だが、葉月のしたいようにして良いという母親から今欲しい言葉をもらい、心にのしかかっていたものが少しだけ軽くなった気がする葉月。
「お母さん。」「何?」「…私、鋼くんが好きなの。」「えっ!?」唐突な告白に狼狽える鋼くん。けれど葉月の目は真剣そのもので、それをわかってる母親も動じない。「鋼くんは、私を守ってくれるって言った。でも、私がしたいこと、尊重してくれる。すっごく優しくて、カッコよくて、ずっと側にいたいって思う。」「ちょ、ちょっと葉月さん。」「でもね、お母さんもおんなじくらい、というか比べられないんだけど、でも大好きだよ。ずっと、側にはいられないけど、でも、大好き。」「そう。」照れちゃって居た堪れない鋼くんと、色々わだかまりが解けて嬉しそうな葉月さんと、なんだかんだ娘と和解できてホッとする葉月ちゃんのお母さんでした。
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