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倉庫(説明必読)

短編幸福を示す方位磁石<コンパス>の在処(来馬)の後日談
短すぎて倉庫送り
デフォルト名 百合歌(名前のみ)


「初めまして。」

『初めまして。と言っても、私は噂でよく聞いてるけど。迅くん、でいいのかな。』

「好きに呼んでもらっていいよ。」

それからずっと時間が経って、彼女は本当に家を出た。というより、本人は勘当されたって言っていた。

『私は辰也くんといられるならなんだっていいよ。』

笑いながら百合歌ちゃんがそう言ったのは少し前のことだけれど、本当に彼女らしいと思った。お互い家を巻き込んでひどくゴタついたこともあったけど、おおむねそれも落ち着いて今彼女はボーダーで一般職員として働いている。元々頭が良く、要領もよく、行動力もある百合歌ちゃんは鈴鳴支部と本部を僕よりも行ったり来たりしているようだ。そんな日々の中、ようやく僕らはこうしていられるきっかけを作ってくれた迅くんに揃ってお礼を言いにきたところだった。

『まずはこれ、よかったらもらって。』

「…これ、小南たちが滅多に食べられないって言ってたやつだ。」

『遠慮なくもらって。今の私の財力じゃ最初で最後にはなると思うけど。』

「それ、遠慮するなって言ってる割に、なかなかなセリフじゃない?」

『あはは、それだけ感謝してるってことだよ。ね、辰也くん?』

「うん。僕らが今2人で迅くんの前にいられるのは、迅くんのおかげだから。」

「そんなことないと思いますけど、でもいい未来が選べたならよかった。」

そう言って笑う迅くんの表情は、最近彼女も浮かべることの増えた笑顔とどこか似ていた。抱えているものが近いもの同士、感情も似ているんだろうか。少しだけ,寂しい気もするけれど、彼女の気持ちはこれからもっと知っていけばいいだけだ。

「未来は無限に広がっている。そう教えてくれた迅くんのおかげで、僕たちの今がある。感謝してもしきれないよ。」

『私も、その言葉に救われたとこある。ありがとう、迅くん。』

「改めて言われると照れるなー。でも、その未来を選択したのは2人なんで。あと、俺もちょっとだけ、自分と似たもの背負ってる人の存在には救われたんで、お互い様です。」

『おー、かっこいいこと言う!』

「百合歌ちゃん?」

『辰也くんでも嫉妬したりする?大丈夫だよ。辰也くんの次の次くらいにかっこいいとしか思ってない。』

「上げて落とすのひどい…。しかも次の次って。」

『辰也くんの次にかっこいいのは今の所鋼くんだからねー。』

ケラケラと楽しそうに笑う百合歌ちゃん

「来馬さん、油断できませんね。」

「あはは、まあ僕は僕なりに頑張るよ。」
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